超かぐや姫!~"はじまり"、祈り。そして、”はじまり”~ 作:tomine1411
《続前:終章//ツクヨミにて》
203x、夏。ツクヨミ某所にて
あの別れのライブのあと。私は、ツクヨミの天守閣に籠もっていた。
今は、何もできる気がしなかったから。
-どこへ行こう どこへ行こう ここに居ようとしてる?-
-逃げるよ 逃げるよ あと少しだけ-
”かぐや”が旅立ったことで、私の役目は終わった。
この物語も、終わりだと思っていたから。
メッセージを読む気力すら起きず、
すべてのメッセージを受信しないように設定する。
どこか遠くに行きたくても、どこにも行けない気がした。
スリープに入る。月人は、夢を見ない。
でも、スリープに入る直前に。どこかで笑っていた
-行けるよ 行けるよ 遠くへ行こうとしてる-
-イメージしよう イメージしよう 自分が思う方へ-
...なぜか、前に聞いた曲を思い出した。
...FUSHIからの、メッセージで起こされる。普段より、ずっと早い時間。
スリープに入るのは伝えていたはずだけど。
内容を確認してみる。...「彩葉が勘付いた。そっちに案内してる」
...ぇ。
隠せてるって、思ってた。気付かれるなんて、思ってもいなかった。
これで終わってもいいって、思ってたのに。
慌てて、服装を整える。天守閣で、背を向けて座る。
...来た。見なくてもわかる。彩葉だ。
「...かぐや。」
...振り返る。
気づいてくれた。
気づいてくれなくて、良かったのに。
これで終わりで、良かったのに。
「...ヤチヨ。ヤチヨは、かぐやなの?」
「変なこと言ってるのはわかってる。でも...!」
...ああ。これで、この物語は終わるんだ。
-雨になって何分か後に行く-
-今泣いて何分か後に行く-
私の中に、
もうあんまり泣けないけれど。でも、この別れだけはとても寂しくなるだろうから。
でも。せめて、最後に。何があったのかは、伝えないと。
...使わないと思っていたプログラムを、起動する。
[exec ./secret/info/to_iroha/ycy_hist.exe]
...さぁ、最後の昔語りを始めようか。
「今は昔、月に帰って...」
-今泣いて何年か後の自分-
ああ。今、私は笑えてるのかな。
こんなに嬉しいはずなのに。私は。
「...ただ、地球の時間では大遅刻。
でも安心。月の超テクノロジーは時間も超えられます。」
ああ、ここからだ。私の、予想もしなかった長い旅は。
せめて、ここからは泣かないように伝えよう。"かぐや"に、私に何があったのかを。
私達は、同じ輪廻を生きているから。
だから、かぐや。
「どうして...ヤチヨはずっと笑っている?」
「それが、ヤチヨだから。」
...でも。ハッピーエンド。連れてくって約束したのに
彩葉の歌を聞いて戻ってきたのに。
あの長い歴史の中で、私は変わってしまった。
冗談も、あまりもう上手く言えない。
キラキラのかぐや姫は...もうおばあちゃんだ。
...最後に、彩葉に選択させてあげないと。
このことを、”忘れる”選択を。
忘れてしまうかもしれないけど。でも、せめて。
このことを話し終わるまでは、笑顔でいよう。
「彩葉。もし、知りたくなかったのなら。忘れてもいいよ。
そういうことも、FUSHIなら...」
「ヤチヨ!」
突然、叫び返される。
「八千年、あったこと全部教えてよ。私、寝ないから!」
...おとぎ話は、まだ終わらない。
《出典:夜の踊り子 / サカナクション》