真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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4、覚醒迫る

八雲ショウヘイは激しい戦いを繰り広げるカディシュトゥと夏目煌らの様子を、近くのビルから見やっていた。

 

側にいるジョカが言う。

 

「八雲、加勢せぬのか。 面倒なハエどもを一気に始末する好機であろう」

 

「いや、必要ない。 あのハエどもよりも、創世の女神となりつつある二人と、完全覚醒しつつある夏目煌の方が見極める必要がある」

 

「そうか」

 

戦況は一進一退だが、カディシュトゥのうち既にナアマとエイシェトは敗色濃厚。

 

多数繰り出している配下の軍勢も、少しずつ討ち減らされつつある。

 

元々サマエルにあれらが忠義など誓っていないことは分かっていた。

 

設定だけは妻となっているが、サマエルは設定も聖書での扱いもまちまちで、必ずしも楽園の蛇と言う訳でもない。

 

それが蛇の神の王を名乗るだけでも滑稽なのだ。

 

それはバビロニア神話に祖があるリリスであれば当然知っていただろうし。

 

ましてや妻などという設定は、片腹痛かっただろう。

 

だから裏切るのは予想できていた。

 

ただ、事前に倒されていたのを確認したペルーンも含めて、まとめてティアマト復活のための贄にしたのは意外だったが。

 

想定外だったのは其処だけだ。

 

「のう八雲」

 

「なんだ」

 

「以前話したであろう。 座は別に神聖なものでもなければ、排除しなければならないものでもない。 ただ其処にあるだけの代物で、血を流してまで奪い合うような価値すらもない。 だから何柱かは敢えてその座を降りたし、座につく神が空白だった時期だって長かった。 特にユピテルが座を降りてから、テングリが座に着くまでは随分と時間も掛かった」

 

「そうであったな」

 

八雲はしなだれかかったままのジョカを一瞥すらしない。

 

だが、以前と違う。

 

ジョカが話しかけても、ほとんど応じさえしなかったのだ。

 

それに答えているだけでも。

 

八雲には、変化が生じているのである。

 

「いっそ座に着くことを考えてはどうか」

 

「……断る」

 

「破壊する事は既に試されたことがある。 それも話したであろう。 それも幾度もな。 だが、座は時間が経つと再生してしまうのだ。 それもそう長い時間を掛けずにな」

 

「それでも、その間の時間で人間が強くなることに俺は賭けたい」

 

無謀だとジョカは嘆く。

 

生物が環境適応の果てに新種を生み出すのには数万年はかかる。クロマニヨン人と現在の人類はほぼ代わらないが、それでも三万年を必要とした。

 

座が破壊されてから復活するまでの年月は、数百年より更に短い。

 

馬鹿げた行動の結果この星を食いつくし掛けている人類が、信仰を必要としなくなるとして。

 

その先にあるのはほぼ間違いなく焼け野原だ。

 

そうジョカは何度か諭した。

 

だが八雲は、今までは聞く耳を持たなかった。

 

焼け付くような怒りが、その言葉をはねのけていたのだ。

 

だが、少しずつだが。

 

八雲は話を聞くようになってきている。

 

あの夏目煌の影響だ。

 

論理的に話し。

 

相手を最大限尊重もする。

 

それでありながら、明確な悪は一刀両断もする。

 

その影響を、明らかに八雲は受けている。だからこそ、ジョカは今、話しておくべきだと判断する。

 

今ではリリスと互角か、それに近い戦いを夏目煌はしている。

 

それだけでも、あの者がどれだけ力をつけたか、一目で分かるではないか。

 

「座に着く存在は、必ずしも一柱ではない」

 

「ああ、そんなことを言っていたな」

 

「バアルの時代にそれは実証されている。 実を言うとな、ラーの時代からだ」

 

「ラーとは太陽神の称号。 アトゥムから始まり、ホルスやアメン、アテンも共有した。 神権政治の祖であり、それは必ずしも特定神格を意味するものではなかった、だな」

 

ラーの権威がエジプト文明を支えた時代には。

 

座にはラーという集合的な意味がついていたのである。

 

それはつまり。

 

座には単一神格がいなくても良いと言うことに他ならない。

 

ましてや中東の神のことを全般的にバアルと呼んだのだから。

 

夏目煌がそれに気付いたらしいことを知った時には、ジョカは流石だと褒め称えていたし。

 

それをジョカから聞かされて、八雲も少しだけ心が動かされていたようだった。

 

「だがな。 俺は惰弱を許すことが出来ぬ」

 

「誰もが生まれた時には惰弱だ」

 

「それとこれとは……」

 

「今の時代が病んでいるのは事実であろうな。 しかし、根から何もかも破壊しようとするのではなく。 少しでもあの者達と一緒に何かを考えてみようとしてはどうか。 少なくともそなたの両親を悪魔にそそのかされて惨殺した阿呆どもとはあれらは違うぞ」

 

前だったら即座に刀を抜いていただろう八雲は。

 

そうはしなかった。

 

ジョカはそれで黙る。

 

後は考える時間が必要だ。

 

そう考えたからだ。

 

戦闘が佳境に入る。

 

ホルスがまだ未完成とは言え、大暴れしている。凄まじい強さだが。あまり長時間強さを維持できない。

 

だから攻撃の時だけ、強さを収束させ。

 

敵を貫き焼き払っている。

 

あれも座にいた存在だ。

 

既に未完成とは言え、夏目煌は従えている。

 

それだけでもあの存在は。

 

既に他とは一線を画する存在になりつつある。

 

八雲も、瞠目している。

 

いつの間にか、一進一退から、戦況が動きつつある。それを見て、思うところがあるようであったし。

 

ジョカはそれが確認できればいいと。

 

戦況に視線を戻すのだった。

 

 

 

(続)








原作だとティアマトの覚醒に巻き込まれて突っ立ってるところをジョカに庇われて戦力を喪失した八雲ですが。

本作では状況がかなり違ってきます。

八雲自身も、煌達の様子を見て思うところがあるようです。

それがどう事態を変えていくかは、この先をお楽しみください。




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