ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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――運命が、レイジにある出会いを齎す。

否、それは出会いではなく……再会だ。
……悪魔との、再会であった。


第37話 対峙〜現れる驚異・有り得ぬ再会〜

「――まだ見つからんのか?」

ルギアに手傷を負わせて1日が過ぎた。

しかし、いまだルギアをいまだ見つける事ができないでいた。

「申し訳ありませんロキ様、こちらもレーダーで探知しているのですが……」

「ふむ……」

途中で息絶えたとは考えにくい、だとすればどこかでチャンスを窺っているか……それとも怪我の治療をしているのか。

どちらにしろ、厄介な事になりそうだ。

 

――けたたましい警鐘が鳴り響く。

 

「ロキ様、ルギアの反応が!!」

「来たか……モニターに映せ」

巨大なスクリーンが現れ、前方からこちらに向かってくるルギアの姿を確認するロキだったが。

(……傷を負っていないだと?)

ルギアの身体には傷一つなく、まるで何事もなかったかのようだ。

仕損じたか、一瞬そう思ったがその可能性はありえない。

魚雷が命中した事は確認できたし、なにより本当に命中していないなら今の今まで隠れていた意味などないはずだ。

 

「高エネルギー反応、来ます!!」

「バリアを張れ」

冷静に指示を出し――そのすぐ後に船内で衝撃が走る。

(エアロブラスト……ルギアにしか使えぬ技か、なるほど……確かにたいした威力だ)

しかし、この艦のバリアを突破する事はできなかったようだ。

 

「バリア損傷率14%、問題ありません」

「――浮上しろ」

「は……?」

「ルギア相手に同じ手は通じん、浮上して迎え撃つ」

「し、しかし……並のデッドポケモンではルギアを捕らえる事など……」

「その心配なら無用だ、私自らがルギアを捕らえる」

「ロ、ロキ様自らがですか……?」

「ルギアを甘く見ていた、二度も逃がすわけにはいかん。浮上しろ」

「は、はい!!」

 

指示を受け、潜水艦はゆっくりと浮上していく。

そして海の上に出て、艦上へと移動するロキ。

その時には既に、ルギアが睨むようにロキと対峙していた。

 

「さすがだなルギア、どうやって傷を癒やしたのだ?」

「……お前達は何者だ? 私を捕らえて何をするつもりだ」

「質問を質問で返すのは感心せんな、なに……ただお前という存在は希少価値がある。

 だから捕らえる、それだけの話だ」

「バカな……ただそれだけの理由でだと?

 ――今すぐ消えろ、もう二度と私の前に現れぬのならば今の言葉は忘れてやる」

「優しいなルギア、私のような救いようのない小物相手にそのような事を言うとは……。

 だが、我等とてお前を捕らえる為に色々と準備をしてきたのだ、今更帰れなどと言われても素直に帰る事などできんよ」

「お前達は私達のような存在を何だと思っているのだ?

 一方的に私達を蹂躙するなど、許される事ではない」

「それはお前が決める事ではないぞルギア、無駄な抵抗はやめた方が身のためだ」

「……それはこちらの台詞だ、まさか人間が私に適うとでも思っているのか?

 先程の兵器も、もはや私には通用しない!!」

 

だから去れ、そんな意思を込めロキを睨むルギア。

その迫力は常人など腰を抜かしてしまうほどであったが、ロキは不敵な笑みを消そうとしない。

 

「わかっているさ、だからこそ私が出てきたのだ」

懐から2つのデッドボールを取り出すロキ。

「無駄な殺生は好まぬ、早く去れ!!」

「フッ……たいした自信だな。しかしお前は忘れたのか?」

 

―――伝説と呼ばれる存在は、お前だけではない。

 

そう告げ、デッドボールを空へと投げる。

黒い光を放ちながら、中から出てきたポケモン達は……。

 

「殺すなよ。だが徹底的に痛めつけろ――――ラティオス、ゾロアーク」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「っ、は………!」

跳ねるように、ベッドから起き上がるレイジ。

「っ、っ、ぐっ……」

喉元までせり上がってくる不快感に、身体を震わせる。

(何、だ……!?)

感じた、確かに感じたのだ。

凄まじいまでの力と、気が遠くなるほどの闇を。

そして――その中心にルギアがいる事に。

 

〈お父様!!〉

〈父上!!〉

ボールから飛び出してくるティナとアクセル。

「……ティナ、アクセル、君達も……?」

〈はい、悪しき波導を……しかし、これだけ禍々しいものを感じたのは初めてです〉

〈禍々しさだけじゃない……こんなにも空っぽで、何もない心は……何なのでしょうか?〉

「わからない……とにかく、確かめないと」

頭を振って思考を戻し、急いで着替えて部屋を出る。

 

「いたたたたっ!!」

出た瞬間、クチートに腕を噛まれたカグヤの姿が視界に入った。

「……クチート、やめてあげなさい」

そう言いながら、玄関へと向かう。

「助けてくれないの!?」

後ろからそんな声が聞こえたが、今はそれに構っている暇はない。

 

〈――1人で行こうとするな〉

「っ、ルカリオ……」

外に出ようとして、ルカリオに止められる。

〈やはり気のせいではなかったようだな……。レイジ、この波動は一体何だ?〉

「わからない……でも、早くそれを確かめないと」

確かめなければ、手遅れになってしまう。

何故か、レイジにはそう思えたのだ。

 

〈……わかった。だが1人で行こうとする事は許さん。

 シロナ達を呼んでくるから、ここで少し待っていろ〉

そう言い残し、屋敷の奥へと消えるルカリオ。

〈お父様、確かにルカリオの言う通りお一人で行くのは危険です〉

「わかってる、でも……」

〈焦りは己の身を滅ぼすだけです、お気持ちはわかりますが落ち着いて〉

「…………」

ティナに言われ、納得はできないがその場で待つ事に。

 

――程なくして、シロナ達がやってきた。

 

「レイジくん、悪しき気配を感じたの?」

「はい………それも、今まで以上に禍々しく不吉な闇を」

「……あの、それは一体どういう事なのでしょうか?」

「それは……」

「走りながら説明するよミカン、それよか急いだ方がいいんじゃないか?

 レイジの第六感、外れた事ないだろ?」

「……うん!」

 

………。

 

海辺に赴く。

まだ朝のせいか周りに人はおらず、海も昨日と変わらず穏やかだ。

 

「……何もおかしな所はないね」

「レイジの第六感が、外れたって事か……?」

(それなら、いいんだけど……)

不快感は消えてくれない。

それに、ティナ達の表情も強張っている所を見ると、やはりこの感覚は外れてはいないようだ。

 

〈――父上、海の向こうから感じられます〉

〈肉眼じゃ確認できないが、強い波導を持つ者達が戦っているようだぞ〉

「海の向こう……」

「……もしかして、ルギアかしら?」

「わかりません。でも……その可能性は限りなく高いと思います」

「―――どわっ!?」

 

いきなり素っ頓狂な叫び声を上げるカイリ。

一体何が、視線をそちらに向けると……。

 

「お、おい……カノン、どうした?」

カノンが勝手にボールから飛び出し、海の向こうに視線を向けていた。

しかし、その表情はなんだかおかしく、まるで信じられないものを見てしまったかのような……。

 

「そんな…でも、この感じは……」

「カノン?」

「っ」

いきなり海に向かって飛んでいくカノン。

「あっ、お、おい!!」

「カイリ、追うよ!!」

ボールからリオンを取り出し、すぐさま背中に乗る。

慌ててカイリも背中に乗り、すぐさまカノンの後を追った。

 

「アクセル、ティナ。君達はボールの中に入っててくれ!!」

ティナ達をボールの中に入れた後、前方へと向き直る。

「カグヤ、ヒメカ、ミカン。私達も追いましょう」

「はい!!」

 

「ミカンは私のガブリアスに!」

「わ、わかりました。でも……カノンさん、一体どうしたのでしょうか……?」

「わからない。でも……なんだか様子がおかしかった」

「何か、確かめようとしてるような……」

「行けばわかるか。……それにしてもカノンもリオンも飛ばしすぎよ!」

こっちもかなりスピードを出しているが、ついていくのがやっとだ。

 

「……カノンの奴、どうしたってんだ……?」

「……カイリ、いつでもポケモン達を出せるようにしてて」

「へ? な、なんでだよ?」

「いいから。……リオン、万が一に備えておいてね」

〈……わかった〉

杞憂で終わってくれればいい、そう信じたいものだが……。

 

――やがて、複数の影が見えてきた。

 

「あれは……ルギアじゃねえか!?」

(やっぱり………!)

 

杞憂では終わってくれなかった、レイジの思った通りルギアは何かと戦っている。

数は二体、おそらくデッドポケモンだろう。

近くには巨大な潜水艦が浮かんでおり、艦上には1人の男が鑑賞するように戦いを眺めている。

彫りの深い顔立ちに、少し藍色がかった黒髪と黒い瞳。

しかしその瞳には……底知れぬ「何か」が孕んでいる。

狂気などの負の感情ではない、しかしあれは……。

 

「――おい、レイジ。あのポケモンは……」

「え―――?」

掠れた声でデッドポケモンの一体を指差すカイリに、レイジも視線を向けて――固まってしまった。

 

「―――ラティオス」

……待て。

では、カノンが急にあのような突飛な行動をとったのは……。

「ん……? ほぅ……ラティオス、ゾロアーク、戻れ」

男の命を受け、ラティオスとゾロアークと呼ばれたポケモン達が素直に戻る。

 

(やはりラティオス……じゃああれは……)

予感が的中した、そう思った時には。

 

「…………兄、さん」

と。

カノンが、細く小さな声でラティオスを呼んでいた……。

 

「っ、やっぱりあのラティオスは……行方不明になってたカノンの兄貴だったのか」

「……レイジ、何故ここに」

「話は後だよルギア、それより……あの男は」

「……私を捕らえようとしている男だ」

「……リオン、あの潜水艦の上に降りて」

言われた通り、艦上へと降り立つリオン。

 

「…………」

「…………」

対峙する両者。

……間近で見ればわかる、この男こそ先程から……否、前々から感じていた闇の正体。

しかし、息が詰まるほどの闇だというのに……男から殺気や敵意などが感じられない。

 

「――お初にお目にかかる、レイジ、カイリ」

「っ」

「てめぇ……なんで俺達の名前を」

「知っているさ。フレアから話は聞いている」

「……じゃあ、あなたが」

「私の名はロキ。ロケット団の総帥という立場に居る男だ」

 

「……兄を、兄さんを返して!!」

「ラティアス、お前もあの時おとなしく我等の所有物となっていれば、ラティオスと共に居られたというのに……。

 今からでも遅くはない、私達の物になれ」

「ふざけんな! カノンの前から勝手な理由で兄貴を奪いやがって……」

「だから今からでも私達の物になれと言っているではないか。

 ラティオスと共に居たいのなら、この上なく良い提案だと思うがね」

「てめぇ………!」

今にも殴りかかろうと拳を握りしめるカイリ。

 

「カイリ、落ち着きなさい」

そんな彼を宥めながら、ヒメカ達も艦上へと着地する。

「ほぅ……これはこれはシンオウチャンピオンのシロナ殿ではないか。

 まさか君のような有名人に会えるとは、光栄だな」

「……今すぐにポケモン達を解放しなさい」

戯れ言には付き合わず、今まで見せた事がない程の厳しい目つきで睨みながら、シロナはロキに告げる。

 

「それはできない相談だな、どうしてもというのならばで……力ずくで止めたらどうだ?」

「上等だ………!」

「―――やれ」

一言ロキが呟くと、艦の中から数多くのデッドポケモン達が飛び出してくる。

レアコイルにドンガラス、ギャラドスにメタグロス等、どれも強力なポケモンばかり。

 

「ラティオス、お前はラティアスの相手をしてやれ」

「……兄さん」

ラティオスは何も言わず、虚ろな瞳でカノンを睨む。

「カノン、戦ってラティオスを元に戻すしかねえ」

「…………」

しかし、カノンはカイリの言葉を否定するかのように、首を振る。

 

「カノン……?」

「で、できません……」

「できないって……何言ってるんだよカノン!

 兄貴を……ラティオスを助けねえと!!」

「それはわかっています、でも……だからって兄と戦うなんて……」

「カノン……」

「ラティオス、はかいこうせん」

「っ、カノン!!」

「え―――きゃああああああっ!!?」

 

カイリの言葉に反応するカノンだったが……。

その時には既に遅く、ラティオスのはかいこうせんをまともに受けてしまった。

 

「カノン!!」

「うっ、く……」

凄まじいダメージに、カノンは苦しげに息を吐く。

「にい、さん……」

「カノン、戦うんだ!!それしかラティオスを救う事は――」

「……マスター、ごめんなさい……私、兄と戦うなんて」

「甘いなラティアス、お前がどんなに呼びかけてもラティオスが応える事などない。

 ――ラティオス、後は自由に戦うがいい。殺しても構わんぞ」

非情な指示を出し、ロキはレイジと対峙する。

 

「あなたは………!」

「――ヒードラン」

デッドボールを取り出し、ヒードランを場に出すロキ。

「お前のリザードンと私のヒードラン、果たしてどちらの炎が勝っているかな?」

「……あなたは、どうしてこんな事をするんですか? あなたの目的は――」

「言葉で語る必要など今はない、ただ勝者と敗者を決めればいい。そうではないか?」

「…………」

わかっていた、こんな男に何を話しても無意味な事くらい。

 

――シロナ達は、他のデッドポケモン達の相手をしている。

 

つまり、今この男と戦えるのは自分だけだ。

「………あなただけは、許さない」

「いいぞ……その怒り、お前の力を見せてみろレイジ」

「リオン、かえんほうしゃだ!!」

特大のかえんほうしゃを放つリオン。

しかし、ロキは。

 

「――ヒードラン、“ひのこ”だ」

 

「――――」

リオンのかえんほうしゃを呑み込み、更にダメージを与えたヒードランの攻撃。

だが、その攻撃は……。

 

「かえんほうしゃを、ひのこで……?」

「そう驚く事ではあるまい、私のヒードランがお前のリザードンの炎に勝っていた。ただそれだけの話だ」

そう、ただそれだけの話である。

しかし、絶対的に威力で劣るひのこでかえんほうしゃを破りあまつさえダメージすら与えるなど、もはや正気の沙汰ではない――!

 

「……この程度か?」

「っ、リオン、フルパワーでブラストバーン!!」

出し惜しみなどしていられない。

このような現実を突きつけられては、大技の連発で打倒するしか手は。

「ヒードラン、だいもんじ」

ブラストバーンとだいもんじがぶつかり合う。

凄まじい爆音と熱風が辺りに巻き起こり……。

 

「―――、ぁ」

煙の先では、全身に大火傷を負ったリオンが、ヒードランの前でなす術もなく倒れている光景が、目に入った。

 

「たいした炎だったが、それでもヒードランにはまだまだ及ばん」

「…………」

「――覇気がないな。しかしなまじ相手の強さを読めるからこそ……絶対的なまでの力を差を感じ取ってしまったか」

聞こえない。

ロキの言葉が、耳に入ってこない。

ただ――この男には勝てないと、他ならぬ自身が理解してしまった。

 

「カノン!!」

「…………」

カイリ達へと視線を向けると、彼等も敗北したのか艦上に倒れたカノンに駆け寄るカイリの姿が。

……絶望的な状況。

何があっても、今の自分達に勝ち目はない。

そう理解した瞬間――レイジはリオンをボールに戻しながらティナを場に出す。

 

「むっ……?」

「みんな、ポケモン達をボールに戻して、早く!」

「えっ……?」

言いながら、ティナのテレポートを使い全員を一カ所に集めるレイジ。

 

――今は、逃げるしかない。

 

悔しいが、この状況では自分達に勝機などは見受けられない。

今は逃げて、次のチャンスに繋げるしか………。

 

「レイジ!!」

「え―――」

ルギアの声が響き、レイジは無意識のうちに上を見上げた。

そこには、自分達に向かってギガインパクトを放つラティオスの姿が……。

「っ、ぐ…あ………!?」

凄まじい衝撃。

身体がバラバラになったかのような錯覚すら感じながら、宙に浮かぶ自分を他人事のように感じつつ……。

 

(みん、な……ル、ギ、ア……逃げ、て……)

レイジは、意識を闇へと堕とした……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――良い判断だが、まだ甘いな」

煙が晴れ、気絶しているレイジを見下ろしながらそう告げるロキ。

「レイジ!!」

「ルギア、この少年達が心配か?」

「貴様………!」

 

殺気立つルギアだが、そこから動く事ができない。

その気になれば、あのような男など打倒できる。

しかし――レイジ達の命を握られている以上、ルギアに迂闊な行動など許されない。

故に、ルギアには己の敗北を認める以外の道は残されていなかった。

それを満足そうに見つめながら、ロキは改めてレイジ達へと視線を向ける。

 

「むっ……?」

しかし、そこにいるはずの者達――カイリとミカン、そしてラティアスの姿が見当たらない。

(あの状況で逃げたのか……? しかし、そんな芸当ができるとは思えんが)

だが、いないものは仕方ない。

ロキはすぐさま部下を呼び出し、レイジ達を連れていくように指示を出す。

 

(さて……一応の成功はしたようだが)

今回は、完全なるこちらの勝利で終わった。

しかし……どこか腑に落ちない。

僅かな違和感を覚えつつも、ロキは勝利に酔うかのように口元に歪んだ笑みを浮かべていた……。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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