超かぐや姫!~"はじまり"、祈り。そして、”はじまり”~ 作:tomine1411
A.D. 202x、春。東京、某ボロアパートにて。
(注:独自設定が含まれます)
暗い部屋に、日光が差し込む。
スマートフォンの、アラーム。
眼を覚ます。スマートフォンを持ち上げ、アラームを切る。
見慣れない天井、他の誰の気配もない部屋。
安っぽい布団と枕。少し、寝苦しかった気もする。
でも、そこには自由がある。そう、思えた。
朝の光に瞼を擦り、ゆっくりと体を持ち上げる。
カーテンをずらす。扉を開け、ベランダに出る。
たったそれだけでも、私は物珍しさを感じる。
ベランダから、周りの景色を見る。
周辺を走る、バイク。人の流れ。見慣れない制服。
「ラッキー」 ふと、口に出ていた。
ああ、わたしは今自由なんだって。
わたしは今、誰にも縛られずにここにいるって。
わたしが今、どうしようもなく幸せに見えた。
母さんと大喧嘩して。
兄を追いかけるように、東京に出てきて。
いつしか、あの家は私にとって窮屈になっていったのだと思う。
父さんと兄のいなくなった、あの家は。
多分、もうあの家に帰ることはないだろうけど。
でも、少しだけ。寂しさを感じた。
…そうだ。そろそろ、準備をしよう。
明日は高校の初日だ。買い揃えないといけないものはたくさんある。
引っ越しの荷物も開けていないし、買わないと行けない家具もいくつかある。
やることは山程ある。こうして止まっているのもどこか煩わしいくらいに。
でも、何故か。
少し、立ち止まることに。不思議とどこか幸せを感じた。
スマホの通知。誰だろうか。
…ヤチヨ? そっか。今日も朝活配信やってるんだ。
スマホから、動画再生アプリを開く。
そういえばこのスマホも、ヤチヨの懸賞で当たったなと思い出しながら。
月見ヤチヨ。私を、救ってくれた人。
あの
…人、と言っていいのかはわからないけど。
でも、あの歌は。「Remember」は。
崖っぷちだった私の心を、今も救ってくれている。
「それでね~。ヤッチョはさ、新しい景色を見ることも大事だなって思うんだ」
生放送の声。ヤチヨは、いつも私の心を支えてくれる。
イヤホンを取り出す。
この子もそろそろ、買い替えなきゃなって思ってるけど。
ヤチヨがおすすめしてくれたものだから、少し抵抗がある。
「あ、そういえばなんだけどね。最近これいいな~って思ってるイヤホンがあって」
!?
さすがヤチヨ、こういう時に限っておすすめを出してくれる。
しかも丁度通学とかで使えそうな良いものだ。
…予定変更、電気屋に行くことにする。
大事なのはあのイヤホンだ。