超かぐや姫!~"はじまり"、祈り。そして、”はじまり”~ 作:tomine1411
A.D.203x。東京、酒寄義体研究所にて
「今日はよろしくね, 真実」
「うん、よろしく~」
酒寄義体研究所では、
また、その過程で必要となる味覚データなどの収集を目的として
VR空間「ツクヨミ」における五感の実装。これを現状の目標としている。
この前提となるデータの収集のため、研究所では
何人かの味覚(食感)・触覚のテスターを募集することとなった。
このときに所長の友人として出てきたのが、旧姓諌山真実(まみまみ)さん。
所長の高校生時代からの友人であり、本人もグルメインフルエンサーとして
当時から10万人以上のフォロワーを抱える有名人である。
…私?ただの一般所員ですよ。
記録係も兼ねて必要ということで呼ばれてるだけです。
手慣れた様子でヘッドギアを被った真実さんが、こちらに話しかける。
「んじゃ、始めようか」
「おっけー。何食べればいいんだっけ」
「待て待て、こっちで用意してあるから」
「でもアレみたいなのはもう勘弁だよ~」
「もうそのあたりは確認できたから大丈夫だって」
あの事件は記憶に新しいけれど、正直二度と起きては欲しくない類のものだろう。
ただまぁ。あんなことがあっても手伝ってくれるのは。
あの時、
それにしても、普段ならいきなり妙なものを食べさせる所長にしては珍しいチョイスだ。
まぁ、その前の騒ぎで大変な目にあった彼女に対しての贖罪もあるのかも...しれないけれど。
「最初は...これ。」
何の変哲もない、クリームパン。
おそらくコンビニあたりのものだろうけど、実際悪くない。
たぶん、一般的な食べ物で手に入りやすいものを選んだのだろう。
「本当にありふれたクリームパン、って感じ?」
「そりゃ朝ついでに買ってきたんだから当然でしょ」
あ、昨日見てないと思ったらそうだったんですね所長。
「次は...これ。」
これまた何の変哲もない、稲荷寿司であった。
こう、どこかのコンビニかスーパーで売ってそうな、一般的な稲荷寿司。
「うん、普通においしい。スーパーのやつ?」
「…そうだけど。なんでわかったのよ…」
...なぜか彩葉のアバターを思い出したけど。何故だろう?
「んじゃ、これで最後かな。」
...なに、これ?
味が、全くない。食感も悲惨すぎる。
まるで一度かぐやちゃんの話にあった...
「もしかして...あのパンケーキ?」
「ご名答。試作だったけどね」
「うへぇ...」
真実さんの瞳が静かに鋭くなる。
これは...所長、やっちゃったんじゃないんです?
《br》
《真実視点》
彩葉が生活でだいぶ無理をしてたのは知ってるし、
それをどうにかするためにずっと手伝ってきた。
ついでに言えばこれの存在もかぐやちゃんから教わってたけど…
想像以上にひどい。
こんなので人間生きれるわけないでしょ...
どれだけ無理してたのよあの頃の彩葉...
《br》
真実さんからこちらにアイコンタクト。
おそらく、この後連れて行っていいかということだろう。
業務自体はこれで終わりだし、報告書も明日で大丈夫。
所長の予定も…OK。
頷いて返す。頷いてくれた。
「...決めた。今日はお金もあるんだしいっぱい食べさせる」
「え”っ」
「逃がさない」
「えっ待って...後生ですからー!?」
所長が引きづられていく。
丁度終業時間だったし問題ないだろう。
…よし、報告書を書きに戻るとしますか。
「ありがとうね、〇〇ちゃん」
ふと、ヤチヨの声が聞こえた気がした。