真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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原作ではなかったカードです。

あれだけやりたい放題していたマンセマットですし、アブディエルがお仕置きをしても良さそうなものなんですが、ついに実現しませんでしたね。

恐らく原作においても、既にベテル本部は内部分裂が激しく、アブディエルに真面目に従っている天使はあまり多くなかったのでしょうね。






1、マンセマット対アブディエル

アブディエルは見た。

 

口が耳まで裂け。

 

もはや天使とは思えない鱗と羽毛を全身にまとい。目をらんらんと輝かせているそれが、襲いかかってくる。

 

天使達が、まとめてなぎ払われ。

 

アブディエルはかろうじてそれを受け止めたが、吹っ飛ばされていた。

 

「なんだあれは……」

 

「備えろ!」

 

「いや、おまえ達は背信者どもを防げ!」

 

凄まじい殺気。

 

再び襲いかかってくるそれには、まさか。

 

鋭い爪が、何度もアブディエルに迫る。剣ではじき返しながら、叫ぶ。

 

「まさか貴様、マンセマットか!」

 

「まさかもなにも、見て分かりませんか! 貴様ごときに手こずるとは、私も墜ちたものですよ!」

 

「……っ」

 

周囲の天使達が明らかに動揺している。

 

それはそうだろう。

 

アブディエルには分かった。

 

マンセマットは堕天している。明らかに。

 

そもそも、本来今までの行動を考えてみれば、とっくに堕天していてもおかしくない。天に戴く主がいなくなったから、アブディエルは天使の姿のままでいられたのだ。

 

だが、それにも限度がある。

 

汚れ役の天使としては優秀。

 

ダーティーワーカーとしては一流の存在。

 

そうアブディエルは評価していた。

 

だが、野心家で危険な存在だとも思っていた。

 

しかしながら、天に戴く主への忠誠は同じである。そうともアブディエルは思っていた。少なくとも、今の瞬間までは。

 

叫ぶとマンセマットが、黒い球体を多数、同時に出現させる。それが炸裂して、黒も白も関係なく、天使を大量に巻き込む。

 

高笑いしているマンセマットだった怪物に、斬りかかる。

 

腕で受け止めてみせるマンセマット。

 

鱗がガチガチとおぞましい音を立てて動いている。これは、いずれ人型すら維持できなくなるのではあるまいか。

 

「弱い弱い! あなたごときが神の家を意味するベテルを指揮するなど、どだい無理だったのですよ! さっさと私に主導権を渡しておけば良かったものを!」

 

「世迷い言を! 貴様、今の自分の姿が分かっているのか!?」

 

「姿などどうでもいい! 私は創世を為し、私と盟友達が貶められない世界を作る! そのためには、まずはこの地を抑え、創世の女神の復活をさせる必要がありますのでね! ついでに貴様も始末しておくとしましょうか!」

 

「馬鹿げている……」

 

アブディエルだって分かっている。

 

自分が力不足なことは、嫌と言うほど思い知らされている。それでも、必死に神の復権を願って戦ってきた。

 

だがマンセマットは。これは後から来て、成果だけを奪い取ろうとしている。

 

マンセマットが天で冷遇されていたことは、アブディエルも知っている。それについては、今だからこそ分かる。

 

神は決して、公平ではなかった。

 

例えば四大は寵愛を受けていたが。特にガブリエルは、神の愛人ではないのかという噂さえ流れたことがある。

 

唯一絶対の存在である事を担保するために、配偶女神すら取り込んでしまった神が、である。

 

考えてみれば、神には明らかに人格があり、人事にも依怙贔屓が見られた。

 

それが人間の影響を受けていたとしても。

 

それによる被害を受けた存在は実在していた。

 

戦慄する。

 

マンセマットのこの姿は、そうやって冷遇されてきた天使達の怒りの代弁。他の神々をことごとくデーモンと貶めてきた一神教は、ついに内部の天使までをも貶めることがあった。

 

人間による天使信仰弾圧がそうだが。

 

マンセマットは、それらの行為の結実ではないのか。

 

そうとさえ、アブディエルには思えて、背筋が薄ら寒くなる。

 

凄まじい速度で飛び交いながら、マンセマットが襲ってくる。もはや敵も味方も関係ない。

 

また突貫してきた。

 

爪での一撃を、剣で受け止めるが。

 

鎧を何カ所も抉られる。

 

剣技で負けているつもりはない。ルシファー率いる悪魔の群れに真っ正面から突っ込んで、生きて帰ったほどの武勇が残されているアブディエルだ。この程度の傷など、幾らでも受けてきた。

 

爪には強い呪いが込められていたようだが。

 

その呪いも、体内に蓄えこんだ光の力で押し戻す。

 

マンセマットが、からからと笑う。

 

「今抉ってみて理解できましたよ! アブディエル、貴方は私の同類となりつつあるようですね!」

 

「なんだと……」

 

「既に貴様は神を信じられずにいる! 今まで蓄えていた盲信が、揺らぎ始めているのではありませんか?」

 

「……っ」

 

その通りだ。

 

昔四大のラファエルに言われたことがある。半笑いで、だ。

 

おまえはもう少し腹芸を身につけろ。

 

天の主たる神も、相手の行動次第で態度を変える。それは人間と同じ事だ。御不興を買いたくなければ、上手な取り入り方くらいは覚えるように、と。

 

思えば、神が寵愛していた天使達は、人間の人気が高い存在ばかりではなかった。

 

神が明らかに個人的にすいていた存在もまた多かったのだ。

 

また間合いを詰めてきたマンセマットの一撃を、必死に受け止める。だが、続けて繰り出された荒々しい蹴りをもろに食らって、地面にたたきつけられる。更に必死に跳ね飛んで回避するが。

 

一瞬でも遅れていたら、踏み砕かれていた。

 

辺りの地面が派手に吹っ飛ぶ。

 

マンセマットはかなり力を増している。

 

それは内偵で分かっていたが。

 

これほどまでとは。

 

凄まじい痛みが走った。後ろから刺されたのだ。

 

多数のパワーが、いや黒い天使と化したパワーが、アブディエルを背中から刺していた。槍が引き抜かれる。

 

ぐっと、うめき声が漏れていた。

 

マガツヒが漏れていく。

 

部下達がパワーを散らしたが、これはまずい。更に力が落ちていく。

 

「アハハハハハ! ハハハハハハ! 自慢の精鋭は既にほとんど残っていませんよ! さあなぶり者にしてあげましょうか!」

 

「……っ」

 

「アブディエルどの! 右に!」

 

「?」

 

メルキセデクの声。

 

メルキセデクはずっとアブディエルに尽くしてくれていた。だから、反射的に言われたとおりに動く。

 

次の瞬間。

 

とんでもない巨大な蛇が、その場に乱入。

 

密集していた黒い天使達をひとのみに。そして、地面に潜った。

 

あいつは。

 

新宿区の砂漠地帯にいるという、正体不明の。

 

マンセマットが大慌てで逃げる。そのいた空間を、巨大蛇がばくんと一口。巻き込まれた黒い天使だけではない。

 

偉そうに構えていた。マンセマットについた大天使も一体、巻き込まれて蛇に食べられてしまった。

 

「お、おのれ、卑しい畜生めが!」

 

「貴様こそ畜生だ! 見ろ、今の貴様の姿を!」

 

「どのような姿になろうとも、私は……っ!?」

 

アブディエルは、光の力を使って、鏡を作り出す。

 

巨大な鏡には、マンセマットの今のおぞましい姿が映し出されていた。

 

それを見て、完全に停止するマンセマット。

 

そして、凄まじい絶叫を挙げていた。

 

「ば、馬鹿な! これが新しい世界を創世する私の、今の姿だというのか! このような姿、あり得ぬ事だ!」

 

「貴様の腐りきった性根にふさわしい姿だ!」

 

「ち、違う! このような、このような姿など、あり得ぬ! 私は私を冷遇し続けた神に代わって、天に昇るのだ! 至高天の座に着くのだ! そのための準備だって、してきたというのに……!」

 

また巨大蛇が来る。

 

悲鳴を上げて逃げ惑い始める悪魔達。

 

マンセマットが完全に集中を切らし、制御が切れたものがいる。

 

元々マンセマットの麾下の方が遙かに多い。

 

そうなれば。巨大蛇が餌として狙うのは、必然的に黒い天使の群れとなる。あれが何者なのかはよく分かっていないが。

 

いずれにしても、またしても巨大な口がばくんと閉じられて。

 

黒い天使や、マンセマット麾下の悪魔が、大量にその体内に消えた。

 

巨大蛇が、砂漠の中で体をうねらせながら、次の攻撃を狙ってきている。マンセマットは頭を抱えていたが。

 

やがて、憎しみを込めてアブディエルを見た。

 

「ま、まあ良いでしょう! 分かっています! 私は既に天使とすら呼べない存在であるのかもしれない! だから天の御使いたる輪も、翼も、ともに捨ててしまえば良いだけの事です!」

 

「その割には未練たらたらのようだな」

 

「黙れっ! もうどうでもいい! 一斉に懸かりなさい! アブディエルを仕留めるのです!」

 

混乱しながらも、黒い天使達が陣列を整えようとする。

 

だが、その時。

 

至聖所から膨大な光が溢れ、それが黒い天使達を直撃していた。既に天使と呼ぶのも怪しくなっていた黒い天使達は。それを受けて、文字通り消し飛んでしまっていた。

 

見える。

 

至聖所にうがたれた穴から、あの日本支部の聖女が、光の力を放ったのだ。あれはもう、「聖女」の領域を越えている。

 

今の一撃で、千体以上は黒い天使が巻き込まれた。

 

恐れを知らないはずの黒い天使達さえ、算を乱し始める。其処を、横殴りに巨大蛇が襲う。

 

ぎりぎりと牙を噛むマンセマットは、叫んでいた。

 

「やむを得ん! 総員、至聖所に! アブディエルは後だ! 今はとにかく、創世の女神の封印を完全に解除する!」

 

「……っ」

 

生き残った黒い天使達が、一斉に至聖所に入り込んでいく。ただし、地上に残された飛べないマンセマットに洗脳されていた悪魔達は、全部見殺しである。

 

悲痛な悲鳴を挙げて逃げ回る悪魔達を、横殴りに蛇がまとめて食べる。

 

全方位に逃げ散ったが、巨大蛇は大きさが大きさだ。まとめてばくんと一口。そのたびに、大量の悪魔が消えていった。

 

「アブディエルどの!」

 

「わ、分かっている……!」

 

メルキセデクに肩を借りると、撤退と叫ぶ。

 

麾下の天使達は、既に昔日の規模が見る影もないほど討ち減らされていたが、それでも必死に陣形を整える。

 

巨大蛇が、地上で逃げ回っている悪魔に夢中になっている今が好機だ。

 

「撤退! それぞれ退いて、ベテル本部に帰還せよ!」

 

「し、しかし至聖所は!」

 

「今は日本支部に任せよ! 急げ!」

 

天使達が逃げ散る。その一部は、無造作に首を伸ばした巨大蛇の餌食になったが。地上の悪魔達と同じように、皆別方向に逃れた、ということもある。

 

どうにか、相応の数が、逃げ出すことに成功したようだった。

 

アブディエルも必死に距離を取る。

 

メルキセデクが言う。

 

「どうにか四大を元に戻す道具は完成しました。 しかしこれでは……」

 

「そうだな。 手遅れだ」

 

「アブディエルどの!」

 

「今は撤退だ。 残った戦力を再編成する。 聖女を有する日本支部はまだいい。 マンセマットが創世などしてみろ。 全てが終わる……!」

 

それに、だ。

 

そもそも神の下を離れた四大は、既に天使ではなくなっている。

 

元に戻すには倒すしかないが、それは今の戦力では不可能だ。

 

ぎりぎりと、アブディエルは歯を噛む。

 

傷はどうでもいい。

 

全身に受けた傷は、戦士としての勲章だ。痛みも傷跡もどうでもいい。問題はそんなことではない。

 

この状況下で。

 

アブディエルは、日本支部にどうにかしてもらうしかないと、考えてしまっている。

 

ぱきりと、何か砕ける音がした。

 

神に対する狂信だろうか。

 

今、アブディエルは。今までの自分がただの狂信者に過ぎなかったことを、どうしてか自然に理解できていた。

 

乱入してきた化け物がいなくても、この戦いは負けだ。むしろあの化け物が乱入してきたことで、味方の被害が減った。

 

ベテル本部に残る大天使は、もはやアブディエルとメルキセデクだけ。ほぼ全てがマンセマットについた。残りは離脱して、それぞれ好き勝手に散っていった。

 

もう。事実上。

 

出来る事はなかった。

 

 

 

かなり都庁の高い方まで登ってきた。

 

多数の悪魔と黒い天使を撃退しながら、巨大すぎる階段を上がっていく。皆の息が切れていないか心配になったが。

 

イチロウもミヤズも平気そう。

 

タオは既に重力のくびきから解き放たれているようで、常時光を纏い、足は床から少し離れていた。

 

「タオさん、その……」

 

「ええ。 もう人間ではなくなりつつあるみたい。 少なくとも此処にある封印というのは、既に用を為さなくなっているみたいだね」

 

「その、いいのか」

 

「構わない。 なんだかとても楽な気持ちなんだ」

 

タオはいう。

 

意思がなくなったわけではない。

 

人間だった頃の、快活なタオはもういないようだが。それでも、タオが人格を失ったわけでもなさそうだ。

 

「人間をやめることは、もう何年か前から分かっていたんだ。 最初は凄く怖かった。 でもね、シャカイナグローリーが消えようとしている今、それに巻き込まれる人たちがどうなるかを思うと、その方がもっと怖い。 私にしか出来ない。 だからやるしかないんだよ」

 

「……」

 

「イチロウ殿。 覚悟を決めたものは尊重すべきだ」

 

「そうだな。 俺の時代にも、人間を辞めるものはたくさんいた。 悩み苦しむものも。 だが、覚悟を決めてそうなったものは、尊重しなければならないだろう」

 

森可成とフィンがそれぞれ諭す。

 

イチロウは、頷いていた。

 

また悪魔か。

 

かなり消耗が激しい。それにこの辺りでは、もう守備についていたらしい天使はほとんど見かけない。

 

既に全滅してしまった、と見て良いだろう。

 

この先はマンセマットの麾下に制圧されてしまっていると言うことだ。

 

「私が片付ける。 皆、力を温存してくれ」

 

「頼みます」

 

「おう」

 

フィンが前に出ると、雑多な悪魔を瞬く間に斬り伏せてしまう。

 

相変わらず両刃剣の扱いの凄まじい事に舌を巻く。最初に刃を交えた時、よく一瞬で斬り伏せられなかったものだと思ってしまう。

 

すぐに処理完了。

 

ほどなく、広い空間に出ていた。

 

ユヅルが警告してくる。

 

「今までと明らかに異質な空間だ。 皆、気をつけろ」

 

「ただ、悪趣味なきんきらは代わらないんだな」

 

「目が痛くなりそうですね……」

 

イチロウとミヤズがぼやく。

 

煌も周囲を見回すが、非常に広い空間だ。先に行く通路も見当たらない。

 

そうなると、此処が最深部か。

 

「到達しましたか。 強くなっているのは分かっているつもりでしたが」

 

「!」

 

姿を見せる何者か。

 

この空間の四方八方から、大量の黒い天使と悪魔が入り込んでくる。悪魔はどれも飛ぶことが出来る者ばかりだ。

 

最後に龍穴を見つけたのがかなり前。

 

消耗が大きい。

 

何者かは、口が耳まで裂け、全身が細く指先には黒く鋭い爪を持ち、黒い翼と全身に黒い羽毛と鱗。凄まじい眼光を放ち、口からは乱ぐいの牙が見えていた。

 

「貴方は?」

 

「巫山戯るなっ!」

 

「いや、本当に誰だ……いやまさか。 マンセマットか」

 

「ふ、ふふ、ふふふふふ。 どこまでも舐めてくれますね。 そうですよ。 私の姿が変わったことが、それほどおかしかったですかな?」

 

両手を広げてみせるマンセマットだが。

 

姿だけじゃない。

 

纏っている力が、比べものにならないほどまがまがしく、不安定になっている。それだけではない。

 

声も違う。

 

前はそれなりに制御された良く通る声だったのに、今は。

 

「あー。 堕天しちゃってるねあれ」

 

アリスが手をかざして言う。

 

天使は堕天すると力が上がるとか、別にそういうことはない。そういうことはないのだが。

 

これほどに墜ちるのか。

 

あの姿、もはや天使ではなく、完全に悪魔だ。

 

堕天使の中には誇り高い者もいるし、話が分かる奴もいる。だが、あれは。本当に堕落した結果、あのような姿になったのだと分かる。

 

神に背いたのでもなく、愛慕によるものでもない。

 

ただ、精神的に極限まで堕落した。

 

その結末が、あの姿だとすると、あまりにも無惨だ。

 

「此処を抑えた以上貴方に用はありません。 帰るなら見逃しますが?」

 

「此処に封じられているのはどうやら創世の女神の力で間違いなさそうだが」

 

「ええ、その通り。 そこにいる聖女達が、更に一段階上に行くために必要な力、だったのですがね」

 

「見た感じ、もう封印は機能していないようだな」

 

無言で黙り込むマンセマット。

 

狡猾な立ち回りを得意としているように見えたが。頭まで悪くなったのか。その通りと認めているようなものだが。

 

完全に空っぽだ、この空間は。

 

或いは後生大事に封印を守っていたのかも知れない。だが今や、それは完全に意味がなくなった。

 

戦略的にもなんら意味がない土地を巡って、ベテル本部は仲間割れをして。最後の実働部隊をほぼ全滅させたことになる。

 

この場所を抑えても、もはやベテルの瓦解はとめられないだろうし。

 

そもそもとして、此処を守ろうが守るまいが、創世の女神の覚醒も止まる事はなかっただろう。

 

「言葉を返そう。 アティルト界に去るんだな。 最後の機会を与える」

 

「くっくっく、私に機会を与える、だと……?」

 

「あんたはただの醜い化け物じゃねえかよ! 鏡、みたんだろその反応!」

 

不意にイチロウが言う。

 

それを聞いて、完全に顔を引きつらせるマンセマット。

 

イチロウは更に言う。

 

「俺、前は弱い者が救われる世界のためだったら、色々悪い事も仕方ないって思ってたんだ。 だけど、煌と一緒に戦って考えが変わった! 今のあんたを見て良く理解できたし確信したよ。 理想を掲げて本当に実行する奴もいる。 だけど、実際には理想を掲げてその実きれい事の裏でなんでもかんでも奪おうって奴の方が多いってな! 人間にはそういうのがうじゃうじゃいる! 人権だの自由だの口にして、裏では人権や自由を誰よりも踏みにじるゲスがな! 今のあんた、そいつらと同じだ! それどころか、どんな悪魔よりも醜いんじゃねえか!」

 

「同感です。 私も貴方には流石に何の同情も湧かないです。 よく偽善って言いますけれど、貴方のがまさにそれです。 しかも貴方は何かを与えて誰かを救う行動を一つもしていない。 ただ自分が何かをほしいから、他を踏みにじっているだけじゃないですか」

 

ミヤズもたたみかける。

 

顔を引きつらせるマンセマットに、更に追い打ちが飛ぶ。

 

「僕は多様性は重要だと思うから、人は世界にあることに何かの許可を得る必要はないと考える。 だが、貴方は自身の許可なき存在を消し去ることしか考えていないな。 最悪の独裁者そのものの思考だ。 貴方が仮に何かしらの理由があってそのようになったとしても、なんら同情は得られないと知れ」

 

皆厳しい言葉をいうものだ。

 

ヨーコは軽蔑しきった目でマンセマットを見つめる。

 

ただそれだけで充分と言うことだろう。

 

タオが最後に言う。

 

「闇に墜ちても気高い人は気高い。 光の中にいてもくだらない人はくだらない。 貴方は最初はどうだったのかは知らない。 今の貴方は、力をもった幼児以下の存在。 ただのくだらない独裁者もどきです」

 

「お、おの、おのれええええええっ! 人間がああああああっ!」

 

マンセマットがキレる。

 

それと同時に、黒い天使達、悪魔達、恐らく残り全てが、一斉に襲いかかってくる。

 

むしろ望むところだ。

 

此処で全てを片付けてしまえば、マンセマットの戦力は枯渇する。更に言えば、此処を取り返す力はもはやベテル本部にもない。

 

創世を本格的に狙う存在が出るとしても。

 

座を単独で独占したいと思う者だけを蹴り出せばそれでいい。

 

一気に問題を進展させられる。

 

奇声を上げて襲いかかってくるマンセマットは、もはや天使の頃の原型すら残っていない。

 

ただの醜い怪物に過ぎなかった。







落ちるところまで落ちたマンセマットですが、まだまだ更に先があります。

こういう陰謀家気取りが自分のミスでどんどん落ちていく様子、よだれものですよね。じゅるり。

書いていてとても楽しいです。






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