ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
尤も、色々と問題は残ってしまったようだが……。
「……んっ……」
朝の日差しを受け、レイジは目を醒ました。
「…………」
まだ眠気が取れないのか、しばらくそのまま動きを見せなかったが……。
「……ああ、そうか」
現実に戻り、大きく伸びをしながらベッドから降りた。
――ここはアーリアタウンのトキヤの屋敷。
ロケット団との戦いも一応の決着がつき、今はカントー行きの定期船を待っている状況だ。
改めて自分の現状を確認しながら、レイジは着替え始め。
「ようやく目が醒めたのかマスター、余は退屈だ」
いきなりボールから飛び出してきたポケモンに、そんな事を言われてしまった。
「……着替え中なんだけど」
「よいではないか、別に余は構わんが?」
「僕が構うの……」
ため息をつきつつ、とりあえずそのまま無視して着替えを進めるレイジ。
「マスター、着替えが終わったら遊びに行くぞ」
「その前に朝ごはん食べないとダメだよ」
「むぅ……余は空腹ではないのだが」
「君はよくても、僕が困るの」
そう告げると、彼女は不満そうに唇を尖らせる。
……どうしてこんな我が儘な性格になってしまったのだろうか。
そう思いながら、レイジは彼女――――“ルギア”を見て、再びため息をついたのだった
………。
さて、何故ルギアがレイジの傍に居るのか簡潔に説明すると……。
よくわからん力で復活したが、何故かルギアの身体が縮み性格も変わってしまい、そのままなし崩し的にレイジの手持ちとなった、以上。
……身も蓋もないが、そう説明する以外ないのだから仕方ない。
「あっ、おはよー」
遊びたいと訴えてくるルギアを軽く受け流しながら、全員が集まっている居間へと移動する。
「おはようレイジくん、よく眠れた?」
「はい、大丈夫です」
「……ルギア、お前また勝手に出てきたのか?」
「なんだカイリ、いけないというのか?」
「いけなくはねえけど……お前一応は幻のポケモンなんて言われてんだから、もう少しこう…なんていうか」
「ふん、周りの者達には好きに言わせておけばよい。それより余はあんな狭いボールの中にずっと入っているなど窮屈でたまらん」
尊大な態度だが、端から見ると無理して背伸びしている子供にしか見えない。
だから、ルギアの態度にも腹が立つどころか全員が苦笑してしまった。
そうこうしているうちに、朝食の準備が終わったようだ。
ティナ達をボールから出してから、レイジは席に座る。
『いただきます』
そして、全員で合掌してから食事を開始した。
「………それにしても」
朝食を食べ始めて数分、トキヤはルギアを見ながら口を開く。
「海の守り神様がこうして目の前に居る事も驚きじゃが……お主達から聞いた話も、いまだに驚いてしまうような内容じゃな」
「……そうね。私もあれが夢だったかもしれないと思う時があるわ」
「けど、夢じゃなかったんだよなぁ……」
――あの戦いから5日。
国際警察へと聴取も終え、ようやく平穏な朝を迎える事ができた。
だが、それだけの日数が流れても、やはりあの光景を現実のものだと信じるには些か時間が足りなかった。
「なあレイジ、お前本当に覚えてないのか?」
「残念ながらね。それより逆に訊きたいよ、僕は本当にルギアの命を甦らせたの?」
……ルギアの命が喪われた瞬間は、今でも鮮明に思い出せる。
その後、深い悲しみと苦しみに苛まれて……急に意識が飛んだ。
ただそれも一瞬で、気がついたら……小さくなったルギアが眠っていたのだ。
「まあな。……俺達もいまいち信じられねえけど」
こんな不可思議な現象、夢だと思わない方がどうかしてる。
しかしあれは全て現実であり、傍でポケモンフーズをもっちゃもっちゃとリス食いしているルギアもまた、現実の存在だ。
「でもさ、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないかな?」
全員が難しい顔になる中、カグヤの呑気な言葉が場に響く。
「ルギアが生き返って、ロケット団を撃退できて、おまけにみんな無事だった。
いいことずくめだし、気にする必要なんかないんじゃないかなぁ?」
「おいおい……」
「カグヤ、それはちょっと楽観的過ぎるんじゃないの?」
「でもヒメカ、あの現象が何なのか説明できるの?」
「それは……」
そう言われてしまうと、何も言えない。
「別に何かが変わるわけじゃないし、考えてもわからないなら考える必要なんかない。
それより、今を楽しくしようって考える方がずっといいよ!」
「カグヤ……」
楽観的な、けれど彼女らしい持論。
そこに、ルギアも同意するように口を開いた。
「マスター、カグヤの言う通りわからない事をいつまでも考えた所で埒などあかない。
ならば、もっと別の楽しい事を考えればいいだけの話だ。というわけで、余と遊ぼう!!」
「…………」
途中までいい話だったのに、最後ので台無しになってしまった。
だが、まあ……今のルギアらしさが出ているのかもしれないが。
あの力、あの言葉の意味は分からない。
自分の正体も、ただの人間でないという点以外は手がかりはゼロ。
けれど、こうして歩みを止めなければいずれわかるだろう。
だから、レイジはこれ以上気にするのはやめにした。
………。
朝食を終え、一息つく。
ちなみに、ルギアは海の中へ散歩に行ってしまった。
途中までレイジも強引に連れて行かれそうになったが、当然ながら断固拒否した。
当たり前だ、自分がルギアと同じような事をしたら溺死してしまう。
(……何して過ごそうかな)
カントー行きの定期船は明後日、すなわちそれまではこの街に滞在しなくてはならない。
オーキド博士達にお土産でも買っておこうか、そんな事を考えていると。
「レイジくん、ちょっといいかしら?」
「シロナさん、どうかしました?」
声を掛けられ、シロナへと視線を向けるレイジ。
しかし……彼女の様子がちょっとおかしい。
ほのかに顔を赤らめ、どこか落ち着かない雰囲気で自分を見つめている。
なんだか、いつもの凛とした彼女とは違い……可愛らしいと思ってしまった。
「え、えっと……今日、時間あるかしら?」
「今日ですか? ええ、大丈夫ですよ」
「そ、そう……な、なら……今日は、私と一緒に過ごさない?」
「一緒に、ですか?」
「ええ。色々ゴタゴタしてたから、これを機会にこの街を案内してあげようかなって……」
我ながら良案だ、シロナは内心そう思いながらも不安がっていた。
勇気を出して誘ってみたものの、もし断られたらどうしよう……などという彼女らしからぬ不安を抱えていた。
しかし、そんなものは彼女の杞憂だったようだ。
「いいですよ。お願いします」
「ほ、本当……?」
途端に明るさを取り戻すシロナ。
「はい。どうせ暇ですしお願いします」
ふわりと微笑むレイジ。
それを見て、嬉しさと気恥ずかしさでシロナの顔が赤く染まった。
「そ、それじゃあ……少しだけ待ってて!」
赤い顔を隠すようにそうまくし立て、自分の部屋へと向かう。
何せデートにこぎつけたのだ、レイジ本人はそう思っていないだろうが、シロナにとってはそうだ。
少しはお洒落をしようかしら、そんな事を考える彼女の口元には笑みが。
「カッカッカ、いい歳して随分乙女をやっておるのうシロナよ」
「……トキ婆、いい歳しては余計よ」
失礼な物言いに、楽しい感情が幾分冷めた。
「やはり本気で惚れておるようじゃな、レイジに」
「悪いの? 年下を好きになっちゃいけない決まりも掟もないわよね?」
「もちろんだとも。むしろ儂は嬉しいよ、男っ気がまるでなく恋人は遺跡と言いそうなお前に、恋が訪れたのじゃからな」
「…………」
どうしてこの人は、いちいち余計な事を言ってくるのか。
……まあ、今までが今までなので否定などできないのだが。
「お前の方が大人なのじゃから、しっかりとリードしてやらんとな。
下手をすると、レイジより子供っぽいからのうお前は」
「余計なお世話よ」
「なんじゃ、人がせっかく人生の先輩としてのアドバイスをしてやろうというのに」
「トキ婆の場合、面白がって言うから聞く耳持たないわ」
そう告げると、背後からつまらなそうにぼやくトキヤの声が。
(まったくもう……)
これ以上付き合ってはいられない、彼を待たすわけにはいかないからだ。
そう思い、シロナは少しだけ急ぎ足で自室へと向かった。
………。
「…………はぁ」
さあ、楽しいデートの始まりだ。
だというのに、シロナは大きなため息をつき憂鬱そうな空気を纏っていた。
(せっかく、勇気を出して誘ったのに……)
「シロナさん、どうかしましたか?」
勇気を出して誘ったというのに、どうしてカグヤが自分達と一緒に街を歩いているのか。
答えは簡単だ、トキヤがカグヤに2人が街に出掛ける事を伝えたから、以上。
(あの老いぼれ……帰ったら覚えてなさい!!)
十中八九、トキヤは修羅場になる事を期待してカグヤにその事を伝えたのだろう。
もしくは、落胆する自分を想像したいが為か。
どちらにせよ、最悪である。
割と本気の殺意が芽生え、帰ったらどうしてくれようかあれこれ考えていると、不思議に思った2人から声を掛けられた。
「シロナさん?」
「もしかして、どこか具合が悪いんですか? なら今日はやめにした方が……」
「……大丈夫よレイジくん、カグヤ。それじゃあ行きましょう」
「はあ……なら、いいですけど」
(……やめましょう、これ以上考えても無駄ね)
カグヤが悪いわけではない、なら彼女に心配を掛けるのは間違いだ。
それに……レイジと一緒に出掛けられるのは間違いないのだから、高望みはしないでおこう。
「レイジ、シロナさん、早く早くー!!」
「はいはい、わかったよ」
いつものようにさっさと先に行くカグヤと、そんな彼女に呆れながらもおとなしくついていくレイジ。
そして、今回はそんな2人に苦笑するシロナも加わり……。
少し不思議なデートは、こうして幕を開けたのだった。
「わぁ……お土産屋さんがたくさんある……」
「このアーリアは観光地だから、こうして土産物屋が多いのよ」
「へぇ……」
説明半分のまま、あちこちに視線を向けては瞳を輝かせるカグヤ。
「買うのは構わないけど、無駄遣いするような余裕はないからね」
「むっ、そんな事しないもん」
(よく言うよ……)
そう言ってやりたかったが、意味ないのでやめた。
「見てレイジ、あの人形可愛いね!」
カグヤの指差す先には、サニーゴ人形が積まれている。
「……あれを持ちながら旅をするの?」
「えっ、あ、あはは……」
そこまで考えてはいなかったようだ、引きつった笑みを浮かべるカグヤにレイジはため息をつく。
「おじさんやおばさんにお土産を買った方がいいんじゃないか?」
「そうだね。じゃあ……どうしようか」
「……これはどうかしら?」
そう言って、シロナはカグヤにあるものを見せる。
それは黄金色の砂が入った小瓶。
「綺麗……」
「これは『輝きの砂』っていうアーリア周辺でしか採れない名産品よ。
御守りにもなるし、敬愛する相手に送るとその人の安全を約束されるという言い伝えがあるの」
「へぇ……」
「いいんじゃないか? お土産としてピッタリだと思うけど」
「そうだね。……それじゃあこれを8つお願いします」
「えっ……?」
何故8つも買うのか。
自分の両親とオーキド博士になら多すぎるし、友達を含むと少なすぎる。
そんな事を考えていると、カグヤは輝きの砂が入った袋を抱えて戻ってきた。
そして――8つの内の2つをそれぞれレイジとシロナに手渡す。
「えっ……?」
「これはレイジとシロナさんの分だよ。
大好きな2人がいつでも安全で居られますようにって」
「………カグヤ」
不覚にも、少しだけ目頭が熱くなってしまった。
「ありがとうカグヤ、なら……私もあなたに渡さないとね」
「うん……僕もだ」
カグヤが自分達を大好きなように、レイジ達も彼女が大好きなのだ。
すぐさま輝きの砂を購入し、それぞれ手渡す。
結果、それぞれ三つずつ輝きの砂を持つという少々おかしな事になってしまったが、まあよしとしよう。
「えへへ、2人ともありがとう」
「僕の方こそありがとう、凄く嬉しいよ」
「私も。こんなに嬉しいプレゼントは初めてよカグヤ」
揃ってお礼を述べると、気恥ずかしそうに頬を赤らめるカグヤ。
穏やかな雰囲気。
皆が笑顔を浮かべ、幸せそうな雰囲気を纏っている。
確かな平和が、そこにあった。
………。
「きゃははは、つめたーい!」
浜辺に移動し、足だけ海に浸かりながらカグヤはポケモン達とはしゃぎ回っている。
その光景を、レイジとシロナは穏やかな視線で見つめていた。
「カグヤって、本当に純粋な子よね」
「……そうですね」
ああして裏表がないから、ポケモンにも好かれるのだろう。
「ところで、ラティオスは本当によかったんでしょうか?」
カグヤと共に遊んでいるラティオスを見ながら、ぽつりと呟く。
――ラティオスは、カグヤと共に戦う事を決めた。
というのも、カグヤが。
「カイリばっかり伝説ポケモン使うのズルい」
なんとも子供っぽい事を言ったのが事の始まり。
すると、ラティオスがカグヤの手持ちになる事を承諾したのだ。
「せっかくカノンと再会できたのに……片時も離れたくないとは思わないんでしょうか?」
「確かにそうね。でも……ラティオスは気づいたのよ。
もう、自分がいなくてもカノンは大丈夫だと。だからあえて彼女とは別の主人を選んだんじゃないかしら?」
「…………」
そういうものなのだろうか。
ずっと離れ離れになっていて、敵同士として戦っていたのに……こうも簡単に別の道を歩めるのだろうか。
「レイジくんが言いたい事もわかるわ、でも……これがラティオスの選んだ道なのよ」
「……選んだ道」
自分の意志で、誰からも左右されずに歩もうと決めた。
……確かに、それならわかる気がする。
「僕も……ラティオスのように道を選んで歩けるのかな」
「歩いてるわよ、レイジくんはしっかりと」
「そうでしょうか?」
「……知らぬは本人ばかりなり、ね」
柔らかく微笑み、レイジに視線を向けるシロナ。
「こーら、2人だけで何話してるのー?」
いつの間に戻ってきたのか、目の前には少しだけ頬を膨らませたカグヤの姿が。
「いや、別に……」
「むー……シロナさんと2人だけの秘密なんか作ってズルいなぁ」
「ズルいって……」
そういうつもりではなかったのだが、どうやら誤解させてしまったらしい。
しかし、当のカグヤは別段気にしているわけではないようで、すぐさま満面の笑みをレイジへと向けた。
「あっ、そうだ!」
「………?」
「今、周りには私達3人しかいないよね?」
「えっ、まあ……」
ポケモン達はいるものの、人間だけでいうなら確かに3人しかいない。
「よし、なら好都合だね」
ぶつぶつと呟くカグヤ。そして―――
「ねえ、レイジ」
「何?」
「レイジはさ、私とシロナさんどっちが好き?」
「…………は?」
それは、何の脈絡もない突然の問いかけ。
ニコニコと笑みを浮かべたまま、カグヤはそんな表情とは真逆の真剣な声色で……答えられない問いを告げた。
「カグヤ、いきなり何を」
「うん。幸いにもここには私達3人しかいないから訊いておこうと思ったの。
レイジは私とシロナさんのどっちが好きなのかなぁって、もちろん異性としてだよ?」
「そうじゃなくて、どうしてそんな事を訊こうとしたの?」
第一、選択肢がおかしい。
何故カグヤとシロナのどちらか、などという選択肢なのか。
しかしカグヤは、変わらぬ笑顔でレイジにとって予想外の言葉を放った。
「だって私、レイジの事が好きなんだもん」
「――――」
息が止まる。
変わらぬ口調、まるで挨拶を交わすかのような気軽さで、カグヤは己の想いを打ち明けた。
「前はね、レイジの事は家族として好きだったと思ってた。
でも、シロナさんが現れて……レイジと仲良くしてる所を見るとすごくイライラした。
私も初めはそれが何なのかわからなかったけど……最近になって、レイジの事が好きだから嫉妬してたんだって気がついたの」
それに気づいたのは、彼女自身が告げたように本当に最近だった。
初めは驚き、次に恥ずかしがり……最後には開き直った。
裏表のない彼女だから、このようにあっけらかんという表情が似合っている告白をしたのだ。
だが……やはりそれはあまりに唐突で、レイジの思考を停止させるのに充分過ぎる破壊力を秘めていた。
「……唐突すぎたかな?」
「唐突過ぎだよ……い、いきなりそんな事を言われたって、僕は……」
答えを、出す事なんかできない。
口には出さずにそう告げると、それに気づいたのかカグヤは口を開く。
「あっ、別に今すぐ答えてほしいわけじゃないよ。まあ欲を言えば答えてほしいけど……レイジ、そういうの全然わからないでしょ」
まあ、私もあまり人の事は言えないけどね。そう言いながらカグヤは笑った。
……突然の告白に、頭の中がゴチャゴチャしてる。
いやそもそも、どうしてカグヤはそんな事を言ってきたのか……。
「だって言いたくなったんだもん、悪い?」
なんて、なんとも彼女らしい答えが返ってきて……なんだか力が抜けてしまった。
「………はぁ。君はいつも僕をある意味で驚かせてくれるよね」
「むっ、なんだか含みのある言い方だね」
「含みを持たせた言い方だからね」
そう切り返すと、何さーとカグヤは笑いながら攻撃してきた。
「……カグヤ」
「何?」
「ありがとう、その気持ちは……凄く嬉しい。
でも……僕はまだ答えが出せない、だから……もう少しだけ」
「そんな深刻に考えなくていいよ、レイジが私を嫌わないでくれるなら……今はそれでいいから」
「……ありがとう」
必ず、答えは出す。
瞳でそう告げ、それを受け取ったカグヤも笑みを返した。
と。
「――カグヤ、抜け駆けするのはちょっとズルいと思うわよ、私は」
少しだけむくれたシロナが、不満げにそう口にする。
「あはは、ごめんなさいシロナさん。でもシロナさんも言ったらどうですか?」
「……もぅ、心の準備もさせてくれないのね」
恨むわよ、そう言いながらもその表情はどこか明るい。
しかし、レイジには何の事か理解できずに首を傾げていると。
「その…えっと…あー、うん……」
「………?」
何かを告げようとしているシロナだが、どうも歯切れが悪く何を言いたいのかさっぱりわからない。
なんだか彼女の頬が赤くなってきているし、ソワソワと落ち着きもなく。
しかし――次に告げられた言葉で、レイジは何度目になるかわからない思考停止状態に陥ってしまった。
「――私も、レイジくんの事が好きよ」
「………………」
おもわず、ポカンとしてしまった。
……ちょっと待て。
カグヤの告白だけでも容量オーバーだというのに、まさかのカミングアウトによって完全にオーバーヒートだ。
「……レイジ、変な顔」
こっちの気持ちなどこれっぽっちも察しないカグヤの言葉に、軽く殺意が湧いた。
「……シロナさん、あの」
「冗談じゃないわよ、もちろん」
「…………」
万が一でもありえないと思っていたが、そういうオチなら良かったと思っていたので、軽くショックだ。
「どうしてですか? カグヤもシロナさんも、どうして僕を……」
「私はいつだってレイジが私の傍に居てくれて、私の事を守ってくれたから。
それに、なんだかんだ言いながら優しい所とかも大好き!」
「私は……そうね、きっかけはニビシティでの事かしら。
あの時レイジくんは、私をチャンピオンとしてじゃなく1人のポケモントレーナーとして……シロナという個人として見てくれた、それが好きになったきっかけね」
「…………」
身近にいた2人からの、まさかの告白。
(だけど……僕は)
気持ちは嬉しい、というよりむしろ恐れ多いとすら思える。
けれど……レイジは2人に異性としての愛情を抱いてはいない。
だから、2人の気持ちには……。
「レイジは、私達の事嫌い?」
「そんな事あるもんか、2人の事は……好き、だよ」
少し気恥ずかしくて視線を逸らしながらそう告げると、2人は揃って満面の笑みを浮かべた。
「だったら、これから好きになってもらうように努力するよ」
「レイジくん、必ず貴方を振り向かせてみせるわ」
「うっ………」
本気と書いてマジな視線に、おもわずたじろいだ。
『覚悟してね?』
まったく同時に、満面の笑みを向けられ宣戦布告を告げられるレイジ。
(僕は、一体どうしたらいいんだろう……)
なんだか、最近2人に振り回されているような気がしながら。
それも悪くないかなー、と思っている自分に気づき、レイジは盛大なため息をついたのだった。
To.be.Continued...