ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
第一試合はカグヤの勝利と終わり、いよいよレイジとカイリのフルバトルが始まろうとしていた。
はたして、どのような勝負となるのであろうか……。
『――さあ、準決勝第二試合が始まろうとしています。
はたして、勝者はどちらの選手になるのでしょうか』
熱い歓声に包まれたスタジアム内。
そこに現れたのは、準決勝で戦うライバル。
「あっ、出てきた!」
レイジ達の登場で、会場のボルテージはますます上がっていく。
「す、凄いですね……」
「2人とも準々決勝での戦いが凄すぎたから、否が応でも注目を浴びてしまうのでしょうね」
「うーん……レイジ、そういうの苦手なんだけど大丈夫かな……?」
まあ彼の事だから大丈夫だと思うが、おそらくげんなりと肩を落としている事だろう。
「……すげえな」
「そうだね……」
そう相槌を打つレイジの表情は、カグヤの言う通りげんなりとしたものになっている。
「けどよ。俺達のバトルには関係ねえ、全力でぶつかるだけだ」
「…………」
「……やっと戦えるなレイジ、俺は嬉しいぜ。
お前とのバトルは、一番の楽しみにしていたんだ。まあ……決勝で戦えたらテンションは最高潮になったんだけどな」
「……かもね」
「絶対に負けねえぞ……お前と全力で戦って、必ず勝つ。
そして決勝でカグヤにも勝って、必ずチャンピオンリーグに行ってやる!!」
「…………」
強い意志、決意の光がカイリからひしひしと伝わってくる。
……彼はその為に、ここまで頑張ってきたのだ。
全ては夢のため、ただひたすらに突き進んでいる。
けれど――それは自分とて同じだ。
今ここにいるのは、自分もチャンピオンリーグに出場するため。
あの時シロナと交わした約束を果たすため、そしてなにより……自分自身の為に。
「――僕だって、絶対に負けないよカイリ。
譲れないものがある以上……僕だって、全力で君を倒す!!」
「上等だ。かかってきやがれレイジ!!」
「――リオン、お願い!」
「ゾロアーク、行け!」
『レイジ選手の一体目はリザードン、そしてカイリ選手はゾロアークを繰り出しました』
(始まるのね……あの2人のバトルが)
もはや、あの2人の実力は四天王クラスだ。
そんな2人のぶつかり合いが何をもたらすのか、まったく予想がつかない。
一瞬たりとも見逃すわけにはいかない、シロナはそう思い自然と表情を強ばらせた。
「先攻はレイジ選手となります――」
『…………』
睨み合う両者。
互いに譲れないもののために、今戦いの幕が。
「―ー試合開始!!」
その声により、遂に開かれた。
「リオン、かえんほうしゃだ!!」
初めから全力の攻撃を放つリオン。
「かわしてシャドークローだ!!」
それを瞬時に避け、一息で間合いを詰めるゾロアーク。
「ほのおのパンチ!!」
鈍い銀光を放つシャドークローを、ほのおのパンチで迎え撃つ。
防がれたと知るや、ゾロアークはリオンの顔に蹴りを放つ。
首を右に動かし、それを避けるリオン。
それと同時に、蹴りを放ってきたゾロアークの脚を掴み、地面へと叩きつけようとし。
身体を回転させリオンの腕から逃れ、ゾロアークは側転の要領で間合いを離した。
『序盤から凄まじい攻防です!! どちらも一歩も譲らない!!』
「す、凄い戦いだね……」
「……さすがカイリとレイジといった所かしら」
「――まだ始まったばかりだったか」
「あっ、ロストさん」
「昨日から姿が見えなかったようですが、一体どこに行っていたんですか?」
「ちょっと気になる事があってトキワまで行ってきた。
それはともかく、2人の勝負はまだ始まったばかりだな?」
「はい。リオンとゾロアークの戦いですよ」
そうか、そう相槌を打ちながら席に座るロスト。
(トキワに何の用だったのかしら……)
気にはなったが、今はレイジ達の試合に集中しようと、シロナは再びフィールドに視線を向けた。
「リオン、飛んで!!」
翼を羽ばたかせ、空へと飛翔するリオン。
「逃がすなゾロアーク、あくのはどう!!」
そこに、ゾロアークのあくのはどうが迫る。
「ブラストバーン!!」
それをブラストバーンで砕き、ゾロアークごと反撃した。
炎に包まれるフィールド。
しかし――そこにゾロアークの姿はない。
「上!!」
レイジの声に反応し、リオンが顔を真上に上げた瞬間。
槍のようなゾロアークの蹴りが、リオンを地面へと叩き落としていく。
空中でバランスをとり、両手両脚を用いて着地するリオン。
その間にも、ゾロアークは次の攻撃を仕掛けようと迫る―――!
「ナイトバースト!!」
〈調子に乗ってんじゃねえぞコラァッ!!〉
ナイトバーストを放つ前に、リオンがそう叫びゾロアークの脚を再び掴み上げる。
そして、力任せに地面へと叩きつけた―――!
そのパワーは凄まじく、フィールドに小さなクレーターができるほど。
二回、三回とフィールドに叩きつけ、雄叫びと共に力任せに投げつける。
爆音を響かせ、壁にめり込むゾロアーク。
「ゾロアーク!!」
かなりの衝撃だ、それなりにダメージを与えたとは思うが……。
それでも、煙の中からゾロアークはしっかりとした足取りでフィールドへと戻ってきた。
(まともに受けたのに……なんて体力だ)
「――やるじゃねえか」
「そっちもね」
「ゾロアーク、シャドーブレイド!!」
シャドークローを展開し、遠く離れたその場で振り下ろす。
すると、爪から漆黒の刃が放たれリオンへと向かっていく。
「かえんほうしゃ!!」
それを全弾かえんほうしゃで蹴散らし、再び飛翔するリオン。
「リオン、フレアドライブだ!!」
全身を蒼い炎で包み、ゾロアークへと突撃する。
それを。
「ゾロアーク、『ギガ・スパイラル・ブレイカー』だ!!」
「なっ――!?」
飛び上がり、ゾロアークが仕掛けたのはギガインパクト。
しかしただのギガインパクトではなく、ゾロアークは凄まじい回転を施しながらリオンへと向かっていく。
そしてぶつかり合い——リオンの身体がフィールドの外まで吹き飛ばされた。
「リオン!!」
叩きつけられた壁の瓦礫に埋まり、どうにか這い出してくるリオンだったが。
「リザードン戦闘不能!ゾロアークの勝ち!!」
そのまま前のめりに倒れ込み、戦闘不能へと陥ってしまった。
『まず序盤を征したのはカイリ選手のゾロアークだ!!』
「あのギガインパクト……普通のとは比べものにならない威力だね……」
「自分の身体を高速回転させる事によって発生するエネルギーを上乗せさせる事によって、ギガインパクトの威力を底上げしたようね」
それを差し引いても、ゾロアークのパワーは凄まじいものだ。
しかし……反動ダメージもそれに比例して大きいらしい、肩で大きく息をしている様子を見ればわかった。
(レイジくん、二体目はどうするの?)
「――アクセル、お願い!!」
『レイジ選手、二体目のポケモンはリオルだ!』
「きゃっ!!」
アクセルが出た瞬間、可愛らしい悲鳴を上げたシロナ。
何事かとそちらに視線を向けてみると、何故か彼女の手持ちであるルカリオがボールから飛び出してきたのだ。
「ルカリオ、一体どうしたの?」
〈勝手に出た事は謝る、だが……アクセルの様子が少しな……〉
「……アクセルがどうかしたの?」
〈どこか様子がおかしいわけじゃない、だが……あいつの波導が凄まじいまでに静かなんだ〉
「波導が、静か?」
そう言われても、いまいちピンとこない。
〈簡単に言えば、ひどく落ち着いているんだ。――落ち着きすぎてると言えるくらいにな〉
「…………」
ルカリオの言葉は、正直マスターであるシロナにも理解しがたい言葉だった。
しかし……その言葉は、きっと何かしら重要な意味を持つものなのだろう。
「アクセル、落ち着いてね?」
〈はい……父上〉
瞳を閉じ、手を前に出し円の形を動かしながらゆっくりと息を吐いた。
さながら精神統一をしているかのような動きに、ゾロアークも無意識のうちに警戒心を現す。
「ゾロアーク、大丈夫か?」
頷くゾロアークに、カイリは指示を告げた。
「よし、ならシャドークローだ!!」
再び間合いを詰め、シャドークローを繰り出すゾロアーク。
しかし、アクセルはその場から動かない。
瞳を閉じたまま、微動だにせず。
「――――」
パンッ、という乾いた音が響き……。
ゾロアークの攻撃が、当たり前のように弾かれてしまった。
弾かれた、そう理解したゾロアークだが、あまりにも呆気なく回避されてしまい、思考が追いつかず。
「――はっけい」
トンと、軽く右手をゾロアークの身体に当て。
砲撃のような一撃が、ゾロアークを吹き飛ばした。
「ゾロアーク!!」
空中でバランスをとり、着地するゾロアークだったが、ダメージが大きいのか片膝をつく。
(今の動き、一体何だってんだ………!)
まるで引き寄せられたかのようにゾロアークの攻撃は外れ、代わりに吸い込まれるようにアクセルの攻撃は当たった。
「ゾロアーク、シャドーボールだ!!」
相手の攻撃が理解できない以上、近距離で攻めるのは得策ではない。
そう思い、遠距離からのシャドーボールで攻撃を仕掛けるゾロアーク。
〈―――ふっ!〉
向かってくるシャドーボールを、真っ向から迎え撃ったアクセルは。
ふわりと、柔らかな動きであっさりと攻撃を避けてしまった。
「なっ………」
「アクセル、きあいパンチ!!」
〈ハッ―――!〉
一息で踏み込み、渾身の拳を叩き込むアクセル。
避けようとするゾロアークだが、先程のはっけいのダメージが大きいのかその場から動けず。
まともにきあいパンチを受け、地面に倒れ込んでしまった。
「ゾロアーク戦闘不能!リオルの勝ち!!」
『なんとリオル、不思議な動きでゾロアークを圧倒しました!!』
「えっ、えっ?」
「今の動きは……」
〈……やはり、な〉
混乱するカグヤ達の中で、ルカリオは納得したようにぽつりとそう呟いた。
「ルカリオ、何がやっぱりなの?」
〈あいつの波導がやけに静かだと思ったのだが、攻撃を受け流し反撃する戦い方をする為に、ギリギリまで己の波導を小さくしたんだ〉
「えっと……つまり、どういうこと?」
〈つまりあいつは、波導を極限まで小さくする事で攻撃を確実に弾き、カウンターを繰り出したという事だ〉
己の心を無とし、全ての攻撃をやさしく弾いてその力すら利用しての反撃。
ゾロアークの攻撃があっさりと弾かれたのも、アクセルが受け流す構えをとっていたから。
その後すぐに己の波導を極限まで上げ、ゾロアークのパワーすら利用して反撃した事により、こうも簡単に倒す事ができたのだ。
〈まだまだ未熟かと思ったが……なかなかやるじゃないか)
好敵手を見つけたような眼で、アクセルを睨むルカリオ。
「ルカリオ、解説ありがとう」
そう言いながら、シロナはルカリオをボールに戻す。
「いいんですか?」
「いいの。これ以上アクセルの活躍を生で見せたら乱入しそうになるから」
「乱入って……」
シロナのルカリオは、なかなかに好戦的な性格のようだ。
「……あれ!?」
「カグヤ、どうかしたの?」
「見てあれ! アクセルが……」
「えっ?」
何事かとアクセルに視線を送ると。
――彼の身体が、光に包まれている。
「これってもしかして……」
「進化、ね……」
シロナの言葉が放たれた時には、既に光は収まり。
『なんとリオル、ここでルカリオへと進化いたしました!!』
「アクセル、おめでとう」
〈ありがとうございます、父上!〉
身体は大きくなり、顔つきも逞しいものになったが、相変わらず無邪気な笑顔は健在のようだ。
「ゾロアーク、お疲れさん。……さて、まだまだこれからだぜ!!」
「…………」
「フローゼル、出てきてくれ!!」
『カイリ選手、二体目はフローゼルです!!』
〈何が来ようとも、僕には通用しない!!〉
「どうかな? フローゼル、アクアジェット!」
水に包まれ、アクセルに向かって突撃するフローゼル。
それを注意を払いながら、アクセルは再びあの構えを。
そして、互いの身体がぶつかる瞬間――フローゼルの攻撃は、アクセルの前にあっさりと弾かれてしまった。
「はっけいだ!!」
先程と同じく、はっけいを叩き込もうとするアクセル。
「フローゼル、浮き袋を膨らませろ!!」
しかし、その瞬間フローゼルの身体にある大きな浮き袋が膨らみ、アクセルのはっけいを弾いてしまった。
〈な、に――!?〉
これには驚き、驚愕の声を上げるアクセル。
「うわぁ、フローゼルの浮き袋って凄い膨らむんだね……」
「フローゼルの浮き袋は人間1人を乗せられるくらい大きくなるのよ。
でも……それにしたってアクセルのはっけいを防ぐなんて……」
しかもルカリオに進化してパワーも大幅に上がっているというのに、だ。
「たとえ攻撃を受け流したとしても、俺のフローゼルにアクセルの攻撃は通用しないぜ!!」
「…………」
たしかに、たいした防御力だとは思う。
しかし……完璧な防御などこの世には存在しない。
「アクセル、きあいだまだ!!」
〈ハッ―――!〉
渾身のきあいだま。
だが、フローゼルの浮き袋が再び膨らみきあいだまを弾いてしまう。
「無駄だぜレイジ!! フローゼル、アクアテール!!」
「アイアンテールだ!!」
アクアテールとアイアンテールのぶつかり合い。
互角だったのか、互いに吹き飛ばされた。
「れいとうビーム!!」
「かわして!!」
回避するよう指示を出すレイジだが。
〈ぐっ………!〉
バランスを崩したままでは無理だったのか、右腕にれいとうビームを受けてしまったアクセル。
『あーっと、ルカリオの右腕がれいとうビームの追加効果で凍りついてしまったー!!』
「これで右腕は使えないな!」
「……さーて、そいつはどうかな?」
「何……?」
「アクセル!!」
〈おぁぁぁぁぁっ!!〉
凍った右腕に力を込め、裂帛の雄叫びを上げるアクセル。
すると……凍りついている右腕から煙が立ち上り始めた。
その数秒後、アクセルの右腕を凍らせていた氷が粉々に砕け散る。
〈ふぅ……〉
確認のため、右腕を数回開いたり閉じたりを繰り返すアクセル。
「……ほのおのパンチで氷を無理矢理砕いたのかよ」
「さあ、勝負はこれからだ!!」
「―――上等!!」
「アクセル、はどうだんだ!!」
「フローゼル、みずのはどう!!」
はどうだんとみずのはどうがぶつかり合い、爆発が起きる。
その隙に、再び間合いを詰めるアクセルだが。
既にフローゼルは浮き袋を膨らませ、防御の体勢をとっていた。
「打ち砕くぞアクセル、『バニシングコンビネーション』だ!!」
〈くらえっ!!〉
フローゼルに向かって繰り出されたのは、あくのはどう。
だが、それはフローゼルの浮き袋の前に弾かれてしまい。
そう思った時には、りゅうのはどうがフローゼルに命中していた。
〈セイ―――!〉
続いて繰り出されたのはかわらわり。
「まさかレイジの奴……!」
ロストの声と、フローゼルの苦しげな声が重なった。
視線を向けると、浮き袋を膨らませたまま吹き飛ぶフローゼルの姿が。
(はっけいか……! 間違いない、アクセルの攻撃は………!)
〈だりゃあっ!!〉
弾丸のようにフローゼルに突き刺さるアクセルのとびひざげり。
怒濤の連続攻撃に、さすがのフローゼルにもダメージが行き渡る。
そんなフローゼルに追い討ちを掛けるかのように繰り出されたのは、スカイアッパー。
「フローゼル!!」
フローゼルの浮き袋が萎む。
そして、アクセルは空中で最後の一撃を繰り出そうと構え。
〈これで、最後だ!!〉
特大のはどうだんが、フローゼルを地面へと叩きつけた……。
ロストのルカリオの『フォースアサルト』。
そして、自身の『テトラコンビネーション』。
それを合わせたアクセルの新必殺技『バニシングコンビネーション』は。
「フローゼル戦闘不能!ルカリオの勝ち!!」
見事、絶大な防御力を誇るフローゼルを倒しきった――
To.Be.Continued...