ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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激闘が続くカグヤとヒメカのバトル。

互いに一歩も譲らず、遂にヒメカはハクを繰り出す。

はたして、勝負の行方は……。


第57話 友情バトル〜カグヤ対ヒメカ!!〜(後編)

「ハク、ドラゴンダイブ!!」

「カメックス、受け止めて!!」

ドラゴンダイブで向かってくるハクを、真っ向から受け止めるカメックス。

つるぎのまいによる大幅なパワーアップが成せる技であるが……今回はそれが裏目に出てしまった。

 

「かみなり!!」

逆にカメックスの腕を掴み、かみなりを叩き込むハク。

さすがに呻き声を上げ、カメックスはハクから腕を放してしまう。

「りゅうのいぶき!!」

そこに追い討ちを掛けるかのように、りゅうのいぶきを叩き込みカメックスを吹き飛ばすハク。

 

「カメックス、ハイドロカノン!!」

だがカメックスとて負けていない、吹き飛ばされながらもハイドロカノンを放とうと――

 

「え―――」

放とうとして――その時には既にハクがカメックスの身体を掴み上げていた。

「ちきゅうなげよ!!」

そのまま回転しつつ、カメックスを地面へと叩きつけるハク。

 

「カメックス戦闘不能!カイリューの勝ち!!」

『カメックス敗れた!!怒涛の連続攻撃を繰り出したカイリュー、凄まじいパワーです!!』

 

「カメックス、よく頑張ったね!うーん、やっぱりハクは強いね!!」

「当たり前よ。それよりカグヤ、このまま一気に巻き返してあげるわ!」

「やれるものならやってみせなさい!! ムウマージ、レディーゴー!」

『ヒメカ選手、再びムウマージを繰り出しました』

「ムウマージ、シャドーボール!!」

「りゅうのはどう!!」

シャドーボールとりゅうのはどうがぶつかり合い、爆発が起きる。

 

「――接近戦になるってわかってるよヒメカ。ムウマージ、右にれいとうビーム!!」

煙に紛れてムウマージへと間合いを詰めるハクを読んでいたのか、弱点であるれいとうビームの指示を出すカグヤ。

それは見事ハクへと命中し……。

「えっ!?」

そのまま、ハクは幻のように消えて――

 

「っ、ムウマージ左――」

「遅い!! アクアテール!!」

慌てて左に向き直るムウマージに、渾身のアクアテールが叩き込まれる。

その威力は凄まじく、ムウマージの身体は地面へとめり込んでしまった。

 

「ムウマージ、早く脱出して!!」

「だいもんじ!!」

脱出する前に、ハクが放っただいもんじが迫る。

「っ、ムウマージ、フレイムシールド!!」

咄嗟の判断でそう指示を出し、脱出を中断してフレイムシールドを展開するムウマージ。

だいもんじの炎を間一髪防ぎ。

 

「シャドーボール!!」

追撃を仕掛けてきたハクに反応し、シャドーボールを放った。

避けられてしまったものの、追撃を免れその間に地面から抜け出す事ができた。

 

(強い……とんでもなく強いよ!!)

 

警戒はしていた、ハクはヒメカの手持ちの中で最強のポケモンだと思っていたから。

その考えは正しい、だが……ハクの強さの予想は甘すぎた。

元々カイリューというポケモンの能力は総じて高い、それを踏まえても……ヒメカのハクの強さは尋常ではなかった。

もしフレイムシールドがなければ……もしムウマージを出していなければ、あの時点でハクに二体やられる所だった。

 

「…………」

強すぎる、本当にとんでもないくらいに。

だけど……だからこそカグヤは楽しい。

自然と笑みが零れ、ワクワクした気持ちが胸の中で溢れてしまいそうだ。

 

「……カグヤ、楽しそうだ」

 

彼女の笑みを見て、レイジはぽつりと呟きながら優しい笑みを浮かべた。

……彼女は、いつだってトレーナーとのバトルを楽しんでいた。

勝っても負けても笑顔を浮かべ、「楽しかった」と言って笑うのだ。

それが、凄く眩しくて純粋で……間違いなく、彼女の強さとなった。

彼女は強い、力では劣っていても心では誰にも負けない。

たとえ実力があったとしても、彼女のように心が強くなければ一流とは言えない。

けど、彼女にはその強さがある。

だから、流れがヒメカに向いているというのに、ああやって笑顔を浮かべ心からバトルを楽しんでいるのだ。

 

(頑張れ、カグヤ……)

 

「ムウマージ、相手は強いけど頑張るよ!!」

「ムゥ!!」

ボロボロだというのに、ムウマージの闘志は少しも衰えてはいない。

後ろにカグヤがいる、だから負ける気などしない。

彼女のポケモン達は皆そう思っているから、こうやって彼女と同じように楽しみながら戦うのだ。

 

「――ハク、楽しいわねこのバトル」

 

視線は向けず、けれど力強く頷くハク。

楽しいバトルというのを体験するのは、意外と難しいものだ。

ポケモンバトルは競争でもある、だから大抵のトレーナーは「負けたくない」という一心でバトルしてくる。

けれど、彼女は違う。

勝つのはもちろん嬉しい、けれど精一杯楽しめればそれで充分。

そう思っているから、彼女とバトルすれば自然と楽しくなるのだ。

 

「ムウマージ、サイケこうせん!!」

「ハク、りゅうのいぶき!!」

サイケこうせんとりゅうのいぶき――威力はまったくの互角だ。

「おにび!!」

サイケこうせんを放ちながら、更にムウマージはおにびをハク目掛けて放つ。

 

「ハク、そのまま飛びなさい!!」

技の押し合いをしつつ、向かってくるおにびを飛んで回避するハク。

「引っ掛かった!!」

「えっ……」

背後から迫る攻撃。

避けられず、ダメージを負ってしまうハク。

 

(マジカルリーフ……いつの間に………!)

「ムウマージ、れいとうビーム!!」

「っ、だいもんじ!!」

放たれるれいとうビームを、だいもんじで迎え撃つ。

互いの技は相殺し合い、その影響で凄まじい水蒸気が発生した。

 

「たつまき!!」

「かわして!!」

その中を確実に向かってくるたつまきを回避するムウマージ。

「引っ掛かったわね!!」

「っ、やば……っ!!」

気づいたカグヤだったが、時すでに遅し。

たつまきを回避したムウマージの背後に、攻撃の準備を終えたハクが現れ。

 

「ストーンエッジ!!」

背後から技を受け、ムウマージは地面へと叩きつけられてしまった。

 

「ムウマージ戦闘不能!カイリューの勝ち!!」

『カメックスに続きムウマージまで撃破したカイリュー、凄まじい強さとコンビネーションだ!!』

「あちゃー……並ばれちゃった」

「巻き返すって、言ったわよね?」

「むぅ……やっぱりハクは強いなぁ」

「さあ、次は誰を出すの?」

 

「なら私は……クチート、レディーゴー!!」

『カグヤ選手、再びクチートを繰り出してきましたが……やはり先程のバトルでかなり体力を消耗しているようです!!』

(……ラティオスはまだ出さないの?)

どうやら、とっておきとして最後までとっておくつもりらしい。

ならば、とヒメカはハクをボールに戻し……再びロールを繰り出した。

 

「ロールか……クチート、めちゃくちゃ強いパンチ放ってくるから気をつけてね。

 素早さも向こうのが上だから」

「クゥ……クチッ!」

あまりよくわかってないのか、ちょこんと首を傾げた後……とりあえず頷くクチート。

「ぷっ……」

「あーっ、なんで笑うのよヒメカ」

「ごめんなさい、だけどあなたのクチートが面白くて……」

「むぅ……クチート、面白いってさ」

「クゥ!!」

誉められたと思っているのだろう、嬉しそうに笑顔を浮かべてクチートはその場どピョンピョン飛び跳ねる。

 

『………ぷっ』

それを見て、今度はカグヤとヒメカ両者ともに吹き出してしまった。

 

「なんだよあいつら……なんか緊張感ねえバトルだな」

呆れた様子のカイリだが、ミカンの表情は微笑ましげだ。

(楽しそうだなぁ……なんだか、見ていて参加したくなるようなバトルです)

 

「ロール、でんこうせっか!!」

一息でクチートとの間合いを詰めるロール。

既にピヨピヨパンチの準備は終えている。

「ピヨピヨパンチ!!」

「今だよクチート、ピヨピヨパンチに噛みついちゃえ!!」

「なっ!?」

なんと、避けられないと理解するやクチートはその大きな口でピヨピヨパンチごとロールの耳に噛みついてしまった。

これにはさすがのロールも驚いたのか、痛みで顔をしかめながらも大慌てでクチートを引き剥がそうとする。

 

「クチートってなんでも噛みついちゃうからね、私がいつも噛みつかれてる痛みを思い知れー!」

「ロール、きあいだまで叩き落としなさい!!」

「させないよ! そのままかえんほうしゃ!!」

ロールの耳に噛みついた口から、かえんほうしゃが放たれ爆発が起きる。

その衝撃でクチートがロールから離れるが――まだ攻撃は終わらない。

 

「アイアンヘッド!!」

かえんほうしゃを受け怯んでいるロール目掛けて、特大のアイアンヘッドをぶつけるクチート。

だが……ロールは吹き飛ばされずにその場で踏みとどまった。

「嘘っ!?」

「スカイアッパー!!」

この至近距離なら外さない、スカイアッパーを叩き込みクチートを空中へと殴り飛ばすロール。

すると――それが最後の力だったのか。

クチートが地面に落ちると同時に、ロールの身体もぐらりと揺れて……地面に倒れ込んでしまった。

 

「クチート、ミミロップ、共に戦闘不能!!」

『なんと、両者共にダウンしてしまったー!!』

 

「惜しい〜、けどよく頑張ったよクチート!!」

「ロール、あなたもよく頑張ったわね」

互いに自分のポケモンに労いの言葉を送り、別のボールを取り出す。

「よーし、それじゃあそろそろ私のとっておきの出番だね!!」

(っ、来るのね……!)

 

「――ラティオス、レディーゴー!!!」

勢いよく飛び出してくる一体のポケモン。

『カグヤ選手の6体目のポケモンは、なんとラティオスだ!!』

 

「でやがったなラティオス………!」

「カノンのお兄さん……実力はカノンと同等かそれ以上………!」

「さてな……勝負はやってみなきゃわかんねえぞ」

 

「――ハク、もう一度お願い!!」

(やっぱりハクで来るよね……)

後の一体が何なのかはわからないが、ラティオスを止めるにはハクしかないと思ったのだろう。

カグヤの予想通りとなったが……はたしてどうなるか。

 

「ラティオスー、相手はめっちゃ強いけど、負けたらカノンにボロクソ言われちゃうから、勝たないとヤバいよ?」

「……どうしてそういう嫌な事を言うんですか」

戦う前から戦意を喪失するような事を言わないでほしい。

こんな状況だというのに、相も変わらず彼女はマイペースだ。

(………でも)

彼女の言う通り、無様に負けたらカノンに……。

 

―――兄さんってこんなに弱かったんだね。私知らなかったよ……。

 

とか言われそうで恐い。

本気で考えてしまい、慌てて嫌な想像を振り払った。

「ラティオス、どうしたの?」

「………いえ」

あんたのせいだ、とは口にできない。

 

「ハク……気をつけなさい」

「ラティオス、りゅうのいぶき!!」

「ハク、こちらもりゅうのいぶきよ!!」

ラティオスとハク、互いのりゅうのいぶきがぶつかり合う。

威力は互角、ならば次は接近戦!!

 

「ギガインパクト!!」

「ドラゴンダイブ!!」

指示が出たのはまったくの同時、続いてギガインパクトとドラゴンダイブでのぶつかり合い。

激しい衝突音の末――両者共にきりもみ状態のまま吹き飛ばされた。

 

「ラティオス、りゅうせいぐん!!」

翼でバランスを取りながら、りゅうせいぐんを撃ち放つラティオス。

だが、ハクはまだバランスを崩したままで避けられない―――!

 

「はかいこうせんで薙ぎ払いなさい!!」

それでもさすがと言うべきか、迫り来るりゅうせいぐんをはかいこうせんで全て破壊するハク。

「ドラゴンクロー!!」

「っ、受け止めて!!」

噴煙を掻き分け、ラティオスはハクとの間合いを詰めてのドラゴンクロー。

しかし、ハクはなんとかラティオスの身体を掴みドラゴンクローを防ぐ。

 

「くっ………!」

「そのままちきゅうなげよ!!」

「ラティオス、しねんのずつき!!」

身体を掴まれたまま、ハクの頭にしねんのずつきを叩き込むラティオス。

たまらず放してしまい、地面へと落下していくハクに――ラティオスは最後の大技を放った。

 

「フルパワーでラスターパージ!!!」

「―――くらえぇっ!!」

眩い光が、地面を削りながらハクを壁際まで吹き飛ばしていく。そして――

 

「カイリュー戦闘不能!ラティオスの勝ち!!」

『カイリューたまらずダウンだ!! さすがラティオスといった所でしょうか!!』

 

「ふぅ……お疲れ様ラティオス」

「はい。ですがまだ勝負はついていませんよマスター」

「そだね。とりあえず戻ってて。

 そんでもって……メガニウム、レディーゴー!」

ラティオスをボールに戻し、メガニウムを再びフィールドに出すカグヤ。

 

「さあ、ヒメカ選手の残されたポケモンはいよいよ一体。

 はたして逆転する事はできるのでしょうか!」

「……逆転するのよ、わたしは。――フィー、あなたの出番よ!!」

 

「あれは……」

『ヒメカ選手最後のポケモンはエーフィだ!!』

「あのイーブイが進化したのか……」

 

「可愛いなぁ……でも、私のメガニウムの方がずっとずっと可愛いよ!」

「何を張り合ってるのよあなたは……フィー、トレーナーはあんなんだけど、油断したらダメよ」

「……メガニウム、私あんなんって呼ばれちゃった」

メガニウムはそんなカグヤに視線を送り、あきれたようにため息をついた。

そんなの当たり前じゃない、そう言わんばかりの表情で。

(あれー? なんかメガニウムにもバカにされたような気が……)

そう思ったが、今はバトルに集中しなくてはと思考を戻した。

 

「フィー、でんこうせっか!!」

華麗に、しなやかな動きでメガニウムに向かっていくフィー。

ロールほどではないにしろ、メガニウムが捉えられるスピードじゃない。

 

「メガニウム、リフレクター!!」

「同じ戦法は通じないわ!! フィー、こちらもリフレクター!!」

ヒメカもリフレクターの指示を出すが、その目的は彼女とは違い防御の為ではなかった。

『おおっと!? ヒメカ選手、リフレクターを足場のように……レイジ選手と同じ戦法を用いてきました!!』

(初めに考えて実行したのはヒメカなんだけどね……)

 

「シャドーボール!!」

メガニウムの真上から、シャドーボールを放つフィー。

避けられず命中し、メガニウムはすぐさま真上に視線を向けるが、そこには既にフィーの姿はなく。

「リフレクターは自身を全て包み込んでくれるわけじゃない、つまり……どこかしらに必ず穴があるのよ!!」

「メガニウム、エナジーボール!!」

「サイケこうせん!!」

エナジーボールをすんなり避け、サイケこうせんを命中させるフィー。

更にでんこうせっかで、リフレクターの影響がない箇所を攻撃する。

 

『リフレクター戦法破られた!! メガニウム、エーフィの動きについていけません!!』

(どうにかして止めないと………!)

「シャドーボール!!」

そうしている間にも、フィーのシャドーボールは確実にメガニウムの体力を削っていく。

 

「メガニウム、はなびらのまい!!」

一声鳴くと、メガニウムを囲むようにはなびらのまいが舞い散る。

その範囲は広く、フィーも避けきれずに当たってしまった。

「今よメガニウム、のしかかり!!」

飛び上がり、自分の身体でエーフィを押し潰そうとするメガニウム。

 

「サイコキネシス!!」

それを、フィーのサイコキネシスが空中で止めてしまった。

そのまま、メガニウムを壁にめり込ませるフィー。

かなりのダメージを与えた、これならばさすがのメガニウムも――

 

「タネマシンガン!!」

「え―――」

攻撃は、完全に無防備になっていた右横から放たれた。

タネマシンガンを放ったのは、今サイコキネシスで壁に叩きつけられたはずのメガニウム。

 

「――――」

そこでようやく、ヒメカは何が起こったのか理解できた。

(………みがわり)

一度ならず二度までも、同じ技にしてやられてしまった。

しかし、気づいた時には既に遅く。

「フルパワーでソーラービーム!!!」

メガニウムの放ったソーラービームをまともに受けたフィーは、そのまま地面に倒れ込み。

 

「エーフィ戦闘不能! メガニウムの勝ち!! よって勝者、マサラタウンのカグヤ選手!!」

 

己の敗北を、思い知ったのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――惜しかったな」

「………カイリ」

試合が終わったヒメカを、カイリは優しく迎え入れた。

「……強かったわ、カグヤ」

「ああ、そうだな」

「こっちも一生懸命特訓したけど、適わなかった」

「…………」

「でも、凄く楽しかった。不思議と悔しいなんて思わなかったわ」

 

そう告げるヒメカの表情は、悔いなど微塵もない穏やかなものだった。

……悔いなど、あるわけがない。

あんなにも楽しいバトルだったのだ、負けてもよかったと思えるくらい楽しかった。

だから……悔いはない。

 

「そっか……そりゃそうだよな、全力でぶつかり合ったんだ。

 悔いなんてあったら、それこそおかしい」

「ええ。……だから心配しなくても大丈夫よカイリ。それよりあなたは自分の事を心配しなさい」

「そう、だな……」

 

明日は、レイジとのバトルなのだ。

悔いの残らないように、しっかりとやっていかなければ。

自分がライバルと認める、自分を親友だと言ってくれた彼の為にも。

そしてなにより、自分自身の為にも……。

 

「……頑張らなきゃな」

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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