ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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故郷であるマサラタウンから旅立ったレイジとカグヤ。

目指すはトキワシティ、なのだが……。


第2話 〜トキワシティへ、初めてのポケモンバトル!!〜

「ひゃあぁぁぁっ!!?」

「………はぁ」

カグヤは叫び、レイジはため息をつきながら全速力で走っていた。

そしてそんな2人の後ろには、ポッポとオニスズメの大群が怒りを露わにしながら彼等を追いかけていた。

一体何があったのか、事の発端は少し前に遡る………。

 

「あっ、ポッポだ!」

マサラタウンを後にしてから数時間、草むらに立ち寄ったカグヤは鳥ポケモンのポッポを発見した。

今までポッポを見かけた事など幾度となくあるし、実際に野生のポッポとバトルした事はある。

しかし今の自分は一人前ではないがポケモントレーナーだ、モンスターボールだってある以上ゲットしたいと思ってしまう。

「エネコ、いけーっ!」

そうと決まればさっそくバトルだ、肩に乗っているエネコに命令を下す。

 

「スピードスター!!」

エネコが放ったスピードスターは、草むらで歩いているポッポに見事命中。

バトルで野生のポケモンを弱らせてから、モンスターボールでゲットする。

ポケモントレーナーの常識であり、事実カグヤの行動は正しい、が……。

「更にとっしんよ!!」

「えっ?」

倒れたポッポに向かって更に攻撃を仕掛けるカグヤとエネコ。

 

「カグヤ、待って」

止めようと声を掛けるレイジだったが、時既に遅くエネコのとっしんはポッポを吹き飛ばした。

「あっ……」

そこでようやくやりすぎたと思ったカグヤであったが、今更である。

「……カグヤ、やりすぎ」

「あはは……」

「君のエネコは強いんだから、スピードスターだけで充分だったのに」

「うぅ……」

まったくもってその通りであり、うなだれるカグヤ。

エネコもそんな彼女に謝るように身体を擦り寄せている。

しかししょうがない、誰にだって失敗はあるのだから。

 

「……よーし、次こそはゲットする!!」

「頑張って」

「うん!」

さっきまでの落ち込んだ顔はどこへやら、すぐさま笑顔になるカグヤにレイジは優しく微笑みを返す。

ほのぼのとした良い雰囲気、なのだが……。

 

〈パパ〉

頭の中に響く少女の声。

カグヤのものではない、ラルトス――ティナからのものだ。

テレパシーでレイジの頭の中に直接話しかけているのだが、その声色は少し焦りの色を見せていた。

 

「ティナ?」

〈早く逃げた方がいいと思う〉

テレパシーでそう告げながら、ティナは先程ポッポが吹き飛ばされた場所を指差す。

その意味がわからず、レイジは首を傾げるが……次の瞬間、カグヤの手を掴み走り出した。

「ひゃっ!? ど、どうしたのいきなり!?」

「ティナがここから逃げた方がいいってさ」

「はぁ?」

レイジとてその意味を理解しているわけではないが、第六感が優れたティナが何かを感じ取ったのだ、それにおとなしく従った方が身のためである。

そして――レイジの判断は正しいものになる。

 

「えぇっ!!?」

悲鳴に近い驚きの声を上げるカグヤ。

その視線の先には……大量のポッポとオニスズメ達が自分達を睨んでいる姿が。

言うまでもなく先程の恨みを晴らそうとしているらしく、その中にはカグヤのエネコが吹き飛ばしたポッポの姿も。

「ひゃあぁぁぁっ!!?」

「………はぁ」

そして、話は冒頭へと戻る。

 

「そ、そんなに怒らなくたっていいじゃない!!」

「向こうからしたらいきなり痛めつけられたんだから、仕方ないと思うけど……」

「そうだけど、こんな集団で襲いかかるなんて大人気ないわよ!!」

「……とりあえず、今は逃げるしかないね」

またため息をつきつつ、レイジは更に走るスピードを速める。

こうして、端から見ると愉快な鬼ごっこは暫し続いたのだった……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――し、死ぬ」

ゼェゼェと息をしながら、カグヤはポケモンセンター内にあるソファーに倒れ込む。

はっきり言って他の人の邪魔なのだが、今のカグヤにはそんな配慮をする余裕などなかった。

なにせトキワシティに着く寸前まで走り続けたのだ、体力に自信があるカグヤとはいえ、もう一歩も動きたくないと思ってしまうのは仕方ないと言える。

「……大丈夫?」

そんなだらしないカグヤに、レイジは持ってきた飲み物を手渡す。

ありがと、と呟きながら座り直し一気に貰ったジュースを飲み干すカグヤ。

 

「カグヤの手持ちもジョーイさんに渡したから」

「あ、ありがと……ごめんねレイジ」

別に、そう呟きながらカグヤの隣に座りジュースを口に運ぶ。

「予定より早くトキワに着けてよかったじゃない」

「ま、まあ確かに考えようによってはそうだけど……つ、疲れた」

もう動きたくないよ〜、と愚痴を零すカグヤだが、レイジが放った一言によってすぐさま元気を取り戻した。

 

「じゃあ、ジム戦はやめとく?」

「っ、そ、そうだった!!」

(……忘れてたの?)

そんなツッコミは野暮なのでやめておく。

「こうしちゃいられないわ。レイジ、今すぐトキワジムに行くわよ!!」

勇ましく立ち上がり走り出そうとするカグヤだが、レイジはそんな彼女の腕を掴んで引き留める。

 

「ポケモンを預けた状態でいくの?」

「…………」

そうだった、今自分のポケモン達はセンターに預けたままだったんだ。

途端に恥ずかしくなり、僅かに頬を赤く染めながらおとなしく座り込む。

「いてもたってもいられないのはわかるけど、もう少し落ち着いた方がいいよ。旅だってまだ始まったばかりなんだから」

「……ごめん」

しょぼーんという効果音が聞こえてくる程うなだれるカグヤ。

 

「別にそこまで落ち込まなくていいのに……」

「……うぅん。違うの」

顔を俯かせながら、レイジの呟きに首を横に振るカグヤ。

「何が違うの?」

「……私、旅に出れたのが嬉しくて1人ではしゃいで……レイジに迷惑かけちゃったなぁって思って……」

「別に、迷惑だなんて思っていないさ。

 それにさっきのだって初心者なら平気でやらかすようなミスだと思うし」

実際に自分も力加減を間違えてゲットし損なう可能性だって充分にあるのだ、基礎知識はあっても実戦経験はないに等しいのだから。

だから、カグヤが自分に対して申し訳なく思う意味などない。

 

「だからカグヤ、そんなに落ち込まないで。

 いつもみたいに勢いで行動するカグヤの方が僕は良いと思うから」

「……なんだか微妙にフォローになってない」

「そうかな?」

「でも……ありがと。レイジは優しいね。私、そんなレイジが大好きだよ」

「……ありがとう」

 

屈託なくそんな言葉を口にするカグヤに、少しだけ困ってしまう。

カグヤという少女は、自分の容姿がいかに整っているのかがわかっていない。

美しい栗色の髪、くりくりとした可愛らしい瞳。

他の部位のパーツも素晴らしく整っており、事実マサラには彼女に想いを寄せる男は何人もいた。

そんな彼女に他意がないとはいえ、そんな言葉を投げかけられればどきりとするのは当然だ。

まあしかし、これもあまり珍しい光景ではないので、すぐさま冷静になるレイジだった。

 

――アナウンスが流れ、自分達のポケモンの治療が終わった事に気づく2人

 

「終わったみたいだね」

「よーし、受け取ったら早速ジムに行くわよ!」

「はいはい」

適当に返事を返しつつ、カグヤと共に立ち上がるレイジ。

しかし、2人はすぐさまその場で動きを止めた。

 

「トキワジムなら今は閉まってるぞ」

横からいきなり自分達とそう年の変わらない少年が話しかけてきたからだ。

 

「閉まってる?」

「ああ。ずっと前から無人になってるんだよ。なんではわかんないけど」

「そんなぁ〜……それじゃあバッチが貰えないじゃない」

(貰う事前提で話を進めてる……)

よほど自信があるのか、それとも単に何も考えてないのか。

後者だな、と心の中で暴言を吐くレイジ。

 

「いいじゃねえか。他の街でバッチを集めれば」

「何言ってるのよ。バッチを8つ集めなきゃポケモンリーグに行けないじゃない」

だからこうして肩を落としているというのに、カグヤは恨めしそうな視線で少年を睨む。

しかし、少年の次の言葉で彼女は間の抜けた表情を浮かべた。

「お前知らないのか? バッチは4つ集めればポケモンリーグの出場権を手に入れられるんだぜ?」

「…………………へ?」

「つい最近連盟の方で決めたらしいよ、リーグ出場権を得るために必要なバッチは8つじゃなくて4つでいいって」

あっけらかんと驚きもせずに、レイジが補足説明を告げる。

 

「……レイジ」

「何?」

「知ってたの?」

「うん」

「………何で教えてくれなかったの?」

「訊かれなかったから」

 

身も蓋もない返答。

それに怒りを覚えおもわず握り拳を作ってしまうが、必死に自分で抑えながら怒りを鎮めていく。

……ここで怒ったらバカだと思ったからだ。

 

「そんな事も知らないなんて……ホントのド素人みたいだな。お前」

「な、なんですって!!?」

「だってそうだろ。トレーナーなら誰だって知ってる事を知らないんだから」

確かにそれは事実であり、同時にカグヤがまだトレーナーになったばかりの素人というのも事実だ。

だがしかし、カグヤの中ではそういう問題で収まってはくれない。

馬鹿にされた、そう思ったカグヤはキッと少年を睨みながら指を突きつけた。

 

「なら勝負よ。私はド素人じゃないって所を見せてやるんだから!!」

「……素人なのは間違いないのに」

的確なレイジのツッコミも、今の彼女には届かない。

「いいぜ。なら外で勝負だ」

「望むところよ!!」

「………はぁ」

バチバチと火花を散らし合う2人に、レイジはあからさまに疲れたようなため息をついたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「使用ポケモンは一体、正々堂々と勝負だ!!」

「いいわよ。今更謝ったって許さないんだから!」

〈……パパ、どうしてカグヤはあんなに怒ってるの?〉

傍らでカグヤを見守っているレイジに抱きかかえられながら、ティナはテレパシーで彼に問い掛ける。

 

「ド素人だって言われたのが頭にきてるからじゃないかな?」

〈事実なのに?〉

「事実でも言われると頭にくる事もあるって事さ」

〈ふーん……〉

なんだかよくわからないが、事実だからといって無闇に口にするのはよくない。

そう思いながら、ティナはおとなしくレイジに身体を預け彼と同じく観戦する事にした。

 

「いくぜ――出ろ、サンド!!」

高々とモンスターボールを投げる少年――ケン。

ボールが開かれ、中から出てきたのは地面タイプのポケモン、サンド。

(エネコを出すのかな……?)

そう思ったが、カグヤは肩に乗っているエネコには何も言わず、モンスターボールを取り出した。

 

「チコリータ、レディーゴー!!!」

「――チコッ!!!」

前方に投げ、エネコではなくチコリータで戦いに挑むカグヤ。

彼女にとって初めてのトレーナーとのポケモンバトルであり、チコリータにとっても初めての戦闘である。

 

「なんだそのポケモン、初めて見た……」

「だってこれはジョウト地方のポケモンだもん」

「へぇ……だけど、俺のサンドの敵じゃないな」

「ふんだ。そんな事言ってられるのも今のうちなんだから!!」

「カグヤ、もう少し落ち着いてバトルをした方がいいよ」

「わかってる。レイジは私が華麗に勝つところを見逃さないでよ!!」

(……だといいけど)

 

カグヤの声が大きかったのか、他のトレーナーや街の人達もいつの間にかギャラリーを作って観戦していた。

それを見てカグヤは少しだけ緊張した面持ちになるが、すぐさま気持ちを切り替えて前を見据える。

 

「チコリータ、たいあたり!!」

「チコォッ!!」

一声鳴き、カグヤの命でまっすぐサンドに向かっていくチコリータ。

「サンド、まるくなるだ!!」

対するサンドはその場から動かず、身体を丸めてチコリータの攻撃を弾き返した。

 

「っ、さすがサンド……防御は高いわね。ならチコリータ、はっぱカッター!!!」

「チコ、チコッ!!!」

着地したチコリータに命じ、5つのはっぱカッターがサンドの防御を崩し吹き飛ばす。

(よし、効果抜群!!)

地面タイプのサンドは草タイプの技に弱い。

このまま押し切ろうと、カグヤは再びチコリータに技を命じた。

 

「チコリータ、もう一度はっぱカッター!!」

「サンド、あなをほる!!」

「キュキュッ!!」

しかし、チコリータのはっぱカッターは虚しく空を切り、サンドは地中の中へ。

「っ、どこに……」

「右から来るよ」

「え……?」

ぽつりとレイジが呟いた瞬間。

 

「サンド、ずつき!!」

勢いよく地面から飛び出したサンド、しかもレイジの言った通りチコリータの右側から。

慌てて対処しようとするチコリータだが、時既に遅い。

「チコリータ!!」

「チ、コ………」

まともにサンドのずつきを受け、二、三度地面に転がるチコリータ。

立ち上がるが、やはりダメージが大きかったのか苦しそうだ。

 

「チコリータ、頑張って!!」

「サンド、ころがれ!!」

「くっ……」

身体を丸め、勢いよくチコリータに向かって転がってくるサンド。

「そう何度も当たってたまるもんですか……!

 チコリータ、右に跳んで避けて!!」

間一髪、カグヤの命令で回避するチコリータだが。

 

「まだだよ、カグヤ」

またしても、警告するようなレイジの声が後ろから聞こえた。

「チコーッ!!?」

瞬間――身体を弾き飛ばされるチコリータ。

 

「えっ、な、なんで……」

「『ころがる』は暫く持続する技だよ、しかも時間が経てば経つほどその威力を増す」

「っ……」

そうだった、忘れていた自分が情けない。

強化されたころがるを受け、チコリータはもう限界だ。

(とにかく、打開策が見つかるまで回避するしかない……!)

「…………」

(でも、真っ正面からぶつかっても勝ち目なんかないしどうすれば……)

 

考えろ、考えるんだ。

必死で勝利する為の方法を考えるカグヤだが、焦りばかりが大きくなっていくばかり。

負ける――そんな弱音がつい口に出ようとした時、後ろに居た少年がぽつりと呟いた。

 

 

「――サンドは“転がってるんだよ”」

 

 

「…………」

 

聞こえた、確かにレイジはそう言ったのだ。

意味のない呟きなどでは決してない、彼は情けない自分を見かねてヒントを出してくれたのだ。

周りに聞こえないように呟いたのは、自分の配慮だとすぐにわかる。

しかもそんな曖昧なヒントしか出さない辺り、彼らしい。

だが――その言葉で答えは見えた。

そして、勝利を導く為の答えを命じた。

 

「チコリータ、少し前の地面をはっぱカッターで“掘り起こして”!!」

「はぁ……!?」

驚愕は、ケンのもの。

「チーコォッ!!!」

チコリータはすぐさまはっぱカッターを連続で発射し、自分の少し前の地面に穴を開けていく。

それはちょうどサンドくらいの小さなポケモンならすっぽり収まってしまう程の穴となり――その場にいた誰もが彼女の意図にようやく気がついた。

 

だが遅い、サンドは急に止まる事などできずにそのまま向かっていき……。

チコリータによって作られた穴に、すっぽりと収まってしまった。

「キュウッ!?」

「チコリィィッ!!」

何事かと攻撃を中断するサンドだったが、既にチコリータはそんなサンドにはっぱカッターを発射していた。

上からの奇襲、しかもいまだに自分の状況がわかっていないサンドに避ける術はなく、まともにチコリータの攻撃を受け吹き飛ばされてしまう。

 

「サンド!!?」

倒れたサンドは目を回し、戦闘不能であるのは誰が見ても明らかであり。

「サンド、戦闘不能!!チコリータの勝ち!! よってこの勝負、カグヤの勝利!!」

審判が戦いを終わらせる言葉を告げ、カグヤの勝利という形で幕を降ろした。

 

………。

 

「……勝、った?」

「うん……勝った」

いつの間にか隣に立っていたレイジが、「おめでとう」と賞賛の言葉を送ってくれた。

そこでようやく、自分がトレーナー同士のポケモンバトルに初勝利する事ができたと理解し。

「〜〜〜〜っ、やったーーーーーっ!!!!」

ちょっと大袈裟だと思えるくらい喜び、その場でピョンピョンと飛び跳ねてから勢いよくレイジに抱きついた。

 

「……抱きつく意味は?」

「だって嬉しいんだもん!!初めてのバトルでしかも初勝利できるなんて思わなかったから……」

「わかったよ。わかったからまずは他にする事があるんじゃない?」

言われて気づく。

そうだった、ちゃんと自分と戦ってくれたトレーナーに礼をしないと。

ポケモンバトルは礼に始まり礼に終わる。

別に決められた事ではないが、そう思っている以上はきちんとしなければ。

 

「ありがとう、すっごく楽しいバトルだったよ!」

ニコニコと笑みを浮かべながら、握手をしようと右手を差し出すカグヤ。

そこに嫌味の色など微塵もなく、純粋に楽しかったのだと伝わってくる清々しさがあった。

「……ああ。俺も楽しかった、またやろうな」

そうして握手を交わすと、周りからは拍手と賞賛の声が。

……一部、カグヤの容姿だけを誉める輩もいるようだが、それは無視。

それに一部レイジを睨む輩もいるが、それも完全に無視する。

さて一度センターに戻るとしよう、そう思ったレイジはその場から踵を返すが……。

 

「あれ?レイジはバトルしていかないの?」

チコリータをボールに戻しながら、カグヤはいきなりそんな事を口走ってきた。

 

「…………」

嫌です、そんなオーラと視線をカグヤに向けるレイジ。

しかし、そんなもので動じるカグヤではない。

「いいじゃない。せっかくトレーナーの人達も集まってきたんだし。

 ねぇ、誰かレイジと戦ってくれる人はいませんか?」

「ちょ……」

勝手に話を進めないでほしいのだが、カグヤはそんなレイジの心中など知ったこっちゃないとばかりに、周りにいるトレーナーに声を掛ける。

 

〈相変わらずカグヤは強引だね、パパ〉

「はぁ……」

ティナの言葉に、ため息で返すレイジ。

「……それじゃあ、ボクが戦ってあげようか」

「あっ、ホントですか?」

(僕を置いて勝手に話だけが進められていく……)

カグヤはカグヤなりにバトルを楽しんでほしいと気を遣っているのはわかるのだが、レイジはポケモンバトルをしたいわけではない。

ポケモンは好きだ、けどだからってバトルがしたいわけじゃない。

 

「レイジ、この人がバトルしてくれるって!」

嬉しそうにカグヤは1人の男性を連れてくる。

なかなかに整った顔立ちの美形だ、キザなポーズもそれなりに絵にはなっている。

だが――レイジは本能的に悟った。

 

――この人は、僕じゃなくてカグヤが目的だ、と。

 

事実、この男は先程から自分ではなくカグヤを見ている。

(面倒事にならなければいいけど……)

とは思いつつも、バトルをしてくれると言っているのだから、必要最低限の礼儀は示さなくては。

「……宜しくお願いします」

ぺこりと一礼。

しかし男はそんなレイジを無視し、カグヤへとにやついた笑みを向け口を開いた。

 

「ねぇカグヤ、彼と君は一体どんな関係なんだい?」

(……ああ、やっぱり)

この光景、マサラに居た頃も飽きる程見てきた。

カグヤは基本的にレイジの傍にいる、だから彼女に好意を抱く人間は必ずと言っていいほどこんな風に自分達の関係を尋ねてくるのだ。

男の問い掛けに、カグヤは素直に答えた。

 

「レイジは私の幼なじみで旅の仲間で家族で大好きな人ですよ」

(っ、最後のは余計だよ……)

彼女に他意はない、それは何度も聞いているからレイジにはわかる。

だがしかし、彼女の事をよく知らない相手からすれば、誤解を招く言葉であるのは当然で……。

「……なるほど。そうかい」

予想通り、睨まれた。

予期していた事なので驚きはしないが、やはり憂鬱になってしまう。

 

(ああいう言い方は誤解を招くって何度も言ってるのに……)

軽くカグヤを恨みたくなったが、今更あーだこーだ言っても仕方ない、彼女に悪気はないのだから。

しかし、疲れるのは変わりないので文句を言わない代わりに盛大なため息をつくレイジだった。

「はぁ………」

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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