真女神転生VV二次創作 牛蛇相克 作:dwwyakata@2024
フレイとフレイヤ戦です。
フレイは元々北欧では人気のあった神で、非常に広く信仰されていました。また、フレイヤもそれは同じ。オーディンの原型となったオズ神の妻であり、そのあまりにもアレ過ぎる言動から悪い意味で有名ですね。
ちなみにオーディンの妻であるフリッグはフレイヤから派生した神です。
信仰は分裂と習合を繰り返すものですが、それなりの長い期間、様々な紆余曲折を経て北欧神話はできあがったのです。
凄まじい戦いが後方で起きている。それをユヅルは感じながらも、一歩も退かない。相手はフレイ。鹿の角を手に、激しく攻め立ててくる。鹿の角と言っても、北欧の人々に信仰されたフレイが振るう武器だ。
ただの鹿の角ではない。
一撃ごとに、凄まじい重さの攻撃が来る。
ただの優男ではないというわけだ。
それはユヅルも同じだが。
激しく渡り合いながら、細かく指示を出す。ヴァルキリーの軍団とディースの群れが、上空から攻め立ててきている。それを煌の天使部隊とユヅルの天狗部隊が必死に防ぎ、巴御前や森可成が次々に打ち落としている。地面から攻めてくる部隊は、煌の眷属が中心に迎え撃つ。
マイナーな北欧神話の神格もいるようだった。
「なかなかの優男だな。 私の館に来ないか? 色の全てを教えてやろうぞ」
「悪いが断る」
フレイは妹のフレイヤと同じで、凄まじい色欲の持ち主だ。
豊穣神系統の神の悪いところを全て凝縮したようなすさまじさで、妹とまで関係を持ったことすらある。
ただ、これは古代の人々の貞操観念が現在と違ったこと。
神々は近親交配が当たり前であること。
これらを考慮しなければならない。
古くには色々な呼び方があるが、愛人としての男性を置くことは珍しくもなかった事情もある。
とはいっても。
ユヅルとしては良い気分はしないが。
激しく切り結ぶ。ユヅルより明らかに格上の剣技の使い手だが、別に守りに徹すればいい。
しかもフレイは本来の武器を使っていない。
それで対応は可能だ。
フレイの高名な絶対勝利できる剣だが、それについても実際のところはよく分かっていない。それで勝利できたという逸話がないからだ。あったかもしれないが、それは既に伝承として失われている。
フレイはこの鹿の角で巨人を倒した逸話はあるが。
それ以上の逸話はない。
つまりこれが、実際のところ完全状態のフレイ。
背伸びしてもこの程度の力、というのが正しい現実だろう。
攻め込んでくるフレイだが、ユヅルは冷静に守りながら、指示を飛ばす。明らかに侮られていることに気付いているのだろう。
徐々にフレイが苛立ってくる。
そして、攻めも激しくなってくる。
ルーンも込みで攻め立ててくるが、ユヅルも既にミヤズが展開してくれた支援魔法で差を補う。
冷静さを欠くフレイの攻めが、徐々に鈍り始める。
「貴様、こざかしい戦いをするではないか! この私が北欧でも信仰された神の一角としっての無礼か!」
「知っている。 だが貴方の逸話は賞賛に値しない」
「なんだと!」
「恫喝同然に無理矢理女性をめとり、そのために剣を失った、だったな。 嫌がる相手を無理矢理手に入れておいて、それで何が悲恋か。 貴方の逸話には主観しか存在していない。 相手がどう思っていたかなどどうでも良いとしか考えていないではないか。 それとも女など略奪して当然とでも考えるのが当たり前だから、それで正しいとでもいうつもりか?」
「それの何が悪い」
文化の違い。
それは分かっている。
だが、ユヅルはそれでもはやフレイに戦士としての敬意を払う必要はないと判断した。イチロウはフレイヤを相手に戦ってくれている。本来だったら一瞬で理性を失って斬り伏せられていただろうが。ヨーコが相手の催淫効果を中和してくれている。それに、イチロウも散々ろくでもない女性神格を見てきた、というのもあるのだろう。戦いの手は鈍っていないようだ。
ならば、そろそろ頃合いだ。
不意に攻勢に出る。
驚いたフレイだが、それでもにやっと笑ってみせる。
ユヅルの剣技では、攻め立てたところで知れている。そう判断したのだろう。だから、むしろ半笑いであしらってみせる。
「なんだ力の差を感じて焦ったか? そんな剣技では私に傷一つすらつけることも出来ないが」
「ああそうだな。 だが」
事前に決めていた合図を送る。
その瞬間。
フレイの足を、何かがつかんでいた。
こっちに支援に来てくれていた煌の眷属のアリスが、準備をしていた魔法を発動したのである。
純度100の死による、拘束。
北欧神話の神々は普通に死ぬ。
そのため、フレイは見る間に顔色を変え、必死に拘束をはじこうとあがく。だが、アリスの拘束に気を取られた瞬間。
既に完璧な位置に陣取っていたミヤズが、狙撃でフレイの側頭部を撃ち抜いていた。
「へ……あ……?」
フレイが白目をむいて、よろめく。
ミヤズが渡されている、対神狙撃弾。単価1200万円のとんでもない代物だが、大物神格を相手には、これですら決定打にならない。
だが、フレイは完全に注意をそらし、その守りは脆弱なものになり果てていた。
その結末がこれだ。
それでも死なないのは流石だったが。
その瞬間、ハヤタロウが突撃してフレイを押し倒し。ユヅルは即座に倒れたところに躍りかかり、フレイの喉を霊刀で貫いていた。
もがいて必死に刀をはずそうとするフレイだが。
アリスが一気に死の力を侵食させる。
ものすごい恐ろしい気配がフレイを包んでいる。此奴は死ぬ。だが、フレイがまだもがいている以上、放すわけにはいかない。
白目をむいて泡を吹いていたフレイが、ユヅルをつかんでくる。
凄まじい握力。
しかも必死の抵抗だ。体が握りつぶされそうになるが、此処でフレイを仕留めておかないと、オーディンを倒すのが極めて困難になる。
みしみしと全身の骨が悲鳴を上げるが、それでも。
気合いを入れて、霊刀を貫き通す。
それで絶息したフレイが、マガツヒになって消えていく。
呼吸を整えながら、ユヅルは必死に霊刀を杖に片膝を突く。
冷や汗が全身から流れるが。
恐らく、これで勝ちは決まった。
フレイヤが戦車を乗り回しながら、突貫してくる。ユヅルの大獄丸だけではない。煌がこっちに回してくれた塗り壁は既にそれに弾き飛ばされ、今テュールが激しい火花を受けながら、突撃をいなしていた。
「ああらテュール様! そんな雑魚どもにつくなんて、どういう風の吹き回しかしら?」
「黙れ。 貴様こそ、そのような格に貶められて良いのか? 貴様の派生神格であるフリッグ等という存在がオーディンの妻にされていて、それで満足か?」
「は、どうでもいいですわよ。 私はあらゆる色を独占できればそれでいい。 夫なんて飾りだけ。 ありとあらゆる色を好むことが出来れば、本望ですわ」
無茶苦茶な女だ。
イチロウはその色気過剰の体を見ても、どうとも思わなかった。言動があまりにもアホすぎる。
あまりにも頭がおかしいと、相手に色気なんか感じなくなる。
最近の言葉では蛙化とかいうのだったか。
フレイヤの肉体美は現在の感覚からしても素晴らしいだろうとイチロウも思う。イチロウだって年頃の男子だから、それはそういう本くらい読む。そういった仕事に就いている女性の体は、明らかに作り物だ。あらゆる全てを徹底的に管理して、必死に理想的な体型を作り上げている。まれに天然物もいるらしいが、女性は散々化ける存在だと言うことはイチロウも今までの戦いで見てきたし。
それにイチロウを信頼してくれたからか、女性陣もどれくらい化粧に手間を掛けているかとか、そういう話はしてくれた。
そういうのを抜きでも、確かにフレイヤの美貌は凄まじいだろう。
現在のスーパーモデルらに並んでも、それらを圧倒するほどの容姿だと言って良い。
だが、この言動。
イチロウは、やはり中身が大事なんだなと思いながら、必死にハンドガンを撃つ。フレイヤは多数のヴァルキリーを直衛に従えていて、それらが弾よけになる。煌の天使部隊もユヅルの天狗部隊もすり抜けてくるヴァルキリーがどうしても出る。イチロウのハンドガンの弾は。ほとんどそれらに当たる。
だが、ヴァルキリーも無限にいるわけではない。
走りながら、好機をうかがう。
テュールは凄まじい武勇を見せているが、それでも敢えて守りに徹しているように見える。
何か狙いがあるのだと思う。
森可成が走り込んでくると、イチロウを影から不意打ちしようとした小柄な人影を槍で突き倒していた。
イチロウはすまないと叫ぶと、周囲を確認。
一度冷静を保ち直すと、空飛ぶ戦車で走り回り、嬌声を上げているフレイヤを見上げる。
あんな女。
魅力なんか感じない。
「しっかしそこのサマナー、さえない男ねえ。 そんなのについていく悪魔達が可哀想でならないわ」
「そこの見かけだけの阿婆擦れ」
「ああん?」
森可成が啖呵を切った。
阿婆擦れと言われて、フレイヤがにらんでくる。
テュールが剣を持ち直すと、何かを狙いに行く。それを一瞥だけして、イチロウは走る。
前は女性に罵声を浴びせかけられると、傷ついた。
というよりも、イチロウの家の場合母親が明確な毒親だったし、とにかく女性が怖かった。
父親も怖かったが、それで男性が怖くなることは別になかった。イチロウだって男性だからだ。
だが母親の場合は、何がどうして怒るのかさっぱり分からなかったし。その怒りも理不尽極まりなかった。
ミヤズやタオと話して。
それにヨーコも話をしてくれるようになって。
それで分かってきた。
世の中の女性には、感情を最優先するタイプが一定数いる。
そういうタイプは、感情が理屈全てに優先するし、相手が自分にあわせるのが当然だと思っているのだと。
スクールカーストなどはそういった忖度をどれだけするかの世界で。
むしろ女性の作るスクールカーストの方がいじめが極めて陰湿で、場合によっては相手を死に追いやっても平然としているのは、そういう感情が最優先する世界で生きているから、なのだと。
それを理解してから、イチロウは相手の感情を読むエスパーになる事を求められる馬鹿馬鹿しいやりとりに興味が失せたし。
母親がそういった類の輩で。
感情を最優先して考えているのだと理解してからは、そんなものに怯えていたのかと、ため息さえ漏れた。
だから言う。
「あんた、綺麗なのは見かけだけだよフレイヤさん。 あんたの心はドブの底そのものだ。 可成の言うとおりだ。 あんたみたいな女のことを、阿婆擦れって言うんじゃないのか!?」
「モテもしないゴミカス陰キャの分際で、良くも女性の頂点に立つ私に巫山戯た口をきけるものね……」
「あんたみたいな女にもてなくても結構。 近づくだけでリスクしかないしな!」
「このクソガキが……!」
見る間にフレイヤが鬼の形相になっていく。
実際問題、現在男女の断絶が始まっているが。
バカみたいな全ての心情を理解してくることを求める女性が。それでいながら男性の心情をガン無視する風潮に対し。誰もが嫌気がさした。ただそれだけの話だ。
イチロウだって女性に興味がないとはいわない。年相応に興味はある。
だが、あんな女には興味はない。
「なんかの小説で、見かけだけ繕った頭がパーの女のことをケーキとか言ってたって、俺のダチが教えてくれたよ! おまえはまさにそれだ! ケーキ女!」
「黙れこの※※※※の※※※※で※※※※(いずれも表記不可能)があああっ!」
フレイヤが唾を飛ばしながら、卑猥極まる言葉を吐き捨てて、イチロウに突貫してくる。
もうフレイは倒れたようだ。それにすら気付いていない。
慌てて随伴してくるヴァルキリー達だが、それを横殴りに巴御前の矢が撃ち抜き、更には上空で暴れていた第六天魔王が突っ込んでくる。それらがまとめてヴァルキリー達を轢殺。
フレイヤは喚き散らしながら、火花を挙げて突貫してくる。
イチロウは仁王立ちになると、その顔面にハンドガンの弾を乱射する。もはや何も見えていない様子で、フレイヤが突っ込んでくるが。
その戦車が。
貫かれて、粉砕されていた。
「ぎゃあああっ!」
聞き苦しい声を上げながら、砂漠に落ちて突っ込むフレイヤ。
戦車を貫いたのは、光の鳥。
ホルスだった。
ホルスが上空に浮き上がると、浮き足だったヴァルキリーやディース達を蹴散らし始める。
トールと全力でやり合っていた煌がホルスを繰り出したと言うことは。
ユヅルが来る。
煌も。
必死に砂をはねのけて立ち上がったフレイヤは、既に包囲されていた。上空にいるヴァルキリーらもディースらも、既に形勢逆転している。
ミヤズも姿を見せる。既に愛用のM16の弾丸装填は終わっているようで、いつでもフレイヤを撃てるのが分かる。狙撃手として活躍しているミヤズが出てきたのは、勝ちが決まったからだ。
イチロウは、鬼の形相のままのフレイヤに言う。
「俺みたいな雑魚の言葉がそんなにとどいたのかよ。 見せかけだけの美貌の阿婆擦れ女神様がよ」
「くっそ、おの……」
「フレイヤ、見苦しいにもほどがありますわよ」
「黙れイズン! 貴様も裏切るか! オーディン様が創世を為されれば、この世界はまた戦乱だけの世界になる! 民主主義などと言うどうでもいいお題目やら、秩序などない戦いだけの、強い者だけが選ばれる世界だ! 私のような最高の女は、その世界で全ての色を独占できるのだ! 貴様にだってその一部を分けてやる予定だった! それをどうして裏ぎっ……」
フレイヤの胸を、背後から剣が貫いていた。
テュールによるものだった。恐らく神殺しの必殺の剣に、さっき調整していたのだ。
更に、アリスが放った死の魔法が、フレイヤを包み込む。
凄まじい悲鳴を上げながら、フレイヤが見る間に焼けただれ、皮が溶け、骨だけになっていく。
どんな美貌の持ち主だって、中身は肉袋だ。
イチロウは、外道極まりない発言をずっと続けていたフレイヤには、むしろ哀れみすら感じていた。
やがて絶叫が消え、マガツヒになってフレイヤが飛び散る。色欲の権化と落ち果てた女神の最期だった。
ヴァルキリーやディース、更には北欧の下級神格達が逃げ始める。珍しくそれを追撃する天使部隊と天狗部隊。
可能な限り削る方が良い。
そう判断したのだろう。
座り込むと、イチロウは大きなため息をついた。
あの悪意にははっきり言って疲れた。確かに言われていた、感情を法にも倫理にも論理にも優先する人間そのものだった。所詮は神々も人間の影響を受ける。ましてや欲望の権化となると、あれは普通だったのだろう。それは分かるが、分かっても疲れるのだ。
イチロウの隣に座り込んだテュールが言う。
「フレイヤの事を軽蔑したと思うが、あれは本来はあそこまでの狂った存在ではなかったのだ。 後の時代に、奔放さを強調され、貶められた結果だ。 豊穣神系統の神々は性に奔放な存在ではあるが、いくら何でもあの姿は後の時代の影響を受けた結果なのだ」
「テュールさん……」
「フレイヤの代わりに謝罪しよう。 あの突進を引きつけて、決定的な勝利のチャンスを作った貴殿は立派な戦士で立派な男だ。 君が異性にもてないのだとしたら、それは周囲の異性に見る目がないだけだ。 言われた言葉は気にしなくていい」
「ありがとう」
もう、あまり誰か大事な人が出来るといいなとくらいにしか思っていない。この年だと枯れているかも知れないが、色々見てきたからだ。
さて、後片付けだ。
煌はトール相手に相当に消耗しているし、ユヅルも傷だらけだ。比較的ダメージが小さいイチロウが周囲を見張るべきだ。
森可成が見張りにいい高所を見つけてくれたので、イチロウは陣取る。崩れたビルだが、登るのは今の身体能力であれば難しくはない。
森可成がテキパキと配置を進めて、無事だった悪魔達が不意打ちを防ぐべく手分けして視界を確保する。
本当に手だれている。幾らでも戦争を経験してきて。人生そのものが戦争だったのだ。それでもきちんと子孫を残した。ろくでもない子孫だったとしても。それでも凄い人だと思う。
ああいう大人になりたい。
そう、なんどもイチロウは思う。
そのためには、まだまだ努力が必要だ。そうとも思うのだった。
オーディンの陣地に、敗残のヴァルキリー達が戻る。トールに加え、フレイとフレイヤは戦死。
多数のディースもヴァルキリーも倒れた。
そう報告するヴァルキリー達に、オーディンはそうかとだけ答えた。
別にどうでも良い。
そもそも今回の目的は実験だ。
創世を行えれば幸運、くらいの感覚である。
現在創世を狙っていると思われる日本支部はエジプト支部と組んでいて、くせ者のコンスがついている。
ギリシャ支部のゼウスは豪放磊落に見えて陰湿な陰謀をやらせれば右に出る者がいない。オーディンでも苦笑いするようなことを平気でやる。
ゼウスは少なくとも、ここしばらくの戦いで、不安要素だったクロノスを自らの手を下さず始末し。
ナホビノにはアルテミスをつけて監視もさせている。
デメテルがおかしな動きをしているのはオーディンもつかんでいるが、それはそれとして、日本支部とインド支部がもっとも先んじているだろう。
日本支部は恐らくギリシャ支部か、それともオーディンの北欧支部か。どちらかを潰しに動く。そう読んでいたが。
それはそれとして、ナホビノがトールに単騎で競り勝ったというのは流石に想定外だ。
ただ、それくらいの想定外で慌てるほど手札に困ってはいない。
既に陣地は構築してあるし。
あの日本支部のナホビノが、今時珍しい正論で全てを切り開いていくタイプである事は知っている。
そういう相手を相手取るためには、何をすれば良いかも、だ。
ふっとオーディンは笑うと、敗残のヴァルキリー達に指示。
「即座にエインヘリアルを展開せよ」
「は、しかしあれはラグナロクのために備えている兵力ですが……」
「分からぬか。 今がラグナロクだ。 ヴァルハラで戦争ごっこだけさせているのも芸がない話だ。 それにスルトがいない今、我らにも勝ち目があるというものよ」
エインヘリアルが即座に呼び出され、陣地の周りに展開し始める。
北欧の地で刈り取り続けた戦士達の霊。
どいつもこいつも殺し合いが大好きで、延々とヴァルハラで殺し合っては生き返るという時間を過ごしてきた連中だ。
現在の人間とは根本的に価値観が違う。
だからこそ、今の人間が相手をするのは非常に疲弊する存在なのである。
しかもだ。
最前列に並べるエインヘリアルは、明らかに戦士の衣装を着せられただけの者達である。
これはこの地で収穫した人間の霊だ。
ナホビノはこれを見てどう思うか。
決まっている。
普通なら激怒する。
だが、日本支部のナホビノは、恐ろしいほど自分の精神を制御できているらしい。何が楽しいのか知らないが、悟りでも開いているのかも知れないと噂されているとか。
それでも、この仕打ちを見れば、オーディンを潰しに全力で来るだろう。
それでいい。
相手の動きを予測できるようにすれば、それだけ戦いやすくなる。
勝つ気がなかった戦いだが、立て続けに大物を下しているナホビノを倒し、そのマガツヒを吸収すれば。
ついでに合一を解除し、ナホビノを確保して、無理矢理合一し直せば。
オーディンにも創世の好機が巡ってくる。
今回は捨てるつもりだったが、機会があるなら利用するだけだ。
面倒なのはシヴァだが、それもインド支部の壊乱を見ていると今の時点で動くようなことはないとオーディンは判断していた。
恐らく回復を済ませ次第、日本支部は速攻を仕掛けてくるはずだ。
北欧の神々を展開し、戦いに備えさせる。
そうそう、敵に回ったイズンには、その夫であるブラギと対戦させてやるとするか。
オーディンは冷酷な策略を巡らせて、くつくつと笑うのだった。
トール達が倒れて、北欧支部の戦力は半減。
しかしながら、オーディンは負けを諦めていないどころか、勝てればいいかなくらいの気持ちでいます。
それでいながら陰謀には一切手を抜かない。
厄介な相手です。トールに戦力は及ばないとしても。
※個人HPでの連載分は本日無事に完結いたしました。こちらでも、最後まできちんと連載しますのでご安心ください。