ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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仲違いをしてしまったものの、仲直りを果たしたレイジ達。
新しい仲間を迎え入れ、いざ次の目的地に出発…しようとして、彼等は突如として見慣れぬ少女達に呼び止められてしまった。


第24話 ジムリーダーの意義〜全力バトルでお祭り騒ぎ!!〜

「あの……助けてって、どういう意味ですか?」

意味がわからず、とりあえず事情を訊く事に。

 

「はい。アカネちゃん……あっ、その子ってコガネシティのジムリーダーなんですけど、今すごく落ち込んでて……」

「落ち込んでる?」

「それで、アカネちゃんを助けてくれたあなた達に力を貸してほしくて……」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。さっきから何がなんだかさっぱりわかんないから、きちんと説明してくれないか?」

「す、すみません……もうどうしたらいいのかわからなくて……」

 

すっかり頭が混乱しているようだ、カイリの一言で落ち着きを取り戻す少女達。

そうして、きちんと一から説明してもらうと。

まず彼女達――ミミとシズカが言ってるアカネちゃんという少女はコガネシティのジムリーダーで、自分達の師匠らしく前日ケイジと戦っていた子らしい。

しかし、あの時目にしたように彼女はケイジに完膚なきまでに負けてしまった。

更にあの人を貶めるような暴言で心に傷を負い、ジムリーダーどころかポケモントレーナーとしても自信を無くしてしまったとのこと。

自分達も手を尽くしたが意味はなく、そこでレイジ達に助けを求め現在に至る。

 

「なるほどなぁ……」

「許せないわね……!」

「そうだよ。やっぱりあのケイジとかいうヤツ、今度会ったらボコボコにやっつけてやる!!」

「今はケイジなんかの事より、アカネさんの事を考えるのが先決だよ」

「そ、そうだな……けど、何かいい手とかあるのか?」

「こういう場合、言葉だけの励ましじゃ本当に立ち直る事は難しいわね。

 だとすると、他に何かあるかしら……?」

 

うーんと、その場で腕組みをしながら考えるレイジ達。

しかし、そう簡単に良案が思い浮かぶはずもなく、普段頭を使わないせいかカイリの頭からは煙が立ち上り始めてしまった。

 

「カイリ、あなたは少し考えるのやめなさい」

「…………」

自分達だけでは思いつかない、だとすると先輩トレーナーから何か助言が貰えれば……。

 

「……そうだ」

「レイジ、何か思いついたの?」

「良案になるかはわからないけど……先輩トレーナーからアドバイスを貰えたらと思って」

「けど先輩トレーナーに知り合いなんて――」

 

言いかけ、カイリもようやく気づく。

そう、知り合いはいる。それもとびきり凄まじい経歴のトレーナーが。

 

「今の僕達じゃこれ以上考えても答えは得られない。だからあの人に力を借りよう」

「あの……一体どんな人なんですか?」

疑問に思い、レイジに問い掛けるミミ。

すると、レイジはほんの少しだけ微妙な表情を浮かべながら、質問に答えた。

 

「シンオウリーグチャンピオンの、シロナさん」

「………………え?」

そうと決まれば善は急げ、ポケモンセンターに戻りテレビ電話に駆け込むレイジ。

 

「で、でも本当にリーグチャンピオンとお知り合いなんですか……」

目の前の彼が嘘をつくような人には見えないが、かといって信じられるような話でもない。

「まあ普通信じられねえよな、けどこれが本当なんだよ」

そうこう話しているうちに、テレビ電話が繋がったようだ。

 

『あら、レイジくん。どうしたの?』

黒の服で統一された金髪の美女が、画面に映りミミとシズカは目を見開いた。

「ほ、本当にリーグチャンピオン………」

『? あら、暫く見ない内にまた女の子のメンバーが増えてるわね……』

「違います。彼女達は少し事情があって一緒に居るだけです。

 それよりシロナさん、今時間ありますか?」

『ええ。というよりレイジくんとの時間なら何よりも最優先にしないと』

「は、はあ……」

(むっ……)

なんだか面白くない、そう思ってしまうカグヤをよそに話は続く。

 

「実はですね―――」

先程聞いた話を、シロナに説明する。

『……なる程。つまりその子はトレーナーとしての自信をすっかり無くしてしまっていると……』

「はい。でも僕達じゃ立ち直らせるいい方法が思いつかなくて……シロナさん、何かありませんか?」

レイジの言葉に、シロナは顎に手を添えて思考に耽る。

チャンピオン相手にこんな相談をするのは正直気が引けたが、背に腹は変えられない。

それに彼女なら、きちんと相談を聞いてくれると思えたからこそだ。

 

『そうね。そんな事があれば確かに自信を失ってしまっても仕方ないわ。

 それに、言葉だけの励ましじゃ効果はない』

「はい。僕達もそれがわかっているから、困ってて……」

『言葉だけじゃダメなら、それ以外の方法を用いればいいのよ』

「それ以外の方法?」

『レイジくん、あなたとそのアカネという女の子はポケモントレーナーよ。

 なら、トレーナーらしい励まし方がきっとあるはず』

「トレーナーらしい、励まし方……」

『そうよ。あなたならもう気づいているんじゃない? そして、後ろにいるみんなも』

 

「えっ……?」

「けど、トレーナーらしい励まし方って……」

急に振られ、考えるカイリ達だが、その答えがわからない。

しかし、レイジにはすぐにシロナの言葉の意味を理解する。

トレーナーらしい励まし方、それはきっと……。

 

「――あっ、なる程」

『カグヤはわかったみたいね?』

「はい! そっか……難しく考える必要なんかないんだ。

 アカネちゃんはポケモンが大好きでトレーナーになって、ジムリーダーになったんだから、それを思い出させればいいんだよ!!」

「はぁ?」

「思い出させるって……あ、もしかして……」

ヒメカが何かに気づき、その一瞬後にミミとシズカもシロナの言わんとしている事に気が付いた。

 

「ええっ、わかんないの俺だけかよ!?」

「落ち着いて考えてみなさいカイリ、そうすればわかるはずよ」

「落ち着いて考えろって言われてもな……」

わからないものわからないんだー、と言ってやりたい気持ちを我慢して、精一杯思考を巡らす。

「……………………あ」

そして、ようやく気が付いたのか顔を上げた。

 

「気づくのが遅いわよ、まったく……」

「しょ、しょうがねえだろ……」

「シロナさん、ありがとうございました」

『いいえ。私はただ助言をしただけ、この後上手くいくか失敗するかはあなた達にかかってるわ。頑張ってね』

「はい」

「よっしゃ、それじゃあ早速ジムに殴り込みだぁっ!!」

我先にとセンターを飛び出すカイリ。

 

「殴り込みなんて物騒な言い方しないでよ」

そんなカイリにツッコミを入れつつ、ヒメカも後を追う。

カグヤ達もそれに続き、レイジ1人になったところで――シロナへと口を開いた。

「シロナさん、これが終わったら……聞いてほしい事があるんです」

『えっ………』

真剣な表情でそう告げるレイジに、シロナはキョトンとしてから……僅かに頬を赤らめる。

 

(聞いてほしい話? それにレイジくんのこの真剣な表情……も、もしかして)

いや待て落ち着け、早とちりはよくない。

『レイジくん、その話って……大事な話?』

「はい。とても大事な話です、おいそれとは話せないくらいの。

 けど、シロナさんには聞いてほしいんです」

『――――』

 

まさか、まさかまさか?

レイジの言う「大事な話」とやらは……。

 

(こ、告白……? いやでもとても大事な話でおいそれとは言えないって言ってるし……。

 ど、どうしよう。いきなり言われても心の準備が……)

「そういうわけなので、お願いします」

『え、ええ……私も、覚悟を決めておくわ』

「? はあ……お願いします……」

一体何の覚悟を決めるというのか、シロナの意味不明な発言に首を傾げながら、レイジは電話を切ってカグヤ達の後を追ったのだった。

そして、電話を切られたシロナはというと……。

 

「ど、どうしよう……いきなりで心の準備もできてないのに……」

すっかりレイジが後で告白をするのだと勝手に決めつけ、頬に両手を置きながら首を左右に振っていた。

しかし幸か不幸か、そんな彼女にツッコミを入れる人間はいない。

「落ち着きなさいシロナ……わ、私の方が年上なんだから、大人の余裕というものを……」

結局、彼女のボケは流され続け、暫くあれやこれやと想像しては顔を赤らめたり怪しい動きをしているシロナであった。

まあしかし、チャンピオンである彼女がこんな奇怪な動きをしている姿を誰にも見られなかったのだから、幸運かもしれないが……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ちょ、ちょっとミミ、シズカ、一体何の騒ぎや?」

場所は変わってコガネジム。

リーダー専用の部屋に籠もっていたアカネだったが、突然ミミとシズカの2人に強引に連れ出され困惑気味。

「アカネちゃんがいつまでも塞ぎ込んでるから、私達助っ人を呼んだの!」

「きっとアカネちゃん、今まで通りのアカネちゃんに戻れるよ」

「…………」

嬉しそうな2人の言葉を聞き、アカネはその場で立ち止まる。

 

「アカネちゃん?」

「……ごめんな2人とも、気持ちはめっちゃ嬉しいんよ?

 けど……うち、もうバトルはしたないんや……」

バトルをしようとすれば、あの男の言葉が否が応でも思い出される。

それが恐い、どうしようもないほどに。

「その助っ人さんにも悪いけど帰ってもらってくれへんか?

 勝手な事言ってんのはわかってる、けど今はまだ……」

「そういうわけにはいかないよ!」

アカネの腕を掴み、再び歩を進めるミミとシズカ。

 

「ちょ、何すんねん!?」

「だってここで立ち直らなきゃ、アカネちゃんはもう二度とトレーナーに戻れないよ!!」

「私達は友達としてアカネちゃんを助けたいと思ってる。

 それに助っ人さん達もアカネちゃんがポケモンが大好きでトレーナーになったって知って、助けたいって言ってくれた。

 そんな人達の気持ちを無駄にはできない!」

「け、けど……」

反論しようとするアカネだが、既にバトルフィールドへと着いてしまいそれも叶わない。

そして、相手側の所には既に1人の少女がアカネを待つかのように立ち構えていた。

 

「はじめましてアカネちゃん、私はカントーのマサラタウンから来たカグヤっていうの、よろしくね!!」

「よ、よろしく……じゃなくて、悪いけどうちは今ジム戦はできへんの。

 勝手な事言ってホンマ悪いとは思うけど、帰ってくれへんか?」

「それならいいよ。私はジムリーダーとしてのアカネちゃんに挑戦したいと思ってるわけじゃないから」

「えっ?」

「私がバトルしたいって思っているのは、ただのポケモントレーナーとしてのアカネちゃんに挑戦したい。

 ポケモンが大好きでトレーナーになったアカネちゃんと」

「…………」

 

そこでようやく、アカネはカグヤ達を見てあの時自分を助けてくれた人達だと気が付いた。

……だが、それでも。

 

「……ごめんな。気持ちは本当に嬉しいんよ。

 うちなんかの為にわざわざそんな事言ってくれて……けど、それでも恐いんよ。

 負けた事がやない、ああやって……自分のポケモンを傷つかれる光景を見るんわ恐いんよ!!

 だから、もう……うちはバトルできへん」

「アカネちゃん……」

彼女の気持ちがわかるからこそ、傍らに居る2人は何も言えなくなってしまった。

ポケモンが大好きだから、ああやって死ぬ寸前まで痛めつけられた事がトラウマになりバトルに対しても恐怖心を抱いている。

カグヤもその言葉を聞き、一瞬躊躇いを見せるものの。

 

「――逃げても、後悔しか残らないよ」

それは本当の意味で彼女のためにならないとわかっているから、再び口を開いた。

 

「えっ……?」

「逃げても何も残らない、後悔ばかりが頭を占めて自分自身を苦しめる。

 そして、もう前の選択には戻れなくなるよ」

 

そう、逃げる事は誰だってできる。

逃げる事は間違いではない、罪でもない。

けれど、逃げた事で得られるものや生まれるものは――後悔だけ。

それをわかってほしい、それに気づいてほしい。

だからカグヤは口を開く、たとえ恨まれても構わない覚悟で。

 

(………カグヤ)

「なんかあいつ、今日は雰囲気違うな……。

 「自分に任せてほしい」って言った時も、有無を言わせない迫力があったし……」

「……あの子だって、何不自由なく平和に過ごしてきたわけじゃないって事よ。

 人は誰しも大なり小なりそういう所は持ってるわ。……あなただってそうだったでしょ?」

「………だな」

 

「アカネちゃん、ここでおもいっきりバトルしようよ。

 ジムリーダーと挑戦者じゃなくて、お互いただのポケモントレーナーとして、正々堂々全力でぶつかり合ってみようよ。

 それで何かが変わるかはわからない、それでも今のままならきっと後悔するから……」

「…………」

アカネの心が揺らぐ。

「私もね、前に何回も後悔した事があったの。

 それで自信なくしちゃって、トレーナーをやめようかななんて本気で思った時もあった。

 でもね…そうしたら今までの自分は全部無くなっちゃうから、ポケモンが大好きでトレーナーになった自分も、バトルに勝って嬉しいって思った時の気持ちも、全部無くなっちゃうから。

 ――だから、私はどんな事があっても逃げないんだ」

 

それは誓い、誰に話したわけでもない、自分自身に捧げた誓いだった。

人である以上後悔しない選択など選べない、ならばせめてこの誓いだけは胸に刻む。

そして、今もまたその誓いを果たす時だ。

この少女を救いたい、自らが信じた道を自らが壊してほしくない。

だから戦う、もう一度取り戻す為にも。

戦う意志を見せなくても、その意志を見せるまで何度でも語りかける。

 

「……アンタ、筋金入りのお人好しやな。普通、こないに他人の為にできへんで?」

「そうかな? でも私の幼なじみの方がよっぽどお人好しだよ?」

「なんやねんソレ、アンタ以上のお人好しなんて信じられへんわ」

そう言って笑うアカネの声は、明るい。

 

「……よーし、ならおもいっきりガチンコバトルと行こか!!

 まだちょっと恐いけど、こんなんでビビるなんて情けないもんな!」

「アカネちゃん……!」

「ミミ、シズカ。ホンマありがとう。うちのせいで迷惑かけてごめんな」

「私達の事は気にしないで、それより……頑張って!!」

「当然や!! ほんならカグヤちゃん、1対1のバトルと行こか?」

「互いに切り札だけだね……いいよ!!」

互いに、自分の信じる最強の手持ちが入ったモンスターボールを構える。

 

「――どうやら、上手くいったみたいだな」

「あの子の明るさは本当に力になるからね、わたしも羨ましいと思ってしまうくらいに……」

「けど全力バトルか……くーっ、なんか観てるだけでもワクワクしてくるぜ!!」

(さて、どこまでやれるか……)

 

彼女、アカネは強い。

おそらくカグヤは勝てないだろう、彼女の頑張りを否定するわけではないが、それでも勝てるとは思えなかった。

しかし、彼女にとってはどうでもいい事だろう。

今はただ、アカネと全力でバトルをして彼女を立ち直らそうとしか考えてないだろうから。

 

………。

 

「ミルタンク、いくでぇっ!!!」

「ベイリーフ、レディーゴー!!!」

同時に出されるポケモン達。

 

「ベイリーフ、はっぱカッター!!」

「ミルタンク、まもるや!!」

先手をとったのはカグヤ、はっぱカッターを放つがミルタンクのまもるが全て弾く。

「それなら、たいあたり!!」

「ミルタンク、こっちもたいあたりや!!」

ぶつかり合うベイリーフとミルタンク。

だが――押し負けたのはベイリーフの方だった。

「続いてずつき!!」

吹き飛ばされるベイリーフがバランスを立て直す前に、ミルタンクのずつきが再びベイリーフをフィールドに吹き飛ばした。

 

「あのミルタンク、すげぇパワーとスピードだ」

「ええ、完璧にカグヤのベイリーフを上回っているわね」

 

「ベイリーフ、つるのムチ!!」

体勢を立て直したベイリーフがつるのムチを放ち、あっさりとミルタンクの両腕を拘束した。

 

「っ、拙い―――!」

「は?」

「ミルタンク、10万ボルトや!!」

レイジの声とアカネの指示はほぼ同時に放たれ、ミルタンクは自らの身体を発電させる。

そうなれば当然、つるのムチを経由して電撃はベイリーフに襲いかかる。

 

「次はシャドーボールや!!」

完全に怯んだベイリーフ目掛けて、ミルタンクはシャドーボールを撃ち出す。

「エナジーボール!!」

だがベイリーフとてまだ負けていない、エナジーボールを撃ち出しミルタンクのシャドーボールを相殺させた。

爆発音と共に、煙がフィールドを包む。

「ベイリーフ、マジカルリーフ!!!」

煙で相手が見えない中、ミルタンクへと攻撃を仕掛けるベイリーフ。

「甘いでカグヤちゃん、その攻撃で居場所はバレた。

 ミルタンク、攻撃を避けてその場所にれいとうビームや!!」

確実にマジカルリーフを避け、間髪入れずにそちらへれいとうビームを放つミルタンク。

 

「ヤベ!?」

「決まった……?」

「――いや」

 

れいとうビームが命中する。

手応えを感じたのか、口元に笑みを浮かべるアカネとミルタンクだったが。

煙が晴れた先には――ベイリーフの姿はどこにもなかった。

 

「えっ!?」

「ずつき!!」

しまった、気づいた時にはもう遅い。

側面へと移動していたベイリーフのずつきがミルタンクに突き刺さり、フィールドを破壊しながら吹き飛ばしていく。

 

「あれ!? 攻撃が命中したと思ったのに……」

「いや、確かに命中はしたさ……」

「へ? それってどういう意味だ?」

「なるほど……みがわりね」

ご明察、ヒメカにそう告げ再びカグヤの試合に集中する。

 

――あの時、カグヤは相手にわざと居場所を教える為にマジカルリーフを放った。

 

もちろん当たればそれに越した事はなかったが、案の定アカネとミルタンクには通じず反撃を許したのだが……。

それは想定内、すぐさまみがわりをその場に置き煙が晴れていない箇所を走りながらミルタンクの視界から外れる。

そしてれいとうビームが放たれた位置を見て相手の場所を特定し、攻撃を仕掛けたのだ。

 

「エナジーボール!!」

倒れたミルタンクに追い討ちを掛けるカグヤとベイリーフ。

ずつきのダメージが大きかったのか、エナジーボールをまともに受けるミルタンク。

「っ、ミルタンク。ガッツや!! ここで根性見せんとアカン!!」

全力で叫び、ミルタンクを激励するアカネ。

そこでふと――彼女はある事に気づいた。

 

(……ああ、そうや。うち……こない楽しいバトル久しぶりやなぁ……)

心の底から楽しめ、熱くなれるポケモンバトルなど、いつ以来か。

(アホやなぁ、こない楽しい事を自分からやめようとするなんて……ホンマに、うちはアホや)

だが気づけた、気づかせてくれた。

ならば彼女に精一杯の感謝を込めて、まだまだこんなに楽しいバトルをやめるわけにはいかない。

 

「はっぱカッター!!」

「まもるや!!」

不利な体勢ながらもベイリーフのはっぱカッターを全て防ぐミルタンク。

「凄い………!」

「アカンでカグヤちゃん、うちはまだまだ負けへんよ!!」

「こっちだって、負けないんだから!!」

「よう言うたわ!! ならこっから本番や、バリバリいくで!!」

「望むところ!!」

 

「………あいつら、本当に楽しそうだな」

「ええ。……少し羨ましいわね、あんなに楽しそうなバトルができて」

「…………」

何も言わず、ただ黙ってカグヤのバトルを観戦するレイジ。

その視線はどこまでも優しく、そして暖かなものだった。

 

(…………くっ)

だが、そろそろ限界が近い。

ベイリーフは、あと大技が一度放てるかどうかといったところ。

対するミルタンクは、まだまだ余裕の色が見える。

 

「よーし……ベイリーフ、小細工なしで最後の攻撃を仕掛けるわよ!!」

ここまで来たなら後は真っ向勝負、単純なるごり押しで行く。

すぐさまベイリーフは、最後の勝負を仕掛けようと最強技のソーラービームの準備に入る。

「させへんで。ミルタンク、こるがるや!!」

身体を丸め、ベイリーフへと向かっていくミルタンク。

だが――見えない壁に阻まれ、弾き返されてしまった。

 

(っ、リフレクター!?いつの間に展開しとったんや………!)

だが、これでソーラービームを阻止する時間が無くなってしまった。

「しゃあない。ミルタンク、こっちも迎え撃つんや!!!」

ベイリーフから離れ、力を込めるミルタンク。

 

「あれは……まさか、ソーラービーム!?」

「ソーラービームの撃ち合いか……これは単純な力勝負だね」

「まったく、あの2人って似てるわね」

呆れながらも、カグヤの表情は明るい。

「お前、どっちが勝つと思う?」

「アカネだね」

「即答かよ……少しは幼なじみを信じるとかないのか?」

「もちろんカグヤには勝ってほしいさ、でも現実はそんなに甘くないよ」

「じゃあ俺はカグヤに賭けるぜ、負けたらサイコソーダ奢れよ?」

「いいよ。じゃあ僕が勝ったらハイパーボール1ダースね」

「全然賭けの規模が違うじゃねえか!!!」

カイリのツッコミがレイジの耳に届いた瞬間。

 

「ベイリーフ!!」

「ミルタンク!!」

準備を終えたカグヤ達の声が響き。

 

「フルパワーの――」

「全力ガッツの――」

 

『ソーラービーム!!』

互いにとっての必殺の一撃が、放たれた―――!

 

ぶつかり合う両者のソーラービーム。

「ベイリーフ、負けないで!!!」

「ミルタンク、ファイトや!!」

譲れない、互いに自分達の勝利だけを信じて戦い続ける。

 

「こ、これは……いつまで続くんだ!?」

「…………終わりだ」

ぽつりと、残念そうにレイジが呟いた瞬間。

フィールドは大爆発を起こし、再び煙が全てを包み込んでいく。

その煙は観客席に居るレイジ達の所にまで及び、視界が灰色に包まれてしまった。

 

「ケホッ、ゲホッ、バ、バトルは………!」

「…………」

煙の中席を立ち、観客席からバトルフィールドへと移動するレイジ。

そして――彼女に労いの言葉を掛けた。

 

「――惜しかったね。でもよく頑張ったよ、カグヤ」

 

煙が晴れていく。

ようやく視界が良好になり、ホッとするカイリだったが。

「あ………!」

「…………」

フィールドでは、カグヤの負けを意味するようにベイリーフが目を回し気絶している光景が映っていた。

 

「ベイリーフ、戦闘不能。ミルタンクの勝ち!! よって勝者、ジムリーダーのアカネ!!」

「あ〜あ……あともう少しだったのに……」

「お疲れ様。でもいいバトルだったよ」

「本当? そっか、レイジがそう言ってくれるならすごく嬉しいよ」

負けたのは悔しそうだが、カグヤはすぐさま笑顔を見せてくれた。

 

「――カグヤちゃん。ありがとう」

ベイリーフをボールに戻していると、アカネがこちらへとやってきた。

「アカネちゃん……」

「うち、こないに楽しいバトルは本当に久しぶりやったよ。

 ――うちなんかの為に色々してくれて、ホンマに感謝してる」

「うぅん。私だけの力じゃないよ、レイジやみんながアカネちゃんの事を助けたいって思ったからだよ」

「……ぅん。嬉しいわ……ホンマに」

あまりの嬉しさに涙ぐむアカネ。

 

「あらあら」

「アカネちゃんってば、本当に泣き虫なんだから」

「しゃ、しゃあないやんこれは!! それに嬉し涙やからええの!!」

涙目で起こるアカネを見て、ジム内で笑いが飛び交う。

バトルではカグヤの負けになってしまったが、きっと彼女の事だから何かを得る事ができただろう。

 

(これにて、一件落着かな……?)

 

………。

 

ポケモンセンターに戻り、現在レイジはテレビ電話の前に1人で居る。

そしてすぐさまある人物に電話を掛けると。

 

『や、やっほー……レイジくん……』

ワンコールでシロナが出てくれた。

「……シロナさん、どうかしましたか?」

なんだか彼女の様子がおかしく、レイジは尋ねる。

何せ今のシロナは顔を赤くして、なんだかもじもじと落ち着かない様子なのだ、気になってしまうのは仕方ない。

 

『だ、大丈夫……私は落ち着いてるから』

落ち着いてるとか言いながら、さっきより落ち着いていないではないかというツッコミが出そうになる。

『そ、それよりレイジくん……わ、私に話したい事って、何?』

「ええ、実は……」

『あっ、や、やっぱり少し待って! まだ心の準備ができてないから!』

「は………?」

なんだか今日の彼女は変だ。

 

『……ごめんなさい。いいわよ?』

「はあ……それじゃあ言いますけど」

『……………』

ゴクリと、おもわず喉を鳴らすシロナ。

しかし――当然といえば当然のごとく、彼女の考えている事とレイジが言おうとしている事はまったく違う内容なのだが……彼女はまだ気づかない。

 

そして――

 

「――シンオウに伝わる神話、そこに出てくるディアルガとパルキアの事を、教えてくださいませんか?」

レイジは、自らが考えたある仮説が当たっているか確かめる為に、彼女にそんな問いを投げかけた。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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