「敵に死を、我らに忠誠を、国に命を、」   作:風船の木

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「敵に死を、我らに忠誠を、国に命を!!」
壇上に立っているとある男がそう叫ぶ。
その時
 パァン!
その日、一発の弾丸がある男の身体を貫いた。
人々は喜び歓喜した。
そして"平和"の二文字を強く望み世界は回る。

【世界終戦暦30年】
この日は、いつもよりも騒がしかった。
通りには人が溢れ、子供たちは笑い声を上げて走り回っている。
旗が掲げられ、店先からは甘い匂いが漂っていた。
スピーカーから流れるラジオの声が、街全体を包み込む。

『本日は——終戦三十周年の記念日。
我々が平和を手にした日であります。
国民の皆さんは、平等の理念を正しく理解し、
不適切な思想や言動を見過ごさぬよう心掛けてください』

その言葉に、誰もが疑いなく頷いていた。

——俺も、その一人だった。
ラジオの音を背に、俺はコートを羽織る。
机の上には、折り畳まれた新聞が置かれていた。
一面には大きく、こう書かれている。

『終戦三十周年——我が国は新たな時代へ』

それを一瞥して、俺は家を出た。

外の空気は、どこか浮ついている。
笑い声と足音が混ざり合い、街全体が一つの生き物のように脈打っていた。

人々は皆、同じ方向へ歩いている。

記念式典の行われる広場へ向かっているのだろう。
その流れに逆らうように、俺は足を進めた。

向かう先は、広場とは反対側——
石造りの、無機質な建物。
軍政局。
それが、俺の職場だ。
階級は少尉。

といっても、前線に立つことはない。
任されているのは、報告書の整理と記録業務。
平和なこの時代には、それで十分な仕事だった。
正面の門をくぐると、外の喧騒が嘘のように遠のく。
静かだった。
あまりにも。

廊下を歩く靴音だけが、やけに響く。
すれ違う職員たちは皆、背筋を伸ばし、無駄な言葉を交わさない。
——それが、ここでは普通だった。

部屋に入り、机の上の書類に目を落とす。
いつも通りの報告書。
いつも通りの数字。

「相変わらずだな、その几帳面さは〜」

背後からの声に、振り返るまでもない。

「お前が雑すぎるだけだ、エリオット」

扉にもたれかかるようにして立っていたのは、同僚のエリオット・ヴァルナーだ。
俺と同じ少尉で、配属も同じ時期。
書類仕事は苦手なくせに、状況判断と交渉はやたらと上手
い。白髪を無造作に流した、どこか気取った男だ。

「今日は終戦記念日だぞ? 少しくらい肩の力抜けよ」
「仕事は減らない…」

そう返すと、エリオットは苦笑した。
「ほんと変わらないな、お前は」

軽口を叩きながらも、彼は机の上の書類を一瞥する。
「……ああ、それ。昨日の報告だろ」
「知ってるのか?」
「まあな。ちょっとした“問題”があったらしい」

そう言って、彼はそれ以上は語らなかった。
——いつもこうだ。
必要なことは知っているのに、無駄なことは言わない。
その距離感が、心地よかった。

「式典、行かないのか?」
「あとで顔は出す」
「そうか」
エリオットは小さく頷くと、窓の外に目をやった。
「……いい時代になったよな」

その言葉に、俺は迷わず頷いた。

仕事を初め書類に目を通しサインを書く。
そうしているとお腹が「ぐぅ〜〜」と鳴る、ふと時計を見ると針は頂上を指していた。
「昼か…」
俺はそう呟き席を立ち食堂へ向かった。

靴の音を鳴らし廊下を進む。
相変わらず周りは騒がしい。
民間人だけでなく軍関係者も浮かれているのだろう、軍政局内のどこにいても人の声が聞こえた。

「ガチャ…」
食堂の扉を開け食堂内に入る、昼ということもあり人は多かった。

様々な声が食堂内を乱反射している中、飯のお盆を持ち窓際のテーブルに飯を運ぶ。
今日のメニューは記念日ということもあり豪華であった。
いつものパンにスープ、そして珍しく肉の入ったおかず、極めつけは記念日の小さなケーキと、かなり豪華な出来であった。

肉を口に運びスープを飲む、その後パンをちぎり口に運び食べる。
そうして昼食を行いながら窓の方に目を向ける。相変わらずの人込みが出来ており、皆がワイワイと活気に溢れていた

昼食を食べ終わり、食器を乗せたお盆を食堂に運ぶ。
軽く調理人にに挨拶をして部屋を出る。
コッコッと靴の音を鳴らし廊下を歩く、
窓側からは活気あふれた人々の声
壁側には陰に隠れたポスター
その2つに挟まれながらも廊下を越え仕事部屋に入る。

部屋に入り扉を閉めると、エリオットが声をかけてくる。

「遅かったな」
エリオットは書類から目を上げずに言った。
「食堂が混んでいた…」
「だろうな。今日は記念日だ」

そう言って、彼はペンを置き、口を開く。
「外、すごい騒ぎだろ」
「ああ。皆、楽しそうだった」
「いいことだ」

エリオットは短くそう言って、窓の方へ視線をやった。
「平和ってやつは、こうでないとな」
その言葉に、俺は小さく頷く。
——その通りだと思いエリオットの目を見つめた。
そのエリオットの瞳はカラスのように黒かった。


#01「敵に死を、我らに忠誠を、国に命を、」」

「敵に死を、我らに忠誠を、国に命を!!」

壇上に立っているとある男がそう叫ぶ。

その時

 パァン!

その日、一発の弾丸がある男の身体を貫いた。

人々は喜び歓喜した。

そして"平和"の二文字を強く望み世界は回る。

 

【世界終戦暦30年】

この日は、いつもよりも騒がしかった。

通りには人が溢れ、子供たちは笑い声を上げて走り回っている。

旗が掲げられ、店先からは甘い匂いが漂っていた。

スピーカーから流れるラジオの声が、街全体を包み込む。

 

『本日は——終戦三十周年の記念日。

我々が平和を手にした日であります。

国民の皆さんは、平等の理念を正しく理解し、

不適切な思想や言動を見過ごさぬよう心掛けてください』

 

その言葉に、誰もが疑いなく頷いていた。

 

——俺も、その一人だった。

ラジオの音を背に、俺はコートを羽織る。

机の上には、折り畳まれた新聞が置かれていた。

一面には大きく、こう書かれている。

 

『終戦三十周年——我が国は新たな時代へ』

 

それを一瞥して、俺は家を出た。

 

外の空気は、どこか浮ついている。

笑い声と足音が混ざり合い、街全体が一つの生き物のように脈打っていた。

 

人々は皆、同じ方向へ歩いている。

 

記念式典の行われる広場へ向かっているのだろう。

その流れに逆らうように、俺は足を進めた。

 

向かう先は、広場とは反対側——

石造りの、無機質な建物。

軍政局。

それが、俺の職場だ。

階級は少尉。

 

といっても、前線に立つことはない。

任されているのは、報告書の整理と記録業務。

平和なこの時代には、それで十分な仕事だった。

正面の門をくぐると、外の喧騒が嘘のように遠のく。

静かだった。

あまりにも。

 

廊下を歩く靴音だけが、やけに響く。

すれ違う職員たちは皆、背筋を伸ばし、無駄な言葉を交わさない。

——それが、ここでは普通だった。

 

部屋に入り、机の上の書類に目を落とす。

いつも通りの報告書。

いつも通りの数字。

 

「相変わらずだな、その几帳面さは〜」

 

背後からの声に、振り返るまでもない。

 

「お前が雑すぎるだけだ、エリオット」

 

扉にもたれかかるようにして立っていたのは、同僚のエリオット・ヴァルナーだ。

俺と同じ少尉で、配属も同じ時期。

書類仕事は苦手なくせに、状況判断と交渉はやたらと上手

い。白髪を無造作に流した、どこか気取った男だ。

 

「今日は終戦記念日だぞ? 少しくらい肩の力抜けよ」

「仕事は減らない…」

 

そう返すと、エリオットは苦笑した。

「ほんと変わらないな、お前は」

 

軽口を叩きながらも、彼は机の上の書類を一瞥する。

「……ああ、それ。昨日の報告だろ」

「知ってるのか?」

「まあな。ちょっとした“問題”があったらしい」

 

そう言って、彼はそれ以上は語らなかった。

——いつもこうだ。

必要なことは知っているのに、無駄なことは言わない。

その距離感が、心地よかった。

 

「式典、行かないのか?」

「あとで顔は出す」

「そうか」

エリオットは小さく頷くと、窓の外に目をやった。

「……いい時代になったよな」

 

その言葉に、俺は迷わず頷いた。

 

仕事を初め書類に目を通しサインを書く。

そうしているとお腹が「ぐぅ〜〜」と鳴る、ふと時計を見ると針は頂上を指していた。

「昼か…」

俺はそう呟き席を立ち食堂へ向かった。

 

靴の音を鳴らし廊下を進む。

相変わらず周りは騒がしい。

民間人だけでなく軍関係者も浮かれているのだろう、軍政局内のどこにいても人の声が聞こえた。

 

「ガチャ…」

食堂の扉を開け食堂内に入る、昼ということもあり人は多かった。

 

様々な声が食堂内を乱反射している中、飯のお盆を持ち窓際のテーブルに飯を運ぶ。

今日のメニューは記念日ということもあり豪華であった。

いつものパンにスープ、そして珍しく肉の入ったおかず、極めつけは記念日の小さなケーキと、かなり豪華な出来であった。

 

肉を口に運びスープを飲む、その後パンをちぎり口に運び食べる。

そうして昼食を行いながら窓の方に目を向ける。相変わらずの人込みが出来ており、皆がワイワイと活気に溢れていた

 

昼食を食べ終わり、食器を乗せたお盆を食堂に運ぶ。

軽く調理人にに挨拶をして部屋を出る。

コッコッと靴の音を鳴らし廊下を歩く、

窓側からは活気あふれた人々の声

壁側には陰に隠れたポスター

その2つに挟まれながらも廊下を越え仕事部屋に入る。

 

部屋に入り扉を閉めると、エリオットが声をかけてくる。

 

「遅かったな」

エリオットは書類から目を上げずに言った。

「食堂が混んでいた…」

「だろうな。今日は記念日だ」

 

そう言って、彼はペンを置き、口を開く。

「外、すごい騒ぎだろ」

「ああ。皆、楽しそうだった」

「いいことだ」

 

エリオットは短くそう言って、窓の方へ視線をやった。

「平和ってやつは、こうでないとな」

その言葉に、俺は小さく頷く。

——その通りだと思いエリオットの目を見つめた。

そのエリオットの瞳はカラスのように黒かった。

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