超かぐや姫!~"はじまり"、祈り。そして、”はじまり”~ 作:tomine1411
A.D.203x、冬。東京、酒寄家マンションにて
かぐやが復活して、半年ほど。
配信バレから始まったこの大騒ぎもようやく静まり、
私達もそろそろ日常に戻りつつあった。
この、
ふと、聞いてみる。
「ねぇ、かぐや。」
「なになにー?」
ヤチヨも、聞き耳を立てている。気になるのだろう。
「いや、かぐやって昔からハッピーエンド好きだったけど。何か理由あったのかなって」
「あーそれー?無いわけじゃないんだけどねぇ。」
「あ、そうなんだ」
意外な回答。理由もなく言ってるのかと思ってたけど。
「前にも言ったと思うけどさ、月って退屈なの。」
そうだ。月には、楽しみはない。
-瞳 映る 静かな世界 何を見てたんだろう-
何を見てたのかすら、もうあんまり覚えていない。
月にいた時間の方が、私にとってはずっと長いはずなのに。
「ついでに言えば、名前や味覚もないんだー。」
娯楽も、まともなものが何も無い。
人間関係だって変わらないし、ずっとずっと同じようなことを繰り返す。
こっちの社会の仕事だってもうちょい変化あると思うし。
「...変わらないことが、嫌だったんだと思うなぁ」
「そっか」
「うん。私は、逃げ出してきたから。」
連れ戻されることが、バッドエンドだった。あの時は。
「でもさ、」
あの日々は、たしかにハッピーエンドだったんだ。
彩葉のもとに落ちてきて。
ライバーを始めて。
-優しい思い出 ふさいだ鍵穴-
-さわれない 君だけの色-
彩葉に、いっぱい曲も創ってもらって。
真実や芦花とも、いっぱい遊んで。
一緒に行った花火、楽しかったなぁ。
「あの日々は。今でも、すっごい大切な宝物なんだ。」
「...私だって。あの日々から連れ出してくれたから。」
「花火の時に、やっと気づくことができたから。」
-この一瞬が最高のパーティーなんだ-
-全部ぎゅっと覚えてようよ 眩しい日を-
あの日々は、私にとって最高のパーティーみたいなものだった。
「私にとっても、そうに決まってるでしょ...」
ずっとずっと、一緒にいられると思ってた。
やりたいことも、いっぱいあった。
今なら、ヤチヨのあの言葉。その意味が、わかる。
「ここからはクライマックスに向けてハードな展開が待っているかも。このお話を最後まで見届けてね。」
自分が辿ってきた道だからこそ、ああやって応援したいと思ったんだろうなって。
そして、彩葉とお別れして。
たくさんもらった思い出を、記憶って名前の宝箱に詰めて。
それが、ハッピーエンドだと思っていたから。
もう一度、あの月で生きていこうって。決めたけど。
「あんなの...ハッピーエンドなわけないでしょ...」
彩葉の、あの歌で思い出した。
決めたんだ。帰るって。彩葉のもとに。
-昨日の続き 喋りたかった くだらなくても ちょうどよかった-
-本音を聞かせて ただ叶えてみたいから-
だから、もう一度旅立つことにした。
地球に。彩葉のいる、星に。
自分が生きてきた道。ヤチヨと分かれる前の記憶は、あまり思い出せないけど。
でも、私はここに帰ってこれた。
彩葉が、諦めないでくれたから。
ヤチヨのことを、諦めないでくれたから。
「だから。今はもっとハッピーエンド、なんだ。」
「...かぐやぁ...」
彩葉。私がいなかった間に、すっごく泣き虫になっちゃったんだね。
ソファの隣。体温の伝わる場所。
そこで、静かに彩葉を抱き寄せる。
「これからも、ずっと。」
一緒にいようね。彩葉。
この先に何があっても、今が一番のハッピーエンドだから。
《出典:Reply / kz.featかぐや(CV.夏吉ゆうこ)@超かぐや姫!》