真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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原作よりかなり早いですが、マンセマットとの決戦です。

原作においては調子こいたあげくに創世の女神よりも霊的に高位にいるとかイキり倒してましたが、まあ仲魔にした時のレベルとか考えても、何より神話的な役割を考えても、どう考えてもそんなたいした存在ではないですねえ彼。

かなり原作よりパワーアップしている本作であっても、それは変わりません……





2、堕落の更に果て

竜巻が起きる。

 

アマノザコが引き起こした大風。更に、それに雷雨が加わる。

 

素戔嗚尊の力を最大限引き出すには暴風雨だ。

 

マーメイドとアマノザコ。それに加えて、今は高笑いしながら他化自在天が雷を起こしてくれている。

 

全ての力を、自身に収束させる。

 

竜巻は空を舞う黒い天使達や悪魔達の動きも大いに阻害する。

 

それでも、多数の黒い天使達が、一斉に襲いかかってくる。その中には、ソロネや。更に上位と思われる存在。

 

顔を複数重ねたような形の異形。

 

上級二位ケルビムと思われる姿もあった。

 

ケルビムさえ堕落してマンセマットに従っている。その力は、生半可な大天使よりも上だろう。

 

ケルビムの姿は一定していない。

 

一神教では、人間の目の前に姿を見せない高位天使は、人間型をしていないという設定がある。

 

宗教画などでは忘れられがちだが、ケルビムは一般的イメージにあるようなUFOのように描かれたり、怪物的な姿として描かれる事が多い。

 

そもそも古くに描かれた天使の絵では、翼に無数の目があるおぞましい姿として描写されることも珍しくない。

 

それらが、ランスチャージのように突貫してくる。

 

煌の天使部隊が展開。上空を押さえ込みに懸かる。

 

更にユヅルが展開した天狗達(途中の龍穴で再生させた)や、及ばずながらハルパス親子なども制空権の確保に向かう。

 

だが本命は。

 

煌が突貫してきたマンセマットを受け止める。

 

鋭い爪を滅茶苦茶に振り回してくるマンセマットだが、パワーはあるが明らかに戦闘は素人だと分かる。

 

獣のように怒りのまま爪を振るっているが、パワーだけだ。捌くのは其処まで難しくない。

 

それに。

 

既に煌が手を打っている。

 

嵐の中から突貫するホルス。

 

それが目立つ黒い天使を、片っ端から撃ち抜いていく。

 

腐ってもエジプト神話での主神格だ。

 

その破壊力は圧倒的で、突貫を受けた天使達が次々に爆算する。ましてや闇に染まっていれば。

 

太陽の力は、それを正面から粉砕するまさに悪夢と化すのだ。

 

「死ね、死ね死ね、死ねッ!」

 

「指揮に徹します。 アオガミさん、こいつを片手間にあしらう事は可能ですか」

 

「ああ、問題ない」

 

「分かりました。 一つずつ、潰します」

 

大上段から振りかぶってきた爪を回避して、回し蹴りを入れる。思い切りそれが入って、マンセマットは悪趣味な金箔の壁に激突。

 

ずり落ちるが、すぐに復帰して飛んでくる。タフネスだけは凄まじいほどに上昇しているが。

 

ただそれだけだ。

 

黒く染まったケルビムが、光を発射しようとしている。どうせ塩になるようなろくでもない代物だ。

 

ホルスがジグザグに飛び、煌の思念を受け取って、頭上から仕掛ける。

 

一撃で倒す、とはいかないが、揺らがせた。

 

其処に巴御前の矢が突き刺さる。

 

ケルビムが激しく揺れた。

 

更に、黒い天使を斬り伏せながら跳躍していた義経公と、息を合わせてフィンが躍りかかり。

 

左右から斜めに切り下げた。

 

ケルビムがマガツヒになって消えていく。

 

あれほどの高位天使があんな風な末路を迎えるのか。だが、一神教が貶めていった他の信仰でも、同じ事が起きていったし。

 

一神教に限らず、世界の各地で、貶められた信仰では同じ事が起きたのだ。

 

信仰に寛容というのは珍しい特性だ。テングリや日本の現在信仰は極めて異質だと言えるだろう。

 

テングリは荒々しい側面もあるが。その寛容さだけはどうにか取り込みたいところである。

 

マンセマットが、また激しく仕掛けてくる。

 

完全に野獣。

 

それも戦い方を知らない力ばかり強い獣だ。

 

ある程度野生で生き残っている獣は、成功体験から戦闘技術が磨かれる。マンセマットの荒々しさからはそれが感じられない。

 

これでも煌は多数の悪魔とやりあってきたし、それらの中には野獣の強さを取り入れたものも多かった。

 

だからこそ分かる。

 

此奴は、陰謀屋に過ぎない。

 

いざとなると手を汚してこず。手を汚してきたにしても神通力やら魔法やらに頼ってきたつけが出ている。

 

だから攻め込んできていても、まるで脅威に感じない。

 

勿論油断はしない。

 

皆が敵を殲滅するまで、引きつける。

 

イチロウが森可成と息を合わせて、黒いドミニオンを斬り倒す。

 

森可成が槍を振るって、雑魚を次々貫き。その間にイチロウの補助もしている。イチロウは銃も丁寧に使って、とても丁寧に立ち回っている。

 

ミヤズはクルースニクを直衛において、巴御前とともに狙撃に徹していた。鵺なども展開しているが、それ以上に狙撃が効果を示している。

 

煌の天使部隊とユヅルの天狗部隊が、狙撃で注意をそらされた黒い天使を、余すことなく狩っていく。

 

強力な黒い天使を次々に斬り倒しているフィンの支援も忘れていない。ミヤズの狙撃が、フィンに魔法を浴びせようとした黒いソロネの側頭部を撃ち抜く。貫通は出来なかったが、ソロネが明らかにぐらついた瞬間。

 

跳び上がった大獄丸がソロネをつかんで、床にたたきつけて押しつぶしていた。

 

だが、敵の数は膨大。

 

味方の損害も秒ごとに増えていく。

 

しかしだ。

 

タオが展開する光の力が、徐々に膨れ上がってきている。それを受けて、苦しむ黒い天使もまた多い。

 

「わ、私は、どうして、光に苦しんでいる……??」

 

「か、神を疑った、から……か?」

 

「違うわね。 貴方達はただ神を盲信し、思考しなかった。 だから神が倒れたあと、道を誤った」

 

ヨーコが投擲した札が、黒い天使達をまとめて爆散させる。

 

苛烈な戦いの中、乱戦を抜けてきたソロネが炎の車輪となって突っ込んでくるが。それを酒呑童子が食い止める。

 

金棒と回転する炎が激しくぶつかり合い、火花を散らすが。

 

競り勝ったのは酒呑童子だった。

 

弾き飛ばされたソロネが、上空でホルスに貫かれて砕け散る。

 

マンセマットはまだ頭に血が上っていて、戦況に気づけていない。マンセマットの様子を見て、まずいと判断したのか。

 

マンセマットについたらしい大天使達が何体か逃げだそうとしたが。その前に、他化自在天が立ち塞がっていた。

 

「よう一神教の鳥ども」

 

「き、貴様は!」

 

「欲望の権化!」

 

「汚らわしい悪魔め!」

 

大天使達が口々に言うが、戦車の上で四つ腕を組んでいる他化自在天はからからと笑い飛ばした。

 

そして指を鳴らすと、大天使達が見る間に異形へと変じていく。

 

「な、こ、これは……!」

 

「なーにが大天使だ。 おまえ達は所詮元々中東の神格を一神教に取り込んだものにすぎん。 おまえ達が散々悪魔と貶めたのと同じ、な。 あっちに行ったりこっちに行ったりの尻軽には、もとの姿……更にいうなら、それが悪魔化した姿こそふさわしいだろうよ」

 

「ふ、ふざけ……ぎゃああああああああっ!」

 

醜い異形と化していく大天使達が、その過程で爆ぜ割れる。

 

まあ、そうだろうな。

 

タオにすり寄ってきた上に暴言を吐いた大天使がアイデンティティクライシスを起こして壊れたが、それと同じだ。

 

あれらの大天使は、意識を保ったままマンセマットの麾下に入り直した。

 

天使ともあろうものが、そんな尻軽なことをしていれば。

 

特に大天使ともあろう存在が。

 

他化自在天は、確かに欲界の王であり、第六天の管理者だ。

 

だがそれは立派な欲界という天道の一つであり、一つの世界の管理を任されている存在である。

 

悪魔はどちらなのか。

 

むしろ先の大天使達よりも、まだ第六天魔王の方がマシに思えてくる。

 

ケルビムがまた一体、フィンにたたき落とされる。

 

フィンもケルトの英雄だ。

 

天使は気にくわないのだろう。ばったばったと斬り伏せてくれている。アーサー王辺りが加わってくれれば更に心強いのだが。

 

まあそれは流石に望みすぎか。

 

そろそろ、良いだろう。

 

頷くと、アルテミスに行って貰う。退路を塞がせるためだ。他化自在天が既に穴に立ち塞がっているが。更に穴を氷で補強する。

 

理由は一つ。

 

簡単にマンセマットに逃げられないようにするためである。それに、外から横やりを入れさせないためもある。

 

空間を渡ってくるような魔法を使われると面倒だが。

 

それについては、以前間近で見て、ある程度予兆を理解できた。

 

今やられても、前にバエルを討伐した時のようなドジを踏むことはない。

 

まだまだ敵の数の方が多いが、味方の奮戦もあり、徐々に戦力比が逆転しつつある。

 

「死ねええっ!」

 

喚きながらマンセマットが爪を振り下ろしてくる。一秒ごとに爪は長くなり、体は節張り、まるで巨大な虫のような姿になっている。それでいながら鱗を体に生やし、羽毛を生やし、口も耳まで裂けてきている。

 

こんな姿にマンセマットはなりたかったのだろうか。

 

哀れなものだな。

 

そう思いながら、一撃をはじき返す。マンセマットのパワーはまだまだ上がってきているが、別にどうでもいい。

 

とにかく周囲に細かく思念で指示を飛ばしつつ、注意を引きつける。それが出来るだけの余裕があるからだ。

 

義経公がまたフィンと協力して、ソロネを数体、立て続けにたたき落とす。

 

煌は頷くと、突貫。

 

マンセマットを押し込む。

 

凄まじいパワー感と全能感で平常心を欠いているマンセマットを、更に恐怖と困惑で押し込んでいく。

 

勿論倒せるようなら倒してしまうが。

 

其処まで簡単にいくとは思っていないし。

 

此奴には聞きたいこともある。

 

一転攻勢に出た煌に、マンセマットが明らかに怯む。冷静にさせるわけにはいかない。暴風雨で力をパンプアップしているとはいえ、戦場では何が起きるか分からない。注意を払う。

 

斜め後ろ。

 

矢を構えた天使が、針の穴を通すような射撃を見舞ってくる。

 

間に入ったのは霜の巨人だ。胸を貫かれて、膝を突く。そろそろ霜の巨人も限界か。かなり頑張ってくれているが。

 

矢を放った天使を、イチロウが指示を出したアールマティがたたき落とす。アールマティもそろそろ我慢の限度が来ているらしい。

 

自分の子孫に当たる存在達が、ここまで腐るとは。

 

流石に許せないだろう。

 

いつの間にか壁際に追い詰められたマンセマットが、明らかに恐怖混じりに威嚇を煌にしてくる。

 

それでいい。

 

そのまま、連続して斬撃を浴びせかける。

 

最後のケルビムが、その瞬間。

 

大獄丸の一撃で、地面にたたき落とされ。かなり目減りはしていたが、それでも一定数残っていた雑多な悪魔達に袋だたきにされて、マガツヒになって砕けていった。

 

ソロネももうほとんど残っていない。

 

煌の天使部隊と、ユヅルの天狗部隊が、完全に制空権を抑えつつある。

 

ミヤズの狙撃が、大物から雑魚へと移行。残敵の中で、抵抗を試みている黒い天使や、翼持つ悪魔を次々に落としていく。

 

ほとんど必殺必中だ。

 

ミヤズは昔から体が丈夫だったら軍人が一番適正があったのではないかとさえ感じてしまう。今は体が丈夫になったから、天性の才能が目覚めている。そうとさえ思えてしまうほどの暴れぶりだ。

 

彼我の戦力は逆転。

 

皆激戦で疲弊しているが、それでも勝負はついた。

 

マンセマットも、やっと気付いたらしい。

 

煌が丁度良いと判断して、マンセマットの長くて黒い爪を手刀で立て続けにたたき折る。爪から、マガツヒが血のように漏れ出す。

 

マンセマットが、目を見開いて、恐怖の声を上げていた。

 

「ば、馬鹿な! これほどの数的有利を確保していたのに! ケルビムやソロネがあれだけいたのに!」

 

「所詮天使様は神がいなけりゃ何も出来ねえ。 それはおまえも同じだって事じゃねえのかなあ」

 

大獄丸がいつの間にか側に来ていて、鉄の金棒を床に振り下ろす。悪趣味な金箔がそれだけでひびが入っていた。

 

もはや雑魚が掃討されるのを見ているだけでいい。

 

逆転の目はなくなった。

 

勿論皆疲弊している。

 

それでも、詰みだ。

 

「煌、一気に斬っちゃう? 力、そっちに送るよ?」

 

「いや、まだこのものには聞くことがある」

 

アマノザコに答える。更には、左右に手練れが並んで、マンセマットを囲む。上も他化自在天が来ているし。

 

壁の穴も既に補強済み。

 

マンセマットの鼻先に手刀を突きつけると。

 

既に原型を失った黒い天使は、喚き散らしていた。

 

「お、おのれ! 何かの間違いだ! サリエルとカマエルを失い、今まで集めてきた同志達は四散し、手駒にした終焉の天使達はもはやいないというのか! 私は主に見放されたというのか!」

 

「主とは誰ですか。 貴方達の主である四文字の神は18年前に倒れた。 それは既に貴方も理解しているはずです」

 

乱戦のあおりをそれなりに食って、すすけているタオがくる。

 

歩いてくるだけでも凄まじい威圧感だし。

 

なんなら明確に後光まで背負い始めている。なるほどな。創世の女神が封印されていた場所は、既に壊れかけ。

 

その壊れかけの場所に直に来たことで、タオの力ももう覚醒しつつあるということか。

 

「答えなさい」

 

「ぐっ、お、うおのれ……!」

 

「斬ってマガツヒを取り込んだ方が早いのではないかしら?」

 

「それは最後の手段だ」

 

ヨーコはヨーコで、まがまがしい黒い力を全身にまとい始めている。

 

どっちも人間離れしつつある。

 

やはり二人とも。

 

創世の女神として覚醒しつつあるのだ。もうほぼ覚醒してしまっているというべきだろうか。

 

「答えなさい。 貴方は誰に従ったの」

 

「……っ。 ふっ、どうやら本当に見捨てられたようですね。 しかしながら、私にも意地がある! 志半ばで倒れたカマエルとサリエルのためにも、創世を為す! そのためには、此処で倒れるわけにも、主のことを吐くわけにもいかないのです!」

 

「!」

 

次の瞬間、マンセマットが爆発した。

 

とっさに塗り壁が壁になり、更にはアールマティやタオが光の壁を張り。他にも魔法が得意な者達がそれを補強したが。

 

それでも爆発は消しきれず。

 

更には、爆発の隙間から、小さな何かが飛び出していた。

 

子犬ほどしかないそれは、マンセマットの頭部だ。体をパージして、逃げ出したのだ。

 

口が耳まで裂けたマンセマットは、首から翼を無理矢理生やすと、脊髄をぶら下げながら飛んでいく。

 

ホルスを展開している余力はもうない。

 

空間の穴が不意に。

 

其処に飛び込む首。空間の穴が、即座に閉じていた。今のはなんだ。不意打ちに使う空間の穴が開く予兆はなかった。この至聖所にされた都庁そのものが何かしらの動作をしたようだ。

 

解析をしていたタオが言う。

 

「恐らくバックドアね。 ずっと此処に仕掛けられていた、いざという時の脱出口だったようよ」

 

「まずいな。 あのような状態になっても、危険な相手だ。 どこに逃げたか突き止めないと」

 

ユヅルが言う。

 

煌も同感だ。

 

だが、ヨーコが肩をすくめていた。

 

「手札を全て失い、力も既に99%以上失った状態。 もはや陰謀屋としても出来る事などないわ。 あんなもの、放っておきなさい」

 

「侮るのは危険だと思うが」

 

「……いや、ある程度知っているのよ、その空間の穴の行く先。 これでも此処に封じられていたのだから」

 

ヨーコが言うと。

 

それだけで、マンセマットがどんな末路をたどるのか。想像できた。

 

ヨーコが言った、先のバックドアの行く先。それを聞いて、誰もが戦慄する。イチロウが、素直にこええと言った。

 

「本当は、地力で抜け出して私が使うつもりだったの。 でも、天使の中には知っている者がいた、そういうことね」

 

「……ともかく龍穴に一度引き返そう。 回復を済ませてから、此処を「至聖所」から、ただの都庁に戻す」

 

「そうだな。 廃ビルでも、あんな風に悪用されるよりマシだよな」

 

イチロウがぼやく。

 

それに、タオが補足した。

 

魔界ダアトは、位相を隔てたとはいえ東京だ。都庁に対して、このままだと悪影響が出るかも知れないと。

 

ならば、さっさとやるべき事をやる。

 

それには、力を回復するのが絶対に必要だった。

 

 

 

首だけになったマンセマットは、非常時のために用意しておいたバックドアから、どうにか脱出。

 

砂だらけの東京の魔界に出て、必死に飛んでいた。

 

マガツヒがまだ全身から漏れている。

 

既に天使とはとうてい言いがたい姿だ。手下も手駒も全て失ってしまった。こんなことが。

 

こんなことがあって良いのか。

 

そう思いながら、必死に飛ぶ。

 

サリエルとカマエルの無念を晴らさなければ。

 

それには創世が必須だ。

 

幻の東京には、実はマンセマットの半身がいる。既に調査済みだ。

 

それは以前縄印学園に通っていた生徒で。

 

なぜだかこの間退学させられたという事も調査できている。確か、カディシュトゥが大規模攻撃を仕掛ける直前であったと思う。

 

まあ、そんなことはどうでもいい。

 

残る力を全て使って、必死に飛ぶ。

 

もう少しで、龍穴だ。其処で少し回復して、それで。

 

砂漠をひたすら飛ぶマンセマットだが。おかしいと気付く。バックドアの出口については、事前に調べてある。

 

此処は、どこだ。

 

もう少しで龍穴が見えるはずだが、その気配すらない。

 

上にはこの魔界東京のコアになるカグツチと呼ばれる球体が輝いているが。その光が少し強い気がする。

 

一度停止。

 

どれだけ弱っていても、それでも陰謀家だ。冷静になることくらいは出来る。だが、そこまでだった。

 

いきなりつかまれる。

 

砂の中から伸びてきた手が、マンセマットをつかんでいた。悲鳴を上げて逃れようとするが、力が違いすぎる。

 

一気に砂の中に引っ張り込まれていた。

 

「ようマンセマット。 マスティマの方が良いか? 久しぶりだなあ」

 

「お、おまえは……!」

 

砂の中。空洞で、周囲に砂がこぼれ落ちている。

 

そして、マンセマットを、腕を伸ばしてつかんだのは。見覚えがある神格だった。

 

いや、正確には魔か。

 

モーセの出エジプトのエピソードにちなんで、マンセマットは多数の悪魔を操った(ことにされた)。

 

その結果、後の時代に無数の神や悪魔が魔とされた。

 

これは名前も残されていないそんな悪魔の一角。元は神だった存在だ。

 

「随分と好き勝手してくれたな。 これからたっぷり仕返ししてやるよ」

 

「な、なんで、なんで貴様がここにいる!」

 

「俺だけじゃないぜ。 日本支部がエジプト支部と同盟を組んだんでな。 この戦いの前に、瀕死のおまえが逃げてくるかも知れないという話を聞いてな。 待っていたんだよ!」

 

闇の中に、無数の目の光が浮かび上がる。

 

歩み寄ってくるそれらは、一神教で悪魔扱いされたエジプトの雑多な神魔達。

 

皆、棍棒などを手にしていた。らんらんと光る目を見て、マンセマットは悲鳴を上げていた。

 

「簡単に死ねると思うなよ……」

 

「再生の魔法を掛けろ! すぐに壊れられたらたまらんからな!」

 

「徹底的に苦痛をたたき込んでやる!」

 

「その後で日本支部に突き出してやるよ!」

 

マンセマットは、悲鳴を上げたが。

 

その声は、当然誰にも届かなかった。

 

その後、激しい殴打の音と悲鳴が砂の下から延々と響き続け。周囲を通る神魔は不気味がって、進路を変えたのだった。







マンセマットさんの楽しい自滅の時です。

楽しんでいただけたでしょうか。

あ、いちおうまだ末路が残っています。それもお楽しみに。


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