いつか途切れた、音の続きを 作:いつかの音色
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これからも引き続きよろしくお願いします。
本当は後編の予定でしたが、少し長くなってしまったので、前編・中編・後編の三話構成に変更となります。
北宇治高校に倉崎ひさめがいた。
麗奈がいるというだけでも大変なのが確定しているのに、爆弾が二つも。さっそく初日から体育館裏に連れ込まれてしまった。
「そういえば昨日、倉崎ひさめさんがいましたね!」
「ぶふっ!?」
吹奏楽部に見学に行った翌日、同じクラスになった川島
「倉崎?」
「そうです! 同世代で知らない人はいない有名人なんですよ! 小学生の頃から海外のピアノコンクールを含めて数々の功績を残し、中学生になってからはクラリネットでソロコンテスト文部科学大臣賞を取った事もあるんです! 京都の希望の星ですよ!」
「そ、そんなすごい子だったんだ?」
同じクラスメイトとなった加藤葉月との会話を横目に、久美子は息を整える。
「でも、ウチの吹奏楽部ってそんなに上手じゃないんでしょ? なんでそんな子が来たんだろう?」
「そうですね……まぁ、学校を決めるのは部活動だけではありませんから、何か理由があったのかもしれませんね」
似たような例を久美子は知っている。
立華を始めとする誰もが羨む推薦がありながら、それら全てを蹴って北宇治に来た麗奈という例を。麗奈の場合、新しく吹奏楽部顧問になるという先生が目当てというのが大きな理由らしいが、まさか同じ理由なんて事は……と、一抹の不安が過ぎった。
「緑ちゃんは会った事あるの?」
「いえ、昨日が初めてです」
昨日、部活動見学として久美子は緑こと緑輝と葉月の二人と音楽室を訪れたのだが、後から麗奈と共に彼女は現れた。実際に言葉を交わした訳ではないが、小さく手を振りあったので、一応会った判定にはなるのだろう。
「そういう久美子ちゃんは?」
「私もちゃんと会ったのは昨日が初めてかな……コンクールの会場で見かけた事はあったけど」
音楽室に二人で現れた時は度肝を抜かれたものだ。後から聞いた話では同じクラスになったらしいが、あの麗奈が倉崎ひさめと二人で来たのだ。もしや、心配など無用だったのではないかと一瞬は期待した。すぐに覆ったが。
「そういえばもう一人の久美子の友達と体育館裏とか言ってたけど、あれはどうなったの?」
「あぁ〜……ノーコメントで」
▼△▼△▼△
実のところ吹奏楽部に入るかどうかは迷ったが、最終的には中学と同じように吹奏楽部に入部する事になり、流れで楽器も同じユーフォニアムとなった。
当然ながら麗奈も吹奏楽部に入り、そして彼女も吹奏楽部に入った。
久美子にとってはいつ爆発するか分からない爆弾が至近距離に設置されているようで、それはもう大変胃が痛かった。
とはいえ、久美子の胃を痛めたのは何もその二人の関係性だけではなかった。
新しく顧問となった滝昇。麗奈がこの学校に来た目的と語った先生だが、最初の合奏をこき下ろした滝に反発し、上級生たちが練習をボイコットしてしまったというのだ。
「え、でも来週までにレベル上げとかないとヤバいって話じゃなかった?」
「ほんと、ほんと。困っちゃうよね〜」
倉崎ひさめという少女と実際に接してみて、久美子の印象は良い子だった。麗奈の話だけを聞いているとまるで魔王のような印象を受けるが、明るいし話しやすくてリアクションも良い、低音パートには来なかったが、色んなパートに顔を出して仲良くやっているらしい。
いつの間にか一年生で集まって練習をするという話になり、チャットグループを作り、なぜか流れでひさめがトランペットを吹いた。
「さっきの、倉崎さんでしょ」
「うん」
「久美子は、どう思った?」
「どうって?」
「私より……上手いって思った」
「思ってないよ」
「嘘」
「嘘じゃないって」
「……めんどくさいって思った」
「それはちょっと思った」
「即答しないで」
麗奈と二人の帰り道。
めんどくさいはめんどくさいが、思っていたよりはめんどくさくなかったので、適当にあしらいつつ帰った。
「倉崎さんが一年生集めて合同練習するって言ってたけど、麗奈も行く?」
「それは……行く」
「大丈夫?」
「何が?」
「何がって、倉崎さん主催だよ?」
「別に。もう逃げないから」
「じゃあ、私がいなくても?」
「それは話が別。いて」
「はいはい、仰せのままに」
▼△▼△▼△
それから一年生合同練習はすぐに開催された。
一体どんな事をするかと思えば、たった一日で初心者組も含めて一曲を完成させるという無茶をひさめはやり遂げた。
初心者組や楽器変更組が優先だったため、久美子自身はあまり直接の指導は受けなかったが、眺めているだけでも一人ひとりに対する指導は的確で、しかもモチベーションを上げるのも上手い。指揮台の上でみんなの前に立ってもそう。
麗奈には悪いが、滝先生とは天と地の差だと素直に思ってしまった。
「さすがだね、ひさめちゃん」
「いえいえ、みんなにやる気と才能があったからですよ。あ、そうだ。さっきカッコつけてやらなかったんですけど、ちょっとギャグ考えたので聞いてもらっていいですか?」
「うん、まぁ、聞くのはいいんだけど……」
当の本人は、なぜか部長の小笠原晴香と親しげだった。
三年生と一年生。久美子にも三年生でありながら幼馴染と言える関係性の斎藤葵がいるため、同じような関係なのかもしれないし、あるいは単純に同じ中学校出身だったのかもしれない。
「まーた、しょうもない事言ってんの?」
「優子先輩ひどーい。しょうもなくないですよぉ。ね? 夏紀さん」
「うん。倉崎さんはそのままで良いと思う」
「アンタは甘やかしすぎ。というか、別にそれフォローになってないんだけど」
同級生の中では既に中心人物になっている。
それだけでなく、先輩たちとも仲が良い。吹奏楽部というのは大所帯で、交友関係もパートごとに偏りがちだ。だというのに、まだ入部して間もないのに久美子が見ただけでもサックス、フルート、ホルン、トロンボーンのパートと仲良くしていた。
一体どんなコミュニケーション能力だと思ったものだが、この合同練習の様子を見れば自然の事だったのかもしれない。
自然とみんなをまとめている。普通なら、急に何言い出してるのとなりそうなところを、みんな疑問に思わず従っている。かく言う久美子も、一切の抵抗を感じなかった。そのまま任せておけば全て上手くいくような感覚があった。
▼△▼△▼△
当初思っていたよりも、穏やかに高校生活は進んでいった。
無論、滝先生による改革やそれに伴う諸々など穏やかではない事もあったが、何よりも麗奈とひさめの間に大きな出来事がなかったというのが大きい。
「倉崎さんってなんか愉快な子だよねぇ。なんかリーダー! みたいな感じかと思ったらさ、さっき個人練習してる時に話しに来て一発ギャグ披露された」
「い、一発ギャグですか?」
「そうそう、チューバとチュウばっかりしてる人! だって。使っていいよって言われたんだけど、いつ使うんだろうね?」
「さ、さぁ……」
葉月と緑輝が面白そうな話をしているのを横目に、個人練習に行った同じユーフォニアムの先輩である中川夏紀の姿が脳裏に浮かんだ。
夏紀はひさめと仲が良さそうにしている場面を比較的よく見る先輩だった。クールな印象がある先輩だが、久美子の勘違いでなければ、何故かひさめにはデレデレな様子をよく見かけた。それほどあからさまな訳ではないが、他の人に話す時よりも声が優しい気がするし、よく聞くと発言内容も全肯定なものばかりだった。
それが良いとか悪いとか、そういう訳ではないが。
「個人練行ってきます」
ただ、他の人の事ばかり見てはいられない。
少し前に滝先生がコンクールメンバーをオーディションで決めると宣言していた。麗奈が久美子もメンバーに選ばれる前提で話してくるため、無様な結果は見せられないのだ。
「みぞれせんぱ〜い! 去年みんなで行ったカフェに新商品が出たみたいなんですけど、一緒に行きませんか!」
「誰が来るの?」
「それは、私とふ・た・り・で♪」
「……。希美を誘った方がいいと思う」
「くぅ……そうですよね! 希美先輩も誘った方が良いですよね! 誘ってきます!」
「あ…………そうじゃなくて」
どこかに駆け出していくひさめと、力なく空中に手を漂わせる鎧塚みぞれ。
何かすれ違っているような気がするものの、久美子がどうにかするような問題ではなさそうで、放っておいても数分もすれば解消されそうな気もした。
▼△▼△▼△
雨の日も多くなってきた頃。
久美子の幼馴染でもある葵が吹奏楽部を辞めると言い出した。三年生だから、受験勉強との兼ね合いもある。久美子が何か言ったところで無責任にしかならないかもしれない。
それでも、滝先生に退部を宣言し、音楽室を出ていった葵を久美子は追いかけた。
葵を止めるために飛び出したのは久美子だけでなく、部長の晴香も同様だった。
「上手くいかないなぁ……ほんと」
晴香は葵を止められず、久美子はほとんど見ているしか出来なかった。
「せめてあすかぐらい、私にも出来たらよかったのに……私には向いてないよ……」
「そ、そんな事ないですよ」
「いいの。分かってるから。みんなあすかが部長をやれば良かったって思ってる……私だって、そう思ってるから」
何を言えば良いのか、久美子には分からなかった。
久美子は部長というものを経験した事はなく、そして自分よりも優秀な人がいるのに部長をするという苦労も分からない。
これが麗奈なら最終手段としてビンタがあるが、そんな事が出来るはずもなく。
「なに後輩に絡んでんの。アンタは蛇か」
「絡んでない!」
救世主として現れたのは同じユーフォニアムで直属の先輩とも言える田中あすかだった。
「そうやってすーぐネガティブになる。そんなんじゃ、ついていくみんなが不安になるよ。ただでさえちょっと情緒不安定なところが……」
「そんな事言うならあすかが部長やれば良かったじゃない! あすかが断ったから私がやらないといけない事になったんだよ!」
「だったら、晴香も断れば良かったんだよ。違う?」
それは、とても残酷な言葉だった。部長をやる事になった背景なんて全く知らないのに、少なくとも久美子にはそう感じられた。
全然似ていない。逆に共通点を探す方が難しいぐらいなのに、その瞬間の晴香の姿は麗奈と重なって見えた。
「あの、あすか先輩……」
何を言うかも決まっていない。ただ、あすかに声をかけた瞬間、あすかの袖に誰かの腕が伸びた。
ひさめだった。
「ん? なーに、これ?」
「取り消してください」
「なにを?」
「今、晴香さんに言ったこと」
「なんで? 私間違った事言ってる? やりたくないなら断ればいい。何も間違った事言ってないでしょ?」
そこから始まったのは、もはや言い合いだ。
一年生と三年生。部活動において絶対の上下関係などお構いなしに。
いつもなら、どんな人とも仲良くしている。明るくて、アドバイスが的確で、たまによく分からないギャグを挟んできたり、そんな様子とは全く違う、あすかを睨みつけるその様子。
何故か、親近感が湧いた。
▼△▼△▼△
オーディションの結果が発表された。
低音パート、ユーフォニアムの担当は三年生であるあすかと一年生である久美子の二人。二年生の夏紀は落選だった。
オーディションを行なう以上、上級生が落選して下級生が選ばれる事は決して珍しい話ではない。ただ、それを全員が納得するかと言えば、そうは言えない現実があった。
「今日さ、練習終わった後って時間ある?」
そう話しかけてきたのはコンクールメンバーから漏れてしまった夏紀。
「話あるから付き合ってよ。奢るからさ」
それは、久美子にとってはまるで死の宣告のように感じられた。
それから放課後、夏紀に連れられて入ったのはチェーン店であるファストバーガー。
「ごめんね、奢るって言ったのにこんなので」
「い、いえ……」
オーディション後、落選した先輩に呼び出されるというこの状況。久美子の脳裏に苦い記憶が過る。
渡されたストロベリーシェイクを手に、伏し目になりながら正面に座った夏紀へ視線を向ける。
普段、麗奈のカウンセラーもどきという役割を渋々ながらこなしている久美子だが、自分のメンタル管理が万全かと問われると自信を持って頷く事は出来なかった。
麗奈ほど酷いものではないが、久美子にもトラウマと呼べるものがある。かつて、中学一年生の時に今と同じようにオーディションを受け、先輩を蹴落とした形でメンバーに選ばれた事があった。
『──あんたがいなければコンクールで吹けたのに!』
八つ当たり。そう言うのは簡単だ。久美子は何もルール違反をした訳ではなく、ただ純粋な実力でメンバーの座を勝ち取った。先輩がメンバーになれなかったのは実力が足りなかったから。
そうやって切り捨てられたら、どんなに楽だっただろう。
当時は分からなかったけれど、久美子はもう知っている。自分の力ではどうにも出来ない理不尽があるという事を、知っている。
運、才能、環境。本人の努力ではどうにもならないものがあると、知っている。
「あーあ。オーディション落ちてしまったー」
「……っ」
責められて、何も言い返せなくて、でも相手の言い分も分かって。
中学一年生のあの時と、麗奈と関わり始めた時期。あの先輩との出来事は決して良い思い出ではないけれど、この二つの起こった順番がこの通りで良かったと久美子は思う。
もしも今、同じような状況になってしまったら、精神の身動きが出来なくなってしまうから。
麗奈と関わり始めて、人に共感する力が強くなってしまったと感じていた。カウンセラーの真似事なんてしていたのだから当然なのかもしれない。ただ、そのせいで相手の気持ちに共感してしまう。
だから、夏紀の立場も理解してしまう。
一年生に負けた。
他の低音パート二年生はメンバーになっているのに自分だけメンバーになれなかった。
二年生全体で見れば上手い方なのにメンバーになれなかった。
オーディションの時、アドリブで運悪く苦手なところを指定されたかもしれない。
ほとんどの人は早くて中学の時が初めてなのに、久美子は小学生の頃からユーフォニアムに触れていた。麗奈と二人で好きなだけ練習出来る場所があった。環境も違う。
「やっぱり気にし……お、黄前ちゃん!? そ、そんなに気にしてたの……!?」
もしも同じような状況になった時、また前回のようにやり過ごせるか分からない。
麗奈だって、一度目に負けた時はまだ大丈夫だったのだ。二度目に負けて、それからあんな風になってしまった。
自分なら二度目も大丈夫なんて言えるほど、久美子は自分を信頼していなかった。
「だ、大丈夫だから! 私気にしてないから!」
「え……?」
「オーディションはあれで良かったと思ってるんだ。呼び出してシメてやろうとか、そんなんじゃないからね?」
ぎゅっと瞑っていたまぶたをゆっくりと持ち上げる。
無意識のうちに身構えて、身体も小さくなっていた。
「自由曲は『ラプソディー・イン・ブルー』だし、ちょっとは自信があったんだけどね。ただ、本気で全国を目指すならあれで良かったんだよ。それに、私が望んでた事でもあるしね」
「望んでた、こと?」
「そ。知ってる? 南中の吹奏楽部」
「まぁ、一応……」
「私も南中の出身でさ。帰宅部だったんだけど、憧れてたんだ。だから、それと同じではないけど、似た環境になって嬉しかったんだ」
「そ、そうなんで……え!? 夏紀先輩中学帰宅部だったんですか!?」
「あれ、言ってなかったっけ……?」
言っていたような気もするし、言っていなかったような気もした。
「でも、高校で始めてあんなに……」
夏紀の実力は中学時代から続けている、いわゆる経験者のそれと相違なかった。それこそ、強豪の南中学吹奏楽部に所属していたと言われても納得するほどに。
「みっちりマンツーマンで教えてもらったからね。あんなにしてもらって、上手くなりませんでしたは許されないし」
「ああ、個人レッスンに……」
確かに部活動とは別に個人レッスンに通えば、高校から始めても経験者に負けないぐらいの実力はつくのかもしれない。
ただ、それにしても、だった。高校から始めたという事は、ユーフォニアムに触れてから一年と少し。個人レッスンに通ったとして、本当にこんなに上手くなるものだろうか。
「個人レッスンか……そうだね。コソ練って言ってたけど、思い返してみれば随分と贅沢な事をしてもらってたよ」
「やっぱり高いんですか?」
「高い? ああ、違う違う。教室とかに通ってた訳じゃなくてさ。倉崎さんに教えてもらってたんだ」
「倉崎さんに……?」
「贔屓とか思われたら嫌だし、あんまり言いふらしてはないんだけど、去年希美に誘われて倉崎さんとか晴香先輩たちとアンサンブルコンテストに出てね」
「アンコン……え、でも去年って事は倉崎さんまだ中三ですよね?」
「うん。だから大人とかに交じって一般の部門で出たんだ」
吹奏楽部コンクールもそうだが、アンサンブルコンテストなども中学生部門と高校生部門は分かれている。そのため、通常は中学生と高校生が同じチームのメンバーとして出場する事は出来ない。中高一貫校などではまた話が変わってくるようだが、当然ながら南中学と北宇治高校は中高一貫校などではない。
だから一般の部門。なるほど、確かにそれなら一緒に出場出来るだろう。
「そうだったんですか……でも、贔屓って?」
「アンコンに出た時の曲が『ラプソディー・イン・ブルー』だったってわけ。たぶん滝先生も知ってたんだろうね。まぁ、倉崎さんのクラを聞いたらあのまま使いたいって思うのも分かるけど」
「だから贔屓……」
ただ、それで贔屓と言うには難癖な気もした。よほどの定番曲でなければ一部の中学校だけが演奏した事がある曲なんていくらでもある。それを高校で採用される事も全然あり得る。
「一年足らずの時間だったけど、私の宝物。ほんとはさ、あの思い出があるだけでいいって思ってたんだ。ユーフォは二人でも十分かもとか、そうなったら黄前ちゃんには勝てないなとか、薄々分かってたしね」
「夏紀先輩……」
「まぁ、いざ落ちたら思ってたよりも悔しくて……でも、それを望んでたはずなのにとやかく言うのも違うからさ。やっと分かったんだ。希美たちはこうやって中学三年間頑張ってたんだって」
そうして語る夏紀は、オーディションに落ちてしまった事なんて全く感じさせないほどに爽やかで。
「今年はダメだったから、黄前ちゃんに託す。一足先に全国行ってきて」
「……はい」
「でも、来年は私も行く。黄前ちゃんにも、負けるつもりはないからね」
「はい……!」
きっと、人を救える人というのは、こういう人なんだろうと久美子は心の底からそう思った。
自分の立場なんてお構いなしに人を救える人。こういう人が聖人なんて言われるのだろうと。
「じゃ、いい時間だし今日のところは帰ろっか。あ、さっきの話恥ずかしいからみんなには内緒ね。特に倉崎さんには」
「……夏紀先輩、倉崎さんのこと大好きですね」
「え? 当然じゃない?」
「あっ、ハイ……」
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オーディション結果が発表されてから少しして、麗奈が滝先生と入学前から知り合いだったという噂が流れ、吉川優子が滝先生へと突っかかっていった。
「だったら何だっていうの……先生を侮辱するのはやめてください」
そして、さらにそこへ突っかかる麗奈。
このままではマズいと、直感が言っていた。
「なぜ私が選ばれたかなんて分かっているでしょう。香織先輩よりも、私の方が上手いからです!」
「アンタねぇ……! 自惚れるのも大概にしなさいよ!!」
好き好んで渦中へ踏み込むほど、久美子はもの好きではない。
ただ、このままではいけないと、そう思ったから。
言い争いの渦中へと、久美子は足を踏み入れる。
偉大な先輩に救われた久美子には、もう死角はなかった。
○黄前久美子
麗奈のカウンセラーもどきをやっているが、別に自分のメンタルは強い訳ではなく、むしろ原作よりも危ういところがある。中学一年生の時の出来事がトラウマで、身近にトラウマで大変な事になっている麗奈がいるため、トラウマの内容というよりもトラウマそのものに対して恐怖がある。
カウンセラーもどきをやっている影響で人に対する共感性が高まって、誰かと対立する事になっても相手の気持ちになってしまって苦しくなる。
○中川夏紀
マジエンジェル。