真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
至聖所の攻略開始です。
原作でのダンジョン名は至聖所シャカン。これはあのシェキナーとほぼ同じ意味です。
神が神殿にいる状態という意味ですね。
都庁を勝手に変な施設に改造してくれたもんですまったく……
序、神殿は箱
至聖所の内部に入る。やはり全部金になっている。
先に都庁の内部構造は見てきているが、似ても似つかない構造だ。それどころか、一本道になっている。
これは。
恐らくだが、迎撃の備えだ。
聖地などといって。神殿などといって。
此処に誰かが攻め込むことを、最初から想定していたのだろう。
「俺が前衛で削るよ。 皆温存してくれ」
「イチロウ。 イチロウは今は役に立てている。 交代しながら戦力を温存し、進んだ方が効率的だ」
「そ、そうか……」
ユヅルがそう言うと。
イチロウはちょっと恥ずかしそうにした。
いずれにしても進むしかない。
天使達はほとんど出払っていて、入り込まれたらほぼどうにもならなかっただろう事は一目で分かる。
本来だったらうんざりするくらいの縦深陣地を作って、相手を食い止めることが出来ただろうに。
それに罠もある可能性が高い。
「アマノザコ」
「どしたの?」
「風を前の方にやって、違和感があったらすぐに知らせてくれ。 何かしらの罠がある可能性がある」
「あ、そっか。 わかった、まかせてね、ね!」
アマノザコが風を操作して、前の方を調べる。
またフィンが親指を舐めてから、ルーンを組んで、魔法を展開。トラップの調査を始めてくれていた。
「この辺りは平気だ。 それに……」
「何か分かりましたか」
「ああ。 既にマンセマットの麾下が入り込んで、あちこちで戦闘になっているようだ。 アブディエルの部下は押されている。 それも、かなりだ」
「急ぎましょう。 此処を制圧されると面倒です」
タオが言う。
まあ、その通りだ。
しばらく進むと、階段に出る。階段の上で激しい戦いが起きている。
完全に外から見て、空間が歪んだ作りだ。
この辺は東京駅を改造してアスレチック会場にしてしまったアリオクと、発想があまり変わらないかも知れない。
「で、どちらに加勢するのかしら?」
「黒い天使達は排除する。 アブディエルの麾下が襲ってくるかも知れないから、皆気をつけてほしい」
「よし、やるか……!」
最初に黒い天使達と交戦した時、その強さに愕然とさせられた。
だが戦い続けてきて、今ではそれほど苦戦することもなくなっている。
階段は、これは利便性もなにもあったものじゃない。
羽が生えていることが前提のつくりだ。
マーメイドがアナーヒターとともに水を操作して、階段の間に水でクッションを作る。そして、それを使って、皆が階段を上がりやすいようにする。
前から飛んできた矢。
それも一つや二つではない。
それをフィンが全てたたき落とす。
「急げ!」
矢を放っているのは、黒い天使達だ。高所の有利を取られている。まずはあそこまで行かないとまずい。
急ぐ。
ヨーコが仕方がないと判断したのか、例の札をばらまく。
神行法だ。
皆の速度が上がる。凄まじい勢いで階段を駆け抜けてくるこちらを見て、黒い天使達は動揺したのか、動きを止め。
其処に、数を減らしていたアブディエル麾下の天使達が反撃に出て、数体の黒い天使を貫く。
真っ先に突入したのは酒呑童子と義経公だ。
「おらあっ!」
酒呑童子が、振り返った黒い天使の顔面を鉄の金棒でフルスイング。吹っ飛んだ黒い天使が床でバウンドし、壁にぶつかって砕け散った。
黒い天使をそのまま足場にして、義経公が名高い八艘跳びを披露する。
数体の黒い天使がそのままたたき落とされる。
混乱しながらも矢を放とうとする黒い天使に、飛びかかったのは鵺だ。イチロウとミヤズがたくさん契約した鵺の三割ほどを、ユヅルに譲渡した。ユヅルが放った鵺は、レッサーパンダから翼のある猛獣と化していた。
トラツグミの要素を強くしたのかも知れない。
体が縞模様の不思議な鳥だが。
それに急襲されて、黒い天使達が混乱する中。
フィンが、練り上げた火炎魔法をたたき込む。
まとめてなぎ払われた黒い天使達が吹っ飛ばされ、数を減らす。
更に煌が飛び込んで、右左に斬り伏せ。
森可成が槍を振るい。
イチロウが霊剣で勇敢に一体を叩き斬った。
階段を上がりきった時点で、マーメイドは魔法を切り替え、雨を降らせ始める。雨に翼が濡れて、黒い天使達が露骨に嫌そうにする。
ただの雨ならともかく、マーメイドが展開している魔法の雨だ。
うっとうしそうにマーメイドを見た黒い天使達が、一斉に襲いかかってくるが。それを迎え撃ったのは、イチロウ、ユヅル、ミヤズの手持ち達。更には、タオによる面制圧の光の力。
黒い天使達は、悲鳴を上げながら消えていく。
光の力は効果てきめんだ。
形勢は完全に逆転。
ほどなく、掃討戦に移り。最後の一体を酒呑童子が金棒で頭から叩き潰して終わり。
生き残ったアブディエル麾下は、ほとんどいなかった。
ミヤズが手当てを開始するが、拒否しようとする天使もいた。だが、タオが一喝する。
「貴方達は天使としてのあり方を見失っています! 今はとにかく手傷を癒やして、アブディエルの元に戻りなさい!」
「そ、その凄まじい光の力は……」
「わ、分かった。 伝令をアブディエル様に出せ。 他の者は此処を死守。 これ以上侵入してくる背教者を許すな」
「背教者ねえ」
ヨーコが皮肉交じりに言う。
ともかく手当を終えて、先に。これはかなり厳しい戦いになる。内部に龍穴があればいいのだが。
やはりずっと一本道が続いている。本当に迎撃を縦深陣地でする事だけを想定しているのだ。
しかも天井も高く壁にも幅がある。
天使にとって有利な空中戦を想定した作りだ。
逆に言うと。
此処に何かが攻めてくるのを、小心なまでに恐れていた事が一目で分かってしまう。
都庁を勝手に改造してこんな場所にしたのだ。
誰がやったのかは分からないが、いずれにしても後ろめたさはあったのかもしれない。
壁に穴が開いていて、その辺りに多数の悪魔がたむろしていた。
明らかに目つきがおかしい。
「こ、ころせ……」
「人間、ころせ……」
「天使、ころせ……」
「……排除するしかなさそうだな」
さっきの悪魔の群れは、此処から侵入してきたのだろう。煌は皆に促すと、一斉に攻めかかる。
悪魔の群れも、牙をむいて迎撃してくる。雑魚ばかりじゃない。見上げるような巨人もいたし、翼ある堕天使らしいのもいる。
マンセマットには悪魔を操ることを神に許されているという伝承がある。
その能力は、あれだけ堕落した今でも健在と言うことだ。
東京駅で従えた金色の鬼、金鬼が相手の巨人と組み合う。これは重量級の手持ちがいなかったミヤズが、数体壁として従えた個体だ。
あの状況では、そうやって生き延びた金鬼だが。
なんでも後で話を聞いたところに寄ると、チェルノボグにスカウトされてあそこにいたらしい。
そうか、としか言えない。
飛びかかってくる悪魔を斬り伏せる。まだまだ壁の穴から悪魔が入り込んできているが。煌の麾下のソロネが提案してくる。
「この壁ですが、干渉が可能です。 私たちが壁を塞ぎます」
「分かった。 試してくれ」
「はい。 このような場所を勝手に聖地にするなど、既に御許を離れたとは身とは言え、神が望むとはとても思えませぬ」
「そうだな……」
実際にはそうかなと疑念を呈したいが。
いずれにしても、今はソロネ達に任せる。
獅子のような悪魔を、素早い動きでハヤタロウが翻弄。完全に脇腹を曝したところに、ユヅルが日本刀で一閃。
両断された獅子の悪魔が消えていく。
ユヅルもイチロウに負けじと鍛錬をしていたようで、日本刀を振るって悪魔をばったばったと斬り倒している。
タオも光の力を展開して悪魔をなぎ払い。
更にはアリスが楽しそうに歩きながら、目についた悪魔の耳元に何かささやく。それで悪魔が溶けてしまう。
恐ろしい力だな。
煌はそう思いつつ、ソロネを援護。
「よし、行けます! 壁から皆、離れて!」
「危ないよ! 下がって!」
「うおっ!」
イチロウを、アールマティが引っ張る。
床と壁が動き出して、がしゃんがしゃんと凄い音を立てる。そして、壁に開いた穴が、塞がっていった。
それにもろに巻き込まれた悪魔達が、まとめて押しつぶされる。
後は、残敵を片付けるだけだ。
そして、壁が動いた後は、無骨なコンクリが露出していた。都庁も戦闘で無事では済まなかったのだろう。
メッキが文字通り剥がれたのだ。
ともかく供給源も絶たれた悪魔を殲滅する。一通り片付いて、一旦休憩を入れる。
先に伝令に出ていた猫又が戻ってきた。
「龍穴発見だにゃあ!」
「ありがたい。 罠の類はなかったな」
「大丈夫だけど……なんだか封印されているみたいだったにゃ」
「分かった。 それはなんとかする」
ミヤズが、まずは手当をしますといい。
声に圧があったので、ユヅルも皆もそれに従う。まあ、ミヤズは既にスペシャリストだ。手傷は、誰も浅い。
ただ、眷属も仲魔も消耗はある。
この戦闘までの間に時間がなかった、ということもあって、補充は充分ではないのだ。
手当終わり。
進軍再開。
猫又の案内で出向いた先には確かに龍穴があったが、光の鎖みたいなので封じられている。
ヨーコが闇の力でそれをまとめて粉砕すると、今まで封じられていた龍穴から力が奔流となって噴出。
周囲の金メッキが吹っ飛ぶ。
本当に金メッキとしか言えないほどのもろさだ。思わず無言になってしまう。
「予想よりも脆いわね。 この悪趣味な神殿自体が、相当に弱体化しているようだわ」
「きんきらにして何が楽しいんだろう。 俺にもメッキにしか見えない」
「金は要所に使ってこそ栄えるのだがな……」
皆ぼやく。
ともかく龍穴を用いて、回復と、越水長官への報告を済ませる。越水長官も、総力を挙げて情報を集めてくれているようだ。
やはりベテル本部の旗色が悪い事は西側の財閥も既に把握しているようで、離脱の動きさえ見せているようだ。
それが既に見え始めていて。
残留している天使達は、どうしていいか分からず右往左往しているようだとも。
これはもう。アブディエルには収拾がつけられないな。
そう越水長官はいい気味だと顔に書きながら言っていたようだ。
戻ってきたイチロウが塞いでいる。
「アブディエルにやはり気持ちが動くのか」
「ああ、なんだかあの人、鉄の女とか言われてるみたいだけどよ。 なんだかがんじがらめで、根は俺と変わらないんじゃないかと思ってさ」
「イチロウ先輩はそう相手を解釈できるだけ立派です。 でも」
「分かってる。 今は共闘しているだけ。 あの人、縄印の生徒を隙あれば始末するつもりだったんだろ。 それが信じる神のためだと言い聞かせていたとしても、今の俺には許せないよ」
それでいい。
一神教の教義はゾロアスター教から受け継いだ善悪二元論から発展した思想である唯一絶対の神と、それに帰属する絶対の正義を掲げているが。現実問題として絶対正義と絶対悪などこの世には存在しない。
強いていうなら、絶対正義があるとしたら、見返りなしに飢えている人に施しをする事くらいだろうか。
それですら、悪用を考える存在がいるくらいなのだ。
この世に都合が良い絶対正義などありはしないのだ。それをイチロウが理解できているだけで、充分すぎるだろう。
回復を済ませたので、先に。
また階段だ。
しかも、嫌な気配がする。ユヅルが先に行かせていた天狗の斥候が戻らない。後でマッカを費やして復活させるしかないだろう。ちなみに死んだ場合は分かるようになっている。既に死んでいる。
階段をまたマーメイドが登りやすくして行く。
途中でアマノザコがまったと叫んだ。
「なんかやな風吹いてる! このちょっと先!」
「警戒!」
こちらが警戒したと判断したのだろう。壁をぶち破って、それが姿を見せていた。
巨大な虫だ。
体長は二十メートルはある。この壁も、その虫が適当に組み合わせて、塞がっているように見せていたようだ。
此処で待ち伏せて、途中を行く存在を狙っていたのだ。そして天狗達は此奴に。
階段の途中だ。煌が殿軍になって、一気に駆け下りるように指示。上を取りたいが、階段で戦うのは避けたい。まずは階段を降りきって平地でやり合うべきだ。
壁を吹っ飛ばして入り込んできた巨大虫……なんだろう。甲虫だが、ちょっと日本で見かける品種ではない。それが、凄まじい勢いで駆け下りてくる。
皆が先に駆け下りて、階段の下で展開。転びそうになったミヤズを、さっとクルースニクが受け止めていた。
フィンが魔法を連発して、相手の顔にぶつけて、多少速度を遅らせてくれる。煌も雷撃を放ちながら、下がる。
着地。
階段に展開していた緩和用の水を、マーメイドが一気に変化させ。虫を包み込む。虫は暴れながらも突貫してくるが。大獄丸、霜の巨人、金鬼らの重量級が、その突撃をスクラムを組んで受け止める。
壁の穴から、黒い天使が侵入してくる。
この様子だと、簡単に先には進めそうにない。それに、元が都庁だとしても、これだけ空間をいじっているとなると、どれくらいの広さがあるのかちょっと今の煌の力では分からない。
「かった……!」
アルテミスが虫に拳をたたき込んではじき返される。
虫の甲殻として使われるキチン質は、小型の昆虫のものでも明確に堅いと感じるほどの強さだ。
同等の大きさの生物の攻撃では、まず通ることはない。
悪魔の場合は、その強さを更に悪魔的に表現しているだろうから、余計に厳しいのはあるだろう。
だが、実は昆虫には決定的な弱点がある。
「よし。 マーメイド、僕が指定したように水を変質させてくれるか」
「分かりましたあるじさま。 やってみます」
マーメイドが詠唱開始。
煌は跳躍すると、迫る黒い天使を迎撃に掛かる。立て続けに斬り伏せ、更にたたき落とす。墜ちてきた黒い天使を、酒呑童子がホームラン。吹っ飛ばされた黒い天使が、他の黒い天使とビリヤードの球みたいに弾きあっていた。
マーメイドを狙ってくる悪魔を、ミヤズとイチロウが連携して排除。ユヅルは自身が最前線に出て、黒い天使や目立つ悪魔を、仲魔と連携して次々に倒す。
煌は浮遊状態を維持しつつ、黒い天使をとにかく片っ端から始末する。
ずっと浮遊できる訳ではないのだが、それでもかなり浮遊は楽になってきた。ただ、体力を温存しなければならないのも事実としてある。
多数飛んでくるのは犬神か。
呪いの塊だ。黒い天使とは相性も良いのかも知れない。マンセマットが操るには丁度良いだろう。
タオがすっと手をかざすと、光が全てを飲み込む。
数百はいた犬神が、まとめて消し飛んでいた。
凄まじいな。
大きな音。
巨大な虫が押し込んできている。霜の巨人が片膝を突く。更に、大顎でかみ砕こうとしてくるが。
使うか。
呼び出す。
「他化自在天!」
「おう! 待ちかねたぞ!」
そう。第六天魔王他化自在天。
以前媒体をよこしてくれた。故に、此処で使う。
吉祥天は、光の力であれば既に上がいると言っていた。タオやアールマティの事だ。だったら、仏教系天部の系譜をたどって、より強い力を宿したいと。
吉祥天はもともとインド神話のヴィシュヌの妻ラクシュミが仏教に取り込まれたものだ。
このラクシュミの子が愛の神カーマであるという節もある。カーマは後にマーラへと転化している。
これらの縁を伝い。
想定される最強の神格を作り出した。
戦車に乗り、四つ腕を組んでいる他化自在天は、高笑いしながら、縦横無尽に黒い天使達を蹴散らす。
その凄まじい強さに、黒い天使達が怯む。
感情なんてない筈なのに。それでも怯むほどに、威圧が凄まじいと言うことだ、
更に隙を突いてミヤズが支援魔法を展開。押し込んできていた虫を、拮抗にまで持ち込む。
マーメイドが詠唱を完了。
大量の水が、虫を包み込んだ。
ただの水じゃない。
どれだけ毒物に耐性がある虫でも、絶対にあらがえないものがある。それは、呼吸に利用している油を分解されること。
ゴキブリなどは顕著で、油を分解するもの……食器用洗剤などの界面活性剤をかけると、量にもよるがあっというまに窒息死する。
甲虫も同じ。
界面活性剤のふんだんに入った水を受けた巨大虫は、しばし大暴れしていたが。高笑いしながら他化自在天も押さえ込みに加わり。更にアリスが斥力の魔法だろうか。ともかく魔法で加勢。
しばらくもがいていた巨大虫は、やがてひっくり返って、動かなくなった。
「天使部隊!」
「はっ!」
ソロネ達が、壁を修復し始める。辺りのきんきらの壁床が剥がれおちていき、むき出しのコンクリートが姿を見せる。
それと同時に、ゆがめられていた空間が戻っていくようだ。
ともかくこれでいい。
残敵を掃討しつつ、天使達を支援。
程なく、壁は埋まっていた。
既にアブディエル麾下の天使達は数を決定的に減らしており、マンセマットの麾下の黒い天使が圧倒的多数になっています。
そんな状態では、アブディエル麾下の天使達も、煌達と戦う気にはなれないのですね。
両者と仮に戦闘になったとしても、結果はほとんど変わらなかったでしょう。