ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
「……んぅ……」
朝の日差しが目に入り、強制的に目が醒めてしまった。
まだまだ寝ていたい衝動に駆られたが、今日ばかりはそう言ってはいられない。
何故なら今日は特別な日、気合いを入れて起き上がりすぐさまパジャマを脱ぎ始める。
するとその音で目が覚めたのか、隣で眠っていた私のポケモンが身じろぎしながら目を醒ました。
「エネコ、おはよう!」
すっかり覚醒した私とは違い、エネコはまだ眠いのか「ミィ……」と一声鳴いた後再び丸まってしまった。
「ダメだよエネコ、眠りたいのはわかるけどもう朝なんだから!」
それに、さっきも言ったが今日は特別な日なのだから。
着替えを終え、窓を開けると——外は快晴。
「……うん。絶好の旅立ち日和!」
そんな日和があるかはわからないけど、天気がいいのは良いことだ。
鏡の前に座り、身だしなみチェック。
背中まで伸びる栗色の髪に櫛を通し、お気に入りの白いリボンを結ぶ。
紺のパーカーに、ピンクのスカートもちゃんと着れてるよね。
旅に向く格好かどうかは微妙だけど、お気に入りの服なのだから仕方ない。
「さてと……それじゃあエネコ、行くよ?」
転がりながらもベッドから抜け出し、私の横にトテトテと移動するエネコに声を掛け、私は部屋を出た。
――今日は特別な日
私――カグヤがポケモンマスターになる為の旅立ちの日だ。
………。
「パパ、ママ、おはよう!」
二階にある自分の部屋からリビングに足を運ぶ栗色の髪の少女、カグヤは既に席に座っていた父であるゲンジと母であるルリコに挨拶を告げた。
それに気づいた2人も、笑顔を浮かべ、カグヤに朝の挨拶を返す。
既に自分の朝食が用意されていたので、カグヤは自分の席に座ろうとして……“彼”が居ない事に気がついた。
「レイジは?」
「まだ起きてきてないから、きっと部屋で寝てるんじゃないか?」
父の言葉を聞き、困ったように眉を潜めるカグヤ。
「もぅ……今日が何の日か忘れてるんじゃないかしら……」
起こしてくる、そう両親に告げすぐさま二階に戻る。
自分の部屋の右隣の部屋には「レイジ」と書かれた札が掛けられており、カグヤはノックもせずに部屋に入った。
「レイジ、朝だから起きてよ」
盛り上がった布団にああやっぱり、とぼやきながら強めに揺さぶる。
しかし、レイジと呼ばれた少年はそれに反応する事なくすやすやと寝入っている。
起きなさいっ、今度は力ずくで布団を剥ぎ取る。
するとさすがに効いたのか、ぼんやりと目を開けアクアブルーの瞳がカグヤを捉えた。
「……カグヤ?」
「いつまで寝ぼけてるのよ、今日が何の日か忘れたの?」
「…………」
暫し考えるレイジ。
たっぷり数十秒という時間を用いて、彼が出した答えは。
「……何だっけ?」
「っ、あのねぇ……」
つんのめりながらも頭を抱えるカグヤ、それを不思議そうに見つめるレイジ。
――ああ、この人本気で忘れてる
どうしたらこんな事を忘れられるのか、小一時間くらい問いただしてやりたいと思ったが、時間の無駄なのでカグヤは簡潔に言ってやった。
「今日は旅立つ日でしょ?昨日だって荷物の最終チェックを一緒にやったじゃない」
カグヤの言葉に短くああ、と今思い出したかのように呟くレイジに、カグヤはため息をつく。
相変わらず、私の幼なじみはどこか頭のネジが抜けている気がする。そう思えずにはいられなかった。
――それからカグヤは、着替えを終えたレイジと共に下へと戻る
再びリビングに戻るが、既に両親は出掛けており姿は見えない。
しかし仕方ない、あの2人はオーキド博士の助手なのだ、朝が早いのは当然である。
「ほら、朝ごはん食べたら研究所に行くよ?」
「ん………」
まだ眠いらしいレイジを引っ張り、彼の席に座らせる。
次の瞬間、彼の膝に突然ポケモンが現れた。
「……ああ。おはようティナ」
ティナと呼ばれたポケモンは♀のラルトス。
頭を撫でられ、くすぐったそうに身をよじるが嬉しそうだ。
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
手を合わせ、用意してもらった朝食を口に運ぶ2人。
「レイジ、いよいよだね」
「うん……」
「私がポケモンマスターになる為の旅が始まるんだ……一体どんなポケモンに出会えるかな?」
これからの出来事や出会いに瞳を輝かせるカグヤだが、それとは対照的にレイジは眠そうな表情を崩さないままカグヤの話を黙って聞く。
彼女が自分の夢を話す時に何を言っても聞こえなくなる事がわかっているからだ。
結局、朝食が終わってもカグヤの話は続いてしまい、家を出るのが少し遅くなってしまった2人なのであった。
………。
「――オーキド博士、おはようございます」
「おはようございます」
「おぉ、待っておったぞ2人とも」
少し急いで研究所に向かうと、ポケモン学の権威であるオーキド博士が2人を出迎えてくれた。
そんな傍らには彼の両親の姿も。
「ついに旅立ちか……月日が経つのは早いものじゃのう……。カグヤはポケモンマスターとして、レイジはそんな彼女の付き添い。
2人とも、大変な旅になるとは思うが頑張るんじゃぞ?」
「もちろんです。まずはカントーのポケモンリーグのチャンピオンになって、次はホウエン、シンオウのチャンピオンになってみせます!」
(……そんな簡単に行くわけないと思うけど)
しかしそんな野暮な事は口に出さない、たとえ事実だとしても燃えてるカグヤに言うべき言葉ではないからだ。
「はははっ、頼もしいなカグヤは」
そんな娘の様子に、ゲンジは笑う。
「レイジ、カグヤの事をお願いね?」
「はい」
「ママ、それどういう意味?むしろそれは私に言うべきじゃないの?」
「だってレイジの方があなたよりしっかりしてるじゃない。
それよりカグヤ、あなたの方がお姉さんなんだからあまりレイジの迷惑になる事はしないでね?」
「むぅ……」
反論してやろうかとも思ったが、そんな事をすれば過去の事を蒸し返されて倍返しされるのが目に見えているからだ。
「まあまあ、2人がお互いを支え合えばきっと上手くいくさ。
ではレイジ、カグヤ、お前達にこれを渡そう」
そう言いながら、オーキドは2人にモンスターボールや傷薬等がまとめて詰まっているバッグ、そして……。
「こ、これ……ポケモン図鑑!!」
そう、それはオーキドが作り出したトレーナーにとって憧れの一品、ポケモン図鑑だった。
「旅を続けるなら色々なポケモンに出会うじゃろう、これがあればお前達の助けになるじゃろう」
「あ、ありがとうございます!!レイジ、やったね!?」
「うん」
相変わらず淡白な態度だが、今のカグヤには気にならなかった。
「それと、ウツギくんから珍しいポケモンを譲り受けてな、もし良かったら手持ちにしてみぬか?」
「珍しいポケモン?」
「うむ、チコリータじゃ」
言いながら、懐からモンスターボールを取り出し投げるオーキド。
するとボールが開かれ、中から元気よくポケモンが飛び出した。
「わぁ……可愛い!!」
愛くるしい見た目のチコリータを見て、瞳を輝かせながら抱き上げるカグヤ。
そんな彼女にびっくりした表情を浮かべたチコリータだが、すぐさま笑顔になり彼女に頬ずりをする。
「じゃあ、チコリータはカグヤの手持ちだね」
どうやらチコリータ自身もカグヤを気に入ったようだし。
「いいの?」
「もちろん」
「……チコリータもいい?」
そう訪ねると、チコリータはもちろんだと言わんばかりに一声鳴いた。
「では、レイジにはこれを渡しておこう」
「これは……?」
「ヒトカゲじゃ、バトルが好きなやつでな。ここにいるよりトレーナーと一緒におった方が良いじゃろうて」
「…………」
オーキドからボールを受け取り、ヒトカゲを出す。
これまた愛くるしい姿ではあるが、その瞳に宿る力強さはその姿とは真逆だ。
「……よろしくね?」
頭を撫でてみると、目を細め嬉しそうに鳴いた。
どうやら、レイジをトレーナーとして認めてくれたようだ。
「……じゃあ、君はリオン。リオンだ」
リオンと名付けられたヒトカゲは、気に入ったのかその場で小躍りを始める。
そんなヒトカゲを見て、彼は優しい笑みを向けていた。
………。
「――それじゃあ、行ってきます」
「気をつけてな」
「ちゃんと連絡をするのよ?」
「わかってる。私だってもう15なんだから心配しないで」
「レイジ、カグヤの事お願いね?」
(全然信用ない……)
そんなに自分はレイジと比べてしっかりしていないのか、そう考えると少しショックだ。
「レイジ」
「はい」
「……お主の力は、なるべく他人に知られぬようにな?」
「………はい」
「うむ。では気をつけて行ってくるとよい!!」
『はい!!』
力強く頷きを返し、2人はマサラタウンを後にする。
カグヤの左横にはエネコが、そしてレイジの頭にはティナが。
「…………」
「……寂しい?」
急に静かになったカグヤにレイジはそう訪ねるが、カグヤは、大丈夫と返事を返す。
「正直に言うとやっぱり寂しいよ。でも……それ以上にワクワクしてる。
ずっと夢だった旅ができるんだもん」
それにね、視線をレイジに向けてカグヤは笑顔を浮かべ言葉を続けた。
「私の隣にはレイジがいるから、大丈夫だよ」
「………そう」
………。
少年と少女は故郷を旅立ち、数々の出会いに夢膨らませながら歩を進める。
この先に何があるのか、何が待っているのか、それはわからない。
しかし、きっと楽しい旅になりそうだと。
カグヤは、ワクワクする感情を抑えながら旅立っていった。
To.Be.Continued...
これから色々とツッコミ所が多い場面が多々ありますが、気にせずに楽しんでください……。