真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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ベテル本部が爆発四散。

更には台東区でのバトルロワイヤル開始。

原作のイベントをアブディエルが意図的に起こした形ですね。本作のアブディエルは煌くんの事を認めているだけではなく、そもそもベテル本部の戦力が致命傷を受けている事もあり、袋だたきにされるのを避けるためにこの手段を執りました。

いずれにしても、各地の主神が入り乱れる地獄絵図の開幕です……






2、台東区の戦乱

ベテルが解散した。

 

それは既に既成事実であったが。まさかそれをアブディエルが認めるとは誰も思っていなかった。

 

だから最初は天使どもを八つ裂きにして、が。誰もの暗黙の了解だったのだが。

 

そのはしごが外されてしまったことになる。

 

ゼウスはオリンポス十二神を連れて、台東区に出向く。

 

そして早速陣地を構築し始めた。

 

問題は北欧支部だ。

 

北欧支部とは連携して行動するつもりだったのだが。オーディンはどうやら、ゼウスが至高天に通じる鍵を渡されたことで、一旦距離を取るつもりにしたらしい。

 

北欧の神々を連れて、別の陣地を構築している。

 

まあ、どうでもいいことだ。

 

オーディンはいずれ始末するつもりだったのだから。

 

あれは戦争の勝利に特化した神格。

 

座につけるわけにはいかない。

 

戦争の勝利に特化していると言うことは、戦争の後のことは何も考えていないと言うことだ。

 

戦争の後が一番大事。

 

平和を維持するためには、それこそ戦乱をまとめるよりも遙かに労力がいる。

 

北欧の荒々しいノルマンの民は、そんなことは考えていなかった。常に戦争のことだけを考えていた。

 

だからああいう神格が主神になった。

 

軍神や戦神が最高神となった例は幾らでもあるが。

 

平和な時代にそれらが最高神となった事はない。

 

平和を知らない土地の神。

 

それでは、この世界は治まらないのだ。

 

「ゼウスよ」

 

「うむ、如何した」

 

廃ビルに腰掛けて考え込んでいたゼウスに話しかけてきたのは、妻であるヘラだ。嫉妬深く悪妻とされる事も多いのだが。

 

それはそれとして、ゼウスとしては正妻と考えているし。

 

正妻から外す気はない。

 

なんだかんだで、相性が良いのである。

 

「デメテルお姉様の姿が見当たらぬ」

 

「ほう?」

 

「妙な動きをしていたが、どうやら本格的に造反を開始したようだな」

 

「かまわんさ。 デメテル姉上には散々苦労を掛けてきたからな。 それに多少は障害があった方が面白い」

 

からからとゼウスは笑う。

 

問題はインド支部だ。

 

シヴァの実力は正直ゼウスが本気でやりあって勝てるか微妙なレベルである。

 

インド支部はルドラの秘法なんてくだらんものを発動させようとしており、もしも発動してしまったら文字通り世界は終わりだ。

 

それはどうにか避けたいところだが。

 

奴を倒すには、オリンポス十二神を総動員するか。

 

或いは。

 

ナホビノでもぶつけるしかないか。

 

現在日本支部が抑えているナホビノは、どうやらあらかた合一を諦めたようだ。

 

問題はそのほかのナホビノだが。

 

ゼウスが一瞥する。

 

ミマンと呼ばれる赤くて小さな悪魔達。

 

あれの正体を思うと、ナホビノになろうとはどうにも気が進まない。別に合一なんぞしなくても、座に着くことは可能なのだから。

 

「それともう一つ。 オーディンが多数の死者をかき集めているようだ」

 

「エインヘリアルだろう?」

 

「いや、どうにもそれが妙でな」

 

エインヘリアルとは、北欧神話で死後ヴァルハラ(北欧神話の天国とされる宮殿)に招かれた戦士のことだ。

 

こいつらは世界の終末が来るまで延々と「スポーツとして」戦争を楽しみ続け。

 

そして死んでもすぐによみがえって、殺し合いの腕を競い続けるいかれた集団だ。この伝承だけでも、北欧神話がどれだけ狂っているかがよく分かるのだが。

 

ただ、この後の戦いに備えてエインヘリアルを集めておらず。

 

死者をただ集めているというのは、どういうことだ。

 

指を鳴らす。

 

姿を見せたのはヘルメスである。

 

「ヘルメス、此処に」

 

「オーディンを探ってこい。 ちょっとばかり嫌な予感がするのでな」

 

「分かりました。 ただ、相当に警戒が厳しいですよあれは。 帰還できなくてもお許しあれ」

 

「ふっ、その時は俺が直々にオーディンを潰してやるさ」

 

北欧神話の神々には、不死身の逸話がない。

 

それどころか不老ですらない。

 

老いを止めるためにイズンが有する黄金のリンゴに依存し。

 

不死ではないからラグナロクで皆死に果ててしまう。

 

そういう意味では、死にシビアだったノルマンの民の考え方も分からないでもない。神だろうが死ぬ。

 

それ自体は、別に良いだろう。

 

ただ、神同士の戦いとなると。

 

それは明確な不利になるのだが。

 

「さて、後は……と」

 

今の時点でギリシャ支部の問題はあと二つ。

 

一つは天使どもの残党が動いていて、狙いが読めないこと。

 

もう一つは、クロノスの存在だ。

 

ゼウスの父であり、ティターン神族の長である先代王。

 

農耕神とも時の神とも言われるが、この機にギリシャ神話の地獄であるタルタロスから脱出を果たしている。

 

ヘカトンケイレスを連れ出したのがまずかったか。

 

ともかくは、クロノスの動向にも気をつけなければならない。

 

今は、様子見の段階だ。

 

 

 

インド支部は、いきなりの波乱に見舞われていた。

 

辺りに散らばっている神々の残骸を、多数のウジ虫が食い荒らしている。たいした神格はいなかったとはいえ、一方的だ。

 

「お、おのれええっ!」

 

ヴァスキが声を上げる。

 

陣を構えるように指示を出し。

 

下級の神々があまり統率がとれないながらも、陣立てを始めた直後のことだった。

 

いきなり凄まじい呪いの力が降りかかったかと思うと、雑兵を文字通り、まとめてなぎ払ったのである。

 

そしてヴァスキの前には。

 

それが姿を現していた。

 

無数の蠅が集まると、巨大な蠅が姿を見せる。背中には髑髏の模様がある羽がある。言うまでもない。

 

誰もが知っている、魔界の大顔役。

 

ルシファーの片腕とされていた存在。

 

悪魔王ベルゼバブ。

 

混沌勢力の残党達とは別行動をしていた、文字通り悪魔の中の悪魔だ。

 

勿論神話的な強さはスルトなどには遠く及ばない程度の存在に過ぎないが、それでも一神教による知名度がメジャーであるということもある。

 

バアル系統の派生悪魔としては最大限の知名度を持つという事もあり。

 

その実力は、明らかにヴァスキ程度の及ぶところではなかった。

 

「インドの神々に喧嘩を売って無事で済むと思うなよ、ハエ風情が!」

 

「良く囀る」

 

「な……」

 

「シヴァと弱体化していないヴィシュヌ辺りだったらワシでも本腰を入れなければ危なかったであろうな。 だが貴様などシヴァの使い走りに過ぎぬだろう。 ワシからしてみれば、ただの小うるさい生きたヒモにすぎんわ。 御託は良いから懸かってこい。 シヴァにはそのくだらん鍵を守るように言われているのだろう? それとも威を借りているシヴァがいなければ怖くて動くことも出来ぬか?」

 

挑発されて、流石にヴァスキが吹き上がる。

 

これでもナーガラージャの中でもアナンタと並ぶ上位の存在であり、八大竜王の一角に入るのだ。

 

相手の方が確実に格上。

 

だが、それでも、プライドの方が上回った。

 

ヴァスキが、凄まじい毒液を吐きかける。

 

シヴァの体色にまで影響を与えた猛毒だ。食らってしまえば、生半可な神ではひとたまりもない。

 

死に絶えた神々に毒がまき散らされ、辺りの砂漠ごと溶かしてしまう。

 

だが、ハエの王の動きはあまりにも速かった。

 

「遅いなあ」

 

ヴァスキの全身が、魔法で作られた呪いの槍で貫かれる。

 

凄まじい絶叫を挙げながら、ヴァスキは敵を探す。一瞬でいなくなったベルゼバブは、どこだ。

 

毒さえ浴びせれば。

 

毒さえ。

 

しかし、見てしまう。

 

朽ち果てた神々を食らっていたウジ虫どもは、ヴァスキの毒でも平然としているではないか。

 

「ハエは糞ですら餌とするのだぞ。 貴様ごときのくだらん毒程度で、ワシの眷属をどうにか出来るとでも思うたか?」

 

「そこかああっ!」

 

激しい痛みに耐えつつ、ベルゼバブを見つける。

 

斜め後ろにいたベルゼバブに、首を回して毒液を吹きかける。

 

直撃。

 

しかし、悟る。

 

今のはわざと食らったのだと。

 

ベルゼバブはびくともしない。

 

それどころか、余裕綽々に語りかけてくる有様だ。

 

「眷属も倒せないのに、ワシをこんなちゃちな毒でどうにか出来ると思ったか? ワシに通じる毒なら、そうだな。 ヒュドラの毒か、それともヨムルンガルドの毒か。 そのくらいのものでも持ってくるのだな。 貴様ごときの毒など、甘露にしかならぬわ」

 

「お、おの、れ……? あ、あああああああああっ!」

 

ヴァスキの全身にたたき込まれた呪いの槍が、全てウジ虫になり。

 

生きたままヴァスキを食い荒らし始めた。

 

手で払い落とそうとするも、一匹ずつが強く、とても払える代物じゃない。全身が見る間に食い荒らされていく。

 

体が千切れて、倒れる。

 

体が見る間に腐り果てていく。

 

マガツヒとさえならない。マガツヒごと、おぞましいウジ虫どもが食らっているのだと分かる。

 

「こんな鍵に用はない。 閣下はナホビノの力を試せといわれていたからな。 それで丁度良い雑魚から頂戴しただけよ。 問題はシヴァだな……」

 

「せ、せめて、一太刀……」

 

「なんだまだ生きていたか。 さっさとアティルト界にでも戻って、おまえ等インド神格が大好きな修行でもして出直してくるのだな」

 

ふっとベルゼバブが息を吹きかける。

 

それだけで、ヴァスキの意識は途絶えた。

 

現状でもっとも強大な神格であるシヴァを抱えるインド支部が、なんと真っ先に至高天への鍵を失った。

 

台東区での戦闘が始まる前の出来事だった。

 

 

 

オーディンは巨大な立方体をルーンでくみ上げると、その頂上に陣を構えた。ここに来るには、複雑な経路を通らなければならない。極めて厄介な道のりであり、それだけで相手は消耗する。

 

其処に、ヴァルキリー達が多数の死者を連れてくる。

 

魔界で死んだ人間達だ。

 

東京から位相を隔てただけの魔界には、かなりの人間が落ちた。そして其処で果てた。

 

それらを見つけては、連れてこさせた。

 

特に今は、急いで見つけていた死人を連れてこさせていたのだ。

 

それらを並べて、一人ずつ見極めていく。

 

別に死んでいようとどうでもいい。

 

ヴァルキリーの数が少ない。

 

一応これでもオーディンはヴァルキリーは全て把握しているのだが。魔界での戦闘で殺されたにしても、見当たらない者がいる。

 

まあいい。

 

この状況だ。

 

北欧の勢力を離れても、それは仕方がない事だ。

 

「これはエインヘリアルに」

 

「分かりました」

 

「次」

 

ナホビノの素質がない死者は、即座にエインヘリアルにするべく連れて行かせる。弱かろうとどうでもいい。

 

手札は多い方がいいのだ。

 

オーディンは残忍な性格であることを自認しているが、今の馬鹿なビジネス書やらに毒された連中みたいに「代わりは幾らでもいる」だの、「何でも出来る新入社員を格安で使いたい」だの、そんな噴飯物の寝言は言うつもりはない。

 

手駒は育成するだけだ。

 

だから手駒に出来るならどうでもいい。

 

数人の死者を見送った後で、見つける。

 

ナホビノの素質の持ち主だ。

 

比較的最近死んだようだ。即座にディースを連れてこさせる。

 

北欧における下級神格であるディースは、オーディンの前に出ると、ひっと声を上げていた。

 

「オーディン様、一体何を……」

 

「これで198体めだったな」

 

「い、いやああああああっ!」

 

オーディンの手で、ディースと死者が無理矢理融合させられる。ばきばきと凄まじい音が立ち。

 

姿が変わっていき。

 

やがてそこには、死者もディースもおらず。

 

赤い小さな悪魔。

 

ミマンがいた。

 

「ふむ、だいたい分かってきたぞ。 後二体くらい実験をすれば、人為的にナホビノを作り出すことが可能だ」

 

「オーディン様。 ディースといえど、貴重な戦力であるのではありませんか」

 

「ああ、当然だ。 だからこの創世が終わったら、あの姿から解除されたところを回収する。 私は部下を無駄に使うつもりはない」

 

「……」

 

ヴァルキリー達が顔を見合わせる。

 

そういえば、一番最近に入ったのがいないな。

 

気になったので聞いてみる。

 

「あの見習いはどうした」

 

「オデットのことでしょうか。 あれは日本支部のナホビノに感化されて、イズン様とともに……」

 

「そうか、惜しいことをした。 あれはかなりの素質を持っていた。 成長されると厄介だな」

 

えっとヴァルキリー達が言うが。

 

とりあえず、次を呼ばせる。

 

オーディンの実験にはいくつも意味がある。

 

日本で創世が起きる今は、絶好の機会だ。オーディンは日本での知名度が高く、他の地域よりも大きな力を発揮できる。

 

それにだ。

 

四文字の神が面倒なことをして以降、創世には妙な縛りが生じた。それを解除するには解析がいる。

 

その情報を得るためにも。

 

この実験は必須だし。

 

それで使う部下もまた、大事なのだ。

 

またナホビノの素質を持つ死者を見つけた。無理矢理ディースと合一させる。やはりうまくいかないが、ほぼつかめた。というか、今度は意図的に失敗さえさせた。

 

ナホビノになろうと焦って勝手にこの姿になった神魔もいただろう。

 

だが、オーディンはそれらとは悪知恵のできが違う。

 

ふっと笑うと、どんどん死者を連れてこさせる。

 

やがて、二百体目の実験が終わり。ミマンを追い払うと、オーディンは神々を集めていた。

 

「ナホビノの解析は終わった」

 

「父上。 あまりにも非道が過ぎましょうぞ」

 

苦言を呈したのはトールだ。屈強なヴァイキングそのものの姿格好をしている。手にしているのは必殺の武器ミョルニルだ。

 

オーディンは、先代の最高神であり。戦闘のことだけを考えたこの雷神が決して好きではなかった。

 

今は息子という設定になっているが、本来は違った。

 

トールだって、それを可としている訳がないのだ。

 

「勝てばいいのだ勝てばな。 そして今回の創世で、私は別に勝ちを狙ってはおらぬ」

 

「それでは……」

 

「ただし、勝つ好機が来たのなら話は別だ。 見るとインド支部が壊乱しておる。 あの様子ではどうやら鍵を奪われたとみていい。 誰がやったかまではわからんがな。 日本支部はそろそろ動き出すだろうし、天使どももだろうな」

 

「そういえば、テュール様が見当たりませぬが」

 

そう声を上げたのはフレイだ。

 

北欧神話でももっとも信仰を集めた神の一角。豊穣の神らしく、極めて放埒な存在であり。目が覚めるような美男子だ。手放してしまったが、必勝の剣という強力な武器を手にしていたこともある。

 

トールの更に前の最高神だったテュールは、ユピテルの影響を受けた天空神であり、更に言えば司法の神だった。

 

まあ、別にいなくてもどうでもいい。

 

今は守りを固めて、攻めにくいと認識させるだけでいいのだから。

 

だから、オーディンはこう言った。

 

「放っておけ」

 

「よろしいのですか」

 

「テュールは元々不安要素だった。 どこぞのデビルサマーが呼び出しでもしたのなら、今回の一件から排除できる」

 

ふっと笑うオーディンを見て。

 

神々は、不安そうに顔を見合わせるのだった。

 

 

 

アブディエルは配下を集めて、その少なさに嘆息していた。

 

至聖所を巡る戦い。

 

それにマンセマットについた配下。

 

それらでの消耗があまりにも激しかったのだ。

 

残った大天使はメルキセデクだけ。

 

麾下の精鋭天使達も、もはやファランクスを組むことさえ怪しいほどの数しかいなかった。

 

ケルビムは二体。ソロネは四体。

 

ドミニオン以下の天使はほとんど生き残れず、全てかき集めても二百を少し越える程度だった。

 

勿論この程度の戦力で、支部だった各国の神魔と渡り合うのは不可能だ。

 

そして各国の財閥も、見る影もなく衰えたベテル本部の戦力情報をどこからか嗅ぎつけて。縁切りに動いている有様だった。

 

いずれこうなることは分かっていた。

 

アブディエルだって分かっていたのだ。

 

自分が力不足であることは。

 

混沌勢力の残党達にあれだけの大苦戦をしたのである。支部の連中が如何にまともに動かなかったとはいえ、だ。

 

四大や、それに七大。特にメタトロンがいれば、このようなことなどなかっただろう。

 

「アブディエルどの」

 

メルキセデクが言う。

 

配下の天使からの報告があったと言うことだ。

 

日本支部から、正式に縁切りの通達。

 

以降、対等な同盟であったら、再検討するという話だった。

 

屈辱だと言えるが。

 

しかしながら、一神教だけが正義で。他の信仰は全て悪。他の神話の神々は全て悪魔。その思想が、本当に他の文化圏で受け入れるか。

 

答えはノーだ。

 

そんなことくらい、人間達を見てきたアブディエルは分かっている。

 

自分は正しい。おまえは間違っている。思考を全て停止して、我らの言葉に従え。我らの言葉を疑うな。

 

そんな思想を誰もが受け入れるわけがない。

 

勿論弱い人間達にはそれは甘露だ。

 

それも分かっている。

 

だが、誰もがそう簡単な存在ではないし。

 

何よりも、悪党にとってこれほど利用しやすい思想もまたない。

 

一神教だけではなく、信仰なんてものは所詮人間に依存する。卵が先鶏が先の議論で行くと。

 

人間の方がこの場合は先になるのだ。

 

ただし、昔だったら、こんなことは絶対に考えなかっただろう。アブディエルも、やはり変わり始めている。

 

「日本支部と今対立するわけにはいかん。 同盟を受けると答えておけ」

 

「は……」

 

「それはそうと、四大をよみがえらせる計画は」

 

「それについても話をしてきました。 現状、仮に四大をよみがえらせたとしても、主の支援がありません。 それもあって、四大がいてようやく他の支部と対等、というのが現実であるかと思います」

 

そうかと、アブディエルはメルキセデクを見ずに言う。

 

四大も昔の力など取り戻せないだろう。

 

混沌の悪魔達の情報から、分かっている事は。

 

18年前、どうもルシファーと主がまともに戦ったようには見えなかったこと。

 

四大も七大も自壊してしまったらしいこと。

 

それくらいだ。

 

アブディエルは戦闘面はともかく、それほど高位の大天使だった訳ではない。

 

それもあって、知らされていたことはあまり多くはない。

 

東京受胎と同じような事が、過去に何回か起きたらしいと言うことは知っている。

 

だがそれがどういう現象なのかは最後まで分からなかった。

 

天の書庫と言われるラジエルが存命だったらまだ話は聞けたのかも知れないが。

 

ラジエルもまた、18年前に。

 

「悔しいが、日本支部と連携するしかあるまい。 四大の復活に向け、準備を進めよ。 それと各地で孤立している天使達をかき集めよ。 高位であるかは問わぬ。 今は一人でも手がほしい」

 

「分かりました」

 

「アブディエル様。 本当に我々のしていることは正しいのでしょうか」

 

生き残っているドミニオンが言う。

 

あの魔王城での激戦を生き抜いた一人だ。

 

アブディエルは分かっている。

 

天使達は自分で思考することが出来ない……とまでは行かないが極端に苦手だ。神に絶対的な忠誠を誓ってきた結果である。だから、こうなるとどうしていいか分からないのだ。

 

アブディエルだって分からない。

 

だが、それでも。

 

どうにか同胞達を導かなければならないのだ。

 

「今はやるべき事をやっていくしかない。 四大の方々をよみがえらせて、戦力を拡充する。 その後は、今までの強権的な姿勢を改めて、他支部とどうにか対等の立場をまずは確保する」

 

「対等などと……」

 

「デーモンどもを相手にですか」

 

「デーモンどもを相手にだ。 主がお隠れになった今、我らも……デーモンに過ぎないのだからな」

 

そうだ。

 

ギリシャから輸入した概念であるダイモーン……デーモンは、超自然的な霊的存在を意味する言葉だ。それには悪しきカコダイモーンと、良きアガトダイモーンがある。

 

我らはそのアガトダイモーンに過ぎない。

 

そこから、まずはやり直さなければならないだろう。そうアブディエルは考えていた。

 

動揺する天使達をまずはまとめなければならない。

 

彼らはアブディエルを信じてついてきてくれたのだ。

 

だから、彼らを守るのもまた。

 

アブディエルの仕事なのだ。







ヴァスキ、爆発四散!南無三!

原作復讐の女神編でも戦闘シーンすら描写されずにベルゼバブにぺちっと潰されるヴァスキですが(復讐の女神編はゼウスとオーディンと同時戦闘だったりちょっと創世の女神編より難易度高めですが)、本作では潰される過程を描写してみました。

ベルゼバブとしても危険視しているシヴァを放っておく訳にもいかないので、こうして戦力を削いだわけですね。

以降インド支部は大混乱に陥ることになります。


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