ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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カントーリーグ・セキエイ大会準々決勝。

カイリは見事ケイジに勝ち、準決勝へと進む事ができた。

そして……今日はいよいよレイジとロストの試合となる……。


第52話 挑む最強者〜レイジ対ロスト!!〜

〈……んっ……〉

 

気がつくと、わたくしは外で立ち尽くしていた。

ベッドにはお父様とカイリが静かに眠っている。

いや……カイリは大いびきを掻いているから、正確には静かにという表現は間違いだ。

 

〈……まだ、こんな時間ですか〉

 

午前五時前、ようやく朝日が顔を出す時間帯だ。

だというのに、寝ぼけてボールから飛び出してしまったらしい。

恥ずかしくなり、誰も見ていないのに顔を赤くしてしまった。

 

〈………お父様〉

規則正しい寝息を立てながら、夢の世界に漂っているお父様。

目も覚めるような蒼く美しい髪を、無意識のうちにこの手で触れていた。

 

〈…………〉

 

今日は、いよいよロストとのバトルだ。

カイリ、カグヤ、そしてヒメカは既に準決勝へと進んでいる。

まあカイリはケイジと当たったからともかく、お父様やロストと戦わなかったカグヤとヒメカは、割とあっさり準決勝に進めたのだが。

つまり、あと準決勝に進めるのは……お父様かロスト、どちらか1人だけ。

……勝てるのだろうか、そんな不安が頭によぎる。

彼は強敵だ、特にバクフーン――レジェンドの力は桁外れだと思う。

 

エンジュでは、わたくしは手も足も出ずに敗れてしまった。

わたくしは強くなった、もちろん他の皆さんも。

けれど……それでも、ロストに勝てるのかと問われれば、答えを出す事はできない。

戦う前から結果などわからないのは当然だが、勝てると思うという言葉すら出てこなかった。

……恐がっていないと言ったら、嘘になる。

負けるのがではなく……お父様を勝利させられないのが、だ。

きっと負けても、お父様は「よく頑張ったね」とわたくしを労ってくれる。

しかし……わたくしは絶対に納得できないだろう。

お父様の一番のパートナーという自負がある以上、わたくしは絶対に負けられない。

これは意地だ、全てはお父様を勝利へと導くための。

 

――両手から光り輝く剣を取り出す。

 

サイコセイバー、わたくしとお父様が協力して生み出した新たな技。

この剣が、勝利を導く剣になりますようにと。

わたくしは掲げ、暫しそのまま立ち尽くしていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『さあ、いよいよ準々決勝も最後の試合となりました。

 はたして勝つのはレイジ選手か、それともロスト選手か!』

「……いよいよ、だね」

「ああ……」

「レイジさん、勝つ事ができるんでしょうか……?」

「わからない。ロストもかなりの強さを秘めたトレーナーだし……」

「けれど、レイジくんならきっと勝てるわよ」

 

背後から聞こえる声。

 

「シロナさん!」

振り向くと、そこには両手にアイスを持ったシロナの姿が。

「ってシロナさん……何ですかそのアイスは」

「欲しいの?」

「そういう意味じゃなくて……」

「ここに来る途中の売店で買ったの、結構美味しいからついつい買いすぎちゃった」

 

確かに買いすぎである、なにせ両方ともにトリプルなのだから。

なんだか緊張感が一気に薄れてしまい、カイリ達は揃ってため息をついた。

 

「――レイジくん、調子はどうだった?」

「朝は特にいつもと変わらなかったと思いますけど……」

「………そう」

「? 何かありました?」

「いえ……きっと気のせいね」

何故か、彼が少し焦りのようなものを抱えている風に見えたのだが……カグヤがいつも通りと言うならそうなのだろう。

 

「ところでシロナさん、昨日までチャンピオン席で観てたのに、今日はどうしてここに?」

「こっちの方がよく見えるから、それにあっちだとワタルが色々うるさいのよ。

 実況顔負けにいちいち説明するから、反応するのも面倒だし……」

「な、なるほど……」

 

心底うんざりした表情を浮かべている辺り、よほど相手をするのが面倒だったのだろう。

そうこう話しているうちに、両者がフィールドまで移動する。

 

「始まるぜ」

「うん……」

再び、カグヤ達の周りに緊張が走る。

だというのに、相変わらずシロナは呑気にペロペロとアイスを食べていた。

しかしその瞳の色は真剣そのもの、チャンピオンとして戦いを見守る姿勢だ。

 

(頑張って、レイジくん……)

 

『両者共に、一体目のボールを取り出しました!!』

「レイジ」

「なんですか?」

「あれから、お前は強くなれたか?」

「………強く、なれたと思います」

自信はない、たとえ自分が強くなれたと思っていたとしても、結果がそれに繋がるわけではないのだから。

 

「お前らしいな……謙虚なものだ」

「…………」

「楽しみだ、お前とのバトルでおれはまた何かを得られるかもしれん。

 そしてそれ以前に……ずっとお前と本気で戦いたいと思っていた」

「――僕もです。そして……今度こそ僕が勝ちます」

「よく言った。ならば……勝負だレイジ!!」

 

「――アクセル、お願い!!」

「――ルカリオ、出ろ」

 

「っ」

「ルカリオ……リオルの進化系」

「あのルカリオ……私のルカリオと同じくらい強いわね。よく育てられてるわ」

「えっ、シロナさんのルカリオと……!?」

つまりそれは、凄まじい力を秘めているということ。

それでは、アクセルに勝ち目は……。

 

(さあレイジくん……どう戦うのかしら?)

交換するか、それともこのまま戦うか……。

 

「アクセル、相手はルカリオだけど……このまま戦うよ!!」

〈えっ……あ、はい父上!!〉

 

「…………」

僅かに眉を潜めるシロナ。

「……シロナさん、どうかしましたか?」

「……なんでもないわ」

「………?」

明らかになんでもないようには見えないが、試合に集中する為にカグヤは視線を向けた。

 

「先攻はロスト選手から、それでは……試合開始!!」

「ルカリオ、はどうだん」

「アクセル、こっちもはどうだんだ!!」

アクセルとルカリオ、両者のはどうだんがぶつかり合い――破られたのはアクセルのはどうだん。

 

「かわしてインファイト!!」

「こちらもインファイトだ」

はどうだんを避け、一気に踏み込み拳の連打を叩き込むアクセル。

しかし、それは吸い付くようにルカリオの拳に止められてしまう。

 

「くっ……はっけい!」

「ボーンラッシュ」

はっけいを繰り出そうとした瞬間、ルカリオはボーンラッシュを展開しアクセルを殴り飛ばす。

〈がっ………!?〉

「そのまま追撃しろ」

間合いを詰めるルカリオ。

 

「バレットパンチで弾き飛ばして!!」

〈くっ――うぉぉっ!!〉

脚で吹き飛ばされる自分の身体を支えながら、振り下ろされるボーンラッシュを弾くアクセル。

「とびひざげり!!」

すぐさま左の脚でとびひざげりを仕掛ける―――!

 

が、それはルカリオの右手で受け止められ瞬時に投げ飛ばされた。

身体を回転させながら、フィールドに着地するアクセル。

 

『こちらもさすがと言った所でしょうか、序盤から激しい戦いを繰り広げています!!』

「くっ………」

やはり強い、こちらの攻撃を確実に止めるだけではなく、反撃すら行うとは……。

(……妙だな)

 

歯を食いしばるレイジとは違い、ロストは眉を潜めていた。

自分は有利な状況、それを疑っているわけではないが……アクセルに技のキレがないように見える。

予選を見てきた限りでは、レイジとアクセルのコンビネーションは見事だった、それは今も変わらないかもしれない。

だがしかし、それでも今までよりキレがなくどこか違和感を感じるのだ。

それに……レイジの様子もどこかおかしい。

この間戦った時とは違う、どこか焦りの色が見え隠れしているような……。

 

「アクセル、踏み込んでクロスチョップ!!」

「ルカリオ、両腕でメタルクローだ」

繰り出されるアクセルのクロスチョップ。

それを、両腕によるメタルクローで真っ向から受け止めるルカリオ。

 

「くそ……っ!!」

(レイジ、何を焦っている……?)

「アクセル、そのままとびひざげり!!」

「ルカリオ、受け止めろ」

鍔迫り合いになりながらのとびひざげりを、ルカリオは踏むように脚を動かしアクセルの攻撃を防ぐ。

「離れて!! その後に『テトラコンビネーション』だ!!」

 

「っ、レイジくんまだそれは早い―――!」

おもわず口に出すシロナ。

アクセルは一度間合いを広め、すぐさまテトラコンビネーションの為に再び踏み込んだ。

繰り出されるバレットパンチ。

それを、ルカリオは全て弾いていく。

 

〈っ、りゃあ―――!〉

続いてとびひざげり。

しかし、それも片腕で防がれ。

 

「勝負を急ぎすぎだレイジ、ルカリオ――『フォースアサルト』!!」

「何!?」

〈ぐっ……!?〉

アクセルの脚を掴み拘束した状態で放ったのは……あくのはどう。

攻撃を与えると同時に、ルカリオはアクセルの脚を離し瞬時に別の攻撃を仕掛ける。

それは――りゅうのはどう。

 

〈がは―――っ!?〉

受け身などできず、地面を削りながら吹き飛んでいくアクセル。

そこに、間合いを詰めたルカリオのかわらわりが炸裂———!

 

〈ぐ、ぁ………〉

身体は止まったものの、大きく地面にめり込みアクセルが動かなくなる。

そこへ、トドメとばかりにはどうだんが撃ち込まれた!!

 

「アクセル!!」

「リオル、戦闘不能!! ルカリオの勝ち!!」

『まず先に一体目を撃破したのは、ロスト選手のルカリオだ!!

 流れるような連続攻撃は、もはや見事としか言いようがないぞー!!』

 

「そんな……レイジさんが先に負けた……」

「あのルカリオ、かなりつええ………」

「…………」

 

「……なんか、レイジおかしいよ」

「えっ?」

「おかしいって……何がだよカグヤ?」

「上手く説明できないけど……レイジ、どこか焦ってる……」

いつもの彼なら、もっと慎重にバトルをするはずだ。

だというのに、攻撃一辺倒になって……あんな戦い方をする彼を、カグヤは見た事がなかった。

 

「……カグヤも、気づいたみたいね」

「シロナさん……」

「貴女の言う通り、レイジくんはどこか焦ってる……早く有利な状況にしたくて、アクセルとのコンビネーションもどこかぎこちないものになっていたし……。

 それにあんなに早い段階で『テトラコンビネーション』を使うなんて、普段の彼なら考えられないわ」

「け、けど……あいつ特に様子がおかしいわけじゃなかったし……」

そう、戦う前はいつもの彼と変わらない様子だったはずだ。

だというのに、もしカグヤとシロナの言っている事が正しいなら……一体彼はどうしたというのだろうか。

 

「……レイジ、ロストさんに前は手も足も出なかったから……もしかしてそれが影響してるのかな……」

「あり得るわね。前はまったく適わなかったから、今回も……。

 そう思って自分を見失ってしまう事もあるわ、私もそういう時があったから……」

「そんな……」

「じゃあ、このままじゃレイジの奴……」

「――このまま自分を見失えば、間違いなく彼は負けるわ」

「っ、冗談じゃねえぞそんなの……レイジ、しっかりしやがれ!!!」

 

「…………」

アクセルを戻すレイジ。

……どれも彼のポケモンは強すぎる、このままではどんどんやられてしまうだけだ。

そう思い、レイジはルギアが入ったボールを手に取り……。

 

「マスター、何を焦っているのだそなたは」

ボールの中から響くルギアの声に、レイジは動きを止めた。

 

「ルギア……?」

「自分は焦っていないとでも言うつもりなのか?

 余の目は誤魔化されんぞ、そなた……前にあの男に手も足も出なかったからといって、気持ちが負けているのではないのか?」

「――――」

心を見透かされたかのようなルギアの言葉に、レイジは口を閉ざす。

すると、ボールの中でルギアがため息をついたような気がした。

 

「迷うな、自分を信じよ。今までマスターは自分と自分のポケモン達を信じて戦ってきた、たとえそれがどんな相手であったとしてもだ。

 ならば、今回も同じように戦えばよい。

 余も皆も、マスターを信じておる。だから……自分を見失うな」

「…………」

「皆も同じ事を考えておる、そなたのそなたの戦いを……余も、信じているから」

暖かく、優しい信頼に満ち溢れたルギアの声。

それが、レイジの中にある焦りが少しずつ薄れていった。

 

「……みんな、ごめん」

「フン、マスターも人の子。故に間違いを侵すのも致し方ないとは思うが……余を従えているのなら、もう少ししっかりしてほしいものだな」

「……そうだね」

「しかし、余の言葉っ自らの過ちに気づけたのならばよし。後で余を褒めちぎるのならば許してやるぞ」

「ふふっ……ルギア、ありがとう」

構わぬ、そう告げおとなしくなるルギア。

 

(……レイジの雰囲気が元に戻ったか)

ようやく全力で戦えそうだ、そう思いロストの口元に笑みが浮かんだ。

『さあ、レイジ選手の二体目はどのポケモンになるのか!!』

「…………」

手に持っているルギアのボールを腰に戻す。

そして――代わりに手に取ったボールの中に入っているのは……。

「ティナ、お願い!!」

 

『レイジ選手、二体目のポケモンはサーナイトだ!!』

「おいおい、もうティナを出すのかよ!!」

「やっぱり、まだ焦りがあるんじゃ……」

「さあ……どうかしらね」

少なくとも、シロナには心配する必要はないと思えた。

何故なら、レイジの表情には焦りの色は見受けられないからだ。

 

「ティナ、か……」

「でんじほうだ!!」

「ルカリオ、ボーンラッシュで弾け」

迫るでんじほうをボーンラッシュで弾き、その勢いのままティナとの間合いを詰めるルカリオ。

 

「れいとうパンチ!!」

ぶつかり合うれいとうパンチとボーンラッシュ。

(互角か………!)

「かみなりパンチ!!」

「インファイト!!」

打撃音が、フィールドを包み込む。

しかし――弾き返されるティナの身体。

やはり格闘戦ではルカリオに比があるようだ。

 

「はどうだん!」

必殺のはどうだんがティナへと迫る―――!

 

それに対し、ティナはあの剣を展開した。

「ティナ、サイコセイバーだ!!」

「何!?」

驚愕の声が、ロストの口から放たれる。

 

――切り裂かれるはどうだん。

それと同時に、ルカリオへと迫るティナの両手には、光り輝く剣が握られていた。

 

「ルカリオ、ボーンラッシュ!!」

すぐさまボーンラッシュを展開し、光り輝く剣に振り下ろすルカリオだったが……。

ガラスが砕けるような音と共に、ボーンラッシュが砕かれる。

ティナの右の剣一本によって……。

 

〈――これで、終わりにしましょう)

左の剣で、ルカリオの身体を一閃。

その一撃でルカリオは地面へと倒れそして……。

「ルカリオ、戦闘不能!サーナイトの勝ち!!」

『なんと、見た事がないサーナイトの攻撃でルカリオがあっという間に撃破されたー!!!』

 

「……あれが、サイコセイバーか」

凄まじい威力に、カイリ達は言葉を失った。

(……どうやら、立ち直ったみたいね)

先程とは違う彼の様子に、シロナも笑みを浮かべた。

 

「もどれルカリオ。……たいしたものだ、この間とはまるで桁違いにパワーアップしたようだな」

「はい。ティナは強くなりましたよ」

「それでこそ、本気で戦う価値があるというものだ。――出ろ、ゲンガー」

ボールから飛び出し、ふわふわと怪しく浮游するゲンガー。

 

「………ティナ、戻ってくれ」

〈えっ?〉

ティナが首を傾げるのと、レイジが彼女をボールに戻したのはほぼ同時。

その行動に、ティナだけではなくロストも眉を潜めた。

流れを掴んできたというのに、ここでティナを戻すとは……。

 

「…………」

ボールを腰に戻し、別のボールを手に取る。

 

「――ほぅ。ようやく余を出すのか」

「うん。ここで一気に流れを掴むよ」

「良い判断だと思うぞマスター、それに……余も戦えないのは非常につまらぬ」

「……そうだね。そろそろ君の力を見せてやらないと」

「うむ! マスターの言う通りだ!!」

 

「………?」

違和感と、プレッシャーがあのボールから感じられた。

「ゲンガー、気をつけろ」

あのボールの中に入っている存在は、今までとはあきらかに違う。

そう感じ、ゲンガーに注意を呼びかけるロスト。

そして――レイジは天高くボールを投げ、名を呼んだ。

 

 

 

「――ルギア、お願い!!」

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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