真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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※カナンの主神バアル

メガテンで一般的にバアルと言われている神格ですね。カナン地方にて信仰された、中東全般にたくさんいたバアルの一柱が彼です。そもそも四文字の神も元はバアルの一柱に過ぎなかったので、バアルと言っても誰やねんなわけですね。

彼は一神教にとって最大の敵性信仰だった事もあって、ローカルな信仰だったにもかかわらず、これでもかこれでもかと悪魔化される事となります。

様々なバアルの中には天使になったものもいれば悪魔化した者もいますが、カナンのバアルはまあその中では、悪い形で名前が残されてしまった例であるわけですね。





3、カナンのバアル

魔界、台東区。

 

既に進入路は確保されていて、龍穴から入ることが出来た。入ってみて分かったのは、既に其処は平穏な地ではないということだ。

 

魔界は基本的にどこも血なまぐさい地獄絵図だったが。

 

此処は特に酷い。

 

既に多数の悪魔が乱戦を繰り返している。

 

龍穴の周囲にも悪魔が多数いて、煌達を見て襲いかかってくる。これは、まずはこの辺りからしっかり制圧しなければならないだろうな。

 

そう判断して、即座に戦闘に移る。

 

イチロウもすっかり戦闘になれていて、すぐに仲魔を展開。

 

ミヤズも支援の態勢に入る。

 

ユヅルはいうまでもなく、戦闘は手慣れている。

 

まずやるべき事は、告げられた。

 

アブディエルが譲渡した鍵三つを集める。

 

至高天への入り口は厳重に封じられていて。まずは万古の神殿というのを突破しなければならないらしい。

 

時間さえ掛ければ突破は出来るらしいのだが。

 

先んじるには、手順を踏んだ方が早い。

 

それに、鍵を渡されたギリシャ支部、インド支部、北欧支部は、いずれ劣らぬ戦力を持ち込んでいる。

 

いずれも打破した方が良い。

 

それについては、越水長官から指示を受けていた。

 

越水長官はバックアップに務め、最終的には至高天に自分も来るらしい。それまでは、東京を守ってくれるそうだ。

 

昨日は一日休んで東京にいたが。

 

ティアマトが安定させてくれたから、だろうか。

 

かなり東京の状態は良くなっているようである。

 

これならば、台東区での激戦が終わるまでに、東京がどうにかなってしまうようなことはないだろう。

 

そういうことだった。

 

無心で襲ってくる多数の悪魔を倒す。

 

悪魔だけじゃない。

 

明確に神に属する者も襲ってくる。

 

日本支部は相当に目障りであるらしい。

 

だが、蹴散らす。

 

一時間ほど無心に戦い続けて、まずは龍穴周辺の安全を確保。

 

天津神のうち、力を取り戻してきている何柱か。

 

今回はオモイカネとタケミカヅチが来てくれて。結界を展開し始めた。此処を拠点に、周囲を少しずつ調査していく。

 

お抱えのサマナーを兼ねているらしい神主が来て、地鎮祭を始める。

 

それらは見ているだけ。

 

こちらとしては、やることがいくらでもある。

 

「一度休憩。 交代で見張りに立とう」

 

「じゃ、俺が先に見張りをするよ。 休憩していてくれ」

 

「分かった。 言葉に甘えさせて貰う」

 

イチロウが率先して見張りに立つ。

 

森可成が高所に陣取ると、周囲を油断なく見張ってくれていた。ユヅルは天狗達を。煌は天使達を。それぞれ偵察に出す。

 

タオが光の力で結界を補強。

 

ヨーコはその辺のがれきに座ると、あくびをしていた。

 

相変わらず余裕綽々だが。

 

実際には、あまり余裕はないことが分かってきている。

 

アマノザコが告げてくるのだ。

 

ヨーコは完全に反転した力。元はタオと同質だった力が、天使達の裏切りによって反転した影響を心身に受けているみたいだ、と。

 

だから露悪的な言動を取るし。

 

それでありながら、最終的にはカディシュトゥとの決別を決断してくれた。

 

あれでいて、煌のことを気に入ってくれているようだし。

 

今ではイチロウを認めてもくれている。

 

人間らしさが戻りつつあるのだろう。

 

だがそれでありながら、人間をやめつつある。

 

心身にそれで影響が出ないわけもなく。色々と複雑なのだろうと言うことだった。

 

煌も龍穴で今の消耗を回復しながら、しばし休む。

 

だが。

 

あまりにも今までそこにいました、とでもいうように。

 

結界内に、それが姿を見せていた。

 

「久しぶりですわね、夏目煌」

 

「デメテル!」

 

さっと、全員が戦闘態勢を取るが。

 

デメテルは余裕綽々だ。くすくすと笑ってみせる。

 

それだけ戦力に自信があるのか。

 

いずれにしても、この程度の結界、通り抜けるのは児戯に等しいと身で示して見せた訳だ。

 

流石はオリンポス十二神の一角。

 

侮れない存在である。

 

「この台東区、でしたっけ。 魔界と落ちた地で、戦乱が始まりましたわね。 様々な勢力の小競り合いが起きていますわ」

 

「そうだな。 それで何用だ」

 

「大御所が動き始めましたわ。 恐らくは貴方にとっても有用な話ですわよ」

 

「……聞かせてほしい」

 

それでこそ、と幼い顔に老獪な表情を浮かべるデメテル。

 

もはや本性を隠していない。

 

子供みたいな姿をしているが。

 

デメテルの本質は、老獪極まりない存在だ。見かけと中身が全く一致していない。魔女とでも言うべきなのかも知れない。

 

「カナンのバアルと言えばおわかりですかしら」

 

「ああ、分かる。 一般的にバアルと思われている存在だ。 中東に数多いたバアルの中でも、初期における一神教の最大の敵対的信仰の主だな」

 

「その通り。 ま、我々からすれば取るに足らぬ小物なのですけれども。 一神教の長年の信仰で、たかがローカルな信仰に過ぎなかったカナンのバアルは、悪魔としてすっかり巨大な存在に肥大しましたわ」

 

まあそうだろうな。

 

同じバアルでも、恐らくはカルタゴ辺りで信仰されていたバアルの方が、余程歴史への影響力は大きかったことだろう。

 

何しろ、ローマ帝国と互角に戦ったカルタゴの驍将、あの歴史的な存在であるハンニバル。

 

その名前は、バアルの恵みという意味だ。

 

勿論此処で言うバアルはカルタゴで信仰されていたバアルであって、カナンのバアルとは別神格だが。

 

「それでカナンのバアルがどうかしたのか」

 

「この機に乗じて創世をもくろんでいるようでしてね。 私としてもその力の一部を取り込んでおきたい。 貴方方としても、情報を得たい。 何しろ座に着いていた存在ですものね」

 

「……そうだな」

 

ただ、煌が決めることじゃない。

 

一度皆で相談する。

 

そう言うと、ふっと笑ってデメテルは姿を消す。

 

ちなみに、場所については龍穴から行ける。天王洲アイルの近く。

 

以前、ベルフェゴールと交戦した場所だ。

 

バアルは典型的な牛の系譜の神で、天空神としての主神の一柱である。ただ所詮はカナンという一地方の信仰の神に過ぎず、しかも一神教に滅茶苦茶に毀損されたため、今では信仰は残されていない。

 

それは一神教を恨んでいるだろうし。

 

一神教の悪魔化の影響も強く受けているだろう。

 

それにもう一つ問題がある。既に天津神達がかなり力を取り戻しているといっても、高位神格相手にはまだ結界は力不足。

 

今のデメテルの侵入でそれを思い知ったこともある。

 

越水長官と、まずは相談する。

 

越水長官はすぐに台東区に来てくれて。結界の強化を見ながら、話をしてくれた。

 

「煌くんの言うとおり、カナンのバアルは悪魔として一神教に貶められ、その力は肥大化している。 いっそのこと倒して、元のカナンのバアルに戻してやるのが本人のためであるかもしれないな」

 

「そうすれば、座に関する情報も得られるかも知れない、ですね」

 

「ああ、その通りだ。 しかも……」

 

越水長官は言う。

 

煌の眷属化する能力は、デビルサマナーが悪魔を仲魔にするよりも一段階上の力であるという。

 

なんでも眷属化の力は悪魔の本来の力を引き出すだけではなく、その力を強化も出来るという。

 

マーメイドが良い例だと言われた。

 

マーメイドに出てきて貰う。

 

マーメイドを一瞥した越水長官は、言う。

 

「彼女は既に本来のマーメイドの力を逸脱し、中堅どころの神にちかい力を手にしている。 それは君の眷属化によるものだ。 勿論丁寧にデビルサマナーが育成した結果、そういった強化が為される場合もあるが、この場合は存在のあり方が変わっている。 元は歌声で船乗りを惑わせて海に引きずり込む水怪に過ぎなかった彼女は、今や水の神でありその暴威から人を守る存在となりつつある。 その反面、水による恐怖と、その恐ろしさも内包しているがな」

 

「そ、そうなんですか。 凄いな……」

 

「自信を持たれよ。 イチロウ殿も成長為されておる」

 

イチロウがちょっとだけ悲しそうにしたが、森可成がたしなめる。

 

いいコンビだなと思う。

 

森可成が最初から父親だったら、イチロウはこんな風に自信がない存在にはならなかったのではないか。

 

そうとさえ感じる。

 

そして、イチロウでさえ嘆いていた毒親から離れられて、良かったのだとも。

 

「カナンのバアルを元の状態に戻せば、座に関する仮説を証明できる可能性が高い。 私の方からも、依頼しておこう。 この近くにアモンが現れたという話がある」

 

「アモン?」

 

「一神教の悪魔だが、エジプト神話のラーの一角、アメンが悪魔化されたという説がある存在だ」

 

「その通りだ」

 

イチロウに対して、ユヅルが答える。

 

越水長官は頷くと、これはエジプト支部からの依頼だという。

 

「現在ラーの力の一部をアモンが不完全に手にしているそうでな。 これを打ち倒して、力を取り戻したいそうだ。 エジプト支部は日本支部と連携して、これから台東区での陣地構築に移ってくれるそうだが、移動のために準備がいるそうでな。 その前に、これをやってほしいそうだ」

 

「信頼できるのかしら」

 

「少なくともコンスさんは信頼して良いと思います」

 

まだ皮肉交じりに言うヨーコだが、ミヤズが即答。

 

その言葉がかなり力強かったので、ヨーコはそうとだけ言って、揶揄を避けた。

 

ミヤズは意志の力がとても強くなっている。

 

それにだ。

 

「コンスさんは信頼できますし、その側近は大丈夫だと思います。 でも私も調べたのですが、セトやアペプなどの危険な神格もエジプト神話にはいます。 それらには、気をつけなければいけないかも知れません」

 

「あら、現実的にものを考えられるのね」

 

「私は看護師志望でしたし、今はお医者さんになるための勉強をしています。 現実的に考えるのは、医療に関わる人間にとっての必須事項です。 セトの伝承を調べましたが、今煌先輩が従えているホルス神とエジプトの神々を相手に年単位で戦い続けた危険な神格で、その力は圧倒的です。 しかも主神についていた時期もあり、極めて強大で野心的な存在です。 油断はしてはいけないと思います」

 

「いや、俺だけ知能指数低くて情けない……」

 

イチロウがまた自信をなくすが。

 

森可成はイチロウ殿、とだけ一言言った。

 

別にイチロウはもう立派なデビルサマナーで、デビルサマナーという観点では現状では世界でもトップクラスにまで成長している。明確に上にいるのはツバメさんくらいだろう。

 

ミヤズは看護師志望としてずっと真面目に勉強してきていて、今は医師としての勉強もしている。

 

それは頭が良いのは当たり前だ。

 

それに対して、引け目を感じる必要なんてない。

 

「現実的で助かる。 エジプト支部との交渉、セトに対する警戒は、私の方でコンスと交渉しておく。 この地は私と天津の神々で守る。 そうだな、ユヅルくん、ヨーコくん。 君達も此処に残ってほしい」

 

「分かりました」

 

「了解」

 

「他の皆は、煌くんとともにカナンのバアルを仕留めてきてほしい。 出来れば眷属化してくれ。 聴取もしておきたい」

 

頷くと、煌はイチロウ、ミヤズ、タオとともに現地に出向く。

 

龍穴を使えばあっという間だが。

 

それでも、多少は心配だ。

 

すぐに天使部隊を展開。

 

ユヅルの仲魔ではない天狗が飛んでいる。警戒しているようだ。やべっと言うと、アマノザコが引っ込む。

 

代わりに、わーがひょいと顔を出していた。

 

「心配性だなーザコちゃん。 煌ちゃんいるから、別に問題ないと思うけどなー」

 

「そういうけど、苦手なんだよ。 ずっとアマノザコ様って追いかけ回されたし」

 

「だが、いつまでも逃げ続けるわけにも行かないだろう。 いずれ話を僕がつける」

 

「お願いね、煌。 信じてるからね、ね」

 

さて。顔を上げる。

 

前にベルフェゴールがいた辺りに、確かに凄まじい力の気配がある。天狗が気付いて降りてきた。

 

「以前見かけたナホビノどのか。 極めて危険な神格が具現化しようとしている。 離れた方が良い」

 

「情報通りだとするとカナンのバアルだな」

 

「そ、そうなのか。 それほどの大物が……」

 

「貴方達も逃げろ。 そうだ、台東区に日本神話の神々と、エジプト神話の神々が連携して陣を構築している。 今度天狗達も合流してほしい。 これから創世を巡る戦いが始まる。 天狗達、日本の妖怪も頼りにしている」

 

頷くと、天狗達は飛んで離れていった。

 

そうだ。

 

昨日から、フィンが一度楽園に戻っている。出来ればフィンの力も借りたいが、用事が済んだらまた来るという話だ。

 

今、主要な悪魔はほとんど台東区に殺到しているだろうから、あまり危険はないだろうが。

 

それでもあの楽園を踏みにじられるのは好ましいことではない。

 

それに、カナンのバアルが一神教に貶められたまま具現化するとかなり危険なのも事実である。

 

連携はとれないが。

 

此処で倒してしまうべきだろう。

 

壊れた高速道路を行く。悪魔がほとんどいなくなっている。

 

前はタオは苦労していたが、今は浮遊していて、問題なく立体的に動けている。ミヤズとイチロウも、それぞれ飛翔可能な仲魔達の力を借りて、移動を容易にしていた。時々雑魚悪魔を見かけるが、ほとんどは煌達を見るとさっと隠れてしまう。それくらい、力に差がついている、ということだ。

 

山の麓に到着。

 

さて、問題はデメテルの狙いだが。

 

「イチロウ、背後にも気を配ってくれ」

 

「ああ。 デメテルは何企んでるかわからない、だろ」

 

「そういうことだ。 越水長官がわざわざユヅルとヨーコさんを残したのも、それが理由だ」

 

「また見て確信したけど、俺の母親と同じ目してるよあの女神。 恨みがこもった目だ」

 

既に仲魔を展開しているイチロウが、いつでも攻め上がれると言う。

 

煌も大丈夫だ。

 

そのまま見上げて、敵が既に具現化していることを確認。これはそのまま戦闘になるだろう。

 

黙々と陣列を組んだまま山を上がっていく。

 

相手も気付いている。

 

山にはもう悪魔の姿はないし、周囲にも悪魔は一切見当たらない。

 

恐らく、バアルが具現化する時に、全て食らってしまったのだろう。この辺りにいた悪魔は、不幸な話だ。

 

山を登り切ると、其処には浅黒い肌をした、魚のようなかぶり物をして、手に杯を持った神がいた

 

バアルであれば、天空神であり、暴風神であり、豊穣神でもある存在。

 

煌を見ると、その神は笑った。

 

「ナホビノがいるとは聞いていたが、早速お出ましか。 その様子だと、既に半身がいるようだが……そのような神、はじき出して私が乗っ取ってくれよう」

 

「貴方の名前は? 僕は夏目煌という」

 

皆が自己紹介をすると、その存在はからからと笑った。そして、しばらく笑ってから、真顔になる。

 

どうも情緒が不安定だな。何か大事なものが欠落しているかのようだ。

 

「私はバアル。 古くには座にいた存在である」

 

「バアルと言っても様々にいる。 カナンのバアルで間違いないか」

 

「……そ、そうだった。 私はカナンの地のバアル。 そ、そして? わ、分からぬ。 座にいたのは確かなのだが」

 

「今、楽にして差し上げる」

 

やはりこれは様子がおかしいな。

 

一神教は、多神教に対して極めて解釈が雑だった。バアルという存在が、単一の邪神と後に勘違いされたように。ギリシャの神々を、実在の王をモデルにしているとして、貶めたように。

 

このバアルは、明らかに一神教の悪影響を受けている。

 

それを解除するには、倒して眷属化するしかないだろう。

 

凄まじい暴風が吹き荒れようとするが、アマノザコが即座にそれを相殺する。だが、アマノザコが叫んだ。

 

「すっごい力! 長くはもたないよ!」

 

「分かった! 行くぞ皆!」

 

さっと散開して、一斉に襲いかかる。

 

バアルは頭を抑えながら、指向した風をたたきつけてくる。文字通りのソニックブームである。

 

それをアマノザコが、吠えながらはじく。何度も何度も。

 

その間に煌が懐に入り込む。

 

だが、杯を持っていない手で抜いた剣で、手刀を受け止めてみせるバアル。にっと笑うと、周囲に雷をたたき込んできていた。

 

暴風神だ。

 

単純に煌の上位互換と言う訳だ。

 

「相性が良さそうだな! 今いる半身をはじき出して、やはり私の創世の糧としてくれる!」

 

「させるかよっ!」

 

横から突っ込んだイチロウが、剣撃を見舞うが。

 

多数の悪魔が地面から湧いてきて、壁になる。

 

恐らくは、既に名前さえ忘れられたバアルの眷属達だ。あちこちに大量に湧いてきて、それぞれが襲いかかってくる。

 

それぞれは弱くても、数が多い。しかも暴風の中、強化されている状態だ。

 

激しく斬り合いながら、煌は判断する。

 

長期戦は不利だ。

 

ミヤズが針の穴を通すような狙撃を撃ち込むが、それをも上回る反応速度で、バアルが弾を回避してみせる。

 

山全体がバアルの眷属だらけ、という状況である。

 

それぞれが身を守るので精一杯。

 

だが、暴風神には、対抗策がある。

 

「タオさん!」

 

「ええ!」

 

タオが祈るように手を組むと、詠唱を開始。凄まじい光が周囲にほとばしる。それを邪魔しようとするバアルの眷属を、森可成、義経公、それに他化自在天が蹴散らして回る。バアルの眷属が、バアルの援護にいけないように、イチロウが上手に立ち回りつつ、アールマティがそれを支援。

 

更にアルテミスが、氷の一撃をばらまき。

 

アリスが、大地に手を突くと、辺りのバアルの眷属をまとめて塵に貸した。きゃっきゃっと笑っている。

 

マーメイドが、すっと浮かび上がってくると、詠唱を開始。

 

よし。

 

連携の準備は整った。

 

後は。

 

「何を企んでいるかは分からないが、座に昔はいた私の力、貴様ごとき歴史浅い神の力程度で、打破できると思うなあ!」

 

「貴方が「誇り高いカナンのバアル」で、しかも此処が中東であったのなら対処は難しかったかもしれないな。 だが今の貴方は一神教に貶められたバアルに過ぎない」

 

「なんだと……」

 

「煌先輩!」

 

ミヤズがアマビエとともに詠唱を終えた魔法を展開。

 

煌の力、速度、防御能力、全てが飛躍的に向上する。更にイズンがリンゴの力を周囲に展開。

 

爆発的に高まった力を見て、バアルが明らかに顔色を変えた。

 

だが、煌が攻め立てても、まだ互角。じりじりとアマノザコは押されている。アマノザコが崩れたら、一瞬で形勢は逆転する。

 

あの小さいのを襲え。

 

そうバアルが吠え猛る。それで、多数の悪魔が襲いかかるが、それらの前にオデットが立ち塞がる。

 

そして、必死に小さな剣を振るって、何体かを倒したが。まとめて襲いかかられて、地面に。そのまま食われてしまう。

 

だが、明らかに弱いオデットをなぶるのが楽しくなったのか、バアルの配下達はそれで明らかにアマノザコから注意がそれる。

 

このとき。

 

準備が整った。

 

ありがとうオデット。最高のアシストだった。

 

そうつぶやきながら、煌は合図を出す。

 

同時に、タオが詠唱を終え、辺りに凄まじい光が満ちていた。

 

「むっ……!」

 

「ホルス!」

 

「任された!」

 

タオの光の中、最大限まで強化された光の鳥が、空に向けて飛ぶ。

 

それはバアルが作り出した魔法の雷雲を消し飛ばし、一気に辺りを嵐から好天へと切り替えた。

 

バアルはぐっと歯を噛むが、天空神なのだ。

 

これが不利になるものかと、にっと笑ってみせるが。

 

此処からだ。

 

アマノザコが、力を振り絞って最後の風を煌に集める。

 

更に、アナーヒターがそれに水の力を追加。マーメイドの長時間詠唱で強化された水が、文字通りの雷雨を、煌にだけまとわりつかせる。

 

それを見て、バアルが驚愕に声を上げていた。

 

「き、貴様だけで雷雨を独占する! それが貴様の策であったか……っ!」

 

「そうだカナンのバアル! そして……!」

 

突貫。

 

必死に剣で防ごうとするカナンのバアルだが、既に形勢は逆転。

 

更に言うと、この程度の剣技など、幾らでも見てきた。剣技だけなら確実にチェルノボグの方が上。

 

今更、こんな剣技に遅れは取らない。

 

ガンと、激しい音とともに、剣を弾き飛ばす。手から剣を弾き飛ばされたバアルは、必死に新しい武器を作り出そうとするが。

 

その背後に回っていた義経公が、背中をそのまま切り下げていた。

 

竿立ちになったバアルの胸に穴が開く。

 

このタイミングを狙っていたミヤズによる、完璧な狙撃。確か一発一千万くらいする弾丸らしいが。

 

エイシェトにも致命打を与えた一撃は、悪魔として貶められたカナンのバアルにも効果はてきめん。

 

更に、それで動きが止まったバアルに。

 

煌は、天に手刀を向ける。

 

それが必殺の一撃だと悟ったバアルは、悲鳴混じりの泣き言を口にしていた。

 

「お、お、おのれ! 一神教にて、私の存在が滅茶苦茶に乱されていなければ! この程度の雑魚どもになど……!」

 

「わっ!」

 

義経公が要領よく逃げ。

 

更に必死に逃れようとしたバアルだが、耳元でわーが完璧なタイミングで脅かす。

 

とどめにアリスが足下を土の魔法で固めて、もはや逃れられなくなったバアルは、半泣きになって煌を見て。

 

煌が振り下ろした天叢雲剣によって、唐竹に両断されたのだった。

 

 

 

龍穴で力を回復する。

 

狙撃の態勢に入っているミヤズや、詠唱中のタオやマーメイドに攻撃が行かないように、戦場を走り回っていたイチロウはくたくただったが。それでももう弱音は吐かなかった。

 

森可成も良くやり申したと、イチロウを褒めていて。

 

イチロウも心なしか嬉しそうだった。

 

少しだけ時間が余ったので、煌は妖精の楽園に様子を見に行く。

 

悪魔の気配はなくなっていた。

 

だが。

 

フィンがしおれているティターニア女王と、オベロン王に、説教をしていた。

 

なんでもフィンがいなくなってからまた浮気をしたらしく、それで妖精達が総スカンをしたらしい。

 

自分たちでさえ反省したのに。

 

それで王を下ろすという話にまでなっていたそうだ。

 

其処でフィンが皆を説得して、それで今王夫妻を説教しているところであるらしい。

 

正座して二人はくすんくすんと泣いていた。

 

威厳もなにもないし。妖精達も相当に頭に来ているようだったが。まあ煌にはあまり関係がない。他人の家庭に首を突っ込む気はない。

 

フィンが来る。

 

「強大な悪魔の気配があったが、済まなかったな。 加勢に駆けつけるべきだった」

 

「いや、問題ありません。 そちらの用事は終わりましたか」

 

「ああ。 二人とも反省したようだ。 もう大丈夫だろう。 当面はな」

 

それから、軽く話をする。

 

そうすると、カナンのバアルときいて、そうかとだけ言って。フィンは、煌に膝を突いていた。

 

「俺は理想の王を探していた。 今ならば、貴方をそう考える事が出来る。 俺を貴方の騎士にしてほしい」

 

「フィンさん」

 

「俺は知っての通り、ろくな騎士ではなかった。 だからこそ、これからまっとうな騎士として、貴方の配下として心を入れ替えたいのだ。 カナンのバアルまで打ち倒した貴方には、武勇、知恵、そして公正さ。 全てが備わった。 既に力でも俺より上だ。 ろくでもない欠点だらけの、欲で部下まで失ってしまった愚かな騎士であった俺を、本物の騎士としてほしい」

 

「……分かりました」

 

手を取る。

 

嬉しそうにフィンは頷くと、眷属となった。

 

また戦力が上がったが。

 

同時に提案してきた者がいる。

 

アナーヒターである。

 

「そろそろ私はおいとまさせて貰うわ」

 

「……此処で暮らしたいという事だろうか」

 

「ええ。 この地はまだ守りが足りない。 それに、この美しい水、私が守るのが一番と思ったからよ。 何より、既に貴方の側のかわいい人魚は、私の力に並んだ」

 

それほどだったのか。

 

アナーヒターが言うには、既にマーメイドには秘技を含めて全てを教えたという。そうか。だとすれば、後は。

 

煌が力を上げれば、それでマーメイドもそれを使いこなせるというわけだ。

 

アナーヒターの眷属契約を解除する。

 

他にも、数体の眷属や皆の仲魔が、此処で暮らしたいと言った。

 

皆もそれを受け入れる。

 

金鬼や鵺が数体、此処で守りを担当するという。まあ、フィアナ騎士団もいるし、アナーヒターもいる。

 

何よりキンマモンと荒脛巾神が見張っている。

 

荒々しい金鬼はフィアナ騎士団と話が合うだろうし。

 

鵺も本来はただの音の怪だ。邪悪の限りを尽くすこともないだろう。

 

勿論、このままイチロウとミヤズの配下である事を選んだ鵺や金鬼も多かった。

 

フィンが手を振る。直前まで正座させられていた王夫妻を、これからはアナーヒターが見張るという。

 

それならば大丈夫だ。

 

それと、もう一つ切り札が出来た。

 

出来てはいたのだが、まだ力が足りなくて、呼び出す自信はあまりなかった。ただそれも、先のバアルの撃破とマガツヒの取り込みで、可能になった。

 

次はアモンだな。

 

アモンも不安要素の一つだ。倒しておくべきだろう。

 

それに、アモンは悪魔化したとは言え、エジプト神話の神々と影響も深い。セト辺りと手を組んで、悪さをするかも知れない。

 

不安要素を排除するのは、此処からの戦いでは必須だ。

 

復活したばかりのオデットが言う。

 

「あの、私ももっとお役に立ちたいです」

 

「もしも良かったら、私の仲魔に移る? 医療支援であれば、とても有能なのを見ているけれど」

 

「ありがたい話なんですが、今の私は、もっと他の方法で役に立ちたいんです」

 

ミヤズの提案を、オデットが断るが。ミヤズは嫌な顔はしなかった。

 

それにだ。

 

煌が見たところ、オデットはそろそろ転化の時期を迎えている。

 

恐らくだが、今の姿から変化することで。

 

何かもっと強力な神魔に変わることが出来るかも知れない。

 

煌は、オデットの願いを叶えてやりたい。

 

オデットの話は、皆にしておく。みそっかすのヴァルキリーである彼女だが。可能性はきっと大きい。

 

その可能性を引き出してやるのは。

 

煌の仕事だ。







かくしてフィンが正式に煌の眷属となりました。

原作でも数度のやりとりのあと仲魔になってくれるのですが、クーフーリンとあったイベント時などにフィンが人生を後悔している様子がよく分かりますね。

いずれにしても、ベルゼバブを除く有力な元バアルはこれでほぼ倒れました。

後アドラメレクがいますが、あれは出がらしですね……


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