ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
また1つ成長し、カグヤと共に次のジムがあるハナダシティへと向けて、旅を続けていた……。
「……ん〜、やっと着いたね」
大きく伸びをしながら、カグヤはふぅと息を吐く。
ハナダジム制覇を目指し、おつきみ山を3日掛けて越え、ようやくハナダシティ辿り着いたレイジ達。
ちなみに、おつきみ山では特に何も起こらなかったので割愛させてもらう。
「さっそくジム戦、と言いたいけど……みんなを休ませないとね」
「うん。そうだね」
「そういえば、レイジもジムリーダーに挑戦するつもりなの?」
「そのつもりだけど……」
「……なんか、レイジ変わったね」
「えっ?」
「だって、前はそんな風にバトルを進んでやろうとしなかったじゃない」
「……まあ、ね」
けれど、自分のあの考え方は間違いだったと教えてくれた人がいた。
そして再戦を約束した以上、今よりもずっと強くならなければ。
本気の彼女と渡り合えるくらい、強く……。
「……むぅ。なんか面白くないなぁ」
「何がさ?」
「うーん……私もよくわからないけど、レイジからシロナさんの話が出るのは……なんか、やだ」
「???」
そんな事を言われても、レイジとしては困ってしまう。
「カグヤはシロナさんの事が嫌いなの?」
「そういうわけじゃなくて、うーん……ごめん、上手く説明できないや」
「…………」
曖昧なカグヤの言葉に、レイジはただ首を傾げる事しかできない。
けれどカグヤは気にしないで、と言って再び歩き始めたのでレイジとしても気にしない事にした。
〈お父さん、ちょっと待って〉
ポケモンセンターの前まで辿り着いたレイジ達だったが、突然ティナの制止の声が掛かる。
「どうしたの?」
〈…………〉
「ティナ?」
〈……ごめんなさい。気のせいだったみたい〉
「気のせいって……どうかしたの?」
〈うん。その……ポケモンセンターの中から不思議な力を感じて……〉
「不思議な力?」
〈でもやっぱり気のせいだったみたい、ごめんなさい〉
「いいよティナ、別に謝らなくても。それじゃあレイジ、入ろう?」
ティナの言葉にどこか引っかかりを覚えながら、カグヤに促されセンターに入る。
「―――――」
すると入った瞬間、不思議な感覚に襲われた。
これは――“共鳴”、だろうか?
何かに呼ばれているような感覚に、レイジは暫しその場で立ち尽くしていると。
「あっ、お前が持ってるのってキルリアか?」
突然横から声を掛けられてしまった。
「そうだけど……」
「へぇ、ホウエンには行った事がないから初めて見たけど、なんか女の子みたいだな」
「みたいじゃなくて女の子だよ、ティナは」
「ティナっていうのか……って事は、お前ポケモントレーナーだよな?」
「えっ、あ、うん……」
「よーし、それじゃあ俺とバトルしようぜ!」
「はぁ……?」
なーなーいいだろー、いきなり話しかけてきたと思った時には、既にバトルを申し込まれてしまった。
(何なんだ、この人は……)
歳は自分と同じくらいだろうか、少しボサボサの黒髪に吸い込まれそうな黒真珠のような瞳。
腰にはモンスターボールが備わっているので、彼もトレーナーだというのはわかるが……。
「俺はカイリ、シンオウ出身のポケモントレーナーだ。というわけで、さっそくバトルしようぜ!」
「どういうわけだよ。いきなりそんな事言われても――」
「困るに決まってるじゃない、そんな事もわからないほど子供なのあなたは?」
カイリと名乗る少年の後ろから、すなわちレイジの正面から今度は少女の声が聞こえた。
「あっ、ヒメカ。見てみろよ、キルリアだぜ?」
「それ以前にいきなりバトルを仕掛けようとする所を反省しなさい。ほら、この人だって困ってるじゃない」
「けどさ……」
「悪いって自覚、無いのかしら?」
ヒメカと呼ばれた少女が睨むと、カイリはあっという間におとなしくなった。
〈まるでアーボックのへびにらみみたい〉
(たしかに……)
「わりぃ、珍しいポケモンだったからつい……」
「わたしの方からも謝らさせてもらうわ、連れが迷惑を掛けてごめんなさい」
「別に気にしなくていいよ」
多少驚いただけで、別にバトルを申し込まれた事に対しては断るつもりなどなかった。
と、レイジはヒメカという少女をようやくまともに見る事ができた。
腰辺りまで伸びた、雪のように白く美しい髪、瞳の色は深い紫色。
少し童顔で、おそらく自分達と同じか少し下程度だろう。
しかし――なにより少女の身体付きを見て驚いた。
いわゆる出るとこは出て引っ込むところは引っ込んでいる体格だが、少し出過ぎていると言っても過言ではない。
(シロナさん以上かもしれない……)
気恥ずかしくなって、つい少女から視線を逸らしてしまうレイジ。
すると、ポケモンの治療を終えたカグヤが何事かとこちらへとやってきた。
「どうしたの?」
「ああ、いや……」
「わぁ……」
どう説明しようか考えていると、ヒメカを見たカグヤが彼女を見ながら驚きの声を漏らした。
「な、なんですか?」
「……いいなぁ。おっぱい大きくて」
「ぶっ!!?」
「なっ!?」
初対面の相手に何てことを言うのかこの娘御は。
「私も毎日マッサージとかしてるけど、全然大きくならないのよ。レイジ、どうしてだと思う?」
「僕に振らないで。えっと……ごめん、連れが失礼な事言って……」
「いいじゃねえか。ヒメカの胸がデカいのは本当なんだし――ぐぇっ!!」
見事なボディーブローがカイリの腹部に突き刺さり、そのまま崩れ落ちた。
それを見てレイジとカグヤの表情がまともに引きつる。ヒメカはそんな彼等をキッと睨んできた。
「ご、ごめんなさい!! 失礼な事言ったりして……」
「……別に、気にしてませんから」
嘘だ、おもいっきり気にしてる、だって顔とか凄く引きつっているから。
(はぁ……おつきみ山では面倒事に巻き込まれなかったからって油断してた……)
「よし、自己紹介も終えたしバトルするか」
「復活早っ」
「まあな。いつもヒメカにど突かれてるから」
(いつも……?)
「ちょっと、誤解を招く言い方をしないで。それじゃあわたしが乱暴女みたいじゃない」
(違うの?)
そんなツッコミが喉元までせり上がってきた。
「なぁ、いいだろ?」
「もっちろん、ジム戦の前に準備運動しないと!」
「へっ、準備運動で済めばいいけどな」
「望む所よ。でもせっかく2対2だしダブルバトルでもしてみない?」
『はぁ?』
レイジとヒメカの声が見事にハモった。
「おっ、それはいい考えだな!」
「レイジ、いいよね?」
期待を込めたカグヤの視線。
……仕方ない、そう言われてしまえばレイジとしても断るわけにはいかない。
「僕は構わないけど、君はどうなの?」
視線をヒメカに。
3対1という状況だからか、それとも説得しても無駄だと悟ったのか。
「はぁ……わかったわよ」
疲れたようにため息をつき、仕方ないとばかりに承諾した。
………。
ハナダシティにある広場へと移動し、モンスターボールを構える4人。
「ヒメカ、完全勝利を目指そうぜ!!」
「はいはい、わかったわよ」
「私とレイジのコンビネーションを見せてやるんだから!!」
(さて……うまくいけばいいけどね)
油断などしない、全力でバトルをするだけだ。
周りのギャラリーがざわめく中――バトルが開始された。
「ツタージャ、いけぇっ!!」
「ロール、出番よ!!」
まずポケモンをボールから出したのは、カイリとヒメカチーム。
「タージャ……」
「ミミーッ!!!」
カイリはツタージャ、ヒメカはミミロルを場に出す。
「ミミロルは知ってるけど……あのポケモン、初めて見た」
「それはそうだよ。イッシュ地方のポケモンだからね」
このカントーから遠く離れたイッシュ地方、そこに生息するポケモンはレイジも初めて見た。
「レイジ、あのツタージャって何タイプ?」
「草だよ」
「草かぁ……なら草には草よ。チコリータ、レディーゴー!!」
「チコーッ!!」
(れいとうビームが使えるエネコを出せばいいのに……)
しかし、彼女がどんなポケモンを出そうが彼女の自由だ。
そして、レイジが場に出したポケモンは……。
「リオン、お願い」
「………グルル」
炎タイプのポケモン、ヒトカゲ――リオンを取り出した。
「ヒトカゲかぁ……けど、俺のツタージャには適わねえよ!!」
「さて……そいつはどうかな?」
リオンも臨戦態勢に入ったのか、ツタージャとロールを睨む。
「先手必勝!! ツタージャ、ヒトカゲにつるのムチだ!!」
「させない。チコリータ、こっちもつるのムチで迎え撃って!!」
リオンに向かっていくつるのムチを、チコリータのつるのムチで防ぐ。
……ツタージャはカグヤとチコリータに任せればよさそうだ。
「リオン、僕達はあのミミロルを倒すよ」
「悪いけど、こっちも負けるつもりなんてないから」
「僕もだ。リオン!!」
「ロール!!」
「かえんほうしゃ」
「れいとうビーム!!」
「カゲエェェェェェッ!!」
「ミミローッ!!!」
リオンのかえんほうしゃとロールのれいとうビームがぶつかり合い、水蒸気を発しながらも互いに譲らない。
「かげぶんしん」
「甘いわね。みやぶるからとっしん!!」
「っ」
かげぶんしんでリオンの分身が増えていくが、ロールは惑わされず分身達を無視し、リオンをとっしんで吹き飛ばす。
「グ、グ………」
空中で体勢を立て直すリオンだが、その顔には僅かに驚きの色が見え隠れしている。
(上手い戦い方だ……結構慣れてるな)
トレーナーとしての腕はそれなりに高いらしい。
だが、こちらとて負けるつもりなど微塵もない。
「かえんほうしゃ」
「れいとうビーム!!」
再びぶつかり合うが、やはり互角なのか互いの技を相殺するのみ。
(こんな単調な攻撃しかしてこないの……?)
先程と同じ攻撃を仕掛ける相手に、ヒメカは眉を潜める。
それなりに高い実力のトレーナーかと思ったのだが、見込み違いか……?
「ロール、にどげりよ」
「ミミーッ!!」
飛び上がり、リオン目掛けて蹴りを放つロール。
それを回避しようともせず、リオンは黙って見つめるのみ。
相手の意図がわからず、少し不気味に思った瞬間、ようやく相手が動いた。
「リオン、あなをほる」
「なっ――」
すぐさまリオンは地面に穴を掘り始め、ロールの攻撃は見事に空ぶってしまう。
「ロール、気をつけて」
……どこから来る?
(右側? それとも左から?)
だが出てきた瞬間、特大のれいとうビームを浴びせてやる。
しかし――いつまで待ってもリオンの姿は現れない。
どうして、そんな疑問が頭に浮かぶより早く。
「はっぱカッター!!」
「っ、避けて!!」
右側から迫り来るはっぱカッターをどうにか回避した。
しかしそれはチコリータに絶対的な隙を作らせ、背後からツタージャの攻撃が迫る。
「もらった!!」
「どうかな?」
カイリの声と、レイジの声が重なった瞬間。
「しまっ――カイリ、逃げて!!」
ヒメカは、レイジ達の作戦に気がついた。
「へ……?」
勢いよく地面から飛び出してくるリオン。
――もちろん出てきた場所は、チコリータに攻撃を仕掛けようとして隙だらけになったツタージャの後ろからだ。
「げっ!?」
今頃気づいたカイリとツタージャだが、もう遅い。
「かえんほうしゃだ」
リオンのかえんほうしゃがツタージャに見事命中し。
「チコリータ、とどめのたいあたり!!」
「っ、させない。ロール、きあいだま!」
「きあいだまにほのおのうず」
「っ!!」
ロールの放ったきあいだまが、凄まじい炎によって包まれ消滅した。
それと同時にチコリータの攻撃がツタージャにヒットし、目を回し倒れ――戦闘不能に陥った。
「くっそー、戻れツタージャ!!」
本当に悔しそうにツタージャを戻し、別のボールを取り出すカイリ。
「チコリータ、ありがとう。エネコ、レディーゴー!!」
「ミャーッ!!!」
カグヤもチコリータを戻し、代わりにエネコをフィールドに出す。
そして。
「モウカザル、頼んだぜ!!」
「――ウキィィィッ!!」
カイリが出した二匹目のポケモンは――モウカザル。
(強い………!)
おそらくあれがカイリの切り札、エース級のポケモンだ。
「リオン、かえんほうしゃ」
「モウカザル、こっちもかえんほうしゃだ!!」
リオンとモウカザルのかえんほうしゃが激突する。
「互角……」
――ではない!
先程の戦闘で疲れたのか、リオンの炎が目に見えて弱くなっている。
「エネコ、リオンを援護して――」
「ロール、ピヨピヨパンチ!」
「くっ!?」
援護しようとしたエネコに、ロールのピヨピヨパンチが放たれ間一髪それを回避する。
そして――モウカザルのかえんほうしゃがリオンのかえんほうしゃを打ち破り、凄まじいパワーでリオンを吹き飛ばした。
「リオン!!」
倒れ、目を回し戦闘不能に陥るリオン。
それをゆっくりボールに戻し、二匹目を取り出すレイジ。
「あのキルリアを出すのか?」
「いや……ヒカリ、お願い!!」
「ピッカァッ!!」
戦場に出したのはピカチュウ――ヒカリである。
「ピカチュウ……電気タイプのポケモンね」
「へへっ、そんな可愛いだけのポケモンで俺のモウカザルに勝てるかな?」
「ヒカリは強いよ。甘く見てると……おもわぬ痛手を負うかもね。ヒカリ、モウカザルに10万ボルト!!」
「ピーカチュウゥゥゥッ!!」
「しゃらくせえ、モウカザル、かえんほうしゃだ!!」
「ウキャアァァァッ!!!」
ヒカリの10万ボルトをモウカザルのかえんほうしゃが押し返す。
「かえんぐるま!!」
「ウキッ!」
「でんこうせっか!!」
「ピ―――ッ!!」
自身の身体を炎で包み、ヒカリに向かっていくモウカザル。
しかしヒカリはでんこうせっかでモウカザルの攻撃を回避する。
「モウカザル、あなを――」
「遅い、でんげきは!!」
「チュウウ、ピッカァッ!!」
モウカザルが地面に穴を開ける前に、ヒカリのでんげきはが見事命中。
「ウギ……!?」
致命傷にはならなかったものの、確実にダメージを与える事ができた。
「レイジ!!」
(頃合いか………!)
カグヤの声に頷きを返し、ヒカリをエネコの隣に移動させる。
「――次の一撃で、決着つけてやるんだから!」
「おもしれぇ……やってみやがれ!!」
モウカザルの炎が膨れ上がる、向こうもパワーを溜める気らしい。
対するこっちも、パワーを溜める為にその場で力を込める。
『―――――』
睨み合う4人。
暫し、時が止まったかのような静寂が訪れたと思った瞬間。
「ヒカリ!!」
「エネコ!!」
「モウカザル!!」
「ロール!!」
『フルパワーで……』
4人の声が重なり、そして……。
「かみなりだ!!」
「ふぶきぃっ!!」
「かえんほうしゃ!!」
「れいとうビーム!!」
自分のポケモンが放てる最強技を、その場に解き放つ―――!
凄まじい爆音と水蒸気がフィールドに溢れ、レイジ達どころか観客達まで包み込んでいく。
鼓膜が破れてしまったのではないかと錯覚してしまうほどの轟音に、レイジもカグヤも耳を押さえその場に跪く。
「っ、エネコ達は……?」
まだ痛む耳を気にしながら、勝敗の結果を確かめようと立ち上がるカグヤ。
だが、技のぶつかり合いで発生した水蒸気によってフィールドはいまだ見えない。
「…………」
やがて、煙が晴れていきカイリ達の姿も確認できるようになった。
だが――勝負の結果は意外な結末を迎えてしまったようだ。
「嘘……」
「……まいったね。今回は“引き分け”だ」
仲良くフィールドに倒れている四匹のポケモン達。
それは、この勝負の終わりを告げるなによりの証となり。
そして……引き分けてしまった結果を教えてくれたのだった。
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「――へぇ。お前等ポケモン図鑑持ってるんだ……いいなぁ」
「カイリ、口に食べ物を入れたまま喋らないで」
へーい、と気の抜けた返事を返しながら、カイリはレイジから見せてもらっているポケモン図鑑を興味深そうに覗き込んでいる。
――バトルも終わり、すっかり意気投合してしまったカグヤとカイリ
ポケモン達を休ませるため、ジム戦は明日にしようという事で、現在は夕食を一緒に食べている最中だ。
「でもカイリ、どうしてわざわざカントーに来たの? シンオウにだってポケモンリーグはあるじゃない」
「いや、俺も最初はそうしようとしたんだけどさ……シンオウのポケモンリーグまであと2ヶ月しかないから、今回は諦めたんだよ」
「えっ、そうなの?」
「地方によって開催日は変わるからね。カントーはあと9ヶ月ほどあるけど、シンオウはもう2ヶ月を切ったよ」
「へぇ……レイジ、物知りだね」
「……ポケモンリーグを目指してるなら、知らないとおかしいと思うけど」
「そうなの?」
ズレた返答を返すカグヤに、レイジはため息を返すばかり。
「けど、さっきはすげぇ勝負だったな。レイジもカグヤもなかなかやるじゃねえか」
「カイリだってなかなかだったよ、もっとも私の方が強かったけど」
「何だと? じゃあもう一回勝負してみるか?」
「いいわよ。受けて立とうじゃない!!」
席から立ち上がり、睨み合う2人。
「はいはい、わかったから」
「2人とも、恥ずかしいから席に座りなさい」
そんな子供組を事も無げにおとなしくさせる大人組。
渋々座りながらも、まだ牽制し合うかのように睨み合う両者。
(……なんだか)
(お互いに、苦労しているみたいね……)
『はぁ……』
そんな2人を見ながら、無意識のうちにお互いの気苦労を感じ取ったレイジとヒメカは、同時にため息をつくのだった。
「あっ、そういえばレイジ。お前達もカントーのポケモンリーグを目指してるんだよな?」
「うん、まあ……」
「ならさ、一緒に俺達も連れてってくれないか?」
「えっ……」
「いいよー」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!!」
レイジは驚き、カグヤは特に考えもせずに頷き、ヒメカは慌ててカイリを止める。
「カイリ、いきなり何を言うの?」
「だってさ。俺達カントー地方に詳しくないだろ?
なら詳しいレイジ達と一緒に行動すれば迷う心配もないし、なにより楽しそうじゃんか!」
「……あのねぇ」
彼の言い分はわかる、それに一理あるのも確かだ。
だが、今日出会ったばかりだというのに、あまりにも図々し過ぎるお願いだとは思わないのだろうか。
……思っていないだろう、のほほんとした表情を浮かべているカイリを見ればそれがすぐにわかる。
「私は別に構わないよ、旅は道連れ世は情けって言うし。レイジもいいよね?」
「……まあ、断る理由はないかな」
彼等が悪い人間ではないというのはわかったし、いずれライバルになるとしてもカントー地方の事がわからない2人だけにしては、少し心配でもある。
「……正気?」
「そこまで言われる事じゃないと思うんだが」
「だって、今日バトルしたばっかなのにこんな……」
「楽しいバトルが終わった後は、勝ち負け関係なく友達だよ!!」
「そうそう、カグヤの言う通りだって!」
「…………」
「……もし嫌だったらはっきり言ってもいいんだよ? 僕達は気にしないから」
「うぅん、そういうわけじゃなくて……カイリみたいに脳天気な人が居るとは思わなくて……」
(悪かったね)
とはいえ、彼女の言葉に否定する事はできない。
出会ったのは今日、自己紹介を軽く済ませてバトルをしているだけ。
だというのに、いきなり旅に同行させてくれと言ったらあっさりOKしたのだ、ヒメカがそう口にしてしまうのも無理からぬ事である。
「それじゃあ2人とも、暫くよろしく」
「よろしくね、ヒメカ、カイリ」
「ああ、よろしくな!」
「よろしく……」
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【カグヤside】
「ヒメカ〜、お風呂入りなよ」
「ありがとう」
バスタオルで髪を拭きながら、同室のヒメカに声を掛ける。
今日は私とヒメカ、レイジとカイリという部屋割りだ。
私はレイジと一緒の部屋でもよかったんだけど、ヒメカがカイリと同じ部屋は嫌だっていうものだから……。
「明日から4人で旅ができるね。なんだか楽しみ〜」
「……でも、本当によかったの?」
「何が?」
聞き返すと、何故かモジモジし出すヒメカ。
はて……一体どうしたというのか。
「だ、だから……その、レイジと2人だけで旅をしなくて……」
「? どうしてここでレイジが出てくるの?」
「カグヤ、あなた達ってその……つきあってないの?」
「付き合う……?」
どういう意味なのかさっぱりわからない。
オウム返しに訊くと、ヒメカはさっきより顔を赤くしながら言葉を続けた。
「あなた達って、こ、恋人同士じゃないのって事よ……」
「恋人同士? 私とレイジが?
うぅん、違うよ。私とレイジは幼なじみで家族だもん」
でも、端から見ると恋人同士に見えるのかな?
そんな事を考えていると、何故か信じられないといった表情を向けられてしまった。
「えっ、だ、だって……あんなに仲が良いのに……」
「もちろんレイジの事は大好きで一緒に居たいと思ってるよ?
けど恋人同士じゃないし、それに……私じゃレイジには吊り合わないよ」
レイジみたいな男の子には、私なんかよりもっとしっかりして大人の女性の方がいい。
たとえば……シロナさんとか。
「そういうヒメカはどうなの? カイリの事が好きだから一緒に旅をしてるんじゃないの?」
「っ、ばっ、そ、そんなわけないじゃない!!
わたしとあの人は単なる幼なじみ、それ以上でもそれ以下でもないわ!」
そんなに力強く否定しなくてもいいのに……カイリ泣いちゃうよ?
でも……きっと今の言葉は照れ隠しだ。
だって、なんだかんだ言いながらカイリのフォローはきちんとするし。
それになにより、ヒメカのカイリを見る瞳が凄く優しい色をしてた。
友達や家族としてじゃない、異性として彼を見ているってすぐにわかった。
けどヒメカって素直じゃないな〜、これが俗に言うツンデレってやつなのかな?
明日辺り、レイジにでも訊いてみよう。
「……はぁ、なんだかカイリがもう1人増えた気分だわ」
なんで私の顔を見てそんな事言うの?
「まあ……不快ではないけど」
微笑を浮かべ、ベッドから立ち上がるヒメカ。
「お風呂に入ってくるわね」
「うん。……あ、ヒメカ」
いけないいけない、後でもいいんだけど先に訊きたい事があったんだ。
何、と振り返ったヒメカに、私は訊きたかった事を訪ねた。
「どうやったら、そんなにおっぱい大きくなるの?」
と。
だって同じ歳なのにこうまで違うっていうのは、悔しいというかなんというか……。
私もそれなりにあるけど、ヒメカに比べたら月とスッポンだ。
って、なんでずっこけてるの?
「……あなたねぇ」
あれ、なんだろう……なんだか冷や汗が。
何故かこの場から逃げ出そうとするのだが、身体が動かない。
――その後、何故かヒメカに説教されてしまった
やれ女の子の自覚を持てだの、そんな質問をするなだの。
……私、なんか変な事言ったかな?
To.Be.Continued...
※キャラクター【レイジ】【カグヤ】の項目を更新しました。