いつか途切れた、音の続きを 作:いつかの音色
もう少しで原作にたどり着きますので、しばしお付き合いください。
夏休み期間も明け、9月になった。
吹奏楽コンクールの京都府大会が終了し、銅賞を取った北宇治高校のコンクール出場は終了し、それから少ししてあった定期演奏会を最後に晴れて三年生が引退した。それまでの間、暇があれば北宇治高校正門近くで三年生を待ち伏せし、希美先輩たちを虐めた三年生が通り掛かると睨みつけるという日々を過ごした。希美先輩と一緒にいた時に睨まれたから、という一応第三者から何か言われた時のための言い訳も用意して。結果的には、特に何も起こらなかったけれど。
ただ、毎日そうしていた訳ではない。高校の吹奏楽コンクールと中学校の吹奏楽コンクールは開催日が近い。北宇治高校の三年生の引退が近付くにつれて南中でもコンクールに向けての練習が激しくなっていった。私はコンクールに出る訳ではないから、直接関係があった訳ではないけれど、クラリネットの後輩から個人的に指導をしてほしいという事を頼まれて週に何度かの割合で個人練習の時間にお邪魔した。多少はその甲斐もあってか、今年の南中は関西大会行きの切符を手にした。
あとは、個人的にピアノのコンクールに出てみたりもした。
さて、北宇治高校に話を戻すと、不幸中の幸いと言うべきか、希美先輩たちへの虐めはエスカレートする事はなく、主に無視をされるという内容に落ち着いたらしい。集団で無視をするというのは立派や虐めであり、許す事はないけれど、希美先輩たちが乗り切ってくれて本当に良かったと心の底から思う。
そして、三年生が抜けた事で北宇治高校吹奏楽部は晴香さんの世代である現二年生を中心として回り始め、なんと晴香さんが部長の座についたらしい。空気の悪い部を任せられて大変だとは思うけれど、私は適任だと思った。晴香さんは私を救ってくれた人だ。きっと、多くの部員に慕われる事になるはずである。
とはいえ、北宇治吹奏楽部で新体制が始まっても、いつもの公園での会合は変わらず行っている。
「一つ、提案があります!」
いつもの公園、みんなで音を合わせてあとは解散という時に私は手を上げた。
「どうしたの? ひさめちゃん」
「せっかくですから、みんなでアンサンブルコンテストに出ませんか?」
晴香さんの言葉に答えるように、私は言った。
アンサンブルコンテスト。題目は何でも構わないけれど、せっかく集まったのだから何かやりたいと思った。みんなでどこかに遊びにいくというのもアリだとは思うけれど、私たちは音楽を通じて集まっているのだ。それに関連するものとして頭に浮かんだのがそれだった。
「アンコン? でもあれって同じ学校の人同士じゃないと出られないんじゃなかった?」
「しかもアンタ一人だけ中学生じゃない」
「中学生の部とか高校生の部ならそうなんですが、一般の部なら一緒に出られます。昨日調べました!」
希美先輩と優子先輩の疑問に答えておく。
アンサンブルコンテストは吹奏楽コンクールと同じように中学生の部や高校生の部、大学生の部、職場や一般の部がある。その中でも一般の部であれば、他の学校の生徒同士、しかも中学生と高校生でも同じチームとして出場出来る。
「そうなんだ。確かに楽しそうだね」
「ちょっと待った。ああいうのって何か連盟とかに加盟しないとなんじゃないの? 大体春とかにやっとかないといけないイメージなんだけど」
晴香さんがその気になってくれそうだったところに、優子先輩が待ったを掛けた。
優子先輩の言葉は正しい。色々と調べたところ、一般の団体で出るにしても、原則5月末までに京都府の吹奏楽連盟に加盟している必要がある。時は既に9月。普通なら今年のアンサンブルコンテストには間に合わない。
「確かに普通はそうなんですけど、実は伯父が吹奏楽の顧問とか音楽に関わる仕事をしてまして」
「もしかしてコネ?」
「平たく言うとそうです。あと、ちょっとだけ自慢入りますけど、私のネームバリュー」
普通は間に合わないけれど、そこで相談したのが伯父だった。
私が今年の吹奏楽コンクールに出なかった事に対して、家族はもちろん、伯父さんも心配してくれていた。人間関係でちょっとトラブルと言って誤魔化したけれど、出来る事があればと言ってくれていたのだ。それを頼った。
「コネでなんとかなるんだ……」
「今ならアンコンに出られるように連盟にねじ込んでくれるって言ってました。なんか、音楽の仕事って結構コネが大事みたいで。晴香さんも顔を売っとくと良いかもです。コネばんざーい」
アンサンブルコンテストは冬に行われる。だから今の時期なら連盟に加盟さえ出来ればセーフという訳だ。5月末までというのも原則。何事も例外というものはあるのである。
それと、実は私は音楽界隈で結構有名な方で、吹奏楽連盟を取り仕切っている人の中に私を知ってくれている人がいるのだとか。後でご挨拶に行った方が良いだろう。
「連盟の加盟費とか大会の参加費でいくらかお金は必要なんですが、そこは割り勘という事でどうでしょう?」
みんなを見渡して言う。
晴香さん、希美先輩、優子先輩、みぞれ先輩。みんな高い技術を持った奏者だ。優子先輩だけ金管ではあるけれど、いくらでもやりようはある。
「良いんじゃないかな。私もせっかくだから、みんなでやってみたい」
「では晴香さんが賛成してくれたので決定という事で」
「私らの意見は無視かい。べつに良いけど」
晴香さんと優子先輩からの賛成を得る事ができ、さらにその後に希美先輩とみぞれ先輩の賛成も得られた事で私たちのアンサンブルコンテスト出場が決定した。決定したといっても、まだ申し込みも何もしていないけれど。
「そうだ、アンコンは8人まで出られるので、もし一緒に出たいって人がいたら誘ってくれてもいいですよ」
「もし誘うってなったら北宇治の子になると思うけど、ひさめちゃんの全然知らない人でも良いの?」
「全然大丈夫です。晴香さんは誰か誘いたい人いるんですか?」
「ひさめちゃんがそう言うなら声を掛けてみようかなっていうのは何人か」
「もちろん大歓迎です。人数いる方が音も厚くなりますし」
そうして先輩たちがそれぞれ吹奏楽部員に声を掛けてみるという事で今日は解散となった。
▼△▼△▼△
数日後。
「はじめましてになる訳ですし、ここはインパクト重視ですかね。やっぱり第一印象は大事なので、取っつきにくいと思われなくはないですし」
「普通にすればいいでしょ、普通に。変に取り繕うと後で苦労するわよ」
晴香さんが声を掛けた人と希美先輩が声を掛けた人がそれぞれ来てくれるという事で、今はそれを先に伝えに来てくれた優子先輩と二人でいつもの公園で待機していた。
「どんな人が来てくれるんですか?」
「私とはあんまり関わりはないけどアンタと同じクラの先輩と、ちょームカつくユーフォの同級生」
「クラとユーフォ。それは良いですね。クラ一人だと音負けしそうでしたし、低音も晴香さん一人で担ってもらう事になりそうでしたから」
やっぱりクラリネットは人数揃ってなんぼみたいなところがあるから、もう一人増えるというのは楽しみだ。それに、アンサンブルの編成なら低音一人というのも珍しくはないけれど、もう一人いた方が幅も出る。
「それと私と同じトランペットのマイエンジェル!」
「おわっ……と」
急にテンションが変わったから驚いた。
マイエンジェルとは随分な呼び方であるけれど、それだけ優子先輩が慕っている先輩……なのかどうかは分からないものの、結構気になる。
「何よ」
「いえ、そういう感じの優子先輩も素敵だと思います」
「そういう感じってどういう感じよ」
「んー、何と言えば良いのか、シンパシーを感じます」
ぶりっ子とはちょっと違うかもしれないけれど、テンション的に近しいものを感じる。あまり優子先輩にそういうものを感じた事がなかったため、それを引き出すマイエンジェルとやらに会えるのも楽しみだった。
「でもそんなに仲がいいのに一緒に来なかったんですね」
「香織先輩は晴香先輩と、そのクラの先輩と一緒に来るって言うから」
「なるほど」
なんて話していると、私たちに近付いてくる3つの人影があった。その内の二人はよく知っている希美先輩とみぞれ先輩。その後ろについて来ているのは茶髪をポニーテールにした人物だった。聞いた話を考えると、恐らくちょームカつくユーフォの同級生という人だろう。
「お待たせー。紹介するね。中川夏紀、担当はユーフォニアムで、実は南中出身」
「はじめまして〜、倉崎ひさめと申しますぅ〜」
「あ、えっと、どうも……倉崎さんってそういう感じなんだ……」
おかしい。一歩引かれた気がする。最初期の女子受けが悪そうな典型的ぶりっ子から改良しているはずなのに。
「やめい」
「あたっ」
原因を探っていると、後ろから頭にチョップを落とされた。
「優子先輩ひど〜い! 私の扱いがひどいです〜!」
「やめい、やめい」
「いたっ、いたっ」
さらに2発、頭に衝撃。最近、優子先輩は私の扱いが雑になっているような気がする。気がするというよりは、確実に雑になっている。チョップも強くなっている。
ただ、このやり取りが楽しくなっている自分もいる。
「という事で、倉崎ひさめです。よろしくお願いします、夏紀さん」
「あぁ、うん……こっちが素?」
「素というか、こんな感じの方が多いは多いです。でも、さっきのもべつに演じてるとかではなく、内なる私をさらけ出していただけでして」
最初は演じてやっていたぶりっ子だったけれど、意外にもと言うべきか、楽しくなってしまって今では一日中やれと言われれば余裕で出来る。
「そ、そっか……初心者だから迷惑かけると思うけど、よろしく」
「はい、よろしくです。せっかく来てくれたんですから、楽しんでいきましょう」
少し強引に話を終わらせられた感はあったけれど、ひとまず中川夏紀さんとの顔合わせは順調に完了した。
握手しようと手を差し出したら、私の手を握る前に自身の手を服でめちゃくちゃ拭きまくっていたのは気になったけれど。握手も触れたのはほんの一瞬ですぐに手を引っ込められたのは気になったけれど。
「夏紀さんは中学の時は何かやってたんですか?」
「中学の時は帰宅部だったんだ」
「そうなんですか。吹奏楽部には友達と一緒に、とかですか?」
「うん、希美に誘われて」
「希美先輩に。確かに希美先輩は色んな人誘って連れて来そうな感じしますもんね。ユーフォは希望した感じですか? それとも……」
「本当はサックスとかやりたかったんだけど、定員オーバーで追いやられた感じ」
「あー、サックス人気ですもんねぇ」
晴香さんが人を連れて来るまでの間、私は夏紀さんと親睦を深めるために雑談をしていた。既に親交のある希美先輩や優子先輩、みぞれ先輩は空気を読んで三人だけで喋ってくれていた。
「実は前から倉崎さんの事は知っててさ。ほら、南中で垂れ幕あったでしょ」
「ありましたねぇ」
「なんとか大臣とか書いてたから印象に残ってたんだ」
「知っててくれて嬉しいです。頑張った甲斐がありました」
そうして話していると、新たな二人を連れてきた晴香さんが合流した。
「ごめんね、遅くなって」
「全然大丈夫ですよ。今の間に夏紀さんと仲良くなれたので」
「中川さんと……よかった」
そんな晴香さんの後ろにいるのは、ショートヘアの美人系の人と、ローポニーテールの可愛い系の人。優子先輩の目線の向き的に美人系の方がトランペット担当で可愛い系の方がクラリネット担当だろうか。
ともかく、まずは挨拶だ。夏紀さんの時はちょっと引かれてしまったから、もう少しいい感じに。
「はじめまして〜、倉崎ひさめと申します〜。晴香さんにはいつもお世話になってまして〜」
「こんにちは。中世古香織です。優子ちゃんから話は聞いてるよ」
「優子先輩には私もお世話になってます〜」
「私は鳥塚ヒロネ。晴香から話は聞いてたんだけど、同じクラですごい人だって聞いてたからちょっと緊張してたんだ。話しやすそうな子で良かったー」
「同じ楽器だって聞いて〜会えるのを楽しみにしてました〜」
予想通り、美人系の中世古香織さんがトランペット担当、可愛い系の鳥塚ヒロネさんがクラリネット担当であった。二人とも話しやすい感じで良かった。
優子先輩からのツッコミがないという事は、これは合格という事だろうか。あるいはマイエンジェルらしい香織さんがいるから抑えているだけだろうか。
「それじゃあ、ひさめちゃん」
「はい、晴香さん!」
顔合わせが終わったところで、私は靴を脱いでベンチの上に立った。地面に立ったままだと私が一番身長が低いので。
「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。皆さんに集まっていただいたのは他でもない、一緒にアンサンブルコンテストに出ましょうという事でございます」
少し大袈裟に、ヨーロッパ貴族の紳士をイメージするようなお辞儀をしてみる。パチパチとまばらな拍手が聞こえたので見てみると、晴香さんと希美先輩が手を叩いてくれていた。少し後に、続いて他の人たちも拍手をしてくれた。
「お試しで来てくれた方もいると思うので、最初に簡単に説明しておきますね」
晴香さんと希美先輩、優子先輩、みぞれ先輩は既にアンサンブルコンテストに出る事に同意してくれているけれど、夏紀さんと香織さん、ヒロネさんの三人は誘われたからとりあえず来てみた、という点があるはずだ。だから、いきなり出場決定練習開始では困るかもしれないので、改めて説明をしておき、ちょっと間はお試し期間にした方が良いだろう。
「アンコンことアンサンブルコンテストは三人から八人の編成で、演奏時間5分以内で一曲演奏して審査を受けるというものです。同一パートを複数人で演奏する事は認められていないので、もしこの場の全員で出るとなった場合、クラとトランペットは1stと2ndに分かれる事になります。それから……あっ、これが一番大事なので心して聞いてください」
細かいルールなどは後で適当に気を付けてと言っておけば良いけれど1つだけ大事な事がある。
「同じ人が複数のグループにまたがって重複して出場する事は出来ません。つまり、私たちと一緒に出る場合、北宇治高校でグループを組んだとしても、そちらのグループで出る事は出来ないという事です」
晴香さんから聞いていた北宇治吹奏楽部の内情を考えると、今までアンサンブルコンテストには出ていなかったようだし、今年もアンサンブルコンテストに出るような感じではないけれど、希美先輩のようにやる気がある生徒もいない訳ではない。元南中学の先輩が辞めてしまったとしても、全員が全員やる気なしという事ではないはずだ。
だから、もしかすると北宇治高校内でアンサンブルコンテストに出ようという動きもあるかもしれない。必要とする人数が少ない関係上、やる気のある生徒が少数派でも出場はしやすい。
「申し込みの期間はまだ先なので全然考えてもらって大丈夫なので、それだけ注意しておいてください」
吹奏楽連盟への加入はすぐにしなければ、というか期限は過ぎているけれど、アンサンブルコンテストの申し込み自体はまだ先なので時間はある。
「と、いう訳で!」
パンと手を合わせて、空気を変える。
「今日は親睦を深めるために、この後ファミレスでも行きませんか!」
どの道今日は初顔合わせの三人は楽器を持っていないので、見学ぐらいしかやってもらえる事がない。
みんなが同意してくれた事で、私たちはファミレスへと場所を移した。
▼△▼△▼△
数日後。夏紀さんや香織さん、ヒロネさんの三人もこのメンバーでアンサンブルコンテストに出るという事を決めてくれたので、とりあえず伯父さんに頼んで連盟への加盟だけしておこうと思ったところ、団体名が必要であるという事がすっかり頭から抜けていた。
「という事で団体名を募集します」
「ひさめちゃんが代表みたいなものだし、ひさめちゃんが決めるんじゃダメなの?」
「私が決めても良いんですか?」
「私は良いと思うけどな」
団体名を募集したところ、希美先輩からそんな言葉が返ってきたので、少し考える。
「
「公園ってこの公園のこと? この公園ってそんな名前だった?」
「いえ、北宇治と南中の北と南です。北宇治と南中の公園に集まったチーム、みたいな」
「テキトーじゃない」
「え〜! 優子先輩ひど〜い! 香織さん、優子先輩ひどいです〜!」
「なっ!? ち、違うわよ! 適切って意味で言ってたの!」
と言いつつ、実際ちゃんと考えていないという意味での適当ではある。纏まって所属する団体がない以上全く新しく考える必要があるし、こういうのは捻り過ぎても良い事はない。たぶん。
「きたみなみって漢字?」
「最初はそう思ったんですけど、ひらがなの方が良いですかね?」
「ひらがなの方が可愛いかなって」
「そうですよね。私もそうじゃないかって思ってました」
という事で香織さんの意見も取り入れ、最終的に対抗も出なかったので、我らが団体名は『きたみなみ公園オクテット』となった。
そして団体名が決まれば、次に決めるのは演奏する曲だ。
「では、何か演奏したい曲がある人!」
手を挙げるようなジェスチャーをしてみるも、誰の手も挙がらなかった。
「曲が決まったとして、楽譜とかはどうするの? アンサンブル用のやつを買う感じ?」
「曲が決まったら私がいい感じに5分以内に編曲して楽譜を配ります」
「だったらアンタが決めた方がスムーズなんじゃない?」
「私が決めると私の趣味全開になりますけど、大丈夫ですか? 今のところ『ラプソディー・イン・ブルー』が第一候補ですが」
私がクラリネットを始めるきっかけになった曲であり、そして出だしからクラリネットが目立ちまくる曲でもある。アンサンブル用に編曲したとしても、それは変わらない。
「香織先輩知ってますか?」
「聞いた事だけなら、あるかな」
候補ではなく質問を挙げた優子先輩と香織先輩の会話を眺める。
曲なんて星の数ほど存在するので、超有名な曲でなければその場に知らない人がいるなんて事もしばしば。吹奏楽コンクールの課題曲になるような曲も部員の内何人が元から知っていたかという話だ。
いや、『ラプソディー・イン・ブルー』は超有名な曲ですけれどもね?
「あ、私知ってる! クラのソロから始まるやつだよね?」
「さすがヒロネさん! やっぱりクラ吹きで知らない人はいないですよね!」
同じクラリネット吹きのヒロネさんは知っていたけれど、他の人は全滅。
「仕方ありません。晴香さん、知らない人のために一緒に演奏して差し上げましょう。あ、ヒロネさんも一緒に吹いてみます?」
「いや、無理無理!」
という事で、晴香さんと二人で『ラプソディー・イン・ブルー』を演奏する。まだ二人だけだった時代に幾度となく演奏した曲であり、晴香さんにも迷いはない。
最初から最後まで吹くのは試し聞きのためとしては少し長いので、ある程度のところで吹くのを止めた。
「こんな感じの曲です。どうですか、香織さん」
「すごく良い曲だね。私はこの曲で出ても良いと思う。優子ちゃんはどう思う?」
「私も良いと思います!」
香織さんと優子先輩の同意を得られた。残りは希美先輩とみぞれ先輩、夏紀さん、ヒロネさん。晴香さんからははっきりと同意の言葉をもらった訳ではないけれど、晴香さんは口には出さないまでも、嫌ならそれが結構態度に出るので、それがないという事は選曲に不満は持っていないはずだ。それに、『ラプソディー・イン・ブルー』は私と晴香さんを引き合わせた曲でもある。私たち二人にとっても特別な曲だ。
「私も良いと思うよ。みぞれと夏紀は?」
「良いと思う」
「私もあんまり詳しくないけど、良いんじゃない?」
希美先輩、みぞれ先輩、夏紀さんの同意も得られ、最後はヒロネさんだけとなった。
「私ももちろん賛成!」
と、ヒロネさんも同意してくれたので、曲はめでたく『ラプソディー・イン・ブルー』となった。
○中世古香織
現二年生、北宇治高校吹奏楽部トランペットパート・パートリーダー。晴香の誘いにより参加。
○鳥塚ヒロネ
現二年生、北宇治高校吹奏楽部クラリネットパート・パートリーダー。晴香の誘いにより参加。
○中川夏紀
現一年生、北宇治高校吹奏楽部ユーフォニアム担当。希美の誘いにより参加。
実はその前に晴香が田中あすかを誘ったが、不参加だったために空いた枠に希美が誘った形。