ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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カントーチャンピオンであるワタルの依頼で、レイジは彼と共にタマムシシティに存在するロケット団のアジトへと侵入する。
そこで出会ったのは、クチバシティにて激闘を繰り広げたマーダとフレア。
2人を捕まえようとするレイジとワタルであったが。

そんな2人の前に、様子のおかしいアブソルが立ち塞がり……。


第19話 〜災厄のデッドポケモン〜

殺気――ただそれだけしか目の前のポケモンから感じ取る事ができない。

殺すという明確な意志、口で直接告げられるよりも強い感情。

それを感じ取り、レイジはすぐにでもここから逃げ出したい衝動に駆られてしまった。

 

「っ」

だが逃げない、逃げるわけにはいかないと歯を食いしばる。

「アクセル、踏み込んでバレットパンチ!!」

〈っ、は――!!〉

一息で踏み込み、バレットパンチを叩き込むアクセル。

その隙にレイジは残り3つのモンスターボールを取り出し投げる。

 

「ガ――ッ!?」

「っ」

呻き声は、アクセルの口から。

身体をくの字に曲げ、周りの物を巻き込みながら壁に叩きつけられる。

 

(アクセルのバレットパンチを避けた――!?)

更にあまつさえ反撃をするなど、やはりデッドポケモンという存在は驚きばかり与えてくる。

「ガァァァァッ!!」

雄叫びを上げ、大きく口を開くアブソル。

「リザードン、かえんほうしゃだ!!」

「リオン、かえんほうしゃ!!」

放たれるふぶきを、かえんほうしゃで迎撃する。

2対1ならば、相手のふぶきを押し戻す事が―――

 

「な――」

「――に!!?」

驚愕は、レイジとワタルの口から放たれる。

ワタルのリザードンとレイジのリオンによるかえんほうしゃ。

それを――アブソルはたった一体で相殺したのだ。

自分だけならまだわかる、だがチャンピオンであるワタルのリザードンの攻撃まで相殺させるなど正気の沙汰では。

 

「っ、レイジくん!!」

「ティナ、ひかりのかべだ!!」

ワタルの声と、レイジの指示が放たれたのはほぼ同時。

瞬間、アブソルの口から放たれるはかいこうせんは、レイジ達全員を巻き込みながら部屋を壁を破壊する。

〈いった……〉

「くっ……ティナ、大丈夫?」

後ろから聞こえるレイジの声に振り返り――ティナは言葉を失った。

 

〈お父さん!!?〉

壁に叩きつけられ、頭から血を流しているレイジ。

そこでようやく、ティナは自分の身体がレイジに庇われている事に気が付いた。

〈お父さん、私のせいで……〉

「違うよ。ティナのせいじゃないから。それより油断しないで」

頭から流れる血を乱暴に拭いながら、身構える。

土煙で見えないが、いつアブソルが襲いかかってくるかわからない以上、警戒を消すわけには。

 

「来るぞ!!」

ワタルの声に反応し、レイジは再び指示を出す。

「アクセル、はどうだん!!」

土煙から現れたアブソル目掛けて、はどうだんが放たれる。

それを避け、まっすぐレイジの喉元へと飛びかかるアブソルだが。

「リザードン、ほのおのうず!!」

横から現れたほのおのうずによって、アブソルの身体は壁へと叩きつけられた。

 

「ティナ、れいとうパンチ!!」

すかさず攻撃を仕掛け、ティナのれいとうパンチがアブソルの身体を更に壁へとめり込ませる。。

「ヒカリ、自分にかみなりだ!!」

手は抜けない、そしてできるだけ傷ついてほしくない。

だから、なるべく少ない攻撃でアブソルを弱らせようと勝負に出た。

怒りに身を任せ、手当たり次第にはかいこうせんを放ち辺りを破壊していくアブソル。

 

(ごめんアブソル……でも、すぐにポケモンセンターに連れて行って治してあげるから……!)

自分のかみなりを受け、黄金色に輝くヒカリ。

「今だヒカリ、フルパワーでボルテッカー!!」

「リザードン、フレアドライブだ!!」

後ろからはリザードンのフレアドライブ。

そして正面からはヒカリのボルテッカー。

サイコキネシスで動きを止められたアブソルに回避する術はなく……凄まじい衝撃を受け壁に身体をめり込ませ、沈黙した。

 

………。

 

「は、ぁ……」

大きく息を吐き、戦いが終わった事に安堵する。

みんなダメージを受けているようだが、無事のようだ。

「レイジくん、大丈夫かい?」

「はい……僕は大丈夫です」

だが……アブソルを傷つけてしまった。

戦わなければこちらが殺されていた、それはレイジとてわかっている。

しかしそれでも、罪のないアブソルと戦い傷つけてしまったという事実は、レイジの心に傷を残した。

 

「………アブソル」

壁から地面に落ち、倒れているアブソルに近づく。

今は一刻も早くポケモンセンターに連れて行き、治療をしなくては。

自分の身体を省みず限界以上の力を使い続けたのだ、目に見えなくてもアブソルの身体はボロボロになっている。

だから、すぐさま運び出そうとアブソルに向かって手を伸ばし――

 

何か、強い衝撃が、肩から腰に向かって、響き渡った。

 

「―――、ぁ」

赤い。

自分の視界が、赤く染まっている。

目の前には、返り血で赤く染まったアブソルの姿。

だが、自分の、今の、状態、は……。

 

〈お父さん!!!〉

〈ち、父上!!〉

後ろで、悲鳴じみたティナ達の声が聞こえた。

けれど、振り返る事などできずにその場に座り込んでしまう。

「ぁ、ぐ………!」

痛い、そんな感覚など消し飛んでしまうほどの痛みがレイジの右肩から腰にかけて走る。

 

――あの時、アブソルに近づいて。

その鋭利な鎌のような角で、バッサリと斬り裂かれたのだ。

 

地面は鮮血で赤く染まり、傷口から頭が茹だるような熱が生まれる。

「アブ、ソル……」

だというのに――レイジは尚もアブソルに歩み寄ろうと手を伸ばした。

まるで自分の傷など知らぬと言わんばかりに。

 

「グッ……アアァァァァァァッ!!!」

苦しげに叫び、真上に向かって口を開くアブソル。

瞬間、アブソルの口から放たれたはかいこうせんが天井を突き破り――月の光が差し込んできた。

 

「っ、いけない――!」

ワタルの声と同時に、アブソルの身体が消える。

跳躍し、自らが開けた穴から外へと飛び出したのだ。

「ティ、ナ……そ、外にテレポートだ」

〈そんな事より、その傷をなんとかしないと!〉

この間にも失血は続き、このままでは命に関わりかねない。

だが、レイジは自分の怪我よりもアブソルの事を心配する。

 

「僕達が止めないと……アブソルが死んでしまうから……」

〈でも………!〉

「急いで!!」

ティナの言葉を遮り、レイジが叫ぶ。

……ダメだ、このままでは埒が明かない。

それに一度彼を外に出さなければならないのは事実なのだ、そう思いティナはテレポートの準備を始め。

程なくして、その場にいる全員の姿が消えた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

――外に出た瞬間、聞こえたのは爆発音と人々の悲鳴。

 

「くっ、ぁ……」

痛みに耐えながら、ゆっくりとその場に向かおうとするレイジ。

それを、ワタルが無理矢理止めた。

「もうこれ以上は動くんじゃない!! 君は今自分の身体がどうなっているのかわかっているのか!?」

「――知らない。そんな事はどうでもいい」

肩を掴むワタルの手を払いのけ、レイジは進む。

 

「なん、だって……?」

「今、この瞬間にもあのアブソルは苦しんでいるんだ……傷つけたくない、苦しみたくないって悲鳴を上げてる。

 だから、それを、止めて、あげない、と」

ふっと足から力が抜け、片膝をつく。

〈父上!!〉

「うっ、ぐ……」

荒くなる息を抑えきれず、脚に力が入らない。

 

「……行かないと。アブソルを、止めない、と……」

譫言のようにそれだけを繰り返すレイジに、ワタルは恐怖を感じた。

これだけの大怪我を負っているというのに、自分の事よりもポケモンの事を心配するなど……正気なのかと問いただしたくなる。

「は、あ、ぅ……」

服は自らの血で真っ赤に染まり、意識が何度も断裂しかけるが、それでも彼の歩みは止まらない。

 

そして、ようやくアブソルの元へと辿り着いた。

暴れまわり、周りに被害をもたらすアブソル。

だが、そんなアブソルの周りにはトレーナーが立ち、ポケモンを出していた。

アブソルを止めるためだろう、だがそんな事はさせられない。

 

「アブソル!!」

レイジの声に、アブソルだけでなく周りにいた全員の視線が彼に向けられた。

「レ、レイジ!?」

「お、お前どうしたんだよその怪我は!?」

中にはカグヤ達の姿もあり、レイジのボロボロな姿を見て驚愕の声を上げていた。

それには構わず、脚を引きずりながらも少しずつアブソルに向かっていくレイジ。

近づくなと言わんばかりに、ふぶきを放つアブソル。

それは無防備なレイジへと向かっていき――リオンのかえんほうしゃにより相殺された。

 

「……リオン」

〈――お前、死にたいのか?〉

怒りと困惑を混ぜたような表情で、リオンはレイジを睨む。

「そうじゃない。でもアブソルを止めないと……」

〈馬鹿かお前は、アブソルの事より自分の心配をしやがれ!!〉

唸り、責め立てるような口調でリオンは言う。

……わかっている、けど同時にこれ以上アブソルを傷つけたくないと思ってしまったのだ。

 

その瞬間から、レイジの中での優先順位は変わってしまった。

アブソルを助ける、今はそれしか考えられない。

だって、仕方ないではないか。

こうしている間にも、聞こえてしまうのだ。

苦しいと、痛いと訴えてくるアブソルの声が。

そんな事を聞いてしまった以上、自分の身体など二の次だ。

だから、自分の馬鹿さ加減などとうに理解していながら、レイジは再びアブソルに歩み寄った。

 

「グガァッ!!」

「っ、ぐ——……!」

肩に激痛が走る。

噛まれたのだ、それもそのまま食い千切らんとばかりの強さで。

 

「レイジ!!」

「来るな!!」

こちらに駆け寄ってくるカグヤ達を制し、痛みで薄れゆく意識をかき集めながら……レイジは、安心させるようにアブソルの頭を優しく撫でる。

「お願いだ。もう……これ以上自分自身を傷つけないでくれ。

 君だって、本当はこんな事望んでいないんだろう……?

 だから――ぐっ、もう傷つくのはやめてくれ……」

話す度に、刺すような激痛でかき集めた意識が再び薄れていく。

だが負けない、ここでアブソルをあんなふざけたボールの呪縛から解放してあげなくては、彼はここで殺される。

そんな事は許されない、何の罪のないアブソルを死なせるわけにはいかない。

 

「負けないで……あんな心を踏みにじるような道具なんかで、自分を見失っちゃダメだ。

 お願いだ、自分自身の為にも……負けたらダメだ!!」

叫び、力いっぱいアブソルを抱きしめる。

痛みも頭を侵す熱も、今はどうでもいい。

頭に占めるのは、アブソルに対する深い願いだけ。

 

――そして。

 

 

「在るべき姿に還るんだ、アブソル!!!」

魂からの願い。

その瞬間、誰もが目を疑うような光景が現れ始めた。

 

 

――光が、広がっていく。

 

 

レイジとアブソルを包み込むように、だんだんとけれど確実に大きくなっていく光。

「これは……!?」

その光景に、ワタルを始め全員が驚く事しかできない。

「っ、レイジ!!」

だが、その中でただ1人だけ……カグヤだけが、自ら光の中に向かって走っていく。

 

「カグヤ!?」

カイリが気づき急いで手を伸ばすが、間に合わない。

そして、カグヤの手がレイジの身体に触れた瞬間。

(―――え?)

彼女の中で、不思議な感覚が生まれた。

 

………。

 

白。

見渡す限りの白一色。

視界は全て白で塗り潰され、五感全てが彼方に消えていく。

時間も、空間も、全てを超越した“何か”

それが何なのか彼女にわかるわけもなく、否、人という存在では理解しようとする事すらおこがましい。

そして、そんな正体不明の感覚の果てにあったものは――彼の心、彼の内側。

今まで一番近くに居たはずの彼が持っていた心は、真っ白だった。

何人にも汚されていない、真っ白なキャンバスのような心。

 

(これは……何?)

時間にして既に数分は経っているのか、時間という概念を失った今ではそれすらわからない。

 

僕は/私はだあれ?

 

(えっ……?)

突然響いた声。

少年と、もう一つの声は低く暗い人間離れしたもの。

 

僕は/私は生まれた。

 

僕の/私の周りには何もない。

 

僕は/私はだあれ?

 

僕は/私は全て。

 

あらゆる時空、あらゆるものを作り上げた絶対神。

 

僕の/私の息吹は世界を作った。

 

僕の/私の血は生き物を作り上げた。

 

僕の。

 

私の。

 

僕の。

 

私の。

 

(――――)

なんだ。

なんだ、これは。

なんなのだ、この声と言葉は。

 

意味が分からない、理由も分からない。

ここは彼の心、決して見る事ができない彼の内側のはずだ。

それなのに、どうしてこんなわけのわからない声が……。

 

(………あ、れ?)

ちょっと待て。

どうして、自分はこの状況をあっさりと受け入れただけでなく、そんな風に言い切れる?

およそ現実離れした体験だというのに、何故こうも簡単に――

 

「…………」

ふっと、唐突にカグヤは現実に戻った。

目の前には呆けた表情を浮かべたレイジと、そんな彼にうなだれるように倒れているアブソルの姿が。

(今のは……?)

夢、ではない。

こうしている今だって先程の言葉が脳裏に焼き付いて離れない。

あまりにも現実離れしていると同時に、あまりにもリアル過ぎた光景。

自分は今、一体何を見ていた……?

 

「レイジ!!」

間の抜けた表情で向かい合っている彼等に、カイリは悲鳴に近い声を上げレイジに駆け寄る。

「い、一体何がどうしたっていうんだよ!?

 お前、その怪我っていうか……まずは病院に行かねえと!!

 っていうか、なんでアブソルがここにいるんだ!?」

「落ち着きなさいバカ、とにかくレイジを病院に運ぶわよ。

 カイリュー、あなたはアブソルをポケモンセンターに運びなさい」

カイリューをボールから取り出し、指示を出すヒメカ。

こくりと頷き、軽々とアブソルを抱えるカイリュー。

 

「アブソルの事はボクが見ておこう。とにかくレイジくんを病院へ!」

「…………」

テキパキと周りから指示が飛び出す中、レイジとカグヤの2人だけが。

(今のは……)

(何だったんだ……?)

先程の感覚に、ただひたすら戸惑っていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――なるほど、事情はよーくわかった」

身体中包帯だらけになったレイジを見下ろしながら、カイリは冷めた視線でそう口にする。

その顔にはあきらかな不満が滲み出ており、それは隣に仁王立ちしているヒメカも同じだった。

だがそれも当然と言えよう、勝手に1人で危険な場所へと赴き、血だらけ傷だらけになったからだ。

 

「そんなに俺達が頼りないのか?」

「そ、そういうわけじゃないけど……」

「もし「危険な目に遭わせるわけには……」なんて思ってるならとんだお門違いよ。

 わたし達はあなたを大事な仲間だと思ってる、だからそんな風に1人で抱え込んで嬉しいと思うの?」

「うっ……」

 

ズバズバと告げられ、もはやレイジに反論する力はない。

けれど――そう言ってくれるのは素直に嬉しかった。

自分を心配し、そして怒ってくれる。それが本当に嬉しい。

 

「……ごめん。もうこんな勝手な事はしないって約束するから、許してくれないか?」

だから、素直に頭を下げる。

「しょうがねえな。だけど次はねえぞ?」

「仕方ないわね。けど次はないわよ?」

同じ事を言われてしまった。

 

「話は終わったかい?」

見計らったかのようなタイミングで、ワタルが病室に入ってきた。

「ワタルさん……」

「ひどい格好だね……けど君が無事でよかったよ」

「ありがとうございます」

「うわぁ……本当にチャンピオンだ……」

「シロナさんといい、凄い遭遇率よね……」

たしかに、そう同意せざるおえない。

 

「君が協力してくれたおかげで奴らの基地を破壊する事ができた。

 それに……実験台にされていたポケモン達も救出する事ができたよ」

「……そうですか」

その言葉に、心の底から安堵する。

「しかし……ロケット団っていうのは本当にろくでもない連中だな!!

 カノンの時といい……絶対に許さねえ!!」

「それにデッドポケモン……ポケモンを兵器のようにするなんて……!」

カイリもヒメカも、ロケット団の行いに怒りを隠す事ができない。

 

「レイジ、次にロケット団と戦う時は必ず1人で先走るなよ!!

 あいつらを許せねえのは俺だって同じなんだからな?」

「わかってるよ」

一応許してはくれたようだ、これにて一件落着……。

と、言いたい所だが。

 

「……あの、カグヤ?」

さっきから黙っているカグヤの事が気になってしょうがない。

「あっ…な、何?」

「どうしたの?」

「ぅ、ん……なんでもない」

あきらかになんでもないわけがないのだが、詮索をしないでほしい雰囲気を感じ取り、その場に居た誰もがこれ以上彼女に問いかける事はやめた。

 

「――さてと。それじゃあボクは失礼させてもらうよ。

 レイジくん、本当にありがとう。次に会う時はセキエイリーグになりそうだね」

「はい」

「カイリくん、ヒメカくん、カグヤくん、君達のような素晴らしいトレーナーがセキエイリーグに来る事を楽しみにしているよ」

「は、はい!!」

「ありがとうございます」

「…………」

「……カグヤくん?」

「ふぇ……あ、はい」

「……ちょっと、本当に大丈夫なの?」

「だ、大丈夫だよ」

 

あははー、と誤魔化しながら笑うカグヤ。

……やはり先程から様子がおかしい。

だが、何度も大丈夫と連呼するカグヤに誰もそれ以上は何も言わなかった。

 

………。

 

「……どうしてこうなった?」

おもわずそう口に出してしまった。

時刻は夜、カイリもヒメカもポケモンセンターに戻り今頃は眠っているかゴロゴロしているか。

レイジも病室で眠りに就こうとしたのだが……仰向けになりながらおもわずツッコミを入れてしまう事態に陥っていた。

何故か? それはまあ仕方ないかもしれない。

 

「――カグヤ。本気で一緒に寝るの?」

「うん」

そう、何故かレイジのベッドの中にはカグヤの姿が。

「罰ゲームだよ」

とは彼女の弁だが、まったくもって意味が分からない。

一体どこをどうしたらこれが罰ゲームになるのか、相変わらず彼女の考えている事はよくわからない。

 

「……だってこうしたら、レイジが勝手にいなくなったりしないでしょ?」

「…………」

ぽつりと呟かれたその言葉で、レイジは何も言えなくなってしまった。

……心配させてしまったのだ、その上での行動ならば咎める権利はレイジにはない。

だから、もうこれ以上は何も言わずに目を閉じる。

 

「………ねえ、レイジ」

暫くして、カグヤはふと口を開いた。

「何……?」

「私、ね……」

「………うん」

……何を言うかくらい、レイジはわかっている。

 

あの現象――彼女が自分の心に直接触れたような感覚。

それが何なのか、カグヤはレイジに問い掛けようとしているのだろう。

だが、カグヤは口を開いたり閉じたりと繰り返し、一向に話を進めようとはせず。

「――ごめん。なんでもない」

それだけ言って、彼の胸に顔を埋めてしまった。

 

「…………」

 

正直、問われなくて良かったと安堵する。

問われても答えられない、レイジとてあの現象がなんだったのかわからないからだ。

不可解な現象、ポケモンと話せるというおよそ普通ではない能力を持っていながらも、理解できないものだった。

一体あれは何だったのだろうか。

不思議なもので、不快感はなかった。

結局、そんな事を考えていたらすぐさま眠気が訪れ。

怪我の事もあるのか、あっという間に意識がまどろみの中に消えていき。

無意識だったのか、カグヤの身体を抱きしめながら、レイジの意識は闇へと消えた―――

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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