ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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レイジとカイリのコンビは、見事ミカンに勝利する事ができた。
続いてカグヤとヒメカのコンビだが……果たして彼女達はバッジを取得する事ができるのであろうか。


第34話 VSミカン ~根性クチート出現!?~

「――それではこれより、カグヤ選手とヒメカ選手対、ジムリーダーのミカン選手によるジム戦を開始します」

着替えを終え、フィールドに立つカグヤ。

「よーし、頑張ろうねヒメカ!」

「ええ。足を引っ張らないでよ!」

両者、ボールを構える。

 

「カメックス、レディーゴー!!!」

「ヒノ、行きなさい!」

カグヤはカメックスを、ヒメカはヒノをフィールドに出す。

 

「エンペルト、ジバコイル――」

ミカンもボールを2つ取り出し、フィールドに出そうとした瞬間。

いきなり別のボールからポケモンが飛び出してしまった。

「あ」

「は?」

「ええっ!?」

上からカグヤ、ヒメカ、ミカンの順番で声を上げた。

ミカンはエンペルトとジバコイルをフィールドに出そうとしたのだが……あるポケモンが勝手にフィールドへ出てしまう。

 

「わっ、凄いキバ……でも顔は結構可愛いね」

「あのポケモンは……」

「こらクチート、勝手に出てきたらダメじゃない!!」

別のボールから出てきたポケモン——クチートにボールを構えるミカン。

赤い光がクチートをボールの中へと戻そうとするが……ひょいと避けられてしまう。

 

「ちょ、この、このっ」

何度も放つが、その度にクチートは完全におちょくった動きで避け続ける。

「何だよ、あのポケモンは……」

「クチート、あざむきポケモンって呼ばれてるはがねタイプのポケモンだよ」

「そうじゃなくて、全然ミカンさんの言うこと聞いてねえじゃん……」

「確かにね……」

 

しかし、クチートからすれば遊んでいるだけなのだろう、無邪気な笑顔を見ればすぐにわかる。

とはいえ今はジム戦をやっているのだ、状況が状況なだけにこのままクチートを出したままにはしておけない。

ミカンもそう思っているからこそ、クチートをボールに戻そうと躍起になっているのだろう。

しかし、完全に読んでいるのかクチートは悉くボールから放たれる赤い光を避けていく。

 

「……何なのよ、あれ」

ミカンとクチートの茶番を見せられ、ヒメカは呆れたようにため息をつく。

「……あの子、もしかして私達とバトルしたいんじゃないかな?」

「えっ?」

「だから勝手に出てきたり、ボールに戻ろうとしないんじゃない?」

根拠はない、しかしなんとなく……本当になんとなくだがそう思えたのだ。

だから、いまだにピョンピョンと飛び回っているクチートに、カグヤは声を掛けた。

 

「ねえクチート、もしかして私達とバトルしたいの?」

「………クゥ?」

飛び回るのを止め、チョコチョコとカグヤの元に近寄るクチート。

「違うかな? あなた、私達とバトルしたいんじゃないの?」

もう一度訪ねる。

すると、クチートはにぱっと笑みを浮かべ大きく頷いた。

 

「やっぱり……」

「……あなたも、ポケモンの言葉がわかるの?」

「そんなんじゃないよ、ただレイジの傍に居たからなんとなくわかるようになっただけ。

 ミカンさん、そっちがよければこのクチートと戦わせてくれませんか?」

「えっ………でも、そのクチートは私のポケモンではないんです」

「そうなんですか?」

「はい。この子はいつの間にかこのジムに現れるようになった野生の子で、はがねタイプだったものですからバトルをしてゲットしたのです。

 でもこの子、全然言うことをきいてくれなくて……」

「はー、なる程……」

それは困った、しかしこのままボールに無理矢理戻すのは可哀想だ。

 

「ねえクチート、このジム戦が終わってからならバトルできるよ?」

だから待っててくれないかな? そう告げるカグヤだが、クチートはふるふると首を振って拒否してきた。

どうやら、今すぐにバトルをしたいらしい。

ワガママなクチートにカグヤも困り顔を浮かべていると。

 

「エンペルト」

突然、ミカンがエンペルトをフィールドに出す。

「ミカンさん?」

「――仕方ありません。無視してジム戦を邪魔されても困りますから、このままバトルと行きましょう」

しかし、とミカンは心の中で首を傾げた。

確かにクチートは自分の言うことはあまり聞こうとはしない、だが絶対にジム戦を邪魔するような事はしなかった。

……もしかしたら、カグヤかヒメカを気に入ったのかもしれない。

 

「よかったね、クチート」

「クゥ!!」

嬉しそうに一声鳴き、カグヤの手にかぶりついた。

「いたたたたたっ!!」

クチートからすれば甘噛み程度かもしれないが、マジで痛い。

 

「こ、こらクチート!」

ミカンに叱られ、渋々カグヤから離れエンペルトの隣へ。

「……大丈夫?」

「いたた……ぅん、大丈夫大丈夫」

ありがとう、と言ってくれたのか。やはりレイジでないとわからない。

 

「で、では試合を開始します。先攻は挑戦者から!!」

「ヒノ、クチートにかえんほうしゃ!!」

「カメックス、エンペルトにロケットずつき!」

それぞれ自分の戦い易い相手を選び、攻撃を仕掛ける。

 

「エンペルト、アクアジェットで迎え撃って。クチート、まもる!」

指示を受け、エンペルトはカメックスと真っ向からぶつかり合う。

しかし、クチートはまもるではなく……ヒノと同じくかえんほうしゃを放ち相殺させた。

 

「おいおい、勝手に戦ってるぞあのクチート」

「ずいぶんと自己中心的というか……ちょっと無邪気すぎるね」

相殺させた後、クチートは標的をカメックスへと変え――勝手にアイアンヘッドを仕掛けた。

「カメックス、こうそくスピン!!」

別の方向からの攻撃に対処するため、カメックスは手足と首を甲羅の中にい引っ込め、その場で回転する。

弾かれるクチート、その隙を逃さずヒノが迫った。

 

「かえんぐるま!!」

身体を丸め、炎に包まれながらクチートに体当たりするヒノ。

吹き飛ばされ、フィールドの端で倒れるクチート。

「カメックス、れいとうビーム!!」

「エンペルト、メタルクロー!!」

クチートに追い討ちを仕掛けようとしたカメックスだったが、その前にエンペルトの攻撃を受けてしまう。

エンペルトのパワーは凄まじく、巨体であるカメックスが倒れはしなかったもののフィールドの一番後ろまで吹き飛ばされてしまった。

 

「クチート、チャージビーム!!」

指示を出すが、クチートはチャージビームを放たずに真っ直ぐヒノへと向かっていく。

そんなクチート目掛けて、かえんほうしゃを放つヒノ。

「クチート!!」

しかし、クチートは右足を使い横に跳びかえんほうしゃを避け、着地と同時に大きく踏み込む。

そして、頭にある大きなキバで文字通りヒノに噛みついた―――!

 

「ヒノ!?」

丸呑みしてしまうほどの勢いで、クチートはヒノを噛み続ける。

「カメックス――」

「エンペルト、はがねのつばさ!!」

フォローに回ろうとした瞬間、エンペルトの攻撃がカメックスを大きく吹き飛ばした。

 

「やべえな、アレ」

「あのクチート、自由に戦ってるけど随分バトル慣れしてるわね」

観客席にいるカイリもシロナも、知らず拳を握りしめながら観戦していた。

そんな中、レイジだけは静かにカグヤ達のバトルを眺めている。

(カグヤ、ヒメカ、これからどうする……?)

 

「カメックス、ヒノを助け出して!!」

「させません。エンペルト、シャドークロー!!」

どうにかクチートの元へと向かおうとするカメックスだが、そうはさせまいとエンペルトが立ちふさがる。

「カグヤ、こっちはこっちでなんとかするから、あなたはエンペルトを何とかしなさい!!」

「で、でも……」

なんとかする、そうは言ってもあの状況ではどうにもならないのではないか。

そんな視線を向けると、ヒメカは不敵な笑みを彼女に向けた。

 

「なんとかしてみせるわよ、気合いを入れればどうにでもなるわ!!」

「…………」

気合い、そんな言葉がまさかヒメカの口から飛び出すとは……。

……でも、そこまで言われたならこれ以上の問答は不要だ。

 

「――エンペルトを倒すまでになんとかしないと、私のカメックスが二体とも倒しちゃうよ?」

「言ってなさいよ。――こっちの準備は終わってるんだから」

『えっ?』

ヒメカの言葉に、ミカンとカグヤは揃って声を出す。

その意味を理解する前に、ヒメカは勝負に出る。

 

「ヒノ、そのままフルパワーでだいもんじ!!」

 

「ええっ!?」

「っ、クチート!!」

ミカンがクチートを呼んだ瞬間。

爆発音と共に、クチートの頭にある大きなキバから煙が上がる。

その中から、所々火傷しているヒノが勢いよく飛び出してきた。

 

「うわっ……強引だなヒメカの奴」

「カイリみたいだね」

「ええっ、俺あんな無茶な事するか?」

「突撃思考だからね、君は」

「ひでえ……」

そうこう話しているうちに、ヒメカは次の指示を出す。

 

「かえんほうしゃ!!」

「エンペルト、ハイドロ――」

「のしかかり!!」

ハイドロポンプを放とうとしたエンペルトの身体に、カメックスの巨体がのしかかる。

 

――放たれるヒノのかえんほうしゃ。

 

だいもんじによるダメージが大きかったのか、避ける事ができずにダメージを受けるクチート。

「よし―――っ!!?」

終わった、そう思ったヒメカであったが。

弱点であるだいもんじとかえんほうしゃをまともに受けながらも、クチートは立ち上がった。

その瞳には、先程よりも更に強い闘志が宿っている。

 

「す、すげえ根性だなあのクチート……」

「負けたくないんだ。それに……こんな楽しいバトルは初めてだから、終わらせたくないんだよ」

そんなクチートの感情が、ここまで伝わってくるのだ。

(さて……まだ勝負はわからないぞ)

 

「エンペルト、抜け出しなさい!!」

逃れようと暴れるエンペルトだが、逃がすまいと力を入れるカメックスからは逃げられない。

「なら、ギガインパクト!!」

「カメックス、掴んで上に放り投げて!!」

ギガインパクトが発動する瞬間、カメックスはエンペルトの身体を両腕で掴み、空高く放り投げた。

空中ではエンペルトも身動きがとれず、ギガインパクトも不発に終わる。

「今よカメックス、そのままげきりん!!」

全身で力を溜め、落ちてくるエンペルトを迎え撃つ。

そして——凄まじいまでの連打がエンペルトに襲いかかった―――!

 

一撃、二撃、三撃、四撃………!

エンペルトに反撃する余地はなく、げきりんの餌食になっていく。

 

「これで――ラスト!!」

五撃目が入り、エンペルトは地面へと倒れ込んだ。

動く気配を見せず、その様子は戦闘不能になった何よりの証。

「エンペルト、戦闘不能。ヒノアラシ、カメックスの勝ち!!!」

「よしっ!!」

これで残るはクチートのみ。

絶対的有利になったものの、まだまだ油断はできない。

カメックスもヒノもダメージを受けていないわけではなく、カメックスに至ってはげきりんの影響で今は混乱状態だ。

 

「カメックス、早く正気に戻って!!」

そう叫ぶカグヤだが、カメックスはふらふらとおぼつかない足取りでよくわからない動きをするのみ。

「ヒノ、もう一度かえんぐるまよ!!」

未だ動く事ができないクチートに向かって、かえんぐるまを放つヒメカとヒノ。

「クチート、避けて!」

そう指示を出すミカンだが、まともクチートは指示を利かずに真っ向からヒノを迎え撃った。

ぶつかり合う両者。

しかし……なんとクチートは、ヒノのかえんぐるまをその両手で完全に受け止めてしまっていた。

 

「うわぁ……凄いねあのクチート」

「感心してないで攻撃して」

「そだね。――カメックス、れいとうビーム!!」

ヒノに当たらないようにれいとうビームを放ち、クチートの脚を凍らせる。

その隙に、クチートから離れるヒノ。

 

――それで終わりだ。

 

「ハイドロカノン!!」

カメックス最強の技であるハイドロカノンが見事クチートに命中し——そのまま倒れ込んだ。

「クチート、戦闘不能。ヒノアラシ、カメックスの勝利!!

 よってこの試合、挑戦者であるカグヤ選手とヒメカ選手の勝ち!!」

「ふぅ……」

安堵のため息を漏らすヒメカ。

カグヤはというと、いつものように嬉しさを表現するようにその場で飛び跳ねていた。

 

「二連敗というのはやはり悔しいですね、ですがとても良いバトルでした。

 それでは、スチールバッジを受け取ってください」

「あ、ありがとう―――」

カグヤがミカンからスチールバッジを受け取ろうとした瞬間、横から誰かがバッジを奪ってしまった。

「あっ……」

「えっ!?」

すぐさま視線をそちらに向けると……クチートが、カグヤの分のバッジを手に持っていた。

 

「こら、クチート!!」

バッジを取り戻そうとミカンが近づくが、クチートは逃げるようにカグヤの後ろへ。

「クチート、いい加減にしなさい!」

ミカンが本気で怒ろうとするが、そんな彼女をカグヤは止める。

そしてしゃがみこみ、視線をクチートに合わせ口を開いた。

 

「ねぇクチート、どうしてバッジを奪ったりしたの?

 もしかして負けて悔しいから?」

カグヤの問いに、クチートはふるふると首を横に振る。

「じゃあ、どうして?」

もう一度問いかけるが、今度は答えず俯いてしまった。

「レイジ、通訳よろしく」

「僕は翻訳家じゃないよ。まあいいけどね……。

 クチートはカグヤと一緒に居たいみたいだよ、だから行ってほしくないんだって」

「えっ……」

再び、視線をクチートへと向ける。

自分の願いを理解してもらえたからか、笑みを浮かべ何度も頷くクチート。

 

「……クチート、カグヤさんと一緒に行きたいの?」

そんなクチートの態度を見て、ミカンがそう問いかけると……力強く頷かれてしまった。

「……カグヤさん、クチートもそう言っているみたいですし……この子を一緒に連れて行ってはくれませんか?」

「えっ……それはいいですけど、いいんですか?」

「この子、カグヤさんの事を気に入っているみたいですし……なら、ここにいるよりこの子の為になります」

「…………」

カグヤとしては反対する理由などない、むしろ自分の戦力が増えるのはありがたかった。

 

「……クチート、私と一緒に行く?」

「クゥ!!」

満面の笑みを浮かべ、カグヤの手……というか腕に噛みつくクチート。

「いたたたたっ!!?」

「うわっ、マジで痛そうだなあれ……」

「あれがクチートの愛情表現なんだよ、多分ね」

 

………。

 

「――痛いよぉ」

「はいはい、わかったから。……これでポケモンリーグに出場できるね」

「そうだな。じゃあ早速カントーに帰るとするか」

「あっ、ここからじゃカントー地方へは行けませんよ」

「はぁっ!?」

突然のミカンの発言で、全員の視線が彼女に向けられる。

 

「実は定期船が故障してしまいまして……ですから、海沿いに東へ行った場所にあるアーリアタウンに行かないと、カントーへは行けないんです」

「アーリアタウン?」

聞いた事がない街だ、ジョウト地方の街はあらかた覚えていたのだが……。

「元々は小さな港町だったんですけど、アサギシティが大きくなるにつれ今のアーリアタウンができあがったんです。

 今の時期ならちょうど海の守り神様を祝福するお祭りが行われていますよ」

「海の守り神……?」

「はい。アーリアタウンは古くから海の守り神様を守る為に存在している場所らしくて……年に一度、その神様を崇める為のお祭りが開かれるそうなんです」

「お祭りかぁ……」

ミカンから話を聞き、カグヤとカイリの瞳が輝き出す。

 

「…………」

「レイジくん、どうかしたの?」

「あ、いえ……」

シロナにそう返しながらも、レイジは思考に耽る。

(海の守り神……どこかで聞いた事があるような気がする。

 それに……何だ、この禍々しい気配……いや、そんな表現じゃ追いつけない、漆黒に満ちた何かを……アーリアタウンの方角から感じる……?)

しかし、それが何なのか今のレイジには理解できなかった。

 

「よーし、それじゃあ早速アーリアタウンに向かおうぜ!!」

「その前にポケモンセンターでわたしとカグヤのポケモンを休ませてからよ」

「レイジ、行こっ?」

「………うん」

カグヤ達と共に、ジムを後にするレイジ。

 

(……この感覚は、一体なんだ?)

 

 

 

正体不明の感覚に戸惑いながら、彼は仲間達とともに次なる目的地を目指す。

 

――自分達の身に、何が起こるかも知らずに。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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