廃墟に潜む道化師人形は、ひっそり静かに暮らしたい   作:糸守ものち

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三十六話目です。廃墟に立ちはだかる...かっこいい人達がいます!


一章 第三十六話「騎士の意地」

 

 

【ウェイブ視点】

 

 ザガンが廃墟の前に立った。

 

 大勢の魔法師団員を従えて……ゆっくりと、静かに。

 

 ウェイブは廃墟の入り口に立ってそれを見ていた。

 

 足が震えている。手も震えている……息が上手く吸えない……

 

――(怖い……こわいこわいこわい……………)

 

 (逃げたい、怖い、自分はなんでこんなことを?)しかし……足は動かなかった。

 

「……あなたは?」

 

「蒼剣騎士団の騎士だよ。名前はウェイブ」ウェイブが腰の剣に手をかけた。「なかなかの腕前だって言われてるんだよね……ふぅん↑」

 

 嘘だ。腕前は平均的な騎士と大して変わらない。

 

「……並みの騎士よりも強い力を持つ魔法師団員が二十人ほどいます」ザガンが穏やかに言った。「あなた一人では……どうにもならないと思いますが?」

 

「そうかな?」ウェイブが笑った。「でも俺は……ここを通すわけにはいかないんだよね」

 

――(なんで……なんで俺はこんなことを言っているんだ?)

 

――(怖い。本当に怖い。でも……)

 

「理由を聞かせてもらえますか?」

 

「理由?」ウェイブが少し考えた。「……大切なものが、この中にあるから」

 

 それは、嘘ではなかった。

 

 ザガンが、わずかに目を開けた。

 

「……面白い」

 

「そうだろう!」ウェイブが剣を抜いた。「俺は面白い男なんだよ……ふぅん↑」

 

――(足が震えてる……声が震えてる。でも……剣は抜けた)

 

 ザガンが静かに右手を上げた。

 

 魔法師団員たちが前に出ようとした。

 

 その瞬間。

 

「待ってもらおうか」

 

 廃墟の奥から重い足音が響いた。

 

 ミネルバが大斧を担いで、ウェイブの横に並んだ。

 

「……随分と大人数で来たものだな、ザガン団長」ミネルバが静かに言った。「そちらが二十人程度なら……こちらは二人で十分だろう」

 

 ウェイブがミネルバをちらりと見た。

 

――(……助かった)

 

「……Bランク冒険者……」ザガンが穏やかに言った。「それも……上位に位置するあなたも……ここを通さないと? 事前の情報通りですね、ミネルバ殿」

 

「ああ」ミネルバが斧を構えた。「通さない」

 

 ザガンが静かに微笑んだ。

 

「……なるほど」

 

 その笑みが、ウェイブには不気味に見えた。

 

「では……試してみましょうか。くひひ」

 

 

   *   *   *

 

 

【ネル視点】

 

 廃墟の奥で、ボクはウェイブを見ていた。アウラの視界を通して。

 

 足が震えているのがわかった。声が少し上ずっているのも……

 

――(……ウェイブ……)

 

 ボクは廃墟の奥の素体を見た。

 

――(急がないと……)

 

 廃墟の外で戦いが始まろうとしている……

 

 ウェイブが立ちはだかった。そして……ミネルバも並んだ。

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
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