真女神転生VV二次創作 牛蛇相克   作:dwwyakata@2024

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原作における第四フィールド、台東区での激戦開始です。

最初の相手は原作では面倒な手続きを経ないと戦えない相手、アモンです。

真Vの時点では最強の炎使い候補でしたね。真VVではコンス・ラーのが強くなってしまいましたが。





1、強豪神魔

台東区に作られた陣地に再度出向く。

 

天狗が多少集まり始めていて、各地の情報を収集してくれていた。

 

その中には、見覚えがない神格がいた。

 

明王のようだが違う。

 

天狗達が、煌を見ると、礼をして。紹介してくれた。

 

「我々が呼び出した存在、蔵王権現だ」

 

「!」

 

「煌、知ってるのか」

 

「ああ。 修験道に登場する、あらゆる神々を内包するという無茶な設定の神格だ。 仏教や神道などを含めてな」

 

蔵王権現は、じっと煌を見ていたが。

 

やがて、天狗の長らしい鼻高天狗に言う。

 

「どうやらやはり其方達が呼び出したアマノザコは、既にこのものと一体となっているとみていい」

 

「そうでしたか……」

 

「アマノザコ。 僕が話をつける」

 

「し、信じてるからね」

 

アマノザコが顔を出す。

 

天狗達が色めきだつが、煌は静かにそれを視線で掣肘した。煌の視線を受けて、天狗達は露骨に怯む。

 

威嚇しているつもりはないが。

 

アマノザコは、今や煌にとって大事な眷属だ。

 

「アマノザコは貴方方に追われるのを嫌がっている。 そろそろ、しっかり話をつけておきたい。 追うのはなぜだ」

 

「……我ら日本の妖怪も、18年前の混乱で大きな被害を受けた。 天津も国津も壊滅的な打撃を受け、八百万の神々は力を失った。 そんな中、我らには神が必要だったのだ。 そこで、魔界で見つけた、朽ち果てたアオガミ型神造魔神の残骸に、ある呪術を施した」

 

「ある呪術とは」

 

「尸解仙となる呪術だ」

 

尸解仙か。

 

要するに人間から仙人になる方法だ。

 

日本では仙人というと超越的な人間くらいのイメージだが、中華ではほとんどの場合神とほぼ変わらない。

 

恐らくは、天狗達は元は中華妖怪というのを利用して、この尸解仙の秘技を用いたのだろう。

 

「誰も頼れない以上、我々も必死だった。 アオガミ型神造魔神が素戔嗚尊の分霊体である事は我々も知らされていたし、我らにとっても素戔嗚尊の復活は重要だったからな。 だが、それで素戔嗚尊がよみがえることはなく、よみがえったのはアマノザコだったのだ」

 

「……」

 

なるほど、合点がいった。

 

江戸時代の創作神格であるアマノザコだが。その祖は素戔嗚尊が吐き出した猛気であるという設定がある。

 

恐らくその辺りからたどって、アマノザコを被った素戔嗚尊の一部が、半端な形で覚醒してしまったのだ。

 

それがアマノザコなのだろう。

 

「今の僕の力は分かるだろうか」

 

「ああ、ナホビノとなっている貴方の半身は、アオガミ型神造魔神だ」

 

「そうだ。 素戔嗚尊の分霊体であり、アマノザコと本質的には同じ存在だ。 だから、アマノザコは僕ととても親和性が高く、欠かせないパートナーだ。 今後の創世のためにも、僕とともにある事をアマノザコも望んでいる。 貴方達も、創世のために、その状況を見守ってほしい」

 

「……分かった」

 

天狗の長が肩を落とす。

 

そして、情報をくれた。

 

「台東区の北に、極めて危険な悪魔が出現している。 ギリシャ支部が陣を敷いた近くだが、彼らは対処するつもりがないようだ」

 

「極めて危険な悪魔」

 

「アバドンだ」

 

「!」

 

体内が地獄になっていると言われる、超大物悪魔。

 

このタイミングで姿を見せたと言うことは、恐らくは分霊体ではない。本体だとみて良いだろう。

 

「とても我らでは手に負えぬ。 奴は東京を食い尽くすつもりだ。 出来るだけ、対処を急いでほしい」

 

「了解した」

 

敬礼を交わす。

 

アマノザコがひょいと顔を出すと、天狗達が行くのを見送る。

 

「煌、守ってくれた! それにずっと一緒にいてくれるんだね!」

 

「ああ。 元々一つの存在だった。 だから、離れるつもりはない」

 

「分かった! 煌と一緒に歩くよ! どっちがどっちを守るとか、なし! あたしは、もう煌とともにあるし、煌の仲間もみんな守るからね、ね!」

 

アマノザコが嬉しそうで何よりだ。

 

なぜかイチロウが感動しているが。

 

まあ、ここのところ、ろくでもない夫婦関係ばかり見たから、かもしれない。

 

 

 

まずは偵察だ。

 

魔界台東区の地形はかなり変わっている。これは他の魔界も同じだが、巨大な高速道路の名残があり。

 

それはあちこちで大きく破損していた。

 

崩れた高速道路の残骸が痛々しい。

 

煌の天使部隊と、ユヅルの天狗部隊。イチロウとミヤズの鵺と金鬼。これらを大量に展開して、情報を集めていく。

 

それで分かってきたのは、北部にギリシャの神々。

 

南部に北欧の神々。

 

そして東部にインドの神々が、陣を敷いていると言うことだった。

 

ただ、インドの神々は大混乱に陥っており、主に浅草……万魔会談で言っていた通りだが。其処を中心に敷いている陣は、文字通り麻のように乱れているという。

 

それでいながらシヴァは姿を見せる様子もない。

 

完全にパニックに陥っているそれを、冷徹に比較的近くにある北欧の神々が見張っているそうだ。

 

また、北部にはやはり強い気配がある。

 

どうもアバドンで間違いないらしい。

 

アバドンは空間そのものを食い荒らす気配を見せていて、このままだと東京の方にも影響を与えかねないという。

 

今、先の大天狗や蔵王権現が見張りに出向いているようだが。

 

とても倒す力はない。

 

それで話は一致しているようだ。

 

更に、である。

 

エジプト支部が、話を持ってくる。

 

コンスは出ているらしく、来たのはトートだった。ジェフティでもいいが。

 

陣頭指揮を執っている越水長官とともに、皆で話を聞く。

 

「非常にまずい事態が起きている。 アモンが近くに陣を張った。 更に、セトが離反して、それに合流した」

 

「アモンは一神教に貶められたとは言え、セトとは犬猿の仲の筈だ。 それが手を組んだのか」

 

「そうだ。 どうやらこの機会を狙っていたと見ていい。 我らにセトを倒す武力は存在しない。 それに、アモンが堕天状態から力を取り戻し、アメンになった場合は、創世を再び狙うだろう」

 

それは、まずいな。

 

エジプト時代の理を敷かれでもしたら、また神権政治が復活でもしかねない。

 

エジプト時代だったらそれで良かっただろう。

 

だが、今そんなものを敷かれるわけにはいかない。

 

イチロウも、既にアモンについては説明してあるし、神権政治が如何にまずいかは話をしてある。

 

エジプト時代では、神の代理人どころか、王を神そのものとして扱った。

 

神の血統を維持するために、近親交配……親子婚や兄妹婚などを平気で繰り返し、取り返しがつかないほど肉体を弱体化させた。

 

神権政治というのはそういうものだ。

 

現在の専制主義よりも更に苛烈。

 

当時はそれくらいしないと人々がそもそも秩序を保てなかった。今は。その時代は過去になっている。

 

そんな過去の遺物を、また持ち出されるわけにはいかない。

 

それにだ。

 

「アモンを倒せば、太陽神の力を回収できる」

 

「コンスさんに言われていたものですね」

 

「そうだ。 今僕の切り札になっているホルスだけではなく、ミヤズさんにも太陽神の力を分け与えることが出来るはずだ。 座にまでついていた太陽神となると、その力は生半可な太陽神のものではないだろう」

 

それだけじゃない。

 

アモンから、太陽神の情報を取り込むことも出来る。

 

それは創世の際に、何がまずかったのかを理解するために必須となるだろう。

 

陣を一瞥。

 

タオには来て貰うとして、ヨーコは陣を守るために残って貰いたい。

 

エジプトの神々と日本の神々。

 

後は日本支部と同盟を組んだあちこちの神々が守りについてくれているが、それでももう少し守りがいるか。

 

今台東区に布陣しているのは、いずれ劣らぬ強豪ばかりなのだ。

 

「私が陣頭で防御の指揮を執る。 煌くん、気にせずに行ってきてくれるか」

 

「越水長官」

 

「何、私も天津神月読尊だ。 しかも、ユヅルくんがナホビノの自覚をしたことで、かなり力が戻ってきている」

 

「それならば、僕も此処に残ります。 更に守りを固めることが出来るでしょう」

 

ユヅルが提案。

 

分かった。それならば、任せる。

 

アモンとセトのコンビに加え、相当な雑多な神々が混ざっているはずだが。それでも、今のタオと、イチロウとミヤズ。

 

それにこの間眷属になってくれたフィンや、それに。

 

霜の巨人が転化してくれた切り札が一枚。更に、オデットがもうすぐ転化しそうである。

 

行けると煌は判断した。

 

「分かりました。 最優先目標として、アモンとセトの排除。 続けて、アバドンの排除に取りかかります」

 

「アバドンについては、僕も出る。 極めて危険な悪魔だ。 それまでに、此処の守りを徹底的に固めて、僕自身も戦力を調整しておくよ」

 

「頼む」

 

では、出る。

 

トートが案内してくれる。

 

辺りは凄まじい強さの悪魔ばかりだが、かなりの数が倒れている。強豪悪魔が相食む地獄絵図だ。

 

巨大な蛇が巨人に巻き付き、激しい殺し合いをしている。

 

ティアマトが復活した事で、明確に蛇の系譜の神が勢いづいているようだ。

 

蛇は巨人に噛みつくと、猛毒を注入。

 

巨人は暴れていたが、やがて動かなくなり。巨大な蛇は、ずるずると体を引きずって去って行く。

 

蛇もまた、無傷ではないようだ。

 

其処を鳥の悪魔が襲い、空に連れ去っていく。

 

巨大な鳥の悪魔は、蛇に対してかなり強く出られるようだ。ただ。蛇の悪魔も負けてはいない。

 

「まるで怪獣大戦争だ」

 

ぼやくイチロウ。

 

反撃に出た蛇の悪魔が、鳥の悪魔に絡みつくと、もつれ合って地面に激突。

 

しばらくもみ合っていたが、やがて両者ともにマガツヒとなって消えていった。

 

足を止める。

 

煌もタオも浮いているから、足を止めるというのも少し変か。いずれにしても、此処は陣地だ。

 

トートには下がって貰う。

 

「越水長官に知らせてほしい。 交戦開始したと」

 

「分かった。 くれぐれも気をつけてくれ。 セトはいつ造反してもおかしくなかったが、このタイミングであったとはなあ」

 

「何かを狙っていたのかも知れない。 気をつけてほしい」

 

辺りが、いきなり熱砂になる。

 

周囲は元々砂漠だったが、気温は安定していた。

 

それがいきなり、灼熱の砂漠へと変化した。

 

環境そのものを切り替えてきた。

 

自分に都合が良いバトルフィールドというわけだ。

 

吹き付けてくる死の風。

 

砂漠の熱は、凄まじい勢いで命というものを奪い去っていく。即座にマーメイドが出て、水の壁を展開。

 

更に温度を冷やしに懸かる。

 

イチロウとミヤズも、冷気の魔法が使える悪魔を出すが。

 

アマビエが、怯えた声を上げた。

 

「なんという暑さじゃ! ぷりちーなわらわが干物になってしまうぞ!」

 

「乾燥と気温に加えて、強烈な太陽光。 太陽光も遮らないと危ないです」

 

「分かった、どうにかする」

 

煌が即座に指示。

 

アマノザコとアリスが連携して、空に黒雲を生じさせる。

 

それで、自分の領域のルールが乱されたと判断したのだろう。この領域の主が、機嫌を損ねたようだ。

 

程なくして、姿を見せる。

 

空から来るのは、無数の動物が重なり合ったような姿。

 

元々セトは、様々な動物の要素がある存在として描かれていた神だ。あの姿は、本来のものが近いのだろう。

 

この間エジプト支部で見た、龍のような姿とは違う。

 

それが、旋回しながら、こちらを見下してくる。

 

「人間どもが。 俺の領土に土足で踏み込んできたか。 ようやくコンスの小僧の犬を辞められたのだ。 元になど戻ってたまるか」

 

「セト。 砂漠の軍神であり、エジプトを守ったこともある貴方の誇りはどこに投げ捨てた。 まるでチンピラではないか」

 

「黙れ。 都合の良い時ばかりに俺にすがり、用が済んだら太陽神信仰に戻る。 そのような不義理を働いたのは貴様等だ。 幸いコンスと懇意にしていたその娘、俺とも相性が良いようだ。 ナホビノになるつもりはないようだが、力尽くで屈服させてくれるわ」

 

「お断りします!」

 

ミヤズが一喝。

 

それに対して、セトは笑うばかりだ。

 

更に、である。

 

砂漠を吹き飛ばしながら、姿を見せるのは。

 

おぞましいほどの熱を纏った、フクロウの顔を持った巨大な蛇だ。腕があるから、正確には違うかも知れないが。

 

間違いない。

 

こっちがアモンだ。

 

「セトよ、勝手なことばかりいうでないわ」

 

「ふん、くだらん。 貴様と組んだのも、あくまで一時的な事よ。 其処の邪魔なナホビノを叩き殺した後は、次は貴様だ」

 

「そういうことは勝ってからいえ。 コンスのところに放っていた使い魔から情報は得ていたが、今の我らが同時に懸かっても、こやつ等は簡単に倒せるとは限らん」

 

「随分弱気なものだな」

 

セトが笑う。

 

自信家のセトと、慎重なアモンか。

 

叩くのは、セトからにしたいが。

 

フィンが具現化する。

 

「煌どの。 俺がミヤズどのを守る。 いや、守る必要もないな。 ともに戦う」

 

「分かった。 ホルス!」

 

「此処に!」

 

出現した光の鳥を見て、セトが敵意の声を上げる。

 

それはそうだろう。

 

オシリスを殺して王位を奪ったセトを倒したのはホルスだ。神話では宿命の敵といっていい存在である。

 

「アモンは僕が倒す。 皆はセトと……あれらの相手を頼む」

 

「うえっ! なんだよあれ!」

 

白い蛇が、大量に湧き上がってくる。

 

あれは、恐らくはアピスだ。

 

エジプト神話における邪悪なる蛇の悪魔。

 

太陽の船に毎日襲いかかり撃退される逸話がある存在。倒しても倒しても復活するという。

 

ただし、あくまでアッシャー界に具現化している状態だ。

 

不死身の逸話がある神でも、本当に不死身になるわけではない。マガツヒを使い尽くせば、倒せる。

 

森可成が、イチロウに頷く。

 

イチロウも、それに頷き返していた。顔を手で叩いて、気合いを入れている。

 

タオも、静かに頷くと、戦闘態勢に入っていた。

 

ホルスを展開するのは力が上がってきていることもあるので、行ける。ホルスがまだ不完全体だから、でもあるが。

 

煌がこれから展開するのは。

 

本当の意味での切り札だ。

 

「来い。 司法の神にて、天空の神。 北欧神話の最初の最高神。 テュール!」

 

「此処に!」

 

現れ出でたのは、北欧の神らしくもない理性的で穏やかな雰囲気の巨神だった。

 

司法の神テュール。

 

霜の巨人が望み、悪魔合体で強化した結果、ギリギリで従えることがかなった現在の煌の切り札だ。

 

ちなみに片腕だが、腕が一本である事に戦力不足は感じない。如何にオーディンの時代に貶められたといっても、元は伊達に最高神ではないのだ。

 

アモンが、面白がる。

 

「これは面白い。 それほどの神を従えるほどに、今の貴様は力をつけていたか、日本支部のナホビノ!」

 

「煌どの。 今の私は肉壁ではない。 力を存分に振るい、貴方の剣となろう」

 

「助かる。 ともにあの驕り高ぶった連中を仕留めよう」

 

「承知!」

 

アモンが凄まじい火力を全身から吹き上げる。

 

セトが砂塵を竜巻にしてそれを火炎竜巻にする。

 

灼熱地獄での激闘が、今開始された。

 

 

 

台東区で早速大規模神格の戦闘が始まった。

 

現在展開している大きな勢力は、それら全てがまずはそれに注目した。その中の一つであるインド支部は、ヴァスキを失って動揺していたが。

 

それを鎮めるようにして、ある神格が姿を見せていた。

 

かなり弱体化しているが、ヴィシュヌである。

 

四腕の美しい男性神格だ。両性具有の性質を持っていて、それ故に容姿は中性的である。戦闘神格としての面が目立つシヴァほどではないが、それでも戦闘力はかなり高い。ただしやはり真っ向勝負ではそれほどの力はなく、鳥王ガルーダに負けた逸話もある。

 

ヴィシュヌは更に言えば多くのアバタールを失って力は半減しているが、それでも他のインド神話の神々よりも強い。

 

インド神話の神で、ヒンドゥーの神格で最も偉いのは、形式的にはブラフマー。その下にシヴァとヴィシュヌが続く。

 

このうちブラフマーは戦闘に向いていない神格で、更にはあまり有能ともいえない。これはヒンドゥーの思想がまとまった時。ブラフマーの信仰をしていた民が、一番力関係で劣っていた。それを意味している。

 

ヴィシュヌはヒーローとして問題を解決する神だ。

 

それもあって、インドの民からは現在でも人気が高い。

 

そのアバタールの一つには曲解した仏陀もあるが。

 

まあこれは仏教側でも、シヴァやヴィシュヌを意図的に貶めているので、おあいこであるだろう。

 

ヴィシュヌは混乱している神々をまとめると、指示を出して、陣容を再編成する。

 

その前に跪いたのは。

 

田町近くにて、陣を敷いていたアプサラスだった。

 

「ただいま戻りました」

 

「うむ。 弱者を救済していたと言うことだが」

 

「はい。 一段落したので戻って参りました。 それに現在あの地には、強大な悪魔は存在しておりません。 ただ、此処での用事が済んだら、すぐに向こうに戻るつもりですが」

 

「ほう。 雑魚悪魔どもを兵にして、我らの役に立てようと思わぬのか」

 

揶揄するようにいうヴィシュヌ。

 

事実、アプサラスはそうするべきだったのだろう。

 

だが、アプサラスは言う。

 

「私の前に現れた、まっすぐな者がいました。 そのものは、私と対立した悪魔との言い分を聞き比べ、正しいと判断した行動を迷いなく取りました。 その裁きはとても見事で、私も思わず見入るほどでした」

 

「ふむ。 それで」

 

「私は救った者達を、インドの神々の覇権のために役立てることも考えておりました。 しかし今では、その考えは捨てております。 あの者の私を見た目。 それに恥ずかしい行動はしたくない。 それが理由です。 向こうに戻り、弱者達を守り、導く。 場合によっては自立を助ける。 それが私の仕事です」

 

「……そうか。 好きにするが良い」

 

頷くと、アプサラスは去る。

 

なるほど、離別の意味を込めて会いに来たのか。そうヴィシュヌは鼻で笑った。どうでもいいことだ。

 

あのアプサラスとその手駒など。

 

この戦場では蚊ほどの役にも立たないのだから。

 

それでも、苛立ちを見せる神々もいた。

 

「明確な裏切りでありますが、よろしいのですか」

 

「かまわん」

 

そう苛立ちを見せたのはインドラだ。

 

ヒンドゥーではとにかく良いところがない神格だが、それはなぜかというと、ヒンドゥーの前に信仰されていたバラモンの教えの主神だからである。

 

前の信仰の主神よりも、優れている。

 

そういう神話を作るために噛ませ犬にされた。

 

それがインドラの悲劇である。

 

故にインドラは常に苛立ちを見せている。

 

ちなみに仏教側に取り込まれた帝釈天はそれなりの扱いを受けているようなので。ヒンドゥー側にいるインドラは、余計に苛立ちが強いようだが。

 

「それよりも、恐らくは残された気配からして、ヴァスキを倒したのはベルゼバブであろうな。 今の陣容で襲撃を受けたらひとたまりもないぞ。 守りを固めよ」

 

「は……」

 

「何か不満があるのか」

 

「シヴァ様の力があれば、ベルゼバブを倒すことは容易でありましょう。 ルドラの秘法など、いつでも出来る。 ベルゼバブを倒し、奪われた至高天への鍵を取り返してからでもよろしいのではありませんか?」

 

インドラの言葉に、またヴィシュヌは笑う。

 

ヴィシュヌはそもそも、もうこの世界はどうでもいいと思っている。

 

他の平行世界ならともかく、この世界は疲弊しすぎた。

 

最悪この星そのものが目を覚まし、人間を排除する手前まで来ている。それを察知している以上、この世界にこだわる必要はない。

 

一度人間を一掃してしまおうというシヴァの発想は、一理ある。

 

その時は神々もまた消し飛ぶが、それはまた別の世界で覇権を握れば良いだけのことなのだから。

 

インドラのように平行世界を観測できない神には、あまりこういう思想は理解できないだろうし。

 

この状況について、懇切丁寧に話してやるつもりもなかった。

 

今は、適当にシヴァのために時間を稼いでやり。

 

その貸しを、いずれ別の平行世界ででも返して貰う。

 

そのつもりだった。

 

神らしいといえばそうかも知れない。いずれにしてもヴィシュヌは、この世界の覇権などに興味などなかったのである。

 

だから自分を信仰している人間などどうでもいいし。もはや本来するべき維持ですら、興味を失っていたのだった。







ベテルから離反した各支部が動き始めます。

問題はインド支部がいきなりヴァスキを倒れされていることで、大混乱状態にあることですね。

これがなかったら、シヴァがあっさりルドラの秘法を成功させて全て無に帰していたかもしれません。

危ないところだったのです。




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