真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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アリオクさんとの戦いです。

復讐の獅子という意味の名前ですが、実際には其処まで大物ではないですよねえこの方。メガテンシリーズだとかなりの上級悪魔扱いされていて、閣下の側近みたいな立場で良く出てきますが。

本作では閣下の率いた悪魔の残党(一部)をまとめて、ずっと胃が痛い思いをしていました。

いくら弱体化していたとはいえ、ベテル本部を半身不随にまで追い込んだその粘り強い戦いは、評価して良いかとも思います。





2、復讐の獅子

更に複雑になるアスレチックを進む。これは恐らくだが、作った存在はとてもいい笑顔を浮かべながら作っていたのだろうなと煌は思う。進んでいて、なんというか作り手が楽しそうにしている様子が簡単に顔に浮かぶのだ。

 

風を利用した多数の複雑な仕掛けを、一つずつ攻略していく。後続の天使はほとんどいない。

 

そもそもアブディエルの麾下の精鋭は、この戦いで壊滅してしまったということなのだろう。

 

再建どころじゃない。

 

一神教文化圏ですら、若者が教会に行かない時代だ。

 

天使達をアティルト界から呼び出すのも簡単にはいかないだろうし。

 

何より西側の財閥を抑えているといっても。

 

それらの財閥は、残虐な資本主義の論理で動いている。ベテル本部がまずいと判断したら、あっさりアブディエルを切る可能性すらある。

 

一神教は支配のツールとして便利な道具だ。

 

だが、人間の財閥を支配しているような連中は、何より残虐で狡猾だ。道具が使い物にならなくなれば捨てる。

 

人間をゴミのように使い捨てて眉一つ動かさない連中だ。

 

そのくらいはやってのけるだろう。

 

激しい段差を乗り越えて。流石にミヤズが無言になっている。イチロウは疲れたとぼやきながら、壁に背中を預けていた。

 

ヨーコは余裕そうだが。

 

この様子だと、顔に出していないだけで相当参っているな。

 

皆の仲魔の消耗も決して小さくない。

 

煌の眷属達だって、かなり消耗していた。

 

「ねえねえ煌ちゃん」

 

ひょいとわーが顔を出す。

 

煌も少し考え事をしていて、それで気付く。

 

アブディエルだ。

 

こちらに接近してきている。

 

「ありがとう。 接近に気付けなかった」

 

「んーん。 大丈夫。 それより、もう少しで奥までつくと思うよ」

 

「何か根拠はあるのか」

 

「だって悪魔ほとんど出なくなってきたし」

 

それは、確かにそうだ。

 

皆にアブディエルが来る事を告げて、それで警戒態勢を取る。アブディエルにしてみても、此処なら暗殺をするのにこれ以上もなく適している。

 

仕掛けてきても不思議ではないのだから。

 

程なくアブディエルが部下達を連れて姿を見せた。

 

余裕の表情を崩していないが。

 

状況からして、余裕な筈がない。

 

少なくともアブディエルが余裕の表情を作っておかなければ、ベテル本部は今にも瓦解してしまう。

 

そう思っているのだとしたら、むしろ痛々しくさえあった。

 

「チェルノボグを下したか小僧」

 

「貴方はここまで攻め上がって大丈夫か。 後方もまだ安全とは言い切れないのではないのか」

 

「ふっ、戦略を分かったように言う。 確かにその通りだが、混沌の悪魔どもの残党の頭目の一角であるアリオクを倒せば、それらは勝手に離散する。 後はそれらを各個撃破するだけだ」

 

そう簡単にいくはずがない。

 

そんなことは、アブディエルも分かっている筈なのに。

 

アリスがじっとアブディエルを見る。

 

アブディエルはアリスを魔人と見抜いたようで、なんだと不愉快そうに返していた。

 

「ふーん、今って貴方が天使達をまとめているんだ」

 

「これは小僧、貴様の眷属か」

 

「子供にこれなどと言うべきではない。 確かに色々と複雑な事情はあるが、話してみると根は良い子だ」

 

「……そうか」

 

アリスはじっとアブディエルを見て、それで言う。

 

うちのおじさん達より弱そう、と。

 

アブディエルがつれていた天使達。ドミニオン数体、ソロネ数体がそれぞれ色めきだつが。

 

よいとアブディエルは言った。

 

此処で争う意味を見いだせなかったのかも知れない。

 

「しつけはしておけ、小僧。 この辺りは我々が制圧しておく。 貴様は更に先に進め」

 

「分かった。 アリオクを倒してしまっても問題ないのだな」

 

「出来るものならな」

 

「……」

 

イチロウとミヤズ、ヨーコに行こうと声を掛ける。

 

進んでいくと、偵察に出ていた悪魔達が戻ってくる。かなり手ひどくやられているモーショボーが、ふらふらになっていた。

 

「ええと、ご注進ー……」

 

「大丈夫か」

 

「うん、なんとかギリギリ……。 私でも勝てる相手だった。 でね、この先に煌ちゃんの事を恨んでるとかいうのがいるんだって。 なんか獅子の顔の悪魔だって」

 

「誰だ?」

 

覚えがありすぎる。

 

ともかく、黙々と進む。進んでいて分かってきたが、徐々にアスレチックが雑になってきている。

 

迎撃に出てくる悪魔も露骨に弱くなっている。

 

これは恐らくだが、作っていた奴が、この辺りで力尽きたのだ。

 

まあ煌も、そういったものは見たことがあるので、なんとも言えない気持ちになる。恐らく同じ事を、ミヤズは感じ取ったようだった。

 

「これはもう近くにいますね」

 

「なんていうか、雑だよな。 最初の方がめんどかったくらいだ」

 

「ひいひい言いながらアスレチックを越えていたのだから、良かったでしょう」

 

ヨーコがそんなことをイチロウに言う。

 

ともかく、まだ敵に大物がいるとすると油断できない。そして、まがまがしい風が吹き付けてきた。

 

無言でアマノザコが風を相殺する。

 

天井近くから降り立ったのは。獅子の顔と翼を持ち、股間から蛇を生やしている悪魔。

 

邪神パズズだった。

 

マーメイドがぐっとにらんでいるのが分かる。パズズが、凄まじい風を吹き付けてくる。

 

「多少無理矢理にだが、アティルト界から戻ってきたぞナホビノぉ! 消耗は天使どもの残骸をむさぼり食って無理矢理回復した! 今度こそ、徹底的に打ち砕いてくれる!」

 

「いや、貴方であったら別に戦う事もない」

 

「なんだと」

 

「用意してきたからな。 いでよラマシュトゥ!」

 

ぼんと音を立てて出現したのは、メスライオンの頭と長い牙、ロバの体、鋭い爪を持つ存在。

 

そう、彼女こそが。

 

パズズの相克存在にして、妻である邪神ラマシュトゥだ。

 

「あなあああたああああああああああっ!」

 

「ひっ! ひいいっ! なんでおまえが此処におるのだ!」

 

「人魚の小娘にうつつを抜かして、SMプレイを楽しんでいたそうねぇええええ!」

 

「ご、誤解だ! 呪いを撒くために痛めつけていただけだ! ちょ、ちょっとだけ楽しかったが、その、おまえをないがしろにしたつもりは……」

 

問答無用。

 

そう吠えると、ラマシュトゥが完全に逃げ腰になったパズズに襲いかかり、悲鳴を上げるパズズが文字通りぼろ雑巾にされる。工事現場みたいな音が響いていたが、まあその程度だったらこのレベルの高位悪魔は死なないだろう。

 

何もする必要はない。

 

程なくして、パズズは頭にたくさんこぶを作った上で正座させられ、それを恐ろしい形相でラマシュトゥがにらんでいた。

 

更に煌に向けてパズズが土下座する。煌は自分はいいからマーメイドにするように言った。パズズは一も二もなく、ちょっと土下座の方向を調整していた。

 

「す、すまなかった……」

 

「結婚って人生の墓場とか聞くけど、神様の世界でも同じなんだな……」

 

イチロウが悲しそうに言う。

 

まあ今の力量だったら、こんな半端な具現化をしたパズズだったら正面からねじ伏せられるが。

 

それでも無駄な消耗はしない方が良い。

 

ラマシュトゥの力でパズズの呪いを解呪した後、念の為に用意はしておいたのだ。幸いラマシュトゥは現時点ではさほどソピアーのところで作り上げるのは難しくなかった。

 

「このままアティルト界に戻るならこれ以上は何もしない」

 

「わ、わかった。 もうしばらくは悪さはしない。 冷静に頭を冷やしてみると、今の貴様には勝てそうにない。 アティルト界でおとなしくしている」

 

「そうしてくれ」

 

「この先にアリオクどのがいる。 アリオク殿は強いぞ。 せいぜい覚悟して挑むのだな」

 

ラマシュトゥがにらむ中、本当に悲しそうにパズズが消えていった。

 

一瞬だけイチロウがミヤズを見たので、そういえばミヤズはこの間ロマンチックな話をしていたなと思い出す。

 

イチロウからすれば、コンスもミヤズの尻に敷かれると思ったのだろうか。まあイチロウの側にはヨーコという世にも恐ろしい女もいるし。女に変な夢を見ないだけでも、良かったのかも知れない。

 

ラマシュトゥももう用事も終わったからと、煌の眷属契約を解除したいという。

 

ミヤズが挙手して、こちらで引き取りたいというと、頷いていた。こういった形で、眷属を仲魔として譲渡することは可能だ。

 

ラマシュトゥは乳幼児を害する悪神だが、同時に家畜の病を癒やす神であったりもする。

 

複雑な側面を備えている神だが、これは元々は複数の神格が存在していたのを、ラマシュトゥに統合したからだろう。

 

いわゆる習合という奴だ。

 

世界中の神話で起きている出来事であり、古代神格であるラマシュトゥもそういう存在だったと言うことだ。

 

ともかく、これで準備は整う。

 

愛用のM16カスタムのマガジンを入れ替えるミヤズ。既に銃の扱いは自衛隊員が太鼓判を押す力量だ。短期間で複雑な経験をしていることが、本人に常人の何倍もの成長をさせている。これにマガツヒによる体の強化が加わる。

 

イチロウも、あれだけ色々あっても、まったく折れている様子がない。

 

むしろ、行くぞと気合いを自分に入れていた。

 

長い階段が続いている。しかも天井が低い。

 

対天使、対大型悪魔を想定した作りだ。アスレチックは既になくなっており、完全にこの辺りで嫌がらせだけに切り替えたのが分かってしまう。

 

ミヤズがぼやく。

 

「急いでいたのは分かりますが、とても雑で見ていて気分が悪いです」

 

「ミヤズちゃんサブカルが好きだって言っていたものね」

 

「……」

 

ヨーコがだから途中から力尽きたのが分かるのだろうと嫌みを言っているわけだが。今の時代、だいぶいわゆるオタク趣味に対する偏見は減っていても、ゼロにはなっていない。ミヤズは意図的に聞かなかったフリをした。

 

これはひょっとすると、ヨーコとの間にかなり大きな壁があるか。イチロウもヨーコを怖がっているが、ここまで拒否している様子はない。

 

まあ、どうでもいい。

 

戦闘ではちゃんと動いてくれているし。ヨーコもここ最近は手を抜いている様子は見られない。

 

だったら、そのまま戦ってくれれば文句はない。

 

階段を上がりきる。

 

奥では、戦闘が起きていた。恐らくは、ここまでどうにか迂回路などを使ってたどり着いた天使達がいたのだろう。

 

それも相応の数。

 

だが、既にほとんどが斬り伏せられ。

 

今、最後に残った天使達が、まとめて斬り伏せられるところだった。

 

ソロネが真っ二つに切り下げられて、消えていく。

 

丸い肉塊に短い手足。体の正面に縦に裂けた巨大な口。申し訳程度に乗った頭。

 

間違いない。

 

あれがアリオクだ。

 

事前に聞いていた話と符合する。

 

アリオクは剣を振ってマガツヒを落とすと、こちらに振り返っていた。

 

「チェルノボグどのが倒されたと聞いて待っていた。 てっきりアブディエルが来ると思っていたがな。 日本支部のナホビノ。 私が魔王アリオクだ」

 

「夏目煌だ」

 

皆も自己紹介する。

 

アリオクも、相応に消耗しているのが分かる。チェルノボグがあの難敵だったのだ。アリオクも油断できる相手ではない。

 

「アブディエルがここ18年、日本支部に酷薄に振る舞ってきたのは知っているだろう。 あのような輩を助ける理由はないぞ」

 

「義によって助太刀したわけじゃない。 東京を救うためだ」

 

「ほう……」

 

「シャカイナグローリーによってかろうじて保たれている東京だが、そうもたもたはしていられないのでな。 悪いが倒させて貰うぞ」

 

アリオクはじっとこちらを見てくる。

 

手にしている剣は不格好だが。あの短い手足と動きづらそうな体で、どうやって戦うつもりか。

 

ともかく。

 

此処からは、総力戦だ。

 

バチバチと火花が散ったのは一瞬。

 

両手に剣を出現させると、アリオクはふわりと浮き上がっていた。この空間は、それほど広くない。

 

ああ、なるほど。

 

そういうことか。

 

「散開!」

 

「ゆくぞナホビノとデビルサマナー達! 復讐の獅子の力、見せてくれる!」

 

回転しながら、アリオクが襲いかかってくる。天井床壁、激しく跳ね回り、そのたびに力を充填。

 

来た。

 

イチロウを狙ってきた。ヨーコが札で壁を作り、イチロウが悪魔達を展開して壁にもするが、その全てを一撃で貫通する。

 

至近に迫ったアリオクに、イチロウは腰が引けていない。

 

煌も間に合う。

 

二人がかりで、猛烈な突貫を受け止める。

 

回転しながら火花を散らし、そしてはじかれるようにしてアリオクが跳ねる。下がって、また力を充填しつつ、襲いかかってくるつもりだ。

 

なるほど、この空間は。

 

奴にとってのミキサーというわけだ。

 

内部に入り込んだ存在を、片っ端から切り刻んでしまう。あの動きには最適化された空間と言う訳だ。

 

しかもここに来るまでの嫌がらせで、アリオクにとっての敵は疲弊している。

 

疲労のピークの敵を迎え撃つ。

 

戦略的にも理にかなっている。

 

再び来る。

 

今度は真上からミヤズを狙ってくる。

 

クルースニクが立ち塞がり、巴御前が矢を射かけるが、それを弾き散らしながら迫り来るアリオク。

 

ミヤズも冷静にアサルトで応戦しているが、雑魚ならともかくこのレベルの悪魔となると簡単には通じない。

 

だが。

 

真横から振るわれた鉄の金棒が。

 

アリオクをミヤズの至近で吹っ飛ばしていた。

 

「何っ!」

 

「今風にいうとホームランだったな!」

 

酒呑童子だ。

 

アマノザコの風で後押しして、すっ飛んで襲いかかったのだ。アリオクは吹っ飛ばされるも、壁で即座に立て直し、激しく跳ね回りながら速度を充填してくる。そしてまた、回転しつつ襲いかかってくる。

 

ヨーコが多数の札を展開。

 

今度狙ってきたのはヨーコだ。

 

漏斗状に展開された札が、突っ込んできたアリオクを包み込む。そして、起爆。爆発の威力が、全部アリオクに襲いかかるが、それでも関係なしに突っ込んでくる。

 

だが、アリオクが切り裂いた空間には、ヨーコはいない。

 

例の神行法で逃れたのだ。

 

「面白い! ファランクスを組むしか能がない天使どもとは違うようだなあ!」

 

アリオクが言うが、回転し続けているので、どうしても声に妙なエコーが入ってしまっている。

 

この間も森可成が銃撃し。

 

更には巴御前も大弓で射撃し。

 

アールマティや吉祥天もそれに習っているが、当たってもはじかれるばかりだ。回転することを苦にしていない。

 

人間と違って、それで目が回ることはないのだろう。

 

また来る。

 

今度は煌を狙ってくる。

 

力を充填してからの凄まじい突撃である。

 

塗り壁が立ち塞がる。踏み込んで、受け止める構えを取る。

 

アリオクはそれを見て、喜ぶ。

 

「私の突進に臆せぬか! ならばよし! 一撃で貫いてくれる!」

 

突貫してくるアリオク。

 

だが。

 

アリオクは、塗り壁を撃ち抜いた時点で、とめられていた。

 

塗り壁の背後に、腰を落として出現した霜の巨人が、体をずたずたにされながらも、アリオクを食い止めたのである。

 

動きが止まったアリオクに、今度は四方八方から義経公が斬りかかり。

 

更には脳天をたたき割りに、酒呑童子が金棒を振り下ろす。

 

全身を切り裂かれたアリオクが、慌てて飛び下がるが、後方にはアルテミスが回り込んでいて。

 

氷の壁を展開。

 

それをアナーヒターとマーメイドが、水の壁で更に補強していた。

 

「むっ……!」

 

「この空間は貴方に適した広さだ。 だが……!」

 

アマノザコがぱんと手を合わせる。

 

詠唱を続けていたアマノザコが、凄まじい暴風を吹き荒れさせる。

 

まずいと判断したのだろう。

 

アリオクがダメージを受けながらも下がる。狭くなってしまった空間を、それでも飛び回りつつ、散発的に仕掛けてくる。

 

離れたのは、煌の力が雷雨で増幅されることを見抜いたからとみていい。

 

流石に混沌の悪魔達をまとめていた顔役だけはある。

 

戦闘経験は相応に豊富と言うことだ。

 

クルースニクが消し飛ばされ、イチロウを庇って森可成がずたずたにされて吹っ飛ばされる。

 

激しく荒れ狂いながら、アリオクはこちらの主力を潰して行く策に切り替えたようだが。

 

しかし。

 

動きは確実に見切り始めている。

 

どうしても狭い空間で速度を出し切れなくなった、ということもある。

 

アリオクのために調整された空間を、こちらで後から手を入れて、動きづらくしたのである。

 

人間なども、怪我をしてほんのわずかだけ体を欠損しても、それが理由で転んだりするのだ。

 

アリオクは相当な達人のようだが。

 

今も狭くなり続けているこの空間。

 

これ以上、好き勝手には暴れられない。

 

だったら、狙ってくるのはわかりきっている。

 

ヨーコに対して、激しく切りつけて。札を散らして、爆発の中で離れるアリオク。

 

壁で回転しながら、凄まじい熱を帯び始める。

 

狙ってくるのは。

 

煌だ。

 

「戦術家としての視点、見事だ! だからこそ、一気に決めさせて貰うぞ!」

 

「……受けて立つ」

 

腰を低くして、構える。

 

アリオクは凄まじい雄叫びを上げると、全力で突貫してくる。

 

だが、その時。

 

ミヤズが舞をアマビエとともに終えて、全力で強化をかけ終えていた。

 

更にはイチロウも、仲魔を総動員して、氷の壁を展開。フォルネウスと他の仲魔たちで、壁を作り上げる。

 

アリオクが来る。

 

その横っ面を張り倒すように、巴御前とミヤズ、それにイチロウが、迎撃の砲火を浴びせる。

 

それらで傷つきながらも、アリオクが無視して一直線に煌に迫る。

 

イチロウが作った氷の壁を撃ち抜く一瞬。

 

その隙に、酒呑童子と義経公が、アリオクに猛烈な攻撃を加え。更にはマーメイドが、アリオクの全身に水を絡みつかせる。

 

アリオクが明らかに重くなった体で、しかも灼熱に燃え上がった体を冷やされる。それでも、半笑いで突っ込んでくる。

 

煌はその動きを。

 

見切っていた。

 

流石に天叢雲剣をたたき込む余裕はない。

 

回転のこぎりとなって突っ込んでくるアリオクに、正面から打ち当たると。

 

気合いとともに、その一撃を受け止める。

 

激しい火花が散る中、手刀とアリオクの回転する二刀がぶつかり合う。徐々に押し込まれる煌。

 

流石だ。

 

スルトに勝るとは思わない。イシュタルももっと強かった。

 

剣技だったら、チェルノボグが上。

 

だが、まとまりのない集団をまとめあげ。

 

それでも混沌勢力の顔役として此処で残党をまとめ続けた。まとめきれなかったかもしれないが、最後まで此処で踏みとどまった。

 

悪魔だろうと、その行動は見事。

 

だからこそ、総力で答えさせて貰う。

 

力は跳ね上がっている。

 

だから、アリオクを押し返し始める。アリオクの剣がへし折れる。一本目。それでも、二本目を回転攻撃でぶつけ続けてくる。

 

その二本目も。

 

今、へし折れた。

 

後はアリオク自身が、質量弾として煌とぶつかり合う。

 

煌は手刀を十字に交差させて、受け止める。アリオクは、体を抉られ続けながらも、それでも。

 

最後まで、諦めなかった。

 

炸裂音とともに、アリオクが吹っ飛ぶ。

 

壁にたたきつけられたアリオクは、ほとんど原型をとどめていなかった。

 

煌もかなり消耗している。今のぶつかり合い、危なかった。即座にミヤズが回復の力を使い始める。

 

壁からずり落ちたアリオクは、つらそうに呼吸をしていたが。

 

自身もぼろ雑巾同然になっている森可成が立ち上がると、愛用の槍を持って、歩いて行った。

 

「武士の情けだ。 介錯つかまつる」

 

「おお、介錯か。 日本で活動していたが、それを受けるのは初めてだ。 もはや負けて悔いもない。 天使に負けたのなら化けて出てやるところだが、まさかこの私の最大の一撃を受け止めてそれで倒してみせるとはな。 ナホビノよ、デビルサマナー達よ。 最後の戦い、とても楽しかったぞ。 礼を言う……」

 

「御免!」

 

森可成が、アリオクを突き刺す。

 

それがとどめになって、アリオクが消えていった。

 

森可成も限界が来ていたらしく、イチロウのハンドヘルドコンピュータに戻る。それと同時に。

 

東京駅が、揺れ始めていた。

 

「龍穴から脱出する。 ソロネ」

 

「は!」

 

ソロネと天使達を呼び出す。

 

今回の戦いでは、アリオクの私怨もある。敢えて出さなかった。

 

すぐにアブディエル達に、龍穴からの脱出を促すように指示。良いのだろうかと、一瞬だけソロネは顔に書いたが。

 

これも貸しだというと、なるほどと頷いていた。

 

天使達が、崩れ始める東京駅に散っていく。仮に倒れたとしても、煌の中で再構築出来る。

 

ミヤズがちゃんと自分の足で走る。イチロウもふらついているが、それでも走れている。イズンを呼び出すと、煌も走りながら回復を頼む。

 

疲弊は大きいが、敢えてホルスを先行させる。

 

理由は簡単で、途中の障害物や残党を全て蹴散らすためだ。

 

まっすぐ龍穴を目指す。

 

途中で天井が崩れてきたが、酒呑童子が跳躍して、鉄の金棒で蹴散らす。そのまま急ぐ。

 

龍穴。大丈夫だ。時間はまだある。

 

天使達が戻ってきた。雑魚悪魔もたくさんいる。

 

鵺が数体いた。

 

「オレサマ降参! 助けてほしい!」

 

「死にたくない! 契約するから!」

 

「分かった、俺が契約する。 ならんで!」

 

「手分けします」

 

ミヤズも即座にハンドヘルドコンピュータを起動。敵残党を、貪欲に契約して取り込んでいく。

 

アブディエルが来る。

 

雑魚悪魔達を冷たい目で見ていたが、口論している場合ではないと判断したのだろう。深手を受けている部下を先に龍穴から戻らせている。その中には、愚直に持ち場を守っていたパワーもいた。だが、そのパワーは、煌に跪く。

 

「貴方の全てに感服いたしました。 以降は貴方の眷属になりたく」

 

「信念はいいのか」

 

「私の信念は、人々を守ることにあるとようやく思い出しました。 アブディエル様は、東京の人々よりも神の復権を優先為されていた。 それが間違っていることに、やっと気付くことが出来ました。 以降は、貴方の元で天使としての本来の責務に戻ります」

 

「……分かった」

 

アブディエルはそれをとめなかった。

 

そして、戻ってきた恐ろしいほどまでに討ち減らされた部下達をまとめると、龍穴に消える。

 

天井が本格的にまずいな。

 

ヨーコが札を放って、天井を補強してくれる。

 

逃げてきた悪魔達を契約完了。あらかた取り込んだ。後は、皆龍穴経由で戻って貰う。最後まで煌は残り、逃げてくる者がいないが見張ったが。わーに腕を引かれる。

 

そういえばアリオク戦で、わーは不意打ちを仕掛けなかったな。そうしなくても勝てるとみたのか。

 

それとも、アリオクを哀れみ。最後の戦いを邪魔しなかったのかも知れなかった。

 

そろそろ限界だ。

 

煌も龍穴に。

 

背後で、崩壊の音が聞こえた。







アリオクはかくして倒れました。

彼もまた、誇り高く戦って倒れることを選びました。

そういう戦いを選ばせるだけのものが、煌にはあったということですね。



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