真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
原作におけるアプサラスとリャナンシーのイベントです。
明らかにどう考えてもアプサラスの方が正しいですねこの場合は。夢なんかおっとる場合かこんな状況で!
山手線の車両が転々としていた辺りを抜けると、オアシスのような場所に出た。
多数の悪魔がいるが、明確に秩序だって行動している。何かをあがめているようだった。
あがめられているのは、褐色肌の薄着の女性だ。
羽衣のようなものを身に纏っているが、ほとんど裸である。
局部と胸くらいしか隠しておらず、髪型も日本のものとは違っていた。
悪魔の一体。
小柄な二足歩行の猫が立ち塞がってくる。
剣を手にしていて、子供くらいの背丈であっても、悪魔らしい力を感じ取ることが出来た。油断はしない方が良いだろう。
前にユヅルが展開していた。
確かケットシー。猫の妖精だった筈だ。
「止まれ。 どこかの神格のようだが、ここは弱い悪魔達が救いを求めて集った場所だ。 その軸であるアプサラス様に近づける訳にはいかぬ」
「アプサラス……」
聞き覚えがある。
インド神話における女性の神格で、個人名ではない。
複数個体がいるが、人間との関わり方は必ずしも友好的ではない。人間と愛を育んだり、逆に堕落させることもある。
様々な説があるが、水の精であることは確かだ。
あの半裸の女性がそうだろう。
女性が、響くが穏やかな声で猫に言う。
「その方々をこちらへ。 頼みたいことがあります」
「……そう仰せだ。 失礼がないようにせよ」
「分かった」
煌は周囲を観察する。
ほとんど砂漠になっているのに、この辺りは水がこんこんと湧いている。植物はないが、その代わりその水でかなりの悪魔が助かっているようだ。
こちらを見る悪魔は、明確に力が弱い者ばかりだ。
明らかにおびえのこもった視線も向けられてくる。
無言になる。
弱い者が身を寄せ合っている場所、か。
いずれにしても、そこに自立しろとかいって、いきなり全て取り上げるのは暴虐だ。
だが一方で、日本でも時々見られたカルト団体のようでもある。
ただ、やらない善よりやる偽善だ。
少なくともこの悪魔達は、このオアシスで助かっているし。生半可な悪魔では、ここを蹂躙できない程度の戦力にもなっているのだろう。
「貴方方には大きな力を感じます。 私はアプサラス。 インド系の神話の神々の一柱として、ここで弱者達のよりどころを作っています」
「そうか。 それで話とは」
「物怖じしないのは頼もしいですね。 今、悩んでいることがあります。 魔界は無秩序の世界でありますが、それでもある程度の勢力が存在しています。 今一つの勢力が、無法を働いているため、非常に困っています」
無法、か。
確かにこの有様では、法治主義どころではないのも分かる。
人間は全く姿が見受けられないし。
何が起こったのかも、よく分からない。
途中、翼を持つ女の子の悪魔と出会った。
確かモーショボーと言ったか。
分厚い防寒着みたいなのを着込んでいる女の子で、非常に無邪気な言動をしていたが。眷属になるのは断った。
そのモーショボーが言っていたのだが。
18年くらい前に、ここに魔界が出来たのだという。
恐らく十数年から二十年程度経過しているだろうという煌の予想は当たっていた事になる。
勿論それが正解かは分からないが。
ともかく、そんなに前に魔界とやらが「出来た」のなら、生存者の可能性は著しく低いと見て良いだろう。
だがユヅルはどういうことだ。
ツバメさんと尋峯はまだ得体が知れないが。ユヅルとは、ずっと一緒に学校生活をしていたのだが。
「その勢力はリャナンシーという欧州の妖精が率いています。 甘言を持って相手をそそのかしますが、ごく一部の者だけを親衛隊にして、他の者は殺して養分とするような無法を働いています。 しかもこのオアシスを狙っている様子。 殺せ、とまでは言いませんが、少なくとも無法を思いとどまるように説得していただけませんか。 私とリャナンシーの力は拮抗していて、力がものを言うこの魔界では、恐らくは話し合いは出来ません。 ここのみなの総力を挙げて戦えば勝つ自信はありますが、大きな被害を出すでしょう。 強い力を持つ事が明らかな貴方方にお願いしたく」
「……」
三人と話す。
尋峯が遮音の結界というのを張ってくれた。
ただ者ではないと思っていたが、グラシャラボラスの時も結界で身を守っていたらしい。
ツバメさんは判断は任せると即答。
咳払いすると、まずはユヅルが言う。
「今は手数が必要だ。 これだけの数がいる悪魔の勢力。 情報を何か得られるかも知れない」
「放っておくべきよ」
尋峯が言う。
その口調には、憎悪すら感じ取れた。
「弱者を救うというのは聞こえが良いけれど、あの様子だと何かしらの時の兵隊としてあの悪魔達を従えていると見るべきでしょうね。 アプサラスは知っているかも知れないけれど、善悪関係ない、ただの水の下級神よ。 インド神話系の神として動いているのであれば、より上位の存在のために何か画策している可能性が高い。 手駒に使われるのは愚策だわ」
「一対一、棄権一ですね。 では、僕の意見を言います」
煌に二人の視線が向けられる。
まず、この場では情報収集が最適。
リャナンシーは欧州の悲恋の妖精で、愛した相手を死なせてしまうと言う伝承が残っている。
ラブストーリーもそれなりに読んだことがある。その過程で知ったのである。
リャナンシーが小規模であっても勢力を持っているのであれば、そちらからも話を聞いてみるべきだ。
その上で、それぞれから情報を得て、それを生存のために生かすべし。
そう説明した。
尋峯が鼻で笑う。
「ああいう偽善者は有害な存在よ。 ここにいる雑魚悪魔もろとも全滅させた方が良いでしょうね」
「随分と暴力的だな貴方は」
呆れるユヅル。
それに対して、尋峯は冷たい目を向けるばかりだ。
咳払いして、煌は決める。
「とりあえずは、リャナンシーに話を聞きに行きましょう。 それからでも遅くはない筈ですが」
「そうだな、それについては僕も賛成だ」
「……そうね。 多角的に情報を得るのは良いことだわ。 それと」
尋峯が、咳払いした。
そして言う。
「ため口で良いわよ。 同年のようだから」
「わかり……分かった。 尋峯さん、以降はため口で喋らせて貰うよ」
「ヨーコでいいわ」
「分かった、ヨーコさん。 以降はよろしく」
遮音の結界を解除。
とりあえず、アプサラスに、リャナンシーの様子を見てくるようにだけ告げる。
そして、以外と近くにある、ここから水が流れ出している先へと向かった。
途中で、マガツカがあった。偵察していて存在は分かっていたのだが、かなり巨大化している。
何より、ぐったりした女の子が捕獲されている。まあどう見ても悪魔だが。
このままだと食われてしまうだろう。
ヨーコは視線で放っておけというが、そうもいかないだろう。
「ツバメさん、隠れていてください。 あいつを処理します」
「よっす。 頑張ってねー」
「無駄な時間は余り取りたくはないが、確かに危険な悪魔は一体でも排除すべきだ。 それでどうする」
「一番頑丈な僕が仕掛ける。 ユヅルは支援してくれ」
ヨーコは守りを固めてほしいと言うと、ため息をつかれた。
別に守られるばかりでもないのだけれどと言うが。
「攻撃の手札はなにかあるのか」
「ええ。 多少の心得はあるわ」
「分かった。 僕が仕掛けるから、支援をしてほしい」
「はいはい。 連携がうまくいくかは知らないわよ」
ともかくだ。仕掛ける。
突貫。
もう既に、わざわざ歩かなくても良くなっている。
高空を飛び続けるのはかなり難しいが、それでも地上付近を浮いて移動するのは当たり前に出来るし、短時間なら飛ぶことも出来る。戦闘時では、その力を存分に活用する。更にアオガミとの連携も、どんどん出来るようになってきていた。
こちらに気づいたマガツカ。巨大な血肉の集まりであり、多数の触手を持ったそれが、一斉に氷の錐を作り出し、投擲してくる。その全てを回避するが、正面から接近するのは不可能だ。
左右に素早くステップを踏みながら、相手の攻撃を引きつける。
おぞましい何かが飛ぶ。
それが、マガツカを直撃していた。
なんだあれ。
札のように見えたが、とんでもなくおぞましい気配を感じた。ヨーコが放ったものか。直撃した地点から、マガツカが腐食していく。
大量の鮮血が噴き出して、辺りの砂を血で染めていく。
声にならない絶叫を上げるマガツカ。
其処に突貫。
「あれは複数の悪魔が元になっているようだ。 龍穴に住み着いていた悪魔が融合してしまったものだろう」
「だとすると弱点はあまりなさそうですね」
「そうだな。 代わりに何かに特化した防御能力もなさそうだ」
頷くと、滅茶苦茶に乱射してくる氷の錐を回避しつつ、眷属を呼び出す。
ピクシーとスライム、餓鬼とマンドレイク。それらに、散開して気を引くように指示。
触手をふるって、叩き潰しに来るマガツカ。
だが。其処に突貫してきた大男が、一撃を受け止めていた。
頭に角があり、全身が赤く、虎の腰巻きをしている。
まさか、鬼か。
「行け、鬼! 時間を稼げ!」
「任せろっ! 力比べだったら、負けねえんだよ!」
触手と力比べを始める、ユヅルの鬼。頷くと、回り込む。皆が気を引いている間に、マガツカの背後に。
雷撃はまずいな。
そう考えると、火力を収束して、さっきヨーコの札が直撃した地点を攻める。
鋭い悲鳴が上がる。
触手が飛んでくるが、やたらめったらという感じで振り回しているのが分かる。これなら回避は余裕、と思った瞬間。
マガツカの中から、錐のような新しい触手が生えてきて。今までの比ではない速度で襲いかかってきた。
全力で手刀を作り、必死に受け流す。
だが、その勢いは凄まじく。砂の地面にたたきつけられていた。
一瞬意識が飛ぶ。
下が砂でなかったら、多分ひとたまりもなかった。
飛び退くと、貫こうと上から襲いかかってくる触手を回避。何度も突き刺して、殺そうとしてくる。
「煌!」
「攻撃に集中を!」
「くっ、死ぬなよ!」
今度は雷撃がマガツカに炸裂する。
更にもう一枚札が直撃したようだ。マガツカも、氷の錐を、ユヅルとヨーコに展開するが。
その全てをとっさに鬼がかばって、串刺しになって消えていく。
にっと笑いながら消えていく鬼。
煌は集中。
そして、以前別のマガツカを打ち破った八連撃……確か麁正連斬を触手にたたき込む。
頑強な触手だったが、それでも爆ぜ割れる。
影。
全身を伸ばしたマガツカが、大質量で叩き潰しに来たのだ。捕まえていたらしい女の子の悪魔……あれは人魚か。
それをぼろりと落としていた。
なら、容赦もいらないか。
迫ってくる大質量に、印をきり。
最大火力の雷撃をたたき込む。
かなりのダメージを受けていたマガツカは、それで体積の半分以上が消し飛んでいた。
悲鳴を上げながらのたうつそれに、もう一度麁正連斬……いやもう麁正でいいか。とにかくたたき込む。
かなり消耗が激しくなってきている。
だが、そのまま押し切る。
まだ冷気の錐を放とうとしてくるが、正面から火球で消し飛ばす。
そして、手刀の渾身の一撃で。
マガツカを根元から、たたき切っていた。
マガツカが倒れて龍穴が生じたので、手始めにギュスターヴに回復させて貰う。確か人間だと即死してしまうという話だったので、ここには連れてこられない。
龍穴の外にいても、マッカさえあれば回復してくれるというので。
ユヅルの鬼や、戦闘での消耗を回復できるかと聞くと。
割高になるけどなと笑いながら受けてくれた。
ギュスターヴによると、煌は見ていて面白い。だからサービスする。だがギュスターヴから見て面白くない奴には、特別扱いはしないらしい。
まあ、悪魔らしいと言うか。
もっとたちが悪い存在なら、それも確かにあり得るだろう。
無言で外に出て、とにかく交渉が成立した話をする。
要求されたマッカは既に払ってきた。
ユヅルとヨーコが見る間に回復していくのを見て、少しだけ安心した。倒れている人魚は意識がなかったが。
殺した方が良いとヨーコが言うので、少し呆れた。
人魚と言っても、倒れているこの娘は明らかに西洋系だ。
有名な人魚姫の物語などで美しく描かれる人魚だが、東洋では不吉の象徴だし、美しいとは一言も書かれていない。
肉を食べると不老不死になるという伝承があるが。
それをやった人物が地獄を見た伝説があったり、まあろくな存在でもない。
かといって西洋系の人魚が素晴らしいかというとそんなことはなく。
海で船乗りを引きずり込んで食らったり。
色々と危険な悪魔として描写されているのが実態だ。
それでも、回復はしてやる。
ピクシーの力を受けたので、そこから回復の力は使える。その分の消耗くらいだったら、龍穴が復活したこともある。
辺りの力を吸い込むだけで、どうにでもなる。
目を覚ました人魚は不安そうに周囲を見ていたが。マガツカを倒したというと、静かにこちらを見る。
翠色の髪の毛を持つ、とにかくはかなげな雰囲気の人魚だ。しゃべり方も控えめである。敵意も感じない。
「ありがとう。 助かったわ……」
「この辺りの事を教えてほしい」
「うん……」
何でもこの人魚、マーメイドは。
自分たちの群れに起きた異常をどうにかするために、アプサラスと話せないかと思って、こちらに来たそうなのだが。
途中でマガツカに捕まってしまったそうだ。
「群れの異常?」
「私たちはあまり強い悪魔ではないの。 だから、身を寄せ合って暮らしていたのだけれど。 群れの皆が、いきなりおかしくなって……なんとか逃げ延びられたから、誰かに助けを求めたいと思ったの」
「自分で解決しなさい。 ここはそういう場所の筈よ」
「ヨーコさん」
煌が苦言を呈する。
ともかく、生きるためにあがくのは当たり前だし。
何よりも、そのためにまずは情報を得るのは当然だ。
ましてや自分一人で解決できることなんてそう多くはないのだから。
静かに説明すると。
ヨーコは甘いと言うが。ただ、頭ごなしにその考えを否定するつもりもないようだった。
人魚は地面に潜行する事も出来るようで、干からびることもないらしい。
アプサラスのところを教えるが、人魚は首を横に振った。
「貴方、凄い力を感じる。 眷属にしてくれませんか」
「構わないが、いいんだな」
「ええ。 きっと貴方だったら、無碍にはしないと思うから。 アプサラスは強い力を持っているけれど、それでもあの異常は……解決できるかはわからないわ」
「分かった。 戦力が増えるのは歓迎する」
勿論契約書を作る。
人魚は契約書を読んでから、親指で印を押した。魔法によるものらしい。
水を操ることくらいしか出来ないけれどと、寂しそうにいうが。一芸があるだけで充分である。
いずれにしても、安全圏は広がったことになる。
ツバメさんを呼ぶ。
戦闘の間、一休みしていたらしい。それどころか、ミマンを何体か引き連れていた。
図太いというかなんというか。
本当に何者なんだこの人。
煌も呆れるし。それ以上に、ヨーコが警戒の目を向けていた。多分ただ者ではないと思っているのだろう。
煌も同意見だ。
「終わったみたいっすねえ」
「世界が滅んでも生きていそうね……」
「フリーライター舐めんな? ちょっとやそっとの修羅場でどうにかなるほど柔じゃねえっすよ」
「貴方のいうフリーライターは、僕の知るものとは違う気がしてならないんですが」
ユヅルが困り果てているが、それについては煌も同意見だ。
ともかく、このままでは砂漠の中で右往左往しか出来ない。
少しでも、情報を得るために。
動いていくしかないだろう。
遠くに見える東京タワー。
地形的に見て、かなり高い地点にあるようだ。
勿論東京にも坂とかはあるが、あんな高い地点に東京タワーが生えている訳がない。地形が根本的に変わるくらい、色々な異変が18年前(の可能性が高い)に起きたのだ。
言われた地点へ向かう。
眷属にした悪魔は、色々と話を聞くことが出来る。マーメイドによると、リャナンシーはかなり怖い女性らしい。
アプサラスが言っていたような。弱い悪魔を餌にしてしまうような行動は、実際に見ているそうだ。
だとすると、あまり油断は出来ないな。
そう煌は思った。
程なくして、荒々しい悪魔が群れているのが見えてきた。
恐らくはあれだ。
一本足で立っている、逞しい一つ目の怪異がいる。
それが威圧してきたが、リャナンシーが通せと言ってきた。
数体の悪魔が捕まっているようで、縛られて転がされている。
逞しい悪魔数体が舌なめずりしているのを見て、煌は眉をひそめていた。今日の食事とでもいうつもりなのだろうか。
リャナンシーに対面する。どこかから持ってきたらしい椅子に深々と腰掛けているリャナンシーは。挑発的な目つきが目立つ美貌の持ち主だ。髪の毛は長く、足下まである。ただ、相手を常に舐め腐っているのが明らかに見て取れた。
大胆に胸の前にスリットを入れた黒いドレスを着て。どこかから見つけてきたらしいブランドのヒールを履いて。
足を組んで、偉そうにふんぞり返っていた。
左右に控えている悪魔が、手もみしている。
なんというか、こっちもこっちでアレだな。そう思って呆れたが。ともかく、話を聞くことにする。
アプサラスの事を話すと。
リャナンシーは、ふっと笑う。
「あのインド神話の神々の犬の言うことなんて真に受けたわけ? ここ魔界は力が全てよ。 夢を見るためには雑魚を餌にして、それを踏み台にするのが最適解なの。 弱者を守るですって? そんなこと言いながら、来たるべき時の兵隊にするのが見え見えなのよ」
「つまり貴方は、人間の反社がいうような、弱肉強食論を口にしたいわけか」
「そうだけれど、何か?」
呆れたので、ヨーコにも説明した理屈を丁寧に話す。
左右の屈強そうだが見るからにアホな悪魔達は、ぽかんとしていたが。
リャナンシーは、丁寧に論破されて、みるみる真っ赤になっていった。
怒りで、である。
ああ、これは駄目だな。
そう判断。
ユヅルとヨーコに目配せしておく。
ちなみに危ない可能性があるので、先にツバメさんには隠れて貰っていた。
「く、口ばっかり達者な! 良いじゃない! 夢を見て何が悪いのよ!」
「その夢とは具体的になんだ」
「願いを叶える事よ!」
「それは立派なことだが、そのために他者を踏み台にするのは前提が間違っているのではないのか。 情報を互いに交換していけば、試行錯誤よりも早く終わるケースもある。 僕も実際に見聞きして知っているが、どんなスペシャリストでも、己の得意分野以外では素人同然なのが普通だ。 様々な技術が細分化している今の時代は、一口に同じ分野であっても、それを出来るとは限らない。 どれほどのベテランであってもだ。 夢を叶えるには努力が必要なのは絶対だが、その努力はあくまで成功のための筋道であって、方法は一つではないし、尊いものでも醜いものでもない」
黙れ、と立ち上がったリャナンシー。
反論できないのか。
呆れた。
これではいずれアプサラスに敗れ去っていただろう。
それに、組織的に弱い存在を狩って餌にするような真似は許容できない。
たとえば肉食獣が草食獣を狩るのなら話は別だが。
話を聞く限り、悪魔は強大になる以外の理由で、別に他の悪魔なんて食べなくてもいいし。
いっそのこと龍穴に適当に張り付いているだけで、力を伸ばすことが出来る。
他の可能性を摘んでまで、自分の夢を叶えたいというのは流石に傲慢だ。
これらを説明すると、ついにリャナンシーはキレた。
美しいドレスも何も完全に無意味だ。嘆息した煌に、辺りから一斉に悪魔が襲いかかってきた。
リャナンシーの敵だから殺す。
そうとしか考えていない連中が、今までどれだけの可能性を摘んだのか。そう思うと、煌も容赦はしない。怒らない理由は失せ果てていた。
※リャナンシー
欧州の妖精で、恋をした相手を死なせてしまうと言う非常に悲惨な運命を背負っている存在です。
メガテンシリーズでも常連で、かなり扱いは良い方ですが。Vではちょっと株を落とした感があります。
まああくまでリャナンシーというのは種族ですので、種族の中にはこういうのもいる、くらいの話ですね。