超かぐや姫!~"はじまり"、祈り。そして、”はじまり”~   作:tomine1411

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《一緒に見上げる、夜半の満月》

月。それは、

 

多くの人にはただの天体であっても、

 

私たちにとっては大きな意味を持つもの。

 

満月の夜。夜空を、見上げる。

 

月からやってきたお姫様(かぐや)

 

月から帰ってきたお姫様(ヤチヨ)

 

彼女らの手を、離さなかった人(いろは)

 

かぐやとヤチヨが身体を手に入れ、富士で不死を返上した後。

 

私たちは満月の度に、こうして時折みんなで空を見上げている。

 

みんながここにいることを、確かめるように。

 

二人がここから来たんだって、確かめるように。

 

二人を、静かに抱きしめる。

 

ここにいる存在を、確かめるように。

 

「ここに、いるからね。」

 

「ここにいるよ。彩葉。」

 

二人が、静かに語りかける。

 

夜半の月を照らすような金色と、

 

隠れた月のような銀色が。

 

思い出す。あの子(かぐや)を失って、最初の満月を。

 

あの歌(Reply)を歌って、運命を知って。

 

抗うと決意して(かぐやを取り戻すって)

 

走り出した。周りを振り返ることもせず、一直線に。

 

それを後悔はしていない。やりたいことができたのだから。

 

でも、それからは。月をあまり見上げなくなった。

 

特に満月に近い日は。失った時を、思い出してしまうから。

 

—誰も来ない 部屋の中に 君だけ独り—

 

—おやすみを言える日は来ない—

 

そんな日はいつも、ヤチヨに会いに行っていた。

 

寂しさを紛らわせるように。ヤチヨ(かぐや)がいることを、確かめるように。

 

ヤチヨは、いつも優しく受け止めてくれた。

 

八千年分の寂しさを、紛らわせるように。

 

ヤチヨが選んだ曲をみんなで聴く。

 

-世界はとてもきれいで とてもやさしい-

 

“ツクヨミも、現世も、人の輝きであふれてるんだ。”

 

ヤチヨが、呟いた。

 

ミラーボールのような月ではない、天体としての月。

 

そこから見る世界は、とても眩しかったから。

 

—そう信じてた きみの眼差し—

 

“わたしは、その眼差しであなた(いろは)を好きになったんだ。”

 

かぐやが、呟いた。

 

月から落ちて、拾われて。あなたの視線に、目を奪われた。

 

あなたの、あの真剣な目に。

 

—いつかの約束のために 我慢できるから—

 

”もう一度かぐやと出会う、そんな約束を。”

 

静かに、返す。救われたのは、私もなんだと。

 

-そう信じてた 名を呼ぶきみ-

 

“私は何度でも名前を呼ぶよ、かぐや。”

 

もう一度、出会えるようにって。あの時歌ってから。ずっと。

 

—それだけが僕のいる理由だよ—

 

”願いのなかったわたしに、ヤチヨが、かぐやが、生きる理由をくれたから。”

 

“あなたにもう一度出会いたかったから、この8000年を生き抜くことができた。”

 

ヤチヨと私、二人の声が重なる。

 

もう一度かぐやを取り戻す。その考えが、正常なのか異常なのかもわからなかった。

 

正気の方法ではなかったのかもしれない。

 

倫理を踏みにじるような方法かもしれない。

 

でも、止まれなかった。

 

かぐやを、どうしても取り戻したかったから。

 

そのために、進路も変えた。大学を最大限活用(人材青田刈りの場として)し、研究所を作った。

 

研究資金についても、大学や留学中に出会った資本家を全力で説得したことでどうにかした。

 

同時に、個人的にも資金を集める必要があった。

 

このマンション。かぐやとの思い出が詰まった、この部屋。

 

手放すかどうかずっと考えて..手放さないことを決めた。

 

もしかぐやが帰ってくるときに、なくなっていると寂しいだろうから。

 

ヤチヨに相談したら、一度はすごい額を貢がれそうになったのはさておき。

 

結局、ヤチヨに楽曲を提供するという形でその収入をマンションの家賃として使えるようになった。

 

…そのあと、ライブに連れていかれるとは思わなかったけど。

 

そうして資金と人材を確保したあとは、研究所ができるまでひたすら研究を続けた。

 

また食生活が元に戻り、睡眠時間も若干少なくなった。

 

バイトこそしなくなったけど、それ以上に忙しくなった。

 

ヤチヨにはすごく心配させたように思う。

 

けれど、途中で倒れてしまった。

 

ヤチヨが心配していたことが、現実になってしまった。

 

…幸い、後遺症などは残らなかったけど。

 

危うくヤチヨに監禁inツクヨミされかけたことは、よく覚えている。

 

それからは、生活習慣にも気を配るようになった。

 

さすがに情熱だけじゃダメだったらしい。

 

ついでに研究所の改革もやった結果、業界随一のホワイト研究所になったのは余談だけど。

 

そうして過ごしてきた、十年少々。

 

月人にとっては短くとも、人間にとってはけっこうな長さだ。

 

私も、変わらざるにはいられなかった。

 

後悔は…していないわけではないけれど。

 

そうして、私は成し遂げた。

 

ただ、これで終わりではない。

 

私は、真の意味でかぐやを人間にしてあげたい。

 

そのために、まだしばらくは動き続ける。

 

それが、私の存在証明(レゾンデートル)

 

…月が、姿を雲の裏に隠してゆく。

 

静かに、部屋に戻る。もう夜も遅い。

 

夢は…見なかった。

 

今までは悪夢しか見ていなかったのに。

 

《出典:Raison / すずきけいこ@リトルバスターズ!》

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