ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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レイジとロキ、2人の死闘が幕を開く。
果たして彼は、得たいの知れぬこの男と彼に従うボケモン達に勝利することはできるのだろうか………。


第41話 激突する両者〜譲れないものの為に〜

〈ぐっ………!〉

〈ヌッ………!〉

ティナとエルレイド、両者の死闘は続く。

 

「リーフブレード」

「れいとうパンチだ!」

〈セイ――!〉

〈ハァ――!〉

互いの技は互角、威力もスピードも現時点ではまったくの互角だった。

 

〈お父様、わたくしよりリオンを!!

 あちらはお父様の指示がなければきっと勝てません!!〉

「っ、でも………!」

〈わたくしなら心配しないでください、何年お父様と共に戦ってきたと思っているのですか?

 ――この程度ならば、わたくしだけで充分ですよ〉

「大きく出たなサーナイト。――エルレイド、私の指示無しで戦え」

〈――御意に〉

短く返し、ティナとの間合いを詰めるエルレイド。

 

〈お父様、わたくしを信じてください!!〉

言いながら走り、エルレイドのリーフブレードをかみなりパンチで受け止めるティナ。

「……わかった。無茶だけはしないでくれ!!」

〈お父様の方こそ、無茶はなさらないでくださいね。

 さて……あなたにわたくしの相手が務まりますか?〉

〈……よく喋る獲物だ、さっさと消えろ〉

〈あいにくと、あなたなんかに負けるわけにはいきません!!〉

間合いを広げ、ふぶきを繰り出すティナ。

しかしエルレイドはそれを避け、すぐさまティナとの間合いを詰める。

 

〈と、やはり接近戦では不利ですか………!〉

距離をとって戦わなければ自分に勝ち目はない、どうにか相手との間合いを広げなくては。

〈………解せんな〉

ぽつりと、エルレイドは呟く。

 

〈貴様、何故あのような小僧を父と慕う? 貴様達は主従関係ではないというのか?〉

〈当たり前です。お父様はわたくしにとって世界で一番大切で敬愛しているお方。

 そしてお父様も、わたくしを本当の娘のように可愛がってくれているんです〉

まあ、最近はその扱いに不満がありますが……口には出さずに不満を漏らすティナ。

〈くだらんな。そんな反吐が出るような関係で、俺に勝てるとでも思っているのか?〉

〈……今、何と仰いましたか?〉

〈反吐が出る、と言ったのだ。そのような関係で俺とロキ様に勝とうなど愚の骨頂。笑うどころか呆れてくるわ〉

〈…………〉

ぷつりと、ティナの中で何かが切れた。

 

〈あなた……今お父様を馬鹿にしましたね?〉

〈事実を述べただけだ〉

〈……そうですか、少しは慈悲の気持ちを持って手加減してあげようかと思いましたが、お父様を馬鹿にされて黙っていられる程、わたくしは人間が……いえ、ポケモンができてませんから!!〉

たとえ相手が神であろうとも、レイジを侮辱するものは許さない。

先程よりも大きな殺気を込めるティナだが、当のエルレイドは平然としていた。

〈許さないのは勝手だが……お前に俺が倒せるのか?〉

〈その台詞、そっくりそのままお返しして差し上げましょうか?〉

〈強がりはよせ。お前自身がよくわかっているのではないか?

 ――今のままでは、俺には勝てないと〉

〈…………〉

 

ティナの表情が固まる。

それを見たエルレイドは、口元に笑みを浮かべて言葉を続けた。

 

〈たしかにお前は強い、おそらくあのリザードンよりも実力は上なのだろうさ。

 しかし、強いからこそお前は俺の力を冷静に理解し……勝てないという答えに辿り着いた。違うか?〉

〈…………〉

エルレイドの問いには答えず、かといって否定もしないティナ。

……そう、今の自分では目の前の存在には適わない。

ティナはレイジの手持ちの中で一番冷静であり、確実に相手の実力を読み取って勝機を掴もうと動く。

マスターであるレイジと共にそう戦ってきたから、バトルスタイルも彼によく似たものになっているのだ。

そして今回も、自身の戦闘経験や相手の能力を正確に分析した結果——適わないという答えに辿り着いてしまった。

 

〈わかっただろう? それとも敗北前提で俺と戦うのか?

 無駄だ。間合いを広げれば貴様にも勝機はあるかもしれん。

 しかし、そんなくだらん考えは持たん方がいいぞ。俺が絶対に許さんからな〉

そうだ、間合いを離そうとすれば闇雲に相手へ隙を見せるだけ。

それならば、まだ近距離で戦っていた方がいくらかはマシだ。

〈降伏しろ。ロキ様は寛大な御方だ、それにどういうわけか貴様の主人を気に入っている。

 おとなしくしていれば、悪いようにはしない〉

最後通告とばかりに、エルレイドはティナにそう告げる。

……しかし、そんな言葉に彼女が頷くはずがなかった。

 

〈冗談も休み休み言ってくださいませんか? わたくしがそんなくだらない戯れ言に付き合うとでも?〉

〈…………〉

〈わたくしはお父様の望む道を叶えるために存在しているのです。

 お父様はロキを否定した、故にわたくしは絶対に降伏など致しません〉

〈……死んでも、か?〉

〈お父様が望まない限りは〉

はっきりと拒絶し、構え直すティナ。

 

〈――そうか。ならばその言葉に後悔しながら死んでいけ〉

絶殺の意志を込め、今度こそティナを始末しようとエルレイドは剣状の腕を彼女に向けた。

だが、彼女の口元には確かな笑みが。

諦めたか、そう考えるエルレイドだったが。

 

〈――あまり、わたくしを甘く見ない方がよろしいですよ?〉

そう言いながら、ティナは両手を天に掲げた。

 

(何を………)

〈わたくしの奥の手、見せて差し上げます〉

瞬間、ティナの両手から視覚できる程の力の渦を感じ取れた。

〈っ、これは……!?〉

〈お父様と考えた、わたくしの必殺技というものです。

 本来ならばお父様の許可が必要ですが……状況が状況ですからね〉

お許しくださいと、リオンと共にロキと戦っているレイジへ静かに告げるティナ。

 

――力の渦はだんだんと形を帯びていき、光の粒子となってある形状に確立されていく。

 

その形は、エルレイドにとっても馴染みのある。

〈剣、だと……?〉

そう、それは光り輝く両刃の剣。

少し細身の、レイピアに近い形状の剣が、ティナの両手に握られていた。

 

〈サイコセイバー、とでも名付けましょうか。

 サーナイト、という名前のわたくしにはやはり剣が似合いますね〉

〈――貴様、一体何者だ?〉

〈何者と申されましても……ただのサーナイトです〉

〈戯れ言を。ただのサーナイトがそのような力を持つものか〉

〈さあ、それはあなたの考え方であって絶対とは言い切れないのではありませんか?

 それに、たとえわたくしが何者であったとしても関係ありません。

 わたくしの名前はティナ、愛すべきお父様が付けてくださったこの名前がある限り、わたくしはそれ以上でもそれ以下でもありません〉

 

それで充分だ。

確かに、自分は通常のサーナイトとはどこか違うのだろう、それはティナ自身もはっきりと自覚している。

しかし、そんな事はどうでもいいのだ。

たとえ自分がどういった存在であろうとも、レイジが自分を必要としてくれる限りは……彼を守る力になる。

ただそれだけ、彼女には他に何もいらない。

 

〈………貴様〉

〈さあ。ではさっさと再開しましょうか。

 あなたを倒し、お父様のフォローに回りたいので〉

言うやいなや、すぐさまエルレイドとの間合いを詰め、右の剣を振るう。

 

〈――いいだろう。ならば貴様のそのくだらない戯れ言ごと叩き伏せてやる!!〉

〈やれるものなら……やってみなさい!!〉

激しく交差させながら、両者は再び戦いを繰り広げる。

互いに譲れないものを守る為に――

 

………。

 

「――リオン、だいもんじ!!」

「ヒードラン、かえんほうしゃだ」

一方、こちらも凄まじい炎の攻防戦が繰り広げられていた。

リオンのだいもんじと、ヒードランのかえんほうしゃ。

一見互角に見えるこの戦いも、やはり火力ではヒードランの方が上であった。

 

「ほぅ……またも一方的な戦いになると思っていたが……存外に粘るではないか」

ロキの顔には余裕の色しか見受けられない。

当然だ、前回あれだけ圧倒的な勝利を収めたのだから、今回も心配する要素などあるはずがなかった。

「くっ……」

「諦めろレイジ、お前のリザードンではヒードランには勝てん」

「さーて……そいつはどうかな?」

「…………」

 

解せんな、絶対的有利な立場でありながら、ロキは眉を潜める。

レイジはバカではない、むしろ利口過ぎるくらいだ。

故に、前回の戦いでリオンとヒードランの実力差は思い知ったはず。

だというのに、レイジは不敵な笑みを崩さず戦意も失っていない。

 

(何か企んでいるのか……?)

だとしても、子供の浅知恵に過ぎないとロキは自己完結させる。

「リオン、ブラストバーン!!」

「ヒードラン、マグマストーム」

リオンとヒードランの最大火力がぶつかり合う。

しかし――結果はあの時と同じだった。

 

「リオン!!」

〈ぐっ……うぁ……!?〉

攻撃が押し戻され、ヒードランのマグマストームをまともに受けてしまうリオン。

だが、苦しそうな表情を浮かべながらも、リオンはまだ倒れてはいなかった。

 

「たいしたものだな……だが、所詮気力で立っているに過ぎん。

 どう足掻いてもお前達に勝ち目などないといい加減理解しろ」

「…………」

レイジは答えない。

しかし、その瞳がまだ諦めていないとロキに告げていた。

 

「――どうやら、徹底的に叩き潰さねば敗北を認めないようだな」

「っ」

来る。

今まで繰り出す必要がなかった、ヒードランの本気の一撃が。

「耐えきれると思うな、このまま灰と化すがいい、リザードン」

「――リオン!!」

合図が来た、そう判断した瞬間、リオンは翼を羽ばたかせ飛翔する。

 

「そんな程度で逃げたつもりなのか? ――ヒードラン、殺せ」

凄まじい熱を孕ませたヒードランが、リオンへと標準を合わせた。そして――

 

「――マグマストーム」

大気すら燃やしかねない炎が、リオンを消し炭にしようと撃ち出される―――!

 

「――――」

 

刹那、レイジは瞬時に意識を内側へと落とす。

……できれば使いたくはなかった。

この力は世界の摂理を破壊する神に等しい力だ。

故に、レイジもできる事なら使いたくない。

だが…それでも仲間の命には代えられない。

たとえ自分の力が世界にとってあってはならない存在だとしても……。

誰かを助ける事ができるなら、この力は――きっと意味のあるものに変わるはずだ!!

 

――右手を突き出す

そして、レイジは力ある言葉を解き放った。

 

 

「――在るべき姿に還るんだ。ヒードラン!!」

 

 

駆け抜ける光。

それはレイジの右手から撃ち出され、包み込むようにヒードランを捉えた。

 

「何だと……!?」

突然の事態に、ロキは驚愕と共に舌打ちをする。

「小僧……貴様、“力”を使えるようになっていたのか!!」

「リオン!!」

チャンスは今しかない、レイジの力によって動きを止めたヒードランへと突っ込んでいくリオン。

 

「リオン、『メテオフォール』だ!!」

〈うおおおおっ!!!〉

 

指示を受け、固く握りしめた拳に炎を纏わせる。

そして、着地と同時にヒードランを上空へとほのおのパンチで殴り飛ばす。

瞬時に飛び上がり、ヒードランを追い越し――ブレイズキックで再び地面へと撃ち落とした。

しかし、まだリオンの攻撃は終わらない。

すぐさま翼を羽ばたかせ落ちていくヒードランの脚を掴みあげる。

雄叫びを上げながら、リオンはハンマー投げの要領でヒードランを振り回しながら地面へと向かい。

鼓膜が破れそうなほどの爆音を響かせながら、ヒードランを地面へと叩きつける―――!

 

「…………」

耐えきれず、地面に沈んだままヒードランは動かない。

これこそがメテオフォール――レイジとリオンが考えた必殺技は、見事ヒードランを打ち倒し。

 

――彼等の死闘は、ここで幕を降ろした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

〈は、セイ………!〉

〈やっ、は――!〉

ティナとエルレイド、両者の刃が幾重にもぶつかり火花を散らす。

(コイツ………!)

ティナの剣戟を受けながら、エルレイドは内心舌打ちをする。

 

――侮っていた。

 

あのような小さき少年に対し、敬愛と恋慕の感情などを抱くサーナイトなど、自分の敵ではない。

だからこそ、主人であるロキも戦いを自分だけに任せたのだと思っていた。

しかし――それは間違いだと否が応でも気づかされる事になる。

彼女は強い、それこそ自分にも負けずとも劣らぬ程に。

あの細腕からは考えられない程のパワーとスピードを込めて振るわれる剣戟は、一撃ごとに全身に衝撃を走らせる。

 

(おのれ………!)

このような事実など、認められるはずがない。

このようなサーナイト如きに、自分と互角の戦いを繰り広げるなど……彼のプライドが許さなかった。

 

〈っ、貴様………!〉

〈わたくしは貴様などという名前ではありませんよ!!〉

双剣を十字に構え、一気に振り下ろすティナ。

それを受けようとするエルレイドだが……。

〈がっ―――!?〉

その防御ごと、ティナの一撃は彼を吹き飛ばす。

 

〈バ、バカな……この俺が………!〉

〈自分の力にどれだけの自信があるのかは知りませんが、わたくしの力を侮っていたようですね〉

そう口にするティナだが、彼女の呼吸も荒く肩で大きく息をしていた。

(……もう、長くは保たない)

 

――サイコセイバーの具現化には、凄まじい精神力を有する。

 

この剣は自らのサイコパワーをわかりやすく実体化したものであり、故に凄まじい破壊力を宿していた。

しかし、その実体化は容易に行う事はできず、現に彼女の額には大粒の汗が滲んでいる。

〈――ここで、終わりにさせてもらいます〉

時間は掛けれない、攻める時に攻めなくてはこちらがやられる。

そう思い、再びエルレイドとの間合いを詰め上段から剣を振るうティナ。

それを。

 

〈――ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!!〉

獣の雄叫びに等しい声を上げながら、エルレイドはティナの一撃を弾いてしまった。

それだけでは終わらない、今度はエルレイドの連撃がティナへと襲いかかる。

 

〈くっ、きゃ………!?〉

捌ききれず、どうにか回避していくが、この嵐のような剣戟をどうにかしなくてはやられてしまう。

〈貴様なんぞに……貴様のようなポケモンに……俺が負けるはずがないんだぁっ!!!〉

〈…………〉

尚も攻め続けるエルレイドを、ティナは憐れみを込めた瞳を送った。

 

〈貴様……何故そんな目で俺を見る!!〉

〈……あなたが、可哀想だと思っただけです〉

〈何だと………!〉

〈くだらないプライド、くだらない自尊心……そんなものしか抱いて生きられないなんて……哀れです〉

 

彼には、誰かを愛し支える喜びすら知らないのだ。

ただ主人の命を実行するだけの機械のような存在、それが今ティナの目の前にいるエルレイドの正体。

それを目の当たりにして、ティナの中から敵意と戦意が薄れていく。

 

〈やめましょう。このまま戦っても虚しい結果を生み出すだけです〉

〈虚しい結果だと? 貴様……俺をバカにしているのか!?〉

〈そうではありません、ですが……もうわたくしはあなたと戦う意味などないと思いました。

 ですから、あなたも戦うのは―――〉

〈なら、貴様の大切なお父様とやらを殺されても同じセリフが吐けるのか?〉

〈――――〉

〈無理だろうな。戦いたくないなどという綺麗事をほざく奴ほど―――――っ!!!?〉

 

エルレイドの言葉が途切れる。

それは仕方ない、何故なら。

 

〈――もう一度、言ってみなさい〉

たった一瞬で自分の首に剣を這わせたティナが、絶殺の意志を込めて睨んでいたからだ。

 

〈―――貴、様〉

〈もう一度言ってみなさいとわたくしは言いました。ほら……もう一度先程の戯れ言を口にしてご覧なさい。

 その瞬間に、あなたの首を斬り落とします〉

〈――――〉

それが本気だと本能が理解し、エルレイドの動きが止まった。

 

〈…………〉

しかし、ティナは何故か自ら剣をエルレイドから離す。

〈バカが!!〉

どういうつもりかは知らないが、こちらにとっては好都合だ。

そう思い、エルレイドは再び攻撃を仕掛けようとして――――気がついたら、地面に倒れ込んでいた。

 

〈な、に……!?〉

身体に走る痛みにより、動けない。

眼前には、自分に向けて剣を突きつけるティナの姿が。

〈……お父様は、たとえ相手がどんな存在であろうが極力傷つけるなと仰っていました。

 ですが……あなたのような救いようのない存在ならば、生かしておく道理はありませんね〉

冷たい声。

それは、否が応でもお前の命を奪うと告げられている事を理解できた。

しかし……。

 

〈――やめましょう。どうやら向こうも決着がついたようですし〉

ティナは両手に持った剣を消し、エルレイドに背を向ける。

 

〈……俺を、殺さないというのか?〉

〈殺したいですよ。お父様の命を奪おうとする者は誰であっても許しません。

 でもお父様はそれをお望みになりません、ですから……あなたの命を奪うわけにはいかないのです〉

そんな事をすれば、レイジはきっと悲しむ。

たとえ敵とはいえ、生きとし生ける者の命が失われる事を。

そして、ティナが誰かの命を奪う事も望んでいない。

〈次からは、もっと相手を選んで喧嘩を売る事ですね〉

振り向き、エルレイドに向かってそう一言。

 

――その瞬間。

ティナとエルレイドの死闘も、静かに幕を降ろしたのだった………。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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