ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
早速とばかりに、彼等はアサギジムへと向かっていったのだった。
『たのもー!!』
久しぶりに聞いたような声を耳に入れつつ、先行するカグヤとカイリに続いて、レイジはアサギジムへと入る。
「こんにちは。挑戦者の方達ですか?」
そんな彼等を迎えてくれたのは、このアサギジムのジムリーダーであるミカン。
栗色の長い髪と白いワンピースを翻しながら、レイジ達へと向けて歩いてくる。
「美人だな……」
「…………」
「いてっ!?」
ぽつりと呟いたカイリの言葉に反応し、ヒメカはおもいっきり彼の足を踏みつけた。
何すんだよ、そんな視線をヒメカに向けるが、当然ながら彼女は完全に無視する。
「あの……どうかなさいましたか?」
「あ、い、いえ……それであの、俺達挑戦者なんですけど……」
「やはりそうでしたか、私はこのアサギジムのジムリーダーのミカンといいます」
好感の持てる笑みを浮かべながら、柔らかな物腰で自己紹介をするミカン。
エリカと同じく、ずいぶんと清楚な女性のようだ。
そういうタイプには弱いのか、カイリの表情がだらしなく緩む。
それを見て、今度は腕をおもいっきり抓るヒメカ。
「〜〜〜っ、さっきから何なんだよ!?」
「別に、なんでもないわよ」
「? あの……」
「すみません、あの2人の事は気にしないでください。いつもの事ですから」
「はあ……」
レイジにそう言われ、とりあえず納得するミカン。
「それでミカンさん。ダブルバトルでジム戦をしたいんですが……」
「もちろん構いません。それではどなたから挑戦しますか?」
「はいはーい。俺達からやりまーす!!」
「ちょっと待ってよ、今回は私達から!!」
予想通り、カイリとカグヤがわーわーぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。
「……ジム戦の時は、いつもこうなの?」
「ええ、まあ……」
シロナの問いに答えながら、ため息をつくレイジ。
「……ねえ、レイジ」
「何?」
「たまにはわたしとタッグを組んでみない?」
「えっ?」
突然のヒメカの提案に、レイジはおもわず聞き返してしまう。
「たまには違うメンバーとタッグを組んだ方が新鮮な感じになるでしょ?
それにいつもと違う発見もするかもしれないじゃない」
なる程、とレイジも納得する。
確かにヒメカの言う通り、いつもとは違うメンバーでのダブルバトルも悪くないかもしれない。
なので、レイジも承諾しようとしたのだが。
『ちょっと待ったー!!』
いきなり割り込んできたカイリとヒメカによって、レイジの言葉は完全に遮られる。
「耳元で大きな声出さないでよ、煩いわね」
「勝手に話を進めんなって! それにそういう話ならレイジとは俺が組む!!」
「あっ、じゃあヒメカは私と組もうよ」
「ちょっと、勝手に話を………はぁ、もう好きにしなさい」
反論しようとしたヒメカであったが、この2人に言ったところで無駄な体力を消費するだけだと悟り、やめた。
それに、別にカグヤとタッグなのには反対する気などない。
「よし、てなわけでまずは俺とレイジから」
「ダーメ、まずは私とヒメカからだよ!」
「どっちからでもいいから、ジャンケンでもして決めろ!!
これ以上あーだこーだ言うならリオンで踏みつぶすぞ!!」
いい加減キレたのか、マジでリオンを出しそう叫ぶレイジ。
『すみませんでした』
この人本気だ、瞬時にそう理解した2人は土下座でレイジに謝る。
(レイジくん、怒ると恐いのね……)
(ああいうタイプほど、怒らせてはいけないって聞いた事あるけど……本当みたい)
………。
そして、ジャンケンの結果はというと。
「それではこれより、レイジ選手、カイリ選手対ジムリーダーのミカン選手によるジム戦を開始します」
審判のこの言葉からでもわかるように、レイジとカイリのチームからの挑戦となった。
「レイジ、頑張れー。カイリもついでに頑張ってねー」
「レイジくん、落ち着いてねー!」
いつものように正装という名のコスプレをしているカグヤとシロナを無視しつつ、カイリはボールを取り出す。
(っていうか、俺はついでかよ……)
しかもシロナに至ってはレイジの応援しかしていない。
……なんだか無性に悲しくなった。
「カイリ、どうしたの?」
「いや……別に」
隣に立つ親友に羨ましくなりながらも、諦めようと自分に言い聞かせた。
「――試合、開始!!」
「いきなさい、メタグロス、ハガネール!!」
「リオン、お願い!!」
「出番だぜ、ジャノビー!!」
3人一斉にポケモンを取り出す。
「げっ、ハガネール……」
クチバの事を思い出したのか、まともに表情を変えるカイリ。
「メタグロスか……確か600族っていうんだっけ?」
「……なんだソレ?」
「さあ、でもメタグロスは600族だって聞いた事があるから……」
(意味わかんねぇ……)
「先攻は挑戦者からとなります!!」
「よっしゃ、ジャノビー、メタグロスにはっぱカッター!!」
「リオン、ハガネールにかえんほうしゃだ!!」
ジャノビーはメタグロスに、リオンはハガネールにそれぞれ狙いを定め攻撃を仕掛けた。
「ハガネール、あなをほる!!」
瞬時に地面へと潜るハガネール、当然ながらリオンの攻撃は空振りした。
「飛んで、リオン!!」
大きな翼を展開させ、リオンは地面から離れジャノビーの元へ。
すると、何故かリオンはジャノビーの身体を抱え空へ。
「おい――」
「メタグロス、はかいこうせん!!」
何すんだ、そうレイジに抗議しようとした瞬間。
メタグロスのはかいこうせんが、はっぱカッターを易々と貫き先程までジャノビーの立っていた場所へと当たり爆発した。
「……わりぃ」
「気にしないで、それよりあのメタグロス……やっぱり強い」
生半可な攻撃は通用しないだろう、リオンのパワーでも届くかどうかわからない。
「ゴウカザルを出した方がよかったかな……」
ジャノビーではパワー不足だ、おまけにメタグロスとはタイプ的に不利でもある。
「そう思うなら、どうしてゴウカザルを出さなかったの?」
「いや、ジャノビーが出たそうだったから……」
「………なる程ね」
エンジュでの戦いで役に立てなかった事を気にしているのか、そう思うとついつい苦笑を浮かべてしまう。
しかし、使用ポケモンが一体だけならば、今更変更などできない。
それに……いくらジャノビーがゴウカザルに比べてパワー不足だとしても、勝敗がそれで決まるわけではないのだ。
「ハガネール!!」
「っ!!」
地面から勢いよく飛び出すハガネール。
その長い身体を生かして、リオン達を拘束しようとするが。
「カイリ!!」
「おう! ジャノビー、ハガネールに飛び乗れ!」
「えっ!?」
指示を受け、リオンはハガネールの背後に回りジャノビーを放す。
重力のままに落下し、そのままジャノビーはハガネールの背に。
「リーフブレード!!」
すぐさま、その無防備な背中にリーフブレードを叩き込む―――!
だが、硬い音と共に弾かれてしまった。
「っ、硬すぎだろ!!」
「ほのおのパンチ!!」
急降下し、リーフブレードを受けた背に炎を纏った拳を叩き込むリオン。
効いたのか、ハガネールからくぐもった悲鳴が上がる。
「ジャノビー、リオンが攻撃した場所にエナジーボール!!」
再び攻撃を仕掛けると、ハガネールの硬い身体を貫きダメージを与える事ができた。
「上手い! 同じ箇所を集中攻撃させて届かせたんだ!!」
「あの2人、即席なのに随分息が合ってるわね」
「あれ、シロナさん知らなかったんですか?
レイジとカイリ、よく他のトレーナーとダブルバトルをしていまだに負け知らずなんですよ?」
「……なる程ね」
「ハガネール、アイアンテール!!」
ダメージを負いながらも、ジャノビーへとアイアンテールを仕掛けるハガネール。
しかし間一髪で再びリオンがジャノビーを抱きかかえ難を逃れた。
「メタグロス、はかいこうせん!!」
「っ!?」
それを見越していたのか、地上からリオン達へとメタグロスのはかいこうせんが放たれる―――!
「避けて!!」
技を出す暇はない、レイジはすぐさまリオンへそんな指示を出すが。
右の翼にはかいこうせんが命中し、きりもみしながら落下していくリオンとジャノビー。
「ハガネール、しめつけなさい!!」
「っ、リオン!!」
迫るハガネール。
避けきれないと悟ったのか、リオンはジャノビーを腕から放し――ハガネールの巨体に拘束される。
「やべえ!?」
拘束され、苦しげな声を出すリオン。
「サイコキネシス!!」
「っ、しま―――っ!?」
気づいた時には遅く、サイコキネシスによってジャノビーの身体が宙に浮かんだ。
「トドメです。コメットパンチ!!」
動けないジャノビーに向かって、コメットパンチを放とうと向かっていくメタグロス。
「ジャノビー、どうにか抜け出してくれ!!」
そう叫ぶカイリだが、ジャノビーは少し身体を身じろがせるだけで、サイコキネシスの拘束からは逃れられない。
「っ、リオン!!!」
レイジの声を聞き、どうにかハガネールの身体から抜け出そうと力を込めるリオン。
しかし、全力でもビクともしない。
「無駄です。ハガネールからは逃れられません」
「……どうかな?」
不敵に笑うレイジ。
ミカンがその言葉を理解するより早く。
「リオン、特訓の成果を見せてやれ!!
――フルパワーでフレアドライブだ!!!」
〈うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!〉
リオンの身体が激しい炎に包まれる。
その勢いは止まらず、やがて赤い炎は蒼色へと変化した。
あまりの高熱に耐えきれなかったのか、自ら拘束を緩めるハガネール。
「今だ!! そのままちきゅうなげ!!」
その一瞬を逃さず、フレアドライブを展開したままハガネールの身体から脱出し、そのまま尻尾を掴み――なんと、あの巨体を空中へと持ち上げてしまう。
「なっ――!?」
これには、さすがのミカンも驚きを隠せなかった。
「メタグロスに投げつけるんだ!!」
雄叫びを上げ、ジャノビーに迫るメタグロス目掛けてハガネールを投げつけるリオン。
動きが鈍重なメタグロスに避けられるはずもなく、ハガネールに身体を巻き込まれフィールドの端まで吹き飛ばされてしまった。
それと同時に、ジャノビーの拘束も解かれる。
「うはぁ……リオン、すげぇパワーだな……」
オーバードライブを使った時のゴウカザルといい勝負かもしれない。
ゴウカザルがオーバードライブで自身を強化させたように、リオンもフレアドライブを攻撃技としてではなく自身のパワーを上げる為に使ったのだろう。
「カイリ、リオンはもうあまり保たない!」
「わーってるよ!」
はかいこうせんにハガネールの締め付け、更にフレアドライブの反動ダメージを受けたのだ、もはやリオンに戦う力はあまり残されてはいない。
「レイジ、リオンはまだ飛ぶ力は残ってるか?」
「えっ……ま、まだ大丈夫みたいだけど」
「よし、ならジャノビーを掴んでおもいっきりメタグロス達に投げてくれ!!」
「はぁっ!?」
おもわずバトルの最中なのにカイリの顔を見てしまうほど、彼の言っている事が理解できなくなったレイジ。
しかし、カイリはまるでふざけた様子もなく大真面目な表情で言葉を続けた。
「頼むぜレイジ、意味がわかんねぇかもしれねえが今は俺を信じろ!!」
「…………」
正直、カイリの意図はわかりかねる。
しかし……彼が何の考えもなしにそのような事をするわけもない。
「――リオン、もう少し頑張って」
〈当然だ。必ず勝つからお前は安心して指示を出してればいいさ〉
ニヤリと笑うリオンに、レイジも笑みを返す。
「よっしゃ、頼むぜレイジ!!!」
「リオン、ジャノビーを掴んで飛んでくれ!!」
苦悶の表情を浮かべながらも、リオンはジャノビーを抱きかかえメタグロス達の元へと向かっていく。
「メタグロス、サイコキネシス!!」
「避けるんだ!!」
メタグロスのサイコキネシスを回避しながら、リオンは少しずつ間合いを詰めていきそして――
「今だ。上空に飛んでジャノビーをハガネールに向かって投げつけるんだ!!」
天井ギリギリまで飛翔するリオン、そのまま指示通りにジャノビーをハガネール目掛けておもいっきり投げつける―――!
まるで弾丸のようなスピードで、ハガネールへと向かっていくジャノビー。
「アイアンヘッドで撃ち落としなさい!!」
しかし真正面からならば好都合、ハガネールのパワーで撃ち破ろうと指示を出すミカン。
瞬間――ジャノビーは両腕を前方に交差させた。
(あの技は………!)
それを見て、ヒメカは気づいた。
何故カイリはジャノビーをリオンに運ばせたのか、そしてハガネールへと向けて投げつけたのかを。
全ては、この技で勝利する為に。
「ジャノビー、リーフブレイカーだ!!!」
前方にリーフブレード、そして周りにリーフストームを展開させたジャノビーが、真っ向からハガネールとぶつかり合う。
通常ならば、如何にリーフブレイカーといえどもハガネールのパワーには適うわけがない。
ない、のだが……。
「そんな………!?」
驚愕の声は、ミカンから放たれた。
――ハガネールのアイアンヘッドが、ジャノビーのリーフブレイカーに圧されている。
純粋なぶつかり合いで、ジャノビーがハガネールに勝っているのだ。
「――なる程。リオンのパワーでジャノビーを投げた勢いを利用しているのね」
そう、カイリが何故リオンにそのような事を頼んだのか。
ジャノビー最強の技であるリーフブレイカーでも、ハガネールやメタグロス相手にはどうしてもパワー不足で押し負けてしまう。
だからこそ、普通に向かっていくのではなく、上空からリオンに投げてもらいそのパワーを上乗せしたリーフブレイカーで勝負に出たのだ。
「っ、メタグロス!!」
「させないよ」
すぐさまメタグロスにフォローさせようとするミカンだが、それを読んでいたリオンがすぐさま間合いを詰めた。
それに気づいたミカンであったが、時既に遅く。
「ほのおのパンチ!!」
まるでスカイアッパーのように、ほのおのパンチを下段から上段に向けて打ち放つリオン。
重いメタグロスの身体が、宙に浮かぶ。
すぐさま跳躍し、あっという間にメタグロスを追い抜き。
「ブレイズキック!!」
踏みつけるかのように、メタグロスの頭にブレイズキックを叩き込み再び地上へと叩き落とす。
「トドメのちきゅうなげだ!!」
急降下し、メタグロスの脚を掴み上げ力任せに一回転させ、今度こそ地面へと叩き付けた―――!
凄まじい衝撃により、地面にクレーターができあがり——メタグロスは戦闘不能に陥りそして。
〈レイジ、あっちも終わったみたいだぜ〉
「そうみたいだね……」
リオンの言葉に頷きを返し、視線をある方向に向ける。
するとそこには……目を回し戦闘不能になったハガネールを勝ち誇った顔で見つめている、ジャノビーの姿があった。
………。
「やったー!!」
カグヤの歓喜の声と共に、バトルの終了を告げる審判の声が耳に入る。
「――負けて、しまいましたね」
そう告げるミカンだが、その表情はやりきったものが見える。
「やったぜレイジ!!」
「うん」
ハイテンションになっているカイリと、その場でハイタッチを交わす。
と――突然ジャノビーの身体が光に包まれていった。
「こいつはもしかして………!」
そして、カイリの予想通り光が収まった後……。
進化を遂げ、ジャノビーがジャローダに変わっていた。
「やったぜジャノビー……じゃなかった、ジャローダ!!」
おもわずジャローダに抱きつくカイリ。
ジャローダは少々呆れたような顔をしているが、すぐさま顔をカイリへとすり寄らせた。
「リオン、お疲れ様」
〈おう。けどまあ……相手もなかなか強かったぜ。まっ、俺の敵じゃなかったけどな〉
自信満々なリオンの言葉に苦笑しつつ、きずぐすりで治療していくレイジ。
「とてもいいバトルでした、それではこれを受け取ってください」
そう言ってミカンが渡してきたのは、スチールバッジ。
「おしっ、これでポケモンリーグに出場できるようになったな!!」
「うん………!」
とりあえず、出場権となるバッジは4つ集まった。
解決しなければならない問題もあるが、これでひと安心だ。
「カグヤさん、ヒメカさん。すぐにジム戦を始めますか?」
観客席にいるカグヤとヒメカにそう声を掛けるミカン。
「いいんですか?」
「もちろんです。尤もそちらがよろしければですけど……」
それは願ってもないチャンスである、2人は立ち上がりすぐさまバトルフィールドへと……。
「カグヤ、ちょっと待ちなさい」
「………?」
「…………お願いだから着替えてきて」
――かくして、ジム戦は後半へと続く。
To.Be.Continued...