真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
マンセマットと愉快な仲魔達を退けた煌達。
都庁に迫る彼らを待っていたのは。
かの名高き一神教の終焉の徒。
黙示録の四騎士でした。
病院がある。
それは、どうしてか魔界でも、不自然なくらい形が残っている。
ミヤズが調べてくれた。
「大きめの精神病院ですね」
イチロウがそれを聞いて不安そうにするが、ミヤズが丁寧に説明する。
精神病院も心療内科もそうだが、ストレス社会の現在では必須の存在だ。精神へのダメージは体にも来る。
人の心はもろくて、簡単に壊れてしまう。
それもあって、こういった場所での治療をもっと発達させなければならない。
解明されてきている治療法なども増えてきている、と。
精神病院の周りには、悪魔がいくらかいた。完全に形が残っているのだ。物珍しいのかもしれない。
聴取に応じてくれる悪魔もいた。
かなり古参らしい悪魔は、淡々と話してくれる。
「此処が全ての始まりだったらしいんだ」
「どういうことだ」
「東京受胎が起きた時、発生したのは新宿の中心地だったんだが。 儀式そのものは、此処で行われたらしいんだよ。 それもあって、この病院は不自然なくらい形が残っているらしいぜ」
「そうか。 ありがとう」
けけけと笑いながら、ガスマスクの男がそそくさと消える。
東京受胎という事件についてはまだよく分かっていないが、何かしらの儀式がそれを此処で起こさせたのか。
それとも、誘引したのか。
よく分からないが、病院そのものが無事なのは確かだ。
近くに龍穴もある。
ちょうど都庁までは威力偵察を進めてほしいと言われていたところだ。一度戻り、越水長官に説明。
越水長官は、即座に腰を上げると、実物を見に来た。
辺りの悪魔の掃討を頼まれる。
皆で散って、悪魔を処理。
ミヤズも既に相応の戦力を蓄えているし。少し離れて、フィンがいつでも誰かの加勢に出られるようにしてくれている。
ある程度大胆にそれぞれが散って、掃討作戦が出来る。
それにこの辺りは、天使達が大物悪魔を倒し尽くしてしまったようで。ほぼ小物しかいなかった。
病院の内部には、ユヅルと越水長官が入った。
戻ってきた酒呑童子が、アマラ輪転炉を抱えてくる。
「此処にもあったぜ。 だけど、稼働してないみたいだから持ってきた」
「何かしらの儀式とかそういうものの痕跡はなかったか」
「いや、なかったな。 砂の中に半ば埋もれてたし」
「……そうか」
これも越水長官に渡してしまうか。
二時間ほどして、越水長官が戻ってくる。護衛にいた自衛官が、龍穴を使って、物資の引き出しを開始している。
病院に残されていた物資を、根こそぎ回収するつもりのようだ。かなりの人数が出てきて、小型の車両まで使っていた。
それを護衛する。
いずれにしてもそれなりの軍勢が出てきているのだ。
雑魚悪魔達は近づくことに二の足を踏んでいる。それを視線で牽制するだけでいい。
越水長官が、後で話すといって、先に戻る。
ユヅルが咳払いすると、いくつか話して良いことについては話してくれた。
「先に此処で東京受胎が行われたというのは本当のようだ。 正確には、此処で行われた儀式で東京受胎が起きたのではなく、此処で東京受胎を誘引したようだが」
「本来起きる現象を、誰かが誘引したというわけか」
「ああ。 どうも氷川という男の名前が挙がっていたようだが、僕は知らない。 越水長官はやはりと言っていたし、ある程度目をつけられている危険人物だったのかもしれないな」
ともかく、自衛官が仕事をしているのを護衛しなければならない。
ユヅルは病院の内部に戻る。多数の河童を展開して、護衛をさせるようだ。
モーショボーが戻ってくる。
少し先の方を見に行ってもらっていたのだ。
一緒にアマノザコにも出て貰った。二人とも無事で戻ってきた。
「なんか変な建物、あったよ!」
「どんな感じになっていた」
「ぴかぴか!」
「タオの力に似てた!」
そうか。
至聖所シャカンというもの自体は事実か。そこに創世の女神の力が封じられているかはともかくとして、だ。
しばらくして、自衛隊が物資の回収を終える。
敬礼する一佐に敬礼を返すと、探索に戻る。
また坂だ。
かなり長いこと坂が続いていて、危険だ。こういう場所は、周囲を徹底的に警戒しないと危ない。
タオがあまり体調が良くなさそうだ。
これに関してはヨーコも同じか。
人間をやめかけているというのなら。
色々良くない影響が出るだろう、とは思う。
坂を下りる過程で散々悪魔に襲撃されたが、こちらは手札が多い。皆で連携しながら、前後左右全てを警戒し、守り抜く。
しばしして、ようやく坂を下り終える。
その時には、モーショボーが言っていた都庁が見えていた。
都庁はあまりにも形状からして有名であり、ロボットに変形するという都市伝説があるくらいだ。
ただ煌が見た感じ、きらきらぴかぴかと言う感じではない。
どちらかというと悪趣味な金色というのが近いかも知れない。
金というのは、要所に使うから栄えるのであって。全部金にしても、それはただ下品なだけだ。
これは紫も同じである。
「地形はかなり険しいが、たどり着くのは難しくはなさそうだな」
「それは確かにそうだ。 だがちょっとまずくねえかあれ……」
「……そうだな」
イチロウも勘が鋭くなってきている。
都庁を囲むようにして、四つなにか強い死の気配がある。
ぽんと姿を見せたアリスが、手をかざして、おおと声を上げていた。
「あれ、凄いよ。 私より力強いかも」
「それほどか」
「うん。 凄く強い死の気配。 多分えっと、人間は魔人って呼んでるんだっけ。 それだと思う」
その四つの死の気配が。
都庁の周囲に、強烈な壁を形成している。
なるほど、これは恐らくマンセマットによる備えだとみて良いだろう。あの黒い天使達の事を考えると。
ひょっとして、黙示録の四騎士か。
ともかく、一つずつ解除していくしかない。都庁にいつでもアクセス出来るようにはしておく必要がある。
都庁近辺は、比較的街が無事だ。無事とは言ってもビルなどは悲惨な崩れ方をしているが。
悪魔もかなりの数が住み着いている。
都庁の周囲だけは不自然に地形が盛り上がっていて、まさに要塞のようである。だからこそ、都庁が選ばれたのだろう。
迷惑な話だった。
さて、まずは一つ。
東に突出した地点で、明らかに空気が違う場所がある。踏み入れると、明確に周囲が歪んだ。
姿を見せたのは、黒い馬に乗った骸骨の騎士だ。
やはりな。
「黙示録の四騎士の一人、ブラックライダー見参」
「黙示録って、確か前に煌が言ってた、ヨハネ黙示録とかっていう、世界が滅ぶ事が書かれた本だよな……」
「そうだ。 それに登場するのが世界中の人間を殺戮して回る四人の騎士。 ブラックライダー、ホワイトライダー、レッドライダー、ペイルライダー。 それらの一人と言うことだ」
「博識で結構。 とはいっても、我々は傭兵だ。 それぞれが、別の可能性世界から呼ばれて来た、な」
ブラックライダーがそう言うと。
白い馬に乗った騎士が現れる。
あいつはホワイトライダーか。
赤い馬に乗った騎士も。そして最後は、青白い馬に乗った騎士。
これは、まずいな。
黙示録の四騎士全てが同時に相手か。見た感じ、どれもアリスよりも強い死の力を纏っている。
以前戦ったマタドールらとは更に格上の相手だ。
隙を探してくれ。
そうハンドサインを出すと、ユヅルが相手に話しかける。
「創世は近いかも知れないが、まだ世界の終わりは近くはないと思うが」
「そうだな。 我らはだから傭兵だと言っている」
「我らの主は、数多の可能性世界をいながらに見るもの。 マンセマットなど、その走狗に過ぎぬ」
「四文字の神ですらも、それは同じ。 我らの仕事は、この世界にて、よりよき創世が行われるように、心弱きものが座に近づくことを防ぐ事。 それは我らを作り出した一神教の徒であろうと同じだ」
それぞれの黙示録の四騎士は、周りを囲むようにして、ゆっくりと進みながら言う。
世界の終わりは必ず来る。
何度もそれは来た。
この世界の前にも世界があった。
戦いがとても強い王が世界を支配したが、瞬く間に崩れてしまった。
心優しき王が世界を支配したが、悪意に耐えられなかった。
世界は巡る。
何度壊れても、我らは呼び出される。
我らはそのたびに仕事をする。
今はこの姿をしているだけ。一神教にて呼ばれるのも、ただそれが都合が良い姿だというだけ。
おまえ達は、座に近づいて、何を為そうとする。
求めるのは栄誉か。
それとも、この世界の未来か。
権力か。
口々に語る死の化身達。
煌はハンドサインを出す。これはどうも戦いは避けられない。だとすると、やるべき事は一つだ。
ペイルライダーが、ふっと笑う。骸骨であるのに、どうしてかそうしたと分かる。
「試させて貰おう。 幸いなことにナホビノがいるようだ。 創世の女神が二柱いるのも、これはまた、この世界の歪みが故だろう」
「天と地の争いで、天が勝ちがちなのはこの世界のオーソドックスだ。 だが、天が地をも取り込んだ挙げ句に、地の本来の持ち主をなかったことにしたのは悪手であったな」
「先代の座の主は、あまりにも邪悪なツールとして完成され尽くしていた」
「我らは形式的には天使とされているが、実際には違う。 では、掛かってこい。 我ら死を乗り越えて見せよ」
瞬間、全員が散る。
レッドライダーにイチロウが。ホワイトライダーにユヅルが。ブラックライダーにフィンが。それぞれ斬りかかる。
煌は、その瞬間、ペイルライダーに迫る。
中央にいるミヤズには、全力で支援魔法を展開して貰う。
タオは吉祥天、アールマティと一緒に、死の力を押しとどめて貰う。ヨーコは遊撃。正確には、不意打ちを専門でして貰う。
この戦いで。
ヨーコが、本当に世界の破壊を考え直したか、見極めさせて貰う。
あの後、越水長官に言われたのだ。
ヨーコはまだ迷っているようだと。
だとしたら、見極めてほしいとも。
煌としてもそのつもりだ。ヨーコに最悪のタイミングで背中を刺されることだけは避けなければならない。
ペイルライダーに斬りかかる。
凄まじい火花が散る。死の気配をまとった騎士は、さっと手を振って、黙示録の天使達を呼び出す。
黒い天使達は、マンセマットがつれていた連中より更に強いように見えた。それにこいつらは。
ひょっとしてマンセマットの部下ではないのか。
激しく切り結ぶが、剣の技量が高い。
煌もかなり上がっている自信はあるのだが、それをもしのいで来る。
だが、なぜ敢えて戦力を分けたのか。
横殴りに飛来した爆発札が、ペイルライダーを守ろうとした黒い天使達を片端から吹き飛ばす。
そして、ペイルライダーが振るった剣が、それでも煌の乱撃を、的確に防いで見せる。
ヨーコの投擲した札が、更に来る。
創世の女神候補だった存在の投擲する札だ。
その破壊力は、本来はこれだったのかもしれない。手を抜いていたのは知っていたが、想像以上だ。
黒い天使達が次々に爆散する。
煌が仕掛けると同時に、酒呑童子が馬の後ろ足に組み付く。それで馬が足を止めた瞬間。唐竹にせんと、真上から義経公が襲いかかる。
かっと叫ぶと、全方位を抉るようにして、ペイルライダーの剣が襲いかかる。そういう剣技なのだろう。剣の技も何もないような気がするが、そのまま空間ごとえぐり取りに来ている。
だが、その瞬間。
ペイルライダーの体が、沈んでいた。足下が、泥濘化したのである。
マーメイドによる支援だ。
ミヤズの側で詠唱していたマーメイドは、支援魔法を使っていたのではない。
これを狙っていたのだ。
踏みとどまろうとして、失敗するペイルライダー。
煌の手刀は防ぐが、しかし義経公の剣が入る。
ざっくりと抉られて、ペイルライダーが呻くが。馬を捨てると、背中に翼を生やす。
そして、上空から、立体的に襲いかかってくる。しかも、マーメイドを狙いに来ている。
そこに、横殴りの一撃を入れたのは、霜の巨人だった。
「む……!」
「とおさん!」
そのまま、霜の巨人はペイルライダーを、剣で突き刺されながらもベアハッグする。霜の巨人の全身が見る間に真っ黒になっていく。
上空に躍り出た煌が、新しい眷属を呼び出す。
力はまだ未完成だが。
それでも、エジプト支部で、コンスから一部の力を借り受けたのだ。
「ホルス!」
「おう!」
エジプト神話にて、オシリスの子にして太陽の権化たる光の鳥。
ジャターユが望んで、合体材料となり。その忠義に答えて顕現した、今の煌の切り札である。
霜の巨人が、もろともにやれと叫ぶ中。
ホルスは文字通り光の矢となって、頭上からペイルライダーを貫く。光の柱が……マンセマットの使ったものとは違う神々しいものが、全てを焼き払う。悲鳴を上げて絶叫するペイルライダー。ダメージが大きすぎて消えていく霜の巨人。
ペイルライダーが、光を振り払って必死に逃れて出てくるが。
その瞬間、煌がその首をはね。
更には、義経公が全身をバラバラに切り裂いていた。
「一つ!」
着地と同時に、敢えて叫ぶ。
そして突貫。次に狙うのはイチロウが交戦しているレッドライダーだ。イチロウは必死にフォルネウスと森可成と一緒に猛攻を食い止めている。食い止めてくれていただけで、充分だ。
森可成が、振り下ろされた槍を体で防ぐ。鎧を貫いた槍を受けて、森可成が吐血する。見る間に全身が黒く染まっていく。
「可成!」
「気に為されるな! 今ぞ!」
「畜生、食らえっ!」
ハンドガンの弾をありったけ浴びせるイチロウ。それらは悪魔に対して極めて強力で……同時に高価なカスタム弾丸だが、それでも効いていない。そのはずだった。
最後の一発が、いきなり大穴をレッドライダーの馬にうがつ。悲痛な悲鳴を上げて、レッドライダーの馬が竿立ちになる。
その足を、マーメイドの水がつかんで。レッドライダーが態勢を崩す。今の一発、M16カスタムのスナイパーライフル機能を使ったミヤズの、遠距離からの狙撃。イチロウの射撃は、あくまでブラフ。
こっちが本命だ。
「味な真似をしてくれる! だが私も、赤い……すなわち死の騎士!」
槍を捨てると、斬りかかった煌の一撃を、レッドライダーは腰から抜いた剣ではじき返し。更には義経公の凄まじい連続攻撃を全ていなしてみせる。
馬から飛び降りつつそれをやってみせる。流石と言うほかないが。
まだ、罠は終わっていない。
森可成が消えていく。
それを見届けたレッドライダーが、煌と義経公を同時に相手にしつつ、更には突っ込んできた塗り壁を斬り伏せ。
酒呑童子の金棒による一撃を、素手でとめて見せた。
その瞬間。
イチロウの霊刀が、レッドライダーの体を貫いていた。
「なっ……」
「俺だってなあ、可成のおやっさんにずっと剣を習ってるんだ! こんな隙、見逃すものかよっ!」
「ふっ……どうやら雑魚と侮ったことが敗因か。 まあいい。 敗れることもまた、私の仕事であるからな」
煌が首をたたき落とす。
レッドライダーが消えていく。
「二つ!」
敢えて叫ぶ。そして今度は、フィンと戦っているブラックライダーに向かう。イチロウも、残りの手持ちを出して、黒い天使を抑えつつ、ハンドガンの弾を再装填。
フィンの絶倫の剣技と魔法を、ブラックライダーは防ぎ抜き、逆に押している。イチロウの河童達が何体か加勢しているが、かかる端から斬り伏せられている。それどころか、此奴も黒い天使を呼び出している。
だが。
圧力が弱まったことで、タオだけで支えが良くなり、アールマティが攻撃に転じる。
凄まじい光を浴びせられて、黒い天使達が怯む。
其処に、すっと割り込んだのは、アリスだった。
「黒い騎士さんだあ」
「むっ」
「じゃ死んで?」
「もう死んでいるさ」
しゃれた返しをすると、アリスに間髪入れずに剣で斬りかかるブラックライダー。だがアリスは水の魔法で即座に壁を作り。
更にマーメイドがそれを補強したこともあって、空間転移して逃れる。
逃れつつも上空で火炎の魔法を練り上げると、ブラックライダーに投射。黒い天使達が、まとめて吹き飛ばされる。
色々な魔法を自在に使いこなすか。かなりの強さだ。
フィンはかなり手傷を受けているし、手傷から呪いに侵食されている。厄介な状態だが、加勢。
だが、ブラックライダーは想像以上に強い。
煌と義経公、更には酒呑童子による猛攻を、余裕でいなしてみせる。
「我ら四騎士、つながりは一つ! 一人倒れれば、他に強さが分け与えられる!」
「そうか、道理で」
「簡単に勝てると思うなよ! 幾多の世界で終末を見てきた我らの死の力、この程度とおもうでないわ!」
「最初から思っていない」
ヨーコの札が、次々と黒い天使を落とす。
そして、爆発の中から飛び出してきたのは、猪笹王だった。
しかも、かなり大きくなっている。
これは以前倒したホウキの力を取り込んだのか。
煌からも情報を提供したが。それでも従えたのはユヅルの力量が故だ。
トラックが突撃するような圧力。
それすらも、片手で受け止めてみせるブラックライダーだが。
その額に、穴が開いていた。
イチロウの放ったハンドガンの弾だ。まさか、という顔をするブラックライダー。骸骨なのに、それが分かる。イチロウは、レッドライダー戦では敢えて普通の弾丸を使っていたのだ。それを此処で、きちんと効く弾に切り替えたのである。
イチロウは更に連続で射撃。其処に、ミヤズによる狙撃、巴御前による矢も連続で突き刺さる。
ブラックライダーが、馬上で何度も激しく体を揺らす。体は骨だけというわけでもないらしい。
其処に、煌が切り込む。
息を合わせて、酒呑童子が金棒をたたき込む。
だが、ブラックライダーは煌の手刀をとめ、酒呑童子の金棒を粉砕し。
更には影から突貫してきた義経公すらはじき返したが。
その体に、剣が生えていた。
フィンが投擲した剣だ。
其処に、アールマティの光の力がまとわりつく。ブラックライダーの内側から、光がほとばしる。
「面白い! 此処までの飽和攻撃を綺麗に通し、しかも……罠をこれだけ仕掛けて……連携も……!」
「三つ!」
爆散するブラックライダー。
呼吸を整える煌。
かなり危険な相手だ。そして、まだ最後が残っている。
ホワイトライダーが、ユヅルを吹っ飛ばすのが見えた。その体に、黙示録の四騎士全ての力が収束していく。
「ふうう……では私もそろそろ本気を出すとするか。 私の同胞達の力、今此処に解放する!」
「気をつけろ。 本当に四体分の力が収束している!」
「ええ……!」
煌はアオガミに答えていた。
本当に、今までで一番危険な相手だ。ただ、こちらにも勝ち目が見えてきている。
タオが相手を押し込み始めた。
死の力そのものは、四体だった時の方が大きい。ただ、相手個人の力が、増大している。
ミヤズが、負傷者に下がるよう指示。
蘇生の魔法を使っても、簡単に回復させられないほど厄介な呪いの様子である。眷属や仲魔だったら、蘇生の魔法である程度融通が利くのに。
相手は死そのもの。
更に、だ。
形態が変わっていく。白い騎士の全身から、無数の腕が生え、それらに多数の武器が握られていく。
からからと笑う白い騎士。
ユヅルに手を貸して、イチロウが立ち上がらせる。
ユヅルはこんな相手を、単騎で支え、隙を見て増援までこちらに送ってくれていた。煌は感謝しつつ、最大の一撃を準備する。
「行くぞナホビノ! その仲間ども! どれだけ耐えられるかな? どんな技を見せてくれるかな? 死の権化はすなわち戦いの権化! 戦いは私を構成する全て! あらゆる武技を見せてくれ! どんな戦術を魅せてくれる? 私はそれらが楽しみでならない! さあさあ早く!」
突貫してくる、ホワイトライダーだったもの。
魔法を使える者は一斉に攻撃を浴びせ、矢玉もありったけたたき込む。だが、それをぶち破ったホワイトライダーだったものが、突撃。
死角から仕掛けた義経公とアルテミスを、多数の腕で同時にあしらいつつ。正面から仕掛けた煌を、高笑いして迎え撃ってくる。
まずい。押される。
まるでミキサーのように回転している腕は、皆に接近させてしまえばその時点でおしまいだ。
雑多な悪魔達は、近づくだけでミンチにされている。
生半可な魔法なんか効きっこない。
そんな中。
マーメイドと、アマノザコが。
詠唱を終えていた。
空からホワイトライダーだったものに襲いかかったのは、超高圧の風と、それに圧搾された水の槍だ。
ホワイトライダーだったものの腕をまとめてぶち砕いたそれは、この空間全土を荒れ狂う。
ホワイトライダーだったものは高笑いしながら、腕を再生させまくる。剣を拾ったフィンも魔法で攻撃に加わるが、はじかれるばかりだ。
そんなとき。
煌の後方にいたモーショボーが、風の魔法を放つ。
非力なはずのそれが。
思い切り、ホワイトライダーだったものの顔をへこませていた。
「何……っ」
「あれ、どうして通ったんだろ」
「なんでもいい! とにかくあらゆる魔法を諦めずにたたき込め!」
ユヅルがそう言うと、一瞬でも時間を稼ごうと、霊刀を抜いて突進。煌と並んで、嵐のような武器の雨に抵抗する。
面白い。そう叫びながら、ホワイトライダーだったものは、その攻撃をことごとくいなしまくる。
もう少し。
あと少し。
第二射。
マーメイドとアマノザコによる一撃。今度はホワイトライダーだったものは、巨大な盾を作って、それを真正面から受け止める。
楽しい。そう笑うホワイトライダーの顔に、またモーショボーの一撃が通る。
まさか。
「貴方はひょっとして、モンゴル系の悪魔には対応能力がないのか!?」
「……ふっ……!」
数十の槍や鉈が、一度に煌に振り下ろされる。
割って入った義経公がなますにされるなか、煌はユヅルもろとも必死に飛び退く。そして情報から再構築した、多分使えもしないだろうと思った悪魔を。地面に手を突いて、具現化させる。
モンゴリアンデスワーム。
ゴビ砂漠に住むとされる巨大なミミズ型のUMA。それが、ホワイトライダーだったものの顔面に襲いかかる。
それを、明らかに受け止めきれず。
ホワイトライダーだったものの、足が止まる。動きが鈍る。顔を完全に塞がれて、笑いながら抵抗する。
煌は二つ、切り札を斬る。
ほとんどの力を、それに注ぎ込む。
ミヤズが自身で詠唱。アマビエとともに、なんだか変な舞を踊って、支援魔法の一番強いのを展開。
タオが皆を死から守るのから、一部の力を攻勢に。顔からモンゴリアンデスワームを引き剥がそうとするホワイトライダーだったものに向ける。みしみしと音を立てるホワイトライダーだったもの。
モンゴリアンデスワームが引き剥がされた時。
既に、煌は。
フルパワーで風の力を展開し。マーメイドの水の力と併せて嵐の力を解き放ったアマノザコの起こした風に乗っていた。
今だから分かる。
アオガミ型神造魔神は、素戔嗚尊の分霊体。素戔嗚尊は暴風神格で、マルドゥークと同系統の神。
天空神にて。龍殺しの神だ。
だからこそ、これで最大限の力を発揮できる。
そしてその振るう最大の剣こそ。草薙の剣。
別名を。
天叢雲剣。
暴風とともに、ホワイトライダーだったものに切りつける。残っている悪魔達、皆も一斉攻撃で援護する。
多数のホワイトライダーだったものの腕が消し飛ぶ。上空に出ると、空に手を掲げる。最大の一撃。
天空神としての、嵐を纏った一撃だ。
一刀に唐竹にたたき割りに行く。勿論ホワイトライダーだったものは、盾を構えようとするが。
「わっ!」
「っ!」
「わーちゃん、離れてっ!」
わーによる完璧な脅かし。アマノザコの声と同時に、煌は最大の一撃を振り下ろす。更には、同時に更に上空から、突貫する光。
盾を打ち砕かれ。内部に一撃をたたき込まれても、なおもホワイトライダーだったものは動いていたが。
煌が一撃を打ち込む寸前。
空に飛んだ光の鳥は、獲物を狙う猛禽として。光の権化として。死の権化を撃ち抜いていた。
煌がそのまま降り立ち。遙か向こうで、振り返りながら、光の鳥ホルスが地面を抉りつつ着地する。
死の空間が消えていく。ホワイトライダーだったものは、最後まで笑い続けていた。
「愉快愉快! 創世などもうさせぬつもりでさえいた! どいつもこいつもろくな創世をしなかったからな! だが、おまえなら……おまえ達なら……!」
黙示録の四騎士全ての力が爆発し、死の力が霧散していく。
ギリギリまで力を振り絞っての死闘。
だが、この勝利は、決して小さくはない結果を生んだはずだった。
復讐の女神編の黙示録の四騎士は、原作だと二パターン台詞があるんですよねえ。戦えるタイミングで一度あの人が離脱してしまうのが要因です。
本作では皆が連携を崩していませんし、イチロウがあっち側に行っていません。
ただそれだと味方の戦力が大きすぎる。
故に、四体同時に相手するという展開にしてみました。