ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
彼の言動と態度に怒りを覚えたカイリが彼とバトルを行ったが、その際にジャノビーが大きなダメージを負ってしまう。
ジュンサーの登場により、最悪の結果にならずに済んだが………。
「――ご協力、ありがとうございました」
敬礼するジュンサーに、レイジは頷きを返す。
「それじゃあ、僕はこれで失礼します」
席から立ち、交番から出る。
すると、待っていてくれたカグヤと視線が合った。
「お疲れ様」
「ごめんね、お待たせ」
「うぅん。それじゃあセンターに戻ろう?」
頷き、2人並んでポケモンセンターに向かって歩を進める。
しかし、周りの空気は決して明るいといえたものではなく……なんとなく気まずい。
だが、それは2人が悪いわけではない。
「……ジャノビー、治療終わったって
「そう……」
「命に別状がなくて良かったよね?」
「うん……」
「ぁ、えっと……えっと……」
暗くなった雰囲気をどうにか明るくしようとするカグヤだが、今日はいつもと違って言葉が出てこない。
「……ごめんねカグヤ、ありがとう」
そんな彼女の心中を理解したレイジは、感謝の言葉を投げかける。
「………レイジ」
「大丈夫。僕は、大丈夫だから」
そうだ、自分よりも問題なのはジャノビーの主人であるカイリの方だ。
彼に比べれば、自分の痛みなどそれこそたいした事はないのだから。
………。
ポケモンセンターに戻ると、ソファーに座り込んでいるカイリとヒメカ、そして……。
「ウツギ博士……」
「レイジくん、聴取は終わったのかい?」
「はい。お待たせしてすみません」
「いや、構わないよ。しかし大変だったね……」
「……いえ、僕は別に」
チラリと、カイリへ視線を向ける。
……必死で怒りに耐えている、そんな表情を浮かべていた。
「…………」
無理もない、自分の大切なポケモンが殺されかけて、どうして怒りを抱かないというのか。
だが、それでも……。
「――カイリ、気持ちはわかるけど……憎しみの感情は抱かないで」
彼には、そんな感情に囚われてほしくない。
「……悪いなレイジ、それはできない相談だ」
「…………」
「アイツのやった事は絶対に許さねえ、次に会ったらジャノビーが受けた痛みを味合わせなきゃ気が済まないんだ!!」
「でも、そんな事をしても意味ないよ……」
「意味ない? 何が意味ないっていうんだ? 何でお前、あんな野郎の肩を持つんだよ!?」
「別にそんなつもりはないよ、けど……憎しみは憎しみしか生まない、だから――」
「っ、お前に俺の気持ちがわかるのかよ!!」
センターに響き渡る程の大きな声。
周りの視線が彼等に集中するが、カイリは構わず声を荒げた。
「ジャノビーは殺されかけたんだぞ!? あんな一方的に痛めつけられて、本当に死ぬ寸前だったんだ!!
なのに……自分の相棒をそんな目に遭わせたっていうのに、憎むなってお前は言うのか!?」
「それ、は……」
その言葉には、反論を返す事ができない。
確かに、もしティナ達があんな目に遭ったら……想像するだけでも気分が悪くなっていく。
だがカイリは想像ではなく現実にポケモンを傷つけられたのだ、自分の想像など超えた怒りが溢れかえっているに違いない。
だから彼の言葉は否定できない、できないが……。
「――それでも、憎しみに囚われるのは間違ってるよ」
自分の考えとて、否定する事はできなかった。
「お前っ!!」
立ち上がり、レイジの胸ぐらを掴むカイリ。
「カイリ!?」
「やめなさい!!」
「お前は……お前は、何でそんな事が言える?
ポケモンを傷つけられて、殺されかけて……それでも、相手を憎むなってどうして言える!?」
「だって、彼にだって何か事情があるかもしれない。
普通ならあんな事はできない、なら彼は……ああせざるおえない理由があるんじゃ――」
「理由があるならポケモンを殺してもいいって言うのかよ!?」
「そういうわけじゃない、でも……」
「――甘いんだよ。お前の考え方は。
所詮、お前は自分のポケモンを傷つけられてないからそんな事が言えるんじゃねえか!!」
「カイリ……」
違う、そんなわけじゃない。
だが、カイリの怒りを感じ取り何も言えなくなってしまった。
結局、自分の意見は意見でしかなく、価値観を押し付けているだけのお節介に過ぎない。
どんなに言葉を並べようとも、カイリの怒りの前では何の意味も成さないのか……。
「カイリの分からず屋!どうしてレイジの言ってる事がわからないの!?」
しかし、カグヤがカイリに向かってそう叫んでしまい……彼もそんなカグヤに視線を向けた。
「確かにあの人のやった事は許されないし、私だって許す事はできないって思ってる。
でも、ジャノビーはカイリにそんな事望んだわけじゃないよ!!」
「お前に何がわかるっていうんだ!! たとえジャノビーが望んでなくても、俺はアイツに同じ痛みを与えてやりたい!!」
「そんなの、ただの自己満足だよ!!」
「何だと………!!」
「レイジはカイリに人を傷つけるような事をしてほしくなくて言ってるのに……どうしてわかってあげられないの!?
レイジの気持ちも考えてあげてよ!!」
「余計なお世話だ!! レイジには関係ないだろ!!」
「関係、ない……? 関係ないって……何よその言い方!!」
「関係ないから関係ないって言っただけだ!!
所詮他人のお前達に、俺が受けた痛みなんざわかるもんか!!」
その言葉が、カグヤの堪忍袋の尾を切った。
「っ、そう……なら、勝手にすれば!?」
「勝手にするさ。もうウンザリだよお前達と一緒に居るのは!!」
「それはこっちのセリフだよ!!」
「ちょ、ちょっと2人とも落ち着きなさいよ!」
「カイリ、カグヤ。君達が言い争ってもしょうがないじゃないか」
レイジとヒメカが仲裁に入るが、2人の睨み合いは止まらない。
「2人とも、一度冷静になりなさい。
確かにカイリくん、君の気持ちもわかる。しかしレイジくんの言う通り憎しみを抱いて相手に同じ痛みを与えた所で意味なんかないよ。
それどころか、君は彼と同じになってしまうじゃないか」
冷静に、宥めるようにカイリを説得するウツギ。
それで多少は落ち着いたのか、カイリは静かになるが……。
「――それでも、俺は許せません」
やはり、怒りは思った以上に彼の奥底に根付いてしまっていたようだ。
「分からず屋!!」
「うるせえ、いい子ちゃんぶりやがって!!」
「なんですって!!」
「けっ……」
席を立ち上がり、宿泊室に向かうカイリ。
「もうこれ以上甘ちゃん達につきあってられるかよ!!
――俺達の旅も、ここまでだ」
「ちょ、何言ってるのよカイリ!?」
「…………」
それ以上は何も言わず、カイリは部屋へと戻っていってしまった。
「………はぁ」
「ごめん、ヒメカ……」
「別にレイジが謝る必要なんかないわよ、カイリだって頭ではわかってるんだから。
ただ……ちょっと頭を冷やさなきゃダメね」
「…………」
「カイリの事はわたしに任せて」
そう言い残し、ヒメカも宿泊室に行ってしまった。
「――ウツギ博士、すみません」
「いや、ヒメカくんの言ったように君が悪いわけじゃないよ。
もちろんカグヤくんもカイリくんも悪くない、だから気にしないでくれ」
「……すみません」
「構わないよ。けど……僕はちょっと研究所に戻らなくちゃいけないからね。
――仲直りをしたら、連絡してくれないか?」
これは研究所の電話番号だから、そう言ってメモをレイジに渡すウツギ。
「わかりました」
「レイジくん、あまり1人で気負いすぎない方がいい」
「…………」
それには応えず、頷きだけ返す。
それで一応の納得はしてくれたのか、ウツギは研究所に戻るためにポケモンセンターから出ていった。
(………僕、は)
間違っていたのか?
自分のせいで、またカイリを傷つける事になってしまった。
そんなつもりじゃなかった、けれど結果は同じ。
「――私も、部屋に戻るね」
「カグヤ……」
「……レイジ、私……間違った事は言ってないよ」
「…………」
カイリは傷ついた。
けれど、カグヤやヒメカも静かに傷ついている。
(こうやって、悲しみばかりが広がっていくのか?)
誰かに問いたい、果たしてどんな言葉なら良かったのか。
一体、どんな選択ならば誰も傷つかなかったのかをレイジは知りたかった。
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【カイリside】
「――いつまでふてくされてるの?」
「…………」
ベッドに座り込んだカイリに、少し呆れながら話しかけるヒメカ。
しかし返事を返さないカイリに、再びため息をついた。
「売り言葉に買い言葉、あなたとカグヤってそういう所は本当に似てるわよね」
「……うるせー」
悪態も小さく、弱々しいもの。
「わかってるよ。ジャノビーがそんな事望んでないことも、単なる俺の自己満足だってことも。
ったく、核心めいた事をズバズバ言いやがって……」
「カグヤは自分の心に正直だから、それにレイジの事を心の底から信頼し尊敬しているから、ああやって彼が否定されるのが許せないのよ」
「ああそうだな、カグヤは筋金入りのレイジ大好き人間だよ」
「意外ね。もしかして気づいてた?」
「当たり前だろ。あんなあからさまな態度見せられたら、誰が見たってカグヤがレイジに惚れてることくらいわかる。
それなのに当のカグヤ本人が気づいてねえんだから……あいつの頭の中ってどうなってんだ?」
(あなたも似たようなものよ)
自分が抱いている想いにちっとも気づいてくれないのだ、カグヤをどうこう言えるわけがないではないかこの朴念仁が。
「……怒ってるよな。あいつら」
「そうね」
おそらくレイジは初めから怒ってなどいなかったが、勝手な事を言った罰を与えてやらねば。
「はぁぁ〜……そうだよな」
あからさまに落ち込むカイリ。
こんな風になるなら、あんな言い争いなどしなければいいのに。
そう思うが、カイリに言っても無駄なのでやめておく。
「わたしも一緒に謝るから、元気だしなさいよ」
「いいよ。だってヒメカは何も悪くないじゃねえか」
「あなたの失態はわたしの失態なの、わたしはあなたの幼なじみなんだから」
「うっ……いつもいつも面倒かけます」
「いいわよ、いつもの事だから」
それを聞いて更にうなだれるカイリに、ヒメカは苦笑しながら彼の隣に。
「忘れないでカイリ、あなたはわたしやみんながついてる」
「うん……」
「だから、その怒りも憎しみも自分に溜め込まないでわたしにぶちまけなさい。
わたしはあなたの幼なじみでパートナーなんだから」
「……あんがと、ヒメカ」
嬉しくなり、おもわずヒメカの手に自分の手を重ねる。
「っ、ちょ、ちょっとカイリ……」
あっという間に頬を赤らめるヒメカだが、振り払ったりしない辺り満更でもないらしい。
……自分の鼓動がうるさい。
2人っきりの部屋で、彼等は手を握り互いの体温を感じ合う。
カイリは特に何とも思ってないようだが、ヒメカは赤くなった自分の顔を隠すのに必死だ。
(しっかりしなさい! こ、このままじゃ前と何も変わらないじゃない)
何か進展を、少しでも進展しなければ自分は一生このままだ。
そう言い聞かせ、必死で行動に移ろうとするヒメカだったが。
(〜〜〜〜〜っ、わ、わたしのバカー!)
いつもはクールに容赦なくツッコミをするヒメカであっても、恋愛に関してはズブの素人、かなりのヘタレだ。
結局、ただ時だけが過ぎていき……
ヒメカは、心底自分の恋愛に対する奥手な部分が恨めしく思ったのだった。
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〈……お父様〉
「……ティナ、急に出てくるとびっくりするからやめて」
何をするでもなく、ソファーに身体を沈めていると、突然ボールからティナが飛び出してきた。
その表情は、心配の色がありありと現れている。
〈お父様、何故……あの男の事など考えているのですか?〉
「…………」
驚き、思わず視線をティナに向ける。
〈――わたくしはサーナイトです、お父様の表層意識を読む事など雑作もありません。
ラルトスやキルリアだった時も、何度かお見せしたはずですが?〉
そういえば、そうだった気がする。
だがそれ以前に、勝手に人の心を読むなよというツッコミを入れたいが、別に読まれて困る事など考えていないので気にしない事に。
〈お父様。お言葉ですがわたくしにはお父様の考えには賛同できません。
確かに憎しみは憎しみを呼び出し、新たな憎しみを生み出す可能性があります。
ですが、あのような非道な人間にすらお父様は何故その優しさを向けようとするのですか?〉
「別に僕は優しさなんか向けてないよ。ただ……ああする理由があるような気がするだけだ」
〈それが優しいと言っているのです、あの人間の心情がどうあれ許されざる行いをしたのですから、お父様も少しは怒ってください〉
「怒ってくださいって……まるで僕が彼に怒りを抱いていないみたいじゃないか」
そんな事はない、今だって彼のした事を思い出すと怒りが湧き上がってくる。
しかし、そんな自分を否定するかのように、ティナは首を横に振った。
〈いいえ、お父様は怒っておりません。
確かにお怒りを抱いているのはわかりますが、人間としての怒りを抱いてはいないのです。
わたくしも上手く説明できるわけではありませんが……お父様の場合、怒りよりも悲しみや失望感が際立って表に出ているような……〉
自分でも上手く言葉が伝えられないのか、珍しく歯切れの悪い口調で話すティナ。
けれど、その言葉は充分当てはまっている。
たしかに自分は怒っている、きっとみんなが居なければ彼に殴りかかっていただろう。
でも……その怒りは、ポケモンや人間に非道な事をしたことに対してではなく。
まるで、人間そのものに失望感を抱いた事による怒りだったと記憶している。
自分でもわからない、この怒りの出所がなんなのか。
〈……申し訳ありません。出過ぎた事を口走ってしまいました〉
深々と頭を下げるティナに、気にしないでと一声掛ける。
……ダメだ、頭がゴチャゴチャして考えがまとまらない。
けれど部屋に帰る気にもなれず、どうしたものかと再びソファーに沈み込んでいくと。
「レ、レイジ……」
「………カイリ」
俯きながら小さく自分の名前を呼んだカイリの前に立つ。
「どうしたの?」
「あ、いや、その……」
「………?」
どうしたというのだろうか、今日の彼は歯切れが悪い。
何か告げようとしているのはわかるのだが、一体何を言うのか少し緊張したまま待つ。
すると、カイリは意を決したように顔を上げ。
「すまん!!」
馬鹿でかい声でいきなり謝ってきた。
「どうしたの?」
「いや、どうしたのって……謝ってんだけど」
「? どうして謝るの?」
「どうしてって……さっきお前に……」
「………ああ」
そういえば、さっき胸倉掴まれたり怒鳴られたりしたっけ……。
「いいよ別に、というか全然怒ってないから謝る必要ないし」
「えっ、マジで……?」
「マジで。何で怒る必要があるの?」
カイリの言っている事だって間違いではない、互いの言い分をぶつけ合っただけだ。
ならば、どうして怒る必要があるというのか。
「……お前、本当に大人だな」
「そうかな? でも……カグヤは怒ってるかも」
「うっ……」
げんなりするカイリだが、仕方ないと思って諦めてもらいたい。
「…………」
「あ………」
噂をすればなんとやら、ブスッとした表情を浮かべながら、カグヤがカイリの元へとやってきた。
それを見て、カイリの表情が少しだけ引きつってしまう。
「え、えっと……あの、カグヤ……」
「私は、自分の言った事に後悔なんかしてない」
「…………」
「でも……さっきはごめん、言い過ぎた……」
「あ、いや……俺が悪いんだし」
互いにペコペコと謝る光景は、正直シュールだ。
……だが、仲直りできたようでよかった。
「それで、さ……勝手な事言ってるのはわかるんだけど、その……また、一緒に旅しても……いいか?」
「うん、いーよ」
「そっか……って、ええっ!!?」
さすがカグヤ、すぐさま先程の事など気にしないような発言をするとは。
こういう時、彼女の性格はありがたいと思える。
「だって私達友達でしょ? 本当の友達なら喧嘩だってするし、仲直りしたなら今まで通りにすればいいだけじゃない」
あっけらかんと言い放つカグヤだが、普通はそんな風に割り切れたりはしないので、カイリとヒメカは彼女を見ながら驚きの表情を浮かべている。
けれど、カグヤは自分の発言で何故2人が驚いているのかわからず首を傾げてしまった。
「ほらほら、カグヤもこう言ってるし、この話はもうおしまいにしよう?」
場の空気を元に戻すように大きく声を出し、2人の間に割って入る。
「……そうね。仲直りしたのだから、もう忘れましょう」
「お、おお……そうだな」
まだ少しぎこちないものの、ようやくいつもの空気に戻ってくれたようだ。
……さて、ではウツギ博士に連絡しなくては。
自分達のせいで、博士の頼みごとを保留にしてしまったのだから。
………。
「えっ――本当にいいんですか?」
「もちろんだよ。だからこそ無茶を言って君達にジョウトへ来てもらったんだから」
「まあ、それはそうなんですけど……」
幸いにも、ウツギ博士はまだコガネシティを出ていなかったので、すぐに合流できた。
そして改めて、ウツギ博士の頼みたい事とやらを尋ねてみたのだが……。
その頼みというのは――ポケモンを連れていってほしいとの事だった。
「チコリータはカグヤくんに、ワニノコはとあるトレーナーに譲ったのだけど、このヒノアラシだけ取り残されて可哀想だからね。
それに僕の研究を進める為にも、是非協力してほしいんだ」
そういえば、チコリータ……というか今はベイリーフだけど、ウツギ博士がオーキド博士に渡したポケモンだと思い出す。
「はいはーい、じゃあ私が貰いまーす」
「何言ってんだ、勝手に決めんなよ!!」
「早い者勝ちだよー!」
「ずりぃぞ!!」
わーわーぎゃーぎゃーと俺が私がとヒノアラシを取り合う2人。
「醜いわね」
「確かに……」
だが、このままでは煩くてかなわない。
「あのさ、ヒノアラシに決めてもらえばいいんじゃないか?」
それ以前に、ヒノアラシが自分達を選んでくれなくては意味がない。
というわけで、モンスターボールからヒノアラシを出す。
「………可愛い」
「えっ?」
「あっ、な、なんでもないわ」
「ほーらヒノアラシ、新しいご主人様ですよ〜」
「すり込みさせようとすんな!! ヒノアラシ、俺がお前の主人だそー」
「カイリだって人の事言えないじゃん!!」
(煩い……)
ヒノアラシの前で醜く争う2人に、揃って冷たい視線を送る。
と、ヒノアラシが突然チョコチョコと歩き出したと思ったら……。
「あら……?」
ヒメカの前で止まり、彼女の足に身体を擦り寄せてきた。
『あーーーっ!!?』
「決まりのようだね、ヒノアラシはヒメカくんを選んだようだ」
「………いいの?」
しゃがみ込み、ヒノアラシに問い掛けるヒメカ。
すると、ヒノアラシはこくりと頷き手を上げる。
「レイジ、ヒノアラシは何て?」
「あの2人は嫌だ、お願いします。だってさ」
『!!?!』
その言葉を聞き、ショックを受け倒れる2人。
まああれだけ据わった目で見つめられれば嫌になるよ。
「ヒメカくん、ヒノアラシの事頼んだよ?」
「わかりました。……そうね、あなたの名前はヒノにしましょう」
気に入ったようで、ピッと手を上げるヒノアラシ改め、ヒノ。
こうして、ヒメカに新しい仲間が加わったのだが。
……さっきから地面に突っ伏している2人を早く起こさなくては。
「ちくしょー……ひでえよヒノアラシ」
「いいなぁ、いいなぁ……羨ましいよぉ」
突っ伏しながら恨み言を呟き続ける2人。
その姿に、若干引いた。
そんなにショックだったのか……?
2人の姿にため息をつきつつ、周りの視線が痛々しいものに変わったので、さっさと起こそうとしたのだが……。
「あ、あの!」
声を掛けられ、振り向く。
そこには、数人の女性トレーナーの姿が。
「なんですか?」
「すみません、あの時アカネちゃんを助けてくださった方達ですよね?」
「アカネちゃん……?」
……ああ、そういえばケイジとバトルしてた女の子がいたな。
そんな事を考えていると。
「お願いします、アカネちゃんを助けてくださいませんか!?」
「………え?」
なんか、よくわからない頼み事をされてしまった。
To.Be.Continued...