超かぐや姫!~"はじまり"、祈り。そして、”はじまり”~   作:tomine1411

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《Before the Return》

(注:独自解釈・独自設定を含みます)

 

A.D.20xx、???、月面(情報位相)。

 

「全機能、点検...終わりっ!」

 

あの歌を聴いてはやン十年。仕事を慌てて終わらせてみれば大遅刻である。

 

でも私はうろたえなかった。折れなかった。

 

なんせ月の技術である。仕事中に思いついた技術を十全に使えれば、

 

時を超えられることはもはや既知であったから。

 

「この舟だって十年かかってないからねぇ...いやぁ私って天才?」

 

彼女は 調子に 乗っている。

 

まぁ無理もない。実際、本来ならば百年単位でかかるような仕事を

 

数十年で終わらせ、複製に対してのタスク譲渡などの新技術をいくつも発明。

 

これらの技術を安定化させ、同時に時を超えるための理論を個人で開発。

 

実際、ここまでのことを成し遂げたのだから多少調子に乗っても本来なら問題なかったのだろう。

 

閑話休題(それはさておき)

 

通常の航行ならまだしも、今回行うのは時間跳躍。

 

調子に乗ったかぐや姫であっても、さすがに点検は欠かさないのであった。

 

跳躍先の時間も、跳躍式そのものも、航法パラメータもすべて演算完了。

 

月近くの天体にも異常軌道のものはなし。

 

念のため用意していた非常用擬態キットを積み込んでおく。

 

これらは、通常の擬態機能が使えなくても小型生命体などに擬態することで

 

外部とコミュニケーションをとれるものだ。かぐやの発明の1つである。

 

外部防護機能も異常なし。基本的には本体の強制脱出は考えなくてもいいから、

 

防御力を最優先した。結果として、内側からの強制脱出がちょっと難しくなったけど仕方がない。

 

時空間跳躍には、非常に長い空間が加速に必要となる。

 

ある程度の空間は通常空間で賄えるけど、足りない分は***を利用することにした。

 

空間ベースの技術と時空間跳躍は本来相性が悪い。なんせ、空間を捻じ曲げる技術と

 

決定論的に変化してきた空間を参照する時空間跳躍は言うまでもなく衝突しやすいからだ。

 

念のため、一般的な隕石程度なら弾けるようにする防壁はつけてある。

 

これ以上の隕石なら、飛行中でも探知できるはずだ。

 

「...楽しみだなぁ。」

 

もうすぐ、大切な人(いろは)に会える。

 

普通だったら会えないところだったけど。

 

私だって、やるときはやれるのだ。

 

「もう一度会いたいな...彩葉。」

 

月人にとって、50年程度の時間は短いものだ。

 

悠久を生きる精神生命体である月人にとっては、特に。

 

しかし、地球人類の寿命は、たかが80年前後。

 

現代では長くなったとはいえ、月人とはその感覚は大きく異なることになる。

 

今の時間に戻ったとして、彩葉と同じ時間を過ごすことはできない。

 

確実に、すぐ別れることになる。なんなら既にいなくなってる可能性すらある。

 

...だから、時間を超えることにした。

 

「もう一度、彩葉と同じ時間を生きたい。いろんなことをしたい。」

 

その決意だけで、数十年以上かけて技術発明の傍ら仕事の引継ぎを終わらせた。

 

「私だって、少しは変わったのかな。」

 

月人の精神は、経時的変化に乏しい。

 

刺激が少ない月面においては、その精神の成長すらも非常に緩慢なのだ。

 

(だからこそ、人間の精神を自由だと思ってしまうのだろうけど。)

 

その点で、”わたし”は地球での経験で多くのものを得ることができた。

 

この経験と、月にあった技術を掛け合わせることで時空間跳躍の技術を開発する

 

ことができたのだ。当然のごとく、非常に使いづらいものであったが。

 

…あと数時間もすれば、計算していた航路が利用可能になる。

 

この航路が使えるのは明日中のみ。それが過ぎれば、また数年単位の再計算だ。

 

…心配になる私がいる。

 

無言で、地球にいた頃見ていたタロットカードを引き出しから取り出す。

 

偶然になんか頼らないと信じているはずなのに。

 

心が弱くなってくると偶然に頼ろうとするのはどうやら必然らしい。

 

タロットは、愚者の逆位置。

 

こんな時にこんな目を出さなくたっていいだろうに。

 

どうしても不安が取れない夜。

 

あのフレーズを歌い始める。

 

「この一瞬を最高のパーティにしよう…」

 

明日は旅立ちの日だ。

 

この場所にはもう思い出もないけれど。

 

でも、少し寂しいと思う私がいる。

 

でも、もっと会いたい人もいる。

 

旅立とう、あの世界へ。

 

…明日は早い。もう寝よう。

 

夢は…見なかった。

 

《出典:Reply / kz feat.かぐや》

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