ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
レイジはアクセルとヒカリ、ロストはルカリオとゲンガーを失い、互角の戦いを繰り広げていた。
続いて、ソウルとラプラスの戦いとなり…ラプラスの攻撃によりピンチに陥るソウル。
この状況を打開するために、必殺のギガインパクトを発動させたソウルであったが……。
「ソウル、ギガインパクトだ!!」
迫り来るふぶきを、ギガインパクトで迎え撃つソウル。
爆発が起き、両者の視界が塞がれた。
「今度こそ終わりにしてやるぞレイジ。ラプラス、れいとうビーム!」
噴煙の中からソウルの影が見え、トドメの攻撃を放つラプラス。
ソウルは避ける事ができずに、そのままれいとうビームを……。
「なっ―――」
驚愕は、ロストの口から放たれた。
れいとうビームはそのまま影を貫き。
「ソウル、シャドークローだ!!」
背後から現れたソウルのシャドークローが、ラプラスへと直撃した。
(……あの影は、かげぶんしんだったのか)
「10まんボルト!!」
追い討ちをかけるかのような、ソウルの10まんボルト。
たまらず叫び声を上げ、ラプラスは首を下げた。
「ソウル、このまま一気に畳み掛けるんだ!!」
「させるか! ラプラス、ハイドロポンプ!!」
「かわして!!」
「っ」
紙一重、まさしくギリギリの間合いでハイドロポンプを回避するソウル。
そのまま地を蹴り、ラプラスの背中に飛び込んだ。
「かみなりだ!!」
ラプラスの身体が、かみなりに包まれる。
「ラプラス、あられ!」
一声鳴き、瞬く間にフィールドに現れる冷たい空気。
すぐさまそれはあられとなり、ソウルを横殴りに吹き飛ばした。
「ソウル、10まんボルトだ!!」
着地と同時に10まんボルトを放つソウル。
しかし、それは吹き荒れるあられによってラプラスまで届く事はなかった。
その間にも、あられは容赦なくソウルの身体を痛めつけていく。
(あのあられをどうにかしないと………!)
ソウルもそろそろ限界に近い、だがそれはラプラスも同じだ。
このあられを何とかすれば、きっと何か打開策が生まれるはず。
「ソウル、あまごい!」
「何―――!?」
空へと向かって、ソウルの雄叫びが木霊する。
刹那、空に雨雲が現れ雨が降り注いだ。
「見て、あられが消えてくよ!!」
「あまごいやにほんばれのような天候を変える技は、最後に放った技が優先されるのよ。
つまり、後に発動したあまごいが先に発動したあられを消したの」
「なるほど……さすがレイジだね!!」
「……いえ、だけどレイジさんは自分を不利な状況にしただけです」
「えっ?」
「あまごいが発動している間は、水タイプの技の威力が上がってしまうんです。
すなわち、ラプラスの攻撃力が大幅にアップしてしまったんです」
(……本当に、あられを無くす為だけにあまごいを発動させたの?)
そんな単純な手を、彼がするとは思えない。
だとしたら、他にどんな目的で……?
「あられの脅威を取り除く方法にしては、浅はかだったな」
「…………」
「ラプラス、ハイドロポンプ!!」
先程よりも更に凄まじい威力のハイドロポンプが、今度こそソウルを倒そうと放たれた。
「――――」
レイジは指示を出さない、ソウルもその場から動かない。
そして――レイジはぽつりとソウルへと呟く。
「――ごめんね、ソウル」
辛そうな声で、謝罪の声を告げた瞬間。
「な、に………!?」
ロストの口からは、驚愕に満ちた声が。
フィールドには、視界を遮るような黄金色の光が溢れた。
「これは―――!?」
知っている、この光は間違いなく“かみなり”の光だ。
雨雲から槍のように、ラプラスへとかみなりが貫いたのだ。
誰が放ったのかなど、言わなくてもわかる。
………だが。
「アブソル、ラプラス、共に戦闘不能!!」
それでも、ソウルの勝ちにはなりえなかった。
『絶体絶命の中、なんとアブソルは己を犠牲にした攻撃でラプラスと相打ちましたー!!!』
「い、今……何が起きたんだ?」
「……あまごいによって強化されたハイドロポンプが、ソウルを倒したっていうのはわかったんだけど……」
「――あまごいで雨を降らせている間は、かみなりの技が必ず当たるようになるのよ」
「えっ……それ、本当ですか!?」
「ええ、だけど……ソウルは特大のかみなりを当てるために、ラプラスの攻撃をわざと受けた。
すなわち、自分を犠牲にする道を選んだのよ」
「そんな……」
「……レイジを勝たせるために、あそこまでしたのか」
「レイジくんのポケモン達は、それだけ彼を大切に想っているのよ。
だからこそ、あんな選択を迷わず実行したのでしょうね」
「…………」
アブソルを戻したレイジの顔は、罪悪感と申し訳なさにより泣く一歩手前のようなものになっていた。
「――アブソルの想いを無駄にするな」
「…………」
「アブソルはお前を勝たせるために、この選択を選んだんだ。
ならば、お前にはまだやるべき事があるはずだぞ」
「……わかっています」
そうだ、ソウルは自分を勝たせるために自らを犠牲にしてラプラスを倒してくれたのだ。
ならば、今自分がやるべき事は彼女に対して申し訳なく思う事じゃない。
「――リオン、お願い!!」
『レイジ選手、6体目のポケモンはリザードンだ!!』
「ボーマンダ、出番だ」
『対するロスト選手はボーマンダを繰り出してきました!!』
「ボーマンダ……ドラゴンタイプか」
その中でも能力はかなり高い、どちらにせよ厄介な事になりそうだ。
しかも、ロストはまだ無傷のポケモンが一体いる。
それに、おそらくそのポケモンは……。
「ボーマンダ、りゅうのいぶき」
「リオン、かえんほうしゃだ!!」
ぶつかり合うりゅうのいぶきとかえんほうしゃ、威力だけならばどうやら互角のようだ。
「ほのおのパンチ!!」
「ドラゴンクロー」
炎の拳と竜の爪、鍔迫り合いになりながら睨む両者。
「かみなりのキバ!」
先に仕掛けたのはボーマンダ、かみなりのキバがリオンの肩口に食い込んだ。
「リオン、ブラストバーン!!!」
痛みに耐えながら、至近距離からのブラストバーンでボーマンダを吹き飛ばす。
「よっしゃ、まともに効いたぜ!!」
「うん、これなら――」
「いえ、このままじゃ拙い………!」
シロナが叫んだ瞬間、ブラストバーンの炎からボーマンダが這い出してきた。
「なっ………」
そのままリオンへと向かうボーマンダ。
しかし、ブラストバーンの反動でリオンは動けない。
「後ろに回り込んで身体を掴め!」
後ろから、ボーマンダはリオンを羽交い締めにしながら飛び上がる。
「そのままちきゅうなげだ!!」
「負けるなリオン、はがねのつばさ!!」
きりもみしながら落ちていくリオンだが、はがねのつばさをボーマンダの身体に打ちつける。
だが、それでもボーマンダは離れずそして……。
「リオン!!」
凄まじい衝撃音と共に、リオンの身体は地面へと叩きつけられてしまった。
『ボーマンダのちきゅうなげがリザードンにヒット!! これはかなり効いたようだぞー!?』
「――ボーマンダ、トドメを刺せ」
「っ、リオン立つんだ!」
叫ぶようにリオンを呼ぶレイジ。
彼の声に反応し、どうにか立ち上がろうとするリオンだったが……。
――既に、ボーマンダは攻撃の準備を終えていた。
「りゅうせいぐん」
空高く放たれるりゅうせいぐん。
それは荒ぶる隕石のように落下していき、倒れているリオンを連べ打ちにする―――!
「リオン!!!」
土煙が、リオンの身体を覆っていく。
……避けられる間合いではなかった。
倒れたままのリオンは、ボーマンダのりゅうせいぐんをまともに受け、あれでは戦闘不能に―――
「――――」
土煙から、一つの影がゆっくりと立ち上がった。
「…………リオン」
『なんと、あれだけのりゅうせいぐんを受けながらも、リザードン立ち上がりました!!!』
歓声が、スタジアムに響く。
「す、すげえ……ちきゅうなげにりゅうせいぐんをまともに受けたのに」
「でも、あのままじゃリオンは……」
ここから見てもわかるくらい、リオンの身体は疲弊しきっている。
おそらく立っているだけでも辛いのだろう、あと一撃でも受ければ今度こそ終わりだ。
「ボーマンダ、はねやすめ」
「させるか――リオン、かえんほうしゃ!!」
苦しげな表情ながら、かえんほうしゃを吐き出すリオン。
むろん、そのような攻撃など当たるはずもなく、はねやすめを中断しあっさりと回避するボーマンダ。
(く、そ……身体が、動いてくれねえ………!)
ただかえんほうしゃを吐き出しただけ、それなのに全身が軋んだ。
それだけボーマンダのパワーが凄まじかった事を物語っているのだが、そんな事リオンにはどうだってよかった。
(俺の身体、せめてあいつを倒すまでは保ってくれよ………!)
みんな必死に戦っているのだ。
倒されたアクセル達の為にも、そして主人であるレイジの為にも、絶対に負けられない。
〈俺は……俺は、絶対に負けねえ!! 負けるわけには……いかねえんだ!!〉
「ボーマンダ、はかいこうせん」
「リオン、フレアドライブだ!!」
〈うぉぉぉぉっ!!〉
真っ向からはかいこうせんに向かっていくリオン。
フレアドライブの炎が、少しずつはかいこうせんを圧していく。
「頑張れ、頑張ってくれリオン!!」
〈ぐっ、レ、レイジ……!!〉
互角の威力により、一向に勝負がつかない。
しかし……その均衡は無情なほどあっさりと崩される事になる。
〈がっ………!?〉
急速に、リオンの身体から力が抜けていく。
それと比例し、フレアドライブの炎も―――
「リオーーーン!!」
はかいこうせんに呑み込まれるリオンの名を絶叫するレイジ。
そして、噴煙が晴れた時には……。
「――リザードン、戦闘不能! ボーマンダの勝ち!!」
悔しそうに顔を歪ませたリオンが、ボーマンダの前倒れ込んでいた……。
「リオンまで………!」
「これでレイジに残されたポケモンは、ティナとルギアの二体」
「対するロストは三体、しかもそのうちの一体はまだフィールドにすら出ていない……」
誰がどう考えても、レイジにとって不利以外の何者でもない。
しかも無傷の一体は、おそらくライコウで間違いない。
――絶望的な状況。
カイリ達の中で、レイジの敗北という結末が頭に浮かんだ。
「――負けない。レイジは絶対に負けないよ」
言い聞かせるような小さな呟き。
けれど、はっきりとした口調でカグヤは言った。
「勝負は、最後の最後までわからないわ。たとえどんなに絶望的な状況だとしても、彼なら……絶対に諦めない」
だから、カグヤもシロナも彼が負けるなど微塵も思っていない。
彼は勝つ、きっと勝ってくれる。
ただそう信じて……2人はじっと戦いを見守っていた。
『さあレイジ選手、この不利な状況からどう覆すのか?」
「…………」
どうする?
ティナを出すか、それともルギアを出すか……。
……けれど、どちらを出しても打開策が浮かばない。
相手に小手先な手口など通用しないし、力押しをした所で……。
(どうする……どうすればいいんだ)
嫌な考えばかりが頭に浮かび、戦意が失われていく……。
〈――ならば、わたくしがお父様の勝利の剣になります〉
「え――」
ボールから、勝手に飛び出してきた一体のポケモン。
「………ティナ」
〈お父様、諦めないでください。みんな勝利を目指して戦ってきたのです。だというのに……お父様が諦めてしまっては、わたくし達は一体何の為に戦えばいいのですか?〉
「…………」
〈わたくしが、必ずお父様に勝利を導いてみせます。ですから……ただわたくしを信じていてください〉
「信じる………」
その、言葉で。
折れかけていた心が、戦意が蘇っていく。
そうだ、どうして自分は逃げ腰になっているのか。
一度負けた相手だからといって、何故臆する必要があるというのか。
自分は1人ではない、支えてくれる仲間達がいるではないか。
ならば――自分のやるべき事は一つだけ。
「――ティナ、サイコセイバーだ!!」
彼女達の主として、戦うのみ!!
〈はい、お父様!!〉
嬉しそうな声を上げ、両手にあの光り輝く剣を握りしめる。
「ボーマンダ、遠距離から攻めるぞ。りゅうのいぶき!!」
接近戦では分が悪いと悟ったのか、遠距離から攻撃を仕掛けるボーマンダ。
それは間違いではない、間違いではないが……。
〈――そんな程度で、わたくしから逃れるおつもりですか?〉
妖しく笑い、瞬間――ティナの姿が消えた。
「っ、ボーマンダ。後ろだ!!」
それでも反応できたロストとボーマンダは、見事と言えるかもしれない。
だが、そんな程度ではダメなのだ。
反応しただけでは、彼女の剣からは逃れられない。
――ボーマンダの悲鳴が木霊する。
たった一息、ボーマンダの背後に回ったティナの身体がぐらりと揺れたと思った瞬間――既に七発もの斬撃をボーマンダの身体に刻んでいた。
「ドラゴンクロー!!」
上段から振り下ろされるドラゴンクロー。
それを、ティナは剣を十字に構えそれを受け止める。
「りゅうの――」
「マジカルリーフ!!」
反撃する隙など与えない、ボーマンダが攻撃を仕掛ける前にティナのマジカルリーフが先に命中した。
技を受け、ボーマンダの身体がぐらつく。
〈―――終わりです〉
それに、ティナは短くそう呟き――上下からの一閃により、ボーマンダを沈黙させた。
「ボーマンダ、戦闘不能! サーナイトの勝ち!」
『やはり、レイジ選手のサーナイト強し!! リザードンとの戦いのダメージが残っているとはいえ、ただの一撃も攻撃を受けずに撃破してしまったー!!』
「…………」
〈いい加減、出し惜しみをするのはやめていただけませんか?
ライコウは出しなさい、今すぐに〉
「大きく出たなティナ、まさか……もう勝つ気でいると?」
〈当たり前です。勝つ気でいなければ勝負にすらなりませんから。
わたくしはお父様にとっての勝利の剣、故に……考える事はその一点のみです〉
「………いいだろう。ならばお望み通り相手をさせてやる」
〈…………〉
剣を握り直し、身構えるティナ。
しかし、この戦いは意外な存在によって止められてしまう事に。
「待てティナ、ライコウの相手は余がしよう」
〈えっ……?〉
おもわず振り向くと、そこには勝手にボールから出たルギアの姿が。
レイジも突然のルギアの行動に、目を見開いて驚いていた……。
To.Be.Continued...