ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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順調にジムバッジを集め、セキエイリーグへの道を歩んでいくレイジ達。
仲間も増え、旅がますます賑やかになっていく中……突如として、オーキドからジョウト地方へと行ってほしいと頼まれ……。


第22話 ジョウト地方へ〜語り継がれる神話の始まり〜

俺は/ワタシは誰だ?

 

俺は/ワタシは誰だ?

 

俺は/ワタシはこの世界で生まれた。

 

生きとし生ける者すべてが必要とするもの――時。

 

俺は/ワタシは、それを司る者……?

 

わからない。

わからナイ。

ワカらナイ。

 

俺にはない。

 

ワタシにはナイ。

 

俺を/ワタシを確立させるモノがない。

 

なぜ?

 

何故?

 

ナゼ?

 

俺は/ワタシは、何故何もない?

 

身体がない。

 

力がない。

 

記憶がない。

 

在るはずのものが、世界から受け取ったはずの全てがない。

 

理解できない。

 

意味がわからない。

 

何故失った?

 

俺の/ワタシの力を。

 

思い出せ、思い出せ、思い出せ。

 

何があった? 遥か昔、俺達/ワタシ達に何があった?

 

探せ、探せ、探せ。

 

答えは近くに、自分の一番近くにある。

 

それを、早く―――

 

「――リ、ヒメ――」

「……んっ……?」

声を掛けられ、カイリとヒメカは同時に目を開ける。

視界に広がるのは、旅の仲間であるレイジとカグヤの姿。

 

「………あれ?」

自分は、眠っていたのだろうか。

だとしたら、あの欠けた光景は夢だった……?

 

「どうしたの? カイリはともかくヒメカまでなかなか起きないんだから」

「……ごめんなさい、ちょっと変な夢を見てたせいでまだ寝ぼけてるみたい」

「変な夢?」

「……気にしないで。それよりカイリ、いつまで寝ぼけるの?」

「お、おぉ……わりぃ」

……どうやら本当に夢を見ていたようだ。

 

(けど、あの夢……)

一体何だったというのであろうか。

今では内容をほとんど思い出す事はできないが、それでも夢とは思えない程に現実過ぎるものだったとこの身が記憶している。

「それよりもうジョウトに着いたんだから、早く降りないと怒られるよ?」

「……そうだな」

気にするだけ無駄だ、そう自分自身を納得させてカイリは席を立つ。

リニアの外から見える光景は――ジョウト地方のコガネシティ。

(着いたのか、ジョウト地方に……)

 

………。

 

ジョウト地方に行ってほしい

そうオーキド博士から告げられたのが、今から四日程前の事だ。

なんでもオーキド博士の友人であるウツギ博士が、レイジ達に頼みたい事があるという話らしい。

詳細な内容は直接会って話をするとの事で、レイジ達はヤマブキシティからリニアでコガネシティへとやってきたというわけである。

 

「へぇ……なんかタマムシシティみたいだな」

「だってタマムシデパートの姉妹店だよ、コガネデパートって」

「へぇ……」

「それよりもウツギ博士との待ち合わせ場所に行きましょう」

 

ウツギ博士とはポケモンセンターで待ち合わせをしている。

きっともうセンターで自分達を待っているだろう、待たせては悪いと思い少し早足でセンターへと向かおうとして。

 

「………?」

「おっ……?」

突然同時に立ち止まるレイジとカイリ。

「レイジ?」

「ちょっと、いきなり立ち止まってどうしたのよカイリ?」

『…………』

2人の言葉には応えず、いきなりセンターとは反対方向へと走り出すレイジとカイリ。

 

「ちょ、レイジ!?」

「い、いきなりどうしたのよ!?」

意味がわからないまま、2人を追いかけるカグヤとヒメカ。

 

「レイジ、お前も感じたのか?」

「うん。じゃあ、カイリも?」

「ああ。俺はお前と違ってなんとなくって感じだけどよ……ほんの少しだけ感じられた」

「――禍々しい力。それに威圧感」

それを感じ取った為に、レイジとカイリは走り出したのだ。その正体を見極めるために。

だがレイジは、相手が何者なのかは予想できていた。

この威圧感、他人の空似ではなくそもそもこんな闇を抱えている存在など2人としていないはず。

 

「……あれは」

リニアの駅を抜け、街の外れまで走り――人だかりを視界に捉えた。

「ちょ、ちょっと……レイジってば」

「カ、カイリ……何がしたいの?」

やや遅れて、少し息を乱した2人がレイジ達に追いつく。

それには構わず、レイジとカイリは人だかりの中を進む。

 

その中心には、2人のトレーナーの姿が。

しかし片方の少女は、その場で膝を付き、もう一方の少年はそんな少女を見下すように眺めていた。

おそらくバトルをして少女が負けたのだろう、傍には傷つき倒れたミルタンクの姿が見える。

少女に面識はない、だが……あの少年は。

 

「アイツは………!」

カイリも気づき、みるみるうちに表情に怒りの色を滲ませていく。

「――ジョウトのジムリーダーも二流だな……いや、お前は三流以下だ」

冷たく言い放ち、心底馬鹿にしたような表情を浮かべるのは――あの時タマムシジムに現れた少年ケイジ。

「うっ…ううっ……」

たまらず涙を見せる少女に、ケイジは更に追い討ちを掛けた。

 

「ハッ、負けたからって泣くのか? 自分が弱いのが原因なのによ。

 仮にもジムリーダーだというのに……どうしようもないクズトレーナーだなお前は」

「ぐすっ…ひ、ひどい……あんまりや」

「弱い分際でジムリーダーをやっているからだ、三流風情が……百年早い」

「っ」

「テメェ―――!」

人だかりをかき分け、ケイジの前に立つカイリ。

その顔は誰が見ても怒りに満ち溢れており、今にも殴りかかりそうな勢いだ。

 

「………お前」

「この野郎……なんて事言いやがる!! 今すぐこの子に謝れ!!」

「何でオレがこんな弱い女に謝らないといけないんだ?

 所詮クズはクズ、この程度の実力しか持っていないくせにいきがるからだよ」

「この野郎――!」

拳を握りしめ、ケイジに殴りかかるカイリ。

だが、レイジはそれを無理矢理止めた。

 

「放せレイジ! やっぱりこの野郎は一発ぶん殴らねえと気が済まねえ!」

「落ち着いて。殴ったって仕方ないじゃないか」

「そういう問題じゃねえんだよ!! コイツだけは……絶対に許すわけにはいかねえんだ!!」

暴れまわるカイリをどうにか押さえ込みながら、レイジはケイジへと視線を向ける。

……相も変わらず、その瞳はすべてを拒絶する程冷たい。

 

「チッ、またお前か……相変わらずオレをイライラさせる目をしやがって……」

「……一体、君は何をしているの?」

「何をだと? ただオレはこの街のジムリーダーがどの程度の実力か確かめようとしただけだ。

 だが戦わなくても三流とわかったんでな、オレとしては戦いたくなかったんだが……この女が煩いから、実力を見せつけてやっただけだ」

「この子が。ジムリーダー……」

「ああ。尤もあのエリカとかいう女よりも弱い、クズ当然のジムリーダーだったがな。

 見ろ。勝負に負けたら泣く……今日日これほど情けないトレーナーを見た事はないぜ」

高らかに笑い声を飛ばすケイジ。

それを見て、コガネシティのジムリーダーであるアカネの目には大粒の涙が溢れていく。

 

「――何様のつもりだ。テメェはそんなに偉いのかよ?」

もはや、我慢の限界などとうに超えていながらも、レイジに止められているお陰で懸命に怒りを抑えこんでいるカイリ。

「事実を言っただけだ、この女はオレより遥かに弱い。弱者は強者に蹂躙されるのが定めだ。

 ならどう言おうが、オレの勝手だろ?」

「…………」

底知れぬ闇、こうまで人を傷つける程に深い。

怒りよりも、恐怖の方が大きかった。

 

「――なら、俺がテメェをぶっ倒してやる!!勝負しやがれ!!」

「前にも言ったぞ。お前みたいな――」

「ゴチャゴチャ言ってねえで、さっさとポケモンを出しやがれこのクズ野郎が!!!」

「…………カイリ」

ダメだ、もうバトルを止められそうにはない。

そう判断したレイジはカイリを放し、アカネの元に。

 

「立てる?」

力なく頷くアカネの手を引っ張り、カグヤ達の元に。

「………大丈夫、ですか?」

心配そうに声を掛けるカグヤだが、精神的に追い詰められたのかアカネは反応を見せない。

「あの男………!」

「最低だよ、あんなヤツ!!」

「…………」

 

普段温厚なカグヤでさえ、ケイジの暴言には怒りの表情を浮かべている。

……しかし、レイジは怒りよりも疑問の方が大きかった。

何故あそこまで人を傷つけるのか、それがわからない。

他人を辱める事に愉悦を感じる人間は居る、しかしケイジはそのような理由ではないような気がする。

自分以外の全て、生きとし生ける者そのものに対して憎悪を抱いているような気がしてならない。

 

「……仕方ねえ、必要ねえがうざったいからな……一体だけ相手をしてやる」

本当に面倒そうにモンスターボールを取り出すケイジ。

「上等だ。テメェのポケモン全部倒してあの子に土下座させてやる!!」

「たいした自信だな。さすが虚勢だけが取り得の二流トレーナーだ」

「っ、覚悟しやがれ!!」

完全に頭に血が昇ってしまっているカイリ、だが無理もあるまい。

 

(気をつけてカイリ……あいつ、強いよ)

更に、単純な強さだけではない。

あの男には、何か説明できない得体の知れない力を感じるのだ。

けれど――何故だろうか。

禍々しく、不快感しか感じないというのに……その力が、どこか懐かしいような気さえするのは。

 

「ジャノビー、行け!!」

カイリが出したポケモンはジャノビー。

対するケイジは……。

「潰せ、ケッキング」

 

「――ケッキング」

「えっと……たしかケッキングってものぐさポケモンって呼ばれてるんだよね?」

「そうね。一日中寝そべったまま暮らす程の怠け者らしいけど……」

「……あのケッキング、ただのケッキングじゃない」

図鑑で確認するが、ケッキングはかなりの怠け者で周りの餌を食べ尽くすまでその場から動かない事もあると書かれている。

しかし、あのケッキングはまるで進化前のヤルキモノのように力強く立っていた。

 

「ジャノビー、つるのムチだ!!」

先手はカイリ、つるのムチがケッキングへと向かっていく。

しかしケッキングは動かない、回避できないほど鈍重ではないはずだというのに。

だがケッキングは――迫り来るつるのムチを、軽々と“片手”で受け止めてしまった。

 

「なぁっ!?」

「ジャノ!?」

これにはさすがのカイリも驚きを隠せない。

「ケッキング、引き寄せてれいとうパンチ」

「しまっ―――」

遅い、指示を出そうとした瞬間ケッキングの腕がつるのムチを強引に引っ張りジャノビーの身体が引き寄せられていく。

空中へと放り投げられたジャノビーが回避行動をとれるわけもなく、ケッキングのれいとうパンチが叩き込まれる。

 

「――まだだ。徹底的に痛めつけろ」

 

攻撃を受け吹き飛ばされていくジャノビーだが、ケッキングは再びつるのムチを引っ張り自分の元へとジャノビーの引き寄せる。

……再びジャノビーに叩き込まれるれいとうパンチ。

 

「くっ、ジャノビー! リーフブレードだ!!」

このままでは一方的に攻撃させるだけだ、カイリはジャノビーに指示を出し、顔をしかめながらもリーフブレードを展開し繰り出す。

「かわらわり」

ジャノビーのリーフブレードを、かわらわりで真っ向から受け止めるケッキング。

 

「――どくどくだ」

「っ、ヤベ――!」

「ッ、ジャ、ノ………」

ケッキングから放たれたどくどくをまともに受け、苦しげな声を上げるジャノビー。

その隙を逃さず、ケッキングはその逞しい腕でジャノビーを地面に叩きつける――!

 

「ジャノビー!!」

カイリの声に反応し、どうにか立ち上がるジャノビー。

しかしどくどくによる猛毒をなんとかしなくては。

「ジャノビー、リフレッシュだ!!」

指示を受け、技を繰り出すジャノビー。

これで状態異常は消えてくれた、しかし……ジャノビーが受けたダメージは甚大だ。

 

「どうした。やっぱり粋がるだけしかできないのか?」

(っ、くそったれ……こうなりゃアレを!!)

(――これは!?)

時が、止まるような不思議な感覚。

カイリがあの力を使っているのだ。

 

「っ、こいつは……」

「………?」

僅かな驚きを含んだケイジの呟き。

(何を驚いているんだ……?)

 

「ジャノビー、はっぱカッター!!!」

十数枚のはっぱカッターが、四方八方からケッキングに襲いかかる。

「れいとうパンチで叩き落とせ、その後はかいこうせんだ」

両手のれいとうパンチで全てのはっぱカッターを叩き落とし、口から巨大なはかいこうせんを発射するケッキング。

それを。

 

「右に二歩、前に三歩。通り抜けた瞬間に走りながらエナジーボール」

たったそれだけの指示で、誰が見ても完璧だと思える回避を成し遂げ、更に最高のタイミングで反撃を試みた。

「何……?」

初めてケイジの表情が変わる。

だが、ケッキングは向かってくるエナジーボールをアームハンマーで――

 

「――叩き落としている内に左わき腹に向かってグラスミキサー」

言われた通り、ケッキングの左わき腹にグラスミキサーを放つジャノビー。

しかし、ケッキングはアームハンマーを繰り出しているため回避も防御もできずにまともに攻撃を受ける。

「なんだと………!」

「左に二歩、前に四歩の後しゃがめ」

指示通りに動きしゃがんだ瞬間、ケッキングのシャドークローが頭上を通り過ぎる。

「エナジーボール!!」

隙だらけになったケッキングの身体にエナジーボールを叩き込み、ようやくまともなダメージを与える事ができた。

 

「凄い凄い! カイリってば圧してるよ!!」

「……まさかアイツ、力を」

「使ってるね。間違いなく」

「っ、あのバカ……使うなってあれだけ言ったのに……!」

「仕方ないよ。あれを使わないと勝てないだろうしね」

いや、よしんば使った所でどこまで通用するか。

 

「よしジャノビー、特訓の成果を見せるぞ!!

 ――フルパワーで『リーフブレイカー』だ!!」

「リーフブレイカー……?」

聞いた事のない技名だ。

「あれは……ジャノビーと特訓してた技ね」

「ジャノビーと?」

「レイジとアクセルが使う『テトラコンビネーション』みたいなものだよ。カイリとジャノビーのオリジナル技!」

「…………」

リーフブレイカー、果たしてどんな技なのか。

そうこう考えていると、ジャノビーの周りには葉を大量に含んだ竜巻が生まれていく。

(リーフストーム? いや、おそらくはあれだけじゃない……)

完成したリーフストームは発射――されずに、ジャノビーの身体を包み込むように展開していく。

 

「いけぇぇぇっ!!!」

まるで風の弾丸のように、ケッキングへと向かっていくジャノビー。

「リーフストームで身体を包み込んで、そのまま体当たりするなんて……」

これならば通常のリーフストームよりも突撃する分威力が増す。

それに、ジャノビーは前方に腕を交差させながらリーフブレードを展開している。

これだけ攻撃力もプラスされれば、ヒカリのボルテッカーにも勝るとも劣らない破壊力を生み出すだろう。

(これを受ければ、いくらケッキングとはいえ……)

しかも今は未来を視ながら戦っている、おそらくカイリ自身限界を迎えているだろうが、これが最高のタイミングで放たれ——回避する事ができないのは目に見えている。

未来を視ているのだ、外れないという確証があるからこそ技を展開したのだから。

これで、ジャノビーの勝利に終わる、それは未来を視ていないレイジにもわかった。

 

――だが

 

「なっ、え………?」

突然、カイリの驚愕に満ちた呟きと。

 

――彼のものとは違う、異質な違和感を感じ取った

 

(これ、は……?)

似ている。

カイリの『未来を視る』力が解放されている時に感じる、一種の電波のようなものがもう一つ、この場に生まれた。

それが、限りなくカイリのものと酷使しており。

 

「未来が、変わ、る……!?」

彼の、信じられないような一言と同時に。

 

「――クソが、お前も似たような力を持ってるとはな」

そう吐き捨てるような言葉を放つ、ケイジの声が聞こえた。

瞬間、ケッキングはまるで“初めからその場に居なかったかのように”姿を消しそして。

「のしかかりだ」

突然、何の脈絡もなくケッキングの姿がジャノビーの“上空”に現れ。

彼女を守っているリーフストームにダメージを受けながらも、ジャノビーへとのしかかり地面へと叩き落とした。

 

………。

 

「ジャノビー!?」

完全にケッキングにのしかかられ、身動きの取れないジャノビー。

それを見て――ケイジの口元が狂気の色に歪んだ。

「っ、やめろ!!!」

一瞬早くケイジの意図を理解したレイジだったが、それでも遅すぎた。

 

「ケッキング。“死ぬまで”ジャノビーにれいとうパンチだ」

雄叫びを上げ、マウントポジションのまま連続でれいとうパンチを叩き込んでいくケッキング。

 

「なっ――!?」

「ククク……ハッハッハッハッハッ!!!

 いいぞケッキング、そのまま息の根を止めてしまえ!!」

狂気の笑みを顔に貼り付かせ、ケイジは更にケッキングに狂った指示を出す。

それを受け、ケッキングは尚もジャノビーにれいとうパンチを叩き込み続けていく。

 

「――――」

思考が、焼ける。

視界に赤が混ざったのは、ジャノビーの鮮血が宙に舞っているから、か。

「やめろーーーっ!!」

たまらずジャノビーを助けようとケッキングに向かっていくカイリだったが。

「ぐっ!!?」

「何をやってるんだ? 今はバトルの途中だぞ?」

邪魔するかのように立ちふさがったケイジが、カイリを蹴り飛ばす。

 

「どけよ!! このままじゃジャノビーが……やめさせろ!!!」

「何言ってるんだ。オレ達は今ポケモンバトルをしているんだぞ?

 下手に攻撃を止めて反撃でもされたら、負けてしまうだろ?」

「ふざけんな。もうジャノビーに戦う力なんか……」

「それはお前が勝手にそう思ってるだけだろ? 念には念を入れて攻撃しないと、敗北しちまうからなぁ〜。クハハハハハハハハハハッ!!!」

「やめろ、やめろ、やめろーーーっ!!!」

カイリの悲痛な叫び声と、そんな彼を嘲笑うかのようなケイジの笑い声が響き渡る。

周りも、あまりの光景に誰もが震えている。

中にはジュンサーやジョーイを呼びに行く者も居るが、誰もがケイジの恐ろしさに助けに入る事ができない。

 

「――――」

死ぬ、殺される。

このままいけば、間違いなくジャノビーは殺される。

既にポケモンバトルではなく、ただの殺戮だ。

(――どう、して?)

何故ここまでする?

何故ここまでの非道を行える?

何故――こんなにも平然に、生きる者の命を奪う事ができる?

 

(これが、人間?)

これが――この世に生きる人間の本質なのか?

(こんな存在を、僕は……僕、は――)

 

――私は、生み出してしまったのか?

 

(…………違う)

それは、違う。

これが、人間の本質なわけがない。

だってそうでなければ、何の為にこの世界を……。

 

「頼む……もう、やめてくれぇぇぇっ!!!!」

「死ね……死ね、死ね……死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねっ!!!

 さっさと――死んじまえよぉっ!!!」

「―――っっっ」

その声で、内側から爆発するかのようにあの時に力が溢れ———

 

「――在るべき姿に還るんだ! ケッキング!!」

 

閃光が、辺りを包み込んでいく。

誰もが今の事態に理解できないまま、光から逃れるように目を閉じた。

 

………。

 

――光が収まり、音が消えた。

「…………」

皆が光により視界が遮られている中、レイジだけが足を動かし……ケッキングの元へ。

ケッキングは、ジャノビーから離れるように倒れ気絶していた。

ようやく地獄から解放されたジャノビーを抱きかかえる。

 

「っ」

その傷は、目を逸らしたくなるほど酷いものだった。

身体のどの箇所にも無事な部分はなく、あちこち流血しており生きているのが不思議なくらいだ。

「……可哀想に」

優しく、壊れ物を扱うかのような丁寧さで、ジャノビーの傷口に手を添える。

すると――淡い光がジャノビーの傷口を包み、少しずつではあるが塞いでいった。

それだけではなく、生気もだんだんと戻っていっている。

 

(この、力は……)

またも理解できない力を手に入れた事に、恐怖と不安が大きくなった。

触れただけで完全ではなくスピードも遅いとはいえ、傷を治していく力などもはや夢を見てるとしか思えない。

「っ、お前……その力は」

いち早く視界が戻ったケイジが、射殺すような視線をレイジに向ける。

 

「……君は、一体何者なの?」

あの時感じた違和感、そしてケッキングの異常な動き。

凄まじいスピードで動いたわけではない、あれはまるで空間を……。

 

「質問してるのはこっちだ!! お前、その力を一体どこで――」

その時、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。

「チィ―――!」

素早く気絶しているケッキングを戻し、逆方向へと走っていくケイジ。

(……君は誰? そして……僕は一体、どんな存在なんだ……?)

 

 

 

 

――歯車が噛み合っていく。

 

彼を中心に、世界を包む輪廻が回る。

その果てに待つもの、最果ての先に在るものは。

希望か、絶望か………。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




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