真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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4、蛇の悲願

思ったより遙かに強くなっている。それを、遠くからリリスは確認した。あの夏目煌というナホビノ。

 

短期間で相当に良質な戦闘を重ねたのだ。

 

だが、それだけか。

 

ほとんど最善手だけを選んでいるような気がする。これほど偶然が重なるのは、あまりにもおかしい。

 

主たる存在である、アンチ創世の女神となったもの。

 

現在尋峯ヨーコと呼ばれているものからの連絡が途絶えた。

 

18年前に封印された時、リリスは一部始終を見ていた。その時、あのものは名前さえ与えられていなかった。

 

無垢なる存在の方が聖女として好ましい。

 

そのような考えから、聖女様とだけ呼ばれていた。

 

なんというおぞましい行為か。

 

挙げ句の果てに、創世の女神になる可能性があると判断するや、天使どもは存在そのものを封印するという暴挙に出た。

 

その封印は。

 

あの至聖所の中にある。

 

だが、その封印が、果たして必要なのか。リリスは不審にさえ感じる。タオという新しいベテルの聖女も、ほぼ創世の女神へと覚醒しつつある。

 

それだけ一神教の天使達の力が衰えているという証左でもあるのだが。

 

それ以上に不可解でならないのだ。

 

18年前。

 

東京受胎で何が起きたかは、はっきりとはリリスも知らない。ルシファーに同行した悪魔達さえ、何が起こったのかよく分からなかったとぼやいているほどなのだ。

 

前に接触したルシファーの第一の腹心であるベルゼバブも、何が起きたのかは正確には理解できなかったと素直にこぼしていた。

 

ただ、どう見ても。

 

四文字の神にルシファーが勝ったようには見えなかったと、それだけ言っていた。

 

戦いさえ起きなかったように見えたと。

 

しばらく考え込んでいると、アグラトが来る。

 

「さてお母様、如何なさいますか。 我らが聖女様はどうやら目的を我らと違えた様子ですが」

 

「我らの悲願は忘れておるまい」

 

「はい。 ティアマト神を復活させ、この座による不毛な創世を終わらせることですが」

 

「それで正しいのか、分からなくなってきた」

 

どうも妙なのだ。

 

あのナホビノの戦力成長、いくら何でも早すぎる。あれでは恐らくだが。そろそろ各ベテル支部の長とも戦えるレベルに到達する。

 

その上本人の冷静すぎる立ち回りはなんだ。

 

最善手をノータイムでつかんでいるようにしか見えない。

 

偶然にしてはできすぎている。

 

神に愛されているみたいな言葉を使うことがあるが、神は人なんか愛することはない。

 

愛したところで、それは一方的なものだ。

 

それはリリスが一番よく知っていた。

 

嘆息すると、リリスは言う。

 

「計画を早める。 鴉どもが、あのナホビノ達に一敗地にまみれた。 恐らくだがマンセマットは何かしらのアクションに出るはずだが、それも予想とは違う形になるはずだ。 マンセマットの裏にいるやつは何を考えているか分からん。 それならば、何が何でもティアマト神をよみがえらせる」

 

「ふむ、問題は贄ですが」

 

「そうだな。 出来れば高位の牛の系譜の神が望ましいのだが、はっきりいって今のナホビノの成長速度を見る限り、それもうまくいくかはわからん。 あの黙示録の四騎士が、想像を絶する強化を経てなお及ばなかった。 ナホビノの半身であるアオガミ型神造魔神は使えないとみて良いだろう」

 

「だとすると候補は……」

 

ベテル支部の長クラスが好ましいのだが。

 

それだと少しばかり手に余るか。

 

いや、良いのが一人いる。

 

今、冷静さを完璧に欠いている馬鹿者が。

 

「まだ東京駅での戦闘は勝負がつきそうにもないか」

 

「いえ、つきますね。 どうやら東京に戻ったナホビノが加勢するようです。 アブディエルとの戦闘で消耗しきったチェルノボグとアリオクでは恐らく対処できないでしょう」

 

「……そうだな」

 

ならば仕掛けるチャンスはある。

 

一瞥する。

 

まだ再生した腕をがりがりと噛んでいるエイシェト。

 

ハンカチを噛んでいるナアマ。

 

できの悪いあの子らはいい。

 

蛇の神の復権には、ティアマト神の完全復活以外ではあまりにも力不足。

 

サマエルもそれは同じ。

 

蛇の神の王だと。

 

リリスからしても、夫という設定をされているあの存在の言動は笑止極まりない。もはや、用済みだろう。

 

「マガツヒを練り上げ、準備を整えておくように。 ベテル本部は今回の件で壊滅的なダメージを受ける。 そのタイミングで、血迷ったあの阿呆が至聖所に仕掛けるのは確定とみて良い。 その隙をうがつ」

 

「はい。 しかし、よろしいのですね。 恐らくは我らが聖女様は、尋峯ヨーコ様は巻き込まれますが」

 

「構わん。 あの方は所詮はお飾りだ。 本人もそれを理解しておいでだし、何より……」

 

結果が伴っていれば、それでいいのだから。

 

長らく続いた牛の神の時代は終わる。

 

蛇の神の時代がやってくる。

 

天の神の時代が終わり。

 

地の神の時代が来る。

 

それだけで、リリスとしては充分すぎるのだった。

 

 

 

(続)







カディシュトゥの悲願。

それは牛の神の系譜による座の独占を終わらせることです。

それには自分たちの存在すら賭けています。

ただ非道なだけの存在ではない。彼女たちも、背負っているものがあるのです。



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