ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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カイリが助けた少女カノンは――伝説のポケモンと呼ばれるラティアスであった。
そのラティアスを狙う謎の男女、マーダとフレアから守ろうと、カイリは己の能力を限界まで引き出そうとして………。


第13話 〜ラティアス攻防戦、放たれるデッドポケモン〜

――深淵の森の中で、死闘が繰り広げられている。

 

「ゴルバット、つばさでうつ!!」

「グラエナ、かみつく。ハブネーク、ポイズンテール!!!」

「――ツタージャ、つるのムチでハブネークを弾いた後、グラエナの攻撃を右にかわせ。

 モウカザルはかえんほうしゃでゴルバットを攻撃しろ、右に避けるからかえんぐるまで追撃するんだ」

一気に命令を出し、ツタージャはつるのムチでハブネークのポイズンテールを弾き、間一髪でグラエナの攻撃を回避する。

ゴルバットへと真正面からかえんほうしゃを放つモウカザル。

それを右に避けるゴルバットだが、それを完全に見抜いたモウカザルのかえんぐるまがゴルバットを吹き飛ばした。

 

「何だと……!? 何をしているゴルバット、そんな雑魚になに手こずってんだ!!」

怒りの表情を露わにして自分のポケモンに罵倒の言葉を浴びせる男だが、それとは対象的に女は相手であるカイリを冷静に分析していた。

(おかしい……さっきからこちらの攻撃は避けられるか弾かれるばかりなのに、相手の攻撃は確実に命令している)

一発だけならばたいした被害にはならないが、こうも連続で受けるとさすがに拙い。

しかし、あの少年の読みは素晴らしいというより異常だ。

こうも的確に二手三手先に読むなど、少なくとも四天王やチャンピオンクラスの実力者でなければ不可能だ。

だが目の前の少年の実力は並よりは上なものの、自分達よりは下のはず。

 

(どうやら、何かしらのカラクリがあるみたいね……)

それがどんなものかはわからないが、その正体を見破らなければこちらの勝機が薄れる。

彼女の読みは正しい、このままならばカイリはこのような不利な状況でも勝利できるだろう。

だが、それもまた不可能な話なのである。

 

「――――っっっ」

秒単位で、痛みが酷くなっていく。

閃光じみた光が眼を焦がし、視界が赤く塗り潰され感覚も少しずつ薄れていく。

 

力の代償――先程からカイリはずっと未来を視る力を解放し続け、どうにか互角の戦いを繰り広げているのだ。

しかし、1日に一回解放するだけでも疲労するような強大な力を使い続ければどうなるか、それは彼にすらわからない。

まず始めに全身に痛みが走り、続いて吐き気を催し思考が削られていった。

今だって意識しなければ自分を保っていられる保障はない。

それでも使わなくては、この戦いに勝利しなくては彼に未来はなく……また後ろで自分の戦いを見つめているラティアスの未来すら消えてしまう。

そんな事させない、そんな事許されない。

何もしていない彼女が、何も悪いことなんかしていないカノンがこんな目に遭っていいわけがない。

限界などとうに越えた、今彼を支えているのは守るという約束と気力だけ。

 

だが、人間の身体はそこまで頑丈ではない。

再び力を使い、未来を視てから指示を出そうとした瞬間――終わりが訪れた。

「モウカ――ごぶっ……!?」

鉄錆の味が口内に広がり、地面に落ちるのは赤い液体。

血を吐き出した、それを理解するより前に中断された指示を告げた。

 

「――モウカザル、マッハパンチでハブネークを止めろ。

 その間にツタージャはリーフストームでハブネークに攻撃して、すぐさまつるのムチで俺達に向かってくるゴルバットを拘束するんだ。

 あとは――がっ、ぶっ!!」

また吐血。

意識が混濁し、おもわず膝をつく。

主人の異変を見て、モウカザル達の動きが止まってしまった。

「今よハブネーク、モウカザルにポイズンテール!! そしてグラエナはツタージャにとっしん!!」

その絶対的な隙を逃さず、ハブネークのポイズンテールとグラエナのとっしんがまともにモウカザル達に命中してしまう。

倒れ、かなりのダメージなのか立ち上がれないモウカザル達。

 

(く、そ……!!)

立ち上がろうとするが、手も震えてしまいそれすら叶わない。

視界が回り、自分が倒れているのか座っているのか。

それすらも、上手く理解できず、に……。

(あ、ヤベ……)

このまま目を閉じたら、二度と目を開ける事ができなくなる。

それがわかっているのに、意識がどんどん闇の中へと堕ちて……。

 

「も、もうやめてください!!」

カイリを守るかのように立つ1人の少女。

「カ、ノン……」

何やってんだ、さっさと逃げろ。

そう言いたいのに、口が動かない。

「いい子ね。ならおとなしくこっちにいらっしゃい」

「…………」

一度カイリへと振り返り、悲痛な表情を浮かべるカノン。

それはこれから自分自身に待ち受ける運命に対してか、それとも助けてくれたのに何も返せなかったカイリに対してか。

そして、ゆっくりとカノンはカイリの元から離れ、男達へと歩み寄ろうとして。

 

――その間に、凄まじい威力の雷が落ちた。

 

「っ!!?」

「っ、誰だ!!」

虚空に向かって叫ぶ男。

だがその答えは、上空から聞こえてきた。

 

「――ヒカリ、10万ボルト」

「ピーカ………チュウウゥゥゥゥゥッ!!!

 

「グラエナ、まもるよ!!」

先程と変わらぬ威力の雷が男達のポケモンに襲いかかるが、グラエナのまもるによって相殺される。

次の瞬間、上空から落ちてきた1人の少年。

目も醒めるような青い髪と瞳、肩にはピカチュウを乗せている。

「レ、レイジ……」

薄れようとする意識の中、現れた親友の名を呟くカイリ。

 

「なんだお前は。また正義の味方気取りのガキが来た――」

「ヒカリ、かみなりだ」

男の言葉を最後まで聞く事なく、先手を取るレイジ。

ヒカリのかみなりは身構えていないゴルバットに命中し――ただの一撃で戦闘不能へと陥った。

「なっ!?」

(この子……強い!!)

いくらモウカザル達とのバトルでダメージを負っていたとはいえ、一撃で倒すなど信じられない。

 

「カイリ!!」

男達に背を向け、カイリを抱き起こすレイジ。

「力を、使ったの?」

「あ、ああ……しかも連続でな。

 けど、俺の実力じゃこれを使わねえとアイツを守れなかったんだ」

「……君は?」

カノンの存在に気づき、視線をそちらに向ける。

 

「お、驚くなよ……そいつ、人間の姿だけど……ラティアスっていうポケモンなんだぜ……」

「ラティアス!?」

伝説のポケモンであるラティアス。

カイリの言葉に、レイジは正直驚きを隠せなかった。

だが、このカノンという少女から感じる強いオーラは、人間のものとはまた違う。

こんな状況で彼が嘘をつく意味がない以上、その言葉は真実なのだろう。

正直信じられる内容ではなかったが、とりあえず今はそんな問答をしている暇はない。

「――つまり、あなた達がこのラティアスを捕らえようとして、カイリとバトルになったわけですね?」

「ええ、そうよ。それにしても驚いた……マーダのゴルバットをダメージを受けていたとはいえ一撃で倒すなんて……。

 ねえ坊や、そんなに強いならワタシ達と取引でもしない?」

「……取引?」

 

「カイリ!!!」

背後から、悲鳴にも似たヒメカの声が響く。

視線を向けると、気丈な彼女からは想像できないほど涙を流し、カイリを抱き留めている姿が映った。

 

「坊やがラティアスをおとなしくこちらに渡してくれるなら、後ろにいる子達の命は見逃してあげる。

 それと坊やをボスに紹介してあげるわ、それだけの腕があるならすぐにロケット団の幹部にだってなれるわよ」

「…………」

「ふざけないで!! 許さない……絶対に許さないんだから!!」

怒りを露わにした表情で、すぐさまロールとハクを取り出すヒメカ。

既に彼女の瞳には冷静さなど微塵もなく、憎悪の炎を宿している。

 

「ヒメカ、待って」

「止めないで!! こいつらは……カイリをこんな目に遭わしたこいつらだけは絶対に………!」

「わかってる、でも落ち着いて。冷静さを欠いたら負けるってわかるはずだ!!」

「レイジくんの言う通りよヒメカ、気持ちはわかるけど落ち着きなさい」

「っ、お前は……シンオウチャンピオンのシロナ!?」

「あら、私の事を知っているようね」

「計算違いね……まさかチャンピオンがこんな場所に居るなんて思わなかった。

 まあいいわ。それでどうなの坊や、ワタシ達との取引に応じてくれるわよね?」

「…………」

レイジは応えない。

だが、すぐさまカイリの元に向かい、彼に問い掛ける。

 

「ねえカイリ、あいつらどうしたい?」

「――絶対に、ぶっ飛ばす!!」

「だよね……ならさ、まずは立たないと」

「ああ………!」

歯を食いしばりながら、カイリはどうにか立ち上がった。

心配そうに自分を見つめているモウカザル達に笑顔を見せ、頭を撫でてやった。

 

「モウカザル、ツタージャ、俺はあいつらを絶対に許さない。

 だけど俺1人じゃ何もできない、でもレイジ達と……何よりお前達が居ればきっと勝てる。

 だから、俺にもう一度力を貸してくれ!!」

もちろんと言わんばかりの表情で、炎を立ち上らせるモウカザル。

そしてツタージャもやる気満々の表情で頷きを返し――いきなり身体が光り出していく。

「こ、こいつは……!」

「進化するんだ……ツタージャが!!」

おそらくあの男達との戦いでかなりの成長を遂げられたようだ、光が収まりツタージャがジャノビーへと進化を遂げた。

 

「――というわけで、申し訳ないけどあなたの提案は却下します」

「……そう。残念ね、坊やならきっと頷いてくれると思ったのに」

言葉とは裏腹に、女は肩を竦めるだけで既に明確な敵意をレイジへと向けている。

 

「見くびるなよ、僕はこう見えても道を踏み外したりなんかしない。――それより、覚悟した方がいい」

『―――――』

 

重く、そして冷たい声が場の空気を変えていく。

「今の僕は怒ってるんだ……親友を傷つけ、更に罪のないポケモンを自分達の都合だけで捕らえようとして……。

 ――お前達、絶対に許さないぞ!!!」

普段の彼からは想像すらできない、怒りに満ち溢れた表情。

「ヒカリ、グラエナに10万ボルトだ!!」

「グラエナ、まもる! ハブネーク、ピカチュウにポイズンテール!!」

グラエナのまもるによってヒカリの攻撃は完全に防がれ、その隙を突いてハブネークのポイズンテールが迫るが。

 

「ジャノビー、リーフブレードだ!!」

横から現れたジャノビーのリーフブレードに押し返される。

マーダと呼ばれた男は、懐からモンスターボールを取り出し上空へ投げる。

中から出てきたのは……。

「ムウマ……」

ゴーストタイプのポケモンであるムウマだった。

だが、何故か様子がおかしい。

傷ついたわけではないのだが、どこか怯えているような……。

 

「ムウマ、ジャノビーにシャドーボール!!」

マーダが命令を下すが、ムウマはチラチラと彼を見るだけで攻撃を仕掛けようとはしない。

「何やってやがる、さっさと攻撃しろ!!」

怒鳴られ、身体を縮こませながらもシャドーボールを撃ち出すムウマ。

(あのポケモン……)

もしかしたらと、一つの予測を立てたレイジは、すぐさま残り3つのモンスターボールを取り出しティナ達を場に出す。

時間など掛けられない、再び戦っているカイリの体力も気力も既に限界なのだ。

如何にツタージャがジャノビーに進化したとはいえ、両者共にダメージを負っている今では、悠長な事などしてはいられない。

 

「リオン、りゅうのいぶき、ヒカリ、でんじほう、アクセル、はどうだん、ティナ、チャージビームだ!!!!」

四体全員の技が、一斉にグラエナ達へと襲いかかる。

「グラエナ、まもる!!」

再びグラエナがまもるを使うが……それすらも打ち砕くティナ達の攻撃に、大爆発を起こしながらグラエナ達はまとめて戦闘不能へと陥った。

「そ、そんなバカな……フレアのポケモンがこうも簡単に!?」

「あのカイリとかいう坊やから受けたダメージもあるからね。でも、それを差し引いてもあの坊やは強い」

おそらく、本気で戦った自分と同等か、それ以上か。

 

「か、覚悟しやが――ぐぅっ!!」

「カイリ!!」

倒れそうになるカイリの身体を支えるヒメカ。

「もう終わりね。国際警察にはさっき連絡したから、おとなしく諦めなさい」

「なんだと!?」

「やめなさいマーダ、確かにチャンピオンの言う通りよ。

 ワタシ達の手持ちはなし、こんな状況で粋がったところでどうしようもないでしょ?」

絶体絶命、そんな状況だというのに、フレアと呼ばれた女性の口元には余裕の色を孕んだ笑みが浮かべられている。

もう終わりのはずだ、だというのにあの笑みは一体なんだ……?

 

「たいしたものよ坊や達、そっちの弱い坊やはカイリといったようだけど……君の名前はなんていうのかしら?」

「レイジだ」

「レイジ……覚えておくわね。あなたの名前を」

「随分余裕ね。もう捕まるっていうのに」

「捕まる? 誰が誰を捕まえるって言うの?」

「シロナさんが呼んでくれた国際警察の人達が、あなた達2人をに決まってるじゃない!」

 

「あら……フフッ、アハハハハッ!!!」

「な、何がおかしいのよ!?」

「いえ、ただ……面白い冗談を言うなと思って。

 あなた達、ワタシ達が本当にもう打つ手無しだと思ってるの?」

「けど手持ちのポケモンは全て戦闘不能よ。それともあなた達2人が直接来るの?

 その瞬間にはティナのふぶきでカチコチに凍ってるわね」

シロナの言う通り、このまま逃げようとした瞬間に氷タイプのわざで凍らせるつもりだ。

それは連中とてわかっているだろう。

だがしかし、それでもフレアの口から不敵な笑みが消える事はなかった。

 

(何をする気だ……?)

相手の意図が掴めず、どうすればいいのかわからないでいると。

(っ、あれは……モンスターボール?)

フレアが懐から取り出したモンスターボール。

だが、その見た目は市販されているどのモンスターボールともデザインが異なる。

上が赤、下が白のモンスターボールに対し、このボールは全てに置いて漆黒で包まれた代物だ。

禍々しさすら感じるその見た目に、何故か頬に汗が伝った。

 

(なんだ……この威圧感は)

あの中にポケモンが入っている。

それはいい、しかしこの背筋が凍るような悪寒と重圧は一体なんだというのか……。

「さよならレイジ、このデッドポケモンであの世に行きなさい」

漆黒のボールが、空高く投げられる。

そして――中から出てきたのは。

 

「バンギラス……!」

「まだあるわよ」

もう一つ先程と同じボールを取り出し、再び投げるフレア。

「ハガネール!!」

そこから出てきたポケモンはハガネール、しかしバンギラスも含めどこか様子がおかしい。

瞳のハイライトは消え、全身が黒く塗り潰されている。

 

「まだ試作段階だけど、坊や達相手ならいいデータがとれそうね」

言いながら、その場から離脱しようとするフレアとマーダ。

「逃がすか!!」

すぐさま追い掛けようとするが――殺気を感じ慌てて後ろへと跳ぶ。

刹那、レイジが通ろうとした地面にクレーターが生まれ……全身が総毛立つような殺意をバンギラス達から向けられた。

「このバンギラスとハガネール……なんだか様子がおかしいわ!!」

「っ、ヒメカ、カイリを連れて下がれ!!」

そう指示を出し、ティナ達と臨戦態勢に入るレイジ。

 

「リオン、かえんほうしゃだ!」

リオンの口から放たれるかえんほうしゃ。

それを避けようともせずに、ハガネールは弱点である炎を前にしてもなおその動きを鈍らせたりはしなかった。

「な、に――!?」

効いていない、わけではない。

かえんほうしゃによるダメージは確かにハガネールへと届いている。

だというのに、まるで怯む様子を見せないのはどうして――

 

「ガブリアス、ドラゴンクロー!!」

レイジに向かっていくハガネールを、ガブリアスの攻撃で吹き飛ばすシロナ。

ガブリアスの攻撃をまともに受けた、これならば暫くは立ち上がれないはず……。

「そんな!?」

驚愕は、他ならぬシロナの口から放たれる。

まともに受けた、だというのにハガネールは再び立ち上がったのだ。

普通ならば既に戦闘不能になっていたとしてもおかしくない。

 

(なんて頑丈な……いや、違う……)

ただ頑丈なだけならば、ここまで保つ事はできないはず。

それに、先程よりも増して相手のハガネールには理性というものが見えない。

「っ、ミロカロス、はかいこうせん!!」

横から殺気を感じ取り、ボールからミロカロスを取り出した瞬間指示を出す。

瞬間、バンギラスとミロカロスのはかいこうせんがぶつかり合い、鼓膜を刺激する爆音が響き渡った。

 

(強い……さっきのポケモン達とは比べものにならないくらい……)

これは本気の自分でも苦戦するかもしれない、シロナの頬に汗が伝う。

しかし、ここで疑問が浮かび上がった。

何故これほどまでの強さを誇るポケモンを始めから出さなかったのか。

そして、何故バンギラス達を場に出した瞬間に離脱したのか。

 

〈父上、母上、このポケモン達の波導……凄まじく邪悪なものに染まっています!!〉

(邪悪……?)

「……それは僕も感じたよアクセル、それに……変なんだ」

「変って何が?」

「さっきからバンギラス達の声が聞こえない……怒りに囚われているならわかるけど、このポケモン達からは怒りは……むしろ、何の感情も感じ取れない」

 

怒りも憎しみも、恐怖も痛みもなにもかもが。

いくらなんでも異常過ぎる、だとしたら何故ここまで暴れまわるのか。

それに――このバンギラス達は自分達はおろか全てのポケモンを殺すほどの殺気を放っている。

そんなもの、普通のポケモンが放てるわけがない。

 

(さっきのボール……あれが原因なのか?)

それ以外は考えられない、だが今は。

「危ない!!」

背後から聞こえる声に反応する。

視線を向けると、先程ティナ達の攻撃で戦闘不能に陥ったポケモン達に、バンギラス達が攻撃を加えようとしていた。

 

(あいつら……ボールに戻さなかったのか!?)

「いけない!!」

すぐさまティナ達に指示を出そうとするレイジ。

だが、その前に彼の横から飛び出した一つの影が。

「カグヤ!?」

ベイリーフの背に乗り、まっすぐバンギラス達の元へと向かうカグヤ。

それに気づき、バンギラスの敵意の矛先が彼女へと向けられる。

 

「くっ……アクセル、はどうだんだ!!」

とにかく今は彼女のフォローに回るしかない、そう考バンギラス達の注意をこちらに引きつける。

「ガブリアス、はかいこうせん!!」

シロナもレイジの心中を理解したのか、ハガネールに向かって攻撃を仕掛けてくれた。

「くっ……!!」

爆風で視界が覆われながらも、どうにかグラエナ達の元へ辿り着いたカグヤ。

彼等を入れていたモンスターボールは幸い近くに転がっていたので、すぐさまボールの中に収納したのだが……。

「えっ……ムウマの分がない!?」

グラエナ、ハブネーク、ゴルバットのモンスターボールは確かに存在していた。

だがムウマだけが……この子のモンスターボールだけが見つからない。

 

「っ」

3つのボールをリュックに押し込み、ムウマを抱きかかえる。

今はこうしてあげるしかない、そう思いカグヤは再びこの場から離脱しようとした瞬間。

「カグヤ、後ろ!!」

「え―――」

後ろへ振り向く。

そこには、バンギラスがこちらへとはかいこうせんを放とうとしている光景、が……。

 

「ティナ、ふぶき!!」

間に割って入り、バンギラスにふぶきを仕掛けるレイジとティナ。

それにより多少ダメージを受けたのか、バンギラスの身体が少しだけバランスを崩す。

その隙に急ぎその場を離れるカグヤ達。

「くっ……」

強い、なんてものじゃない。

いくら攻撃を当てても倒れてはくれないのだから、質の悪い事この上なかった。

すると、ハブネークが雄叫びを上げ、地面へと潜っていく。

その尻尾に掴まり、バンギラスも穴の中へと消えた。

(仕掛けてくる……?)

 

――だが、いくら待っても敵の攻撃が一向にやってこない。

 

「………………っ、まさか!!?」

相手は標的を自分達から変えたのかもしれない。

だとするならば……次に狙われる所は。

「っ、シロナさん!!」

「わかってる。みんな早く乗って!!」

「えっ、えっ?」

「ヤツらはクチバシティに向かったんだ、このままだと街がめちゃくちゃになる!!」

「ええっ!?」

「あ、ぁ……」

信じられないといったような表情で、カノンは身体を震わせていた。

 

「……カノン、お前のせいじゃねえよ」

「カイリ……」

「今は、あのバンギラス達を止めるのが先だ」

「…………」

そうだ、あの悪魔のようなポケモン達を止めなくては、沢山の犠牲者が出てしまう。

 

――初めから、迷いなど捨てればよかったのだ

 

戦いたくない、いくら自分を捕らえようとしたからといっても傷つけたくない、そんな甘さなど初めから持ち合わせていなければ、こんな事態に発展する事もなかった。

だが、今は後悔するよりも先にあれらを止めなくては。

贖いは、全てを終わらせてから果たす。

 

「ありがとうカイリ、私……戦うよ」

「えっ……?」

瞬間、カノンの姿が光に包まれていき……。

「………カノン」

光が収まった時には、カノンは人間ではなくポケモンの姿――ラティアスへと戻っていた。

 

「行きましょう!!」

「わかった。シロナさん、お願いします!!」

「ええ。ガブリアス、すぐにクチバへ戻って!」

命に応えるように一声鳴き、ガブリアスが飛び立つ。

それに続くように、ラティアスも後へと続いた。

 

………。

 

クチバシティが見えた瞬間、爆発音が響き建物から煙が舞った。

「くそ、あいつら……もう暴れて……」

「動かないで、まともに身体を動かせないんでしょう!?」

「ち、ちくしょう……」

ヒメカの言う通り、こうして寝そべっているだけでも辛いのだ。

情けない事この上ないが、もうモウカザル達に指示を出す事すらできない。

 

「―――っっっ」

ギリと、歯を鳴らすレイジ。

 

痛いくらい拳を握りしめ、マグマのように煮えたぎる怒りを懸命に押し殺した。

あのポケモン達に罪はない、あの様子ではなんらかの方法――おそらくあのボールによって操られているのだろう。

だからこそ、罪のないポケモン達を道具にする事も、人や街を傷つける事も許せない。

爪が食い込み、手から血が出ても怒りを抑える為に拳を握り続ける。

 

「……レイジ、自分を傷つけるような事はしないで」

そんな彼の手を、カグヤは優しく包み込んだ。

 

「カグヤ……」

「気持ちはわかるよ、でも……それでレイジが傷ついたら……私、やだよ」

「…………」

泣きそうな表情のカグヤを見て、怒りが少しだけ収まった。

そうだ、今はこの怒りを鎮めてあのポケモン達を止めなくては。

「ヒカリ、10万ボルト!!」

射程内に入り、上空から攻撃を仕掛けるレイジとヒカリ。

10万ボルトはバンギラスの背中に当たり、動きが止まった。

その隙にガブリアスは地面へと降り、バンギラス達と対峙する。

 

「さあ……今度こそ君達を止めてやる!!」

 

 

 

 

To.Be.Continued...




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