ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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初めてのトレーナーバトルに勝利したカグヤ。
レイジは喜ぶカグヤに祝福の言葉を送ってからさっさとポケモンセンターに戻ろうとしたのだが……カグヤの余計な一言のせいで、バトルをする事になってしまった……。


第3話 〜トキワシティへ、初めてのポケモンバトル!!(レイジ編)〜

「使用ポケモンはさっきと同じく一体ずつだ。

 まあ、これじゃああっという間に勝負がつきそうだから、君は二体使ってもいいよ」

(………はぁ)

どうしてこんな状況になったのか、わかってはいるがどうしてもため息をつかずにはいられない。

 

「レイジー、頑張って!!」

そんなレイジの心中など理解していないカグヤは、満面の笑みを浮かべながらレイジに向かって応援の言葉を贈る。

……シュウの視線がまた鋭くなった。

「君みたいな男には、あの子は似合わないよ」

「……別に、そんな関係じゃない」

カグヤの発言はあくまで家族としてだ、だから誤解はしないでほしい……。

 

(って言っても無駄だろうな……)

仕方ない、もう逃げられないのならばバトルで黙らせるしかない。

不本意な展開ではあるものの、諦めというのも大事である。

「さあ……勝負!!」

「…………」

「ボクのポケモンはこいつだ!!」

そう声に出し、シュウが取り出したポケモンは……。

 

「モッコーッ!!」

「……モココ」

カントーにはいないポケモン、メリープが進化したモココ。

「どうだい?珍しいポケモンだろう?」

「別に」

勝ち誇ったシュウの言葉にも、レイジは一刀両断で斬り捨てる。

てっきり羨ましがると思っていたからか、まともに顔を引きつらせるシュウ。

しかし仕方ない、レイジにとって本当に珍しくないからだ。

 

「――リオン、お願い」

「ガゥーッ!!」

モンスターボールを上に投げ、リオン――ヒトカゲを出す。

(ふーん、レイジはリオンで戦うんだ……)

リオンにとって野生を含めたポケモンバトルは初めて。

なるほど、レイジはリオンにバトルを慣らせたいから今回取り出したようだ。

 

「……なあ、あいつ強いのか?」

隣にきたケンがレイジを指差しながら問いかける。

「うーん……どうだろ、わかんないや」

少なくとも、彼がバトルをしている姿を見たのは数えるくらいである。

一応ティナとのコンビネーションはそれなりだったと記憶しているが……リオンと一緒に戦うのは初めてのはず。

 

「あいつも災難だな。あのシュウと戦う事になるなんてさ……」

「えっ、あの人強いの?」

「一応このトキワでは同年代で一番強いぜ」

「ウソッ!?」

まさかそんな相手を選んでしまったとは思わず、まずったかも……と表情を歪ませるカグヤ。

 

「しかもさ、悪い奴じゃないんだけどちょっと女の子に対してだらしないっていうか……。

 気に入った相手にはしつこいんだよな」

「……なるほど、だからさっきから私の事ジロジロ見てたのか……」

「更に、自分の気に入った女の子の傍に男が居たらさ、めちゃくちゃ敵対心を持つんだよアイツ……」

げんなりした表情を浮かべるケンに、カグヤはまたまた納得する。

(変な相手を連れて来ちゃったなぁ……ごめん、レイジ)

後でちゃんと謝ろうと思いながら、再び視線をレイジに向ける。

 

「あのモココもかなり強くてさ……レイジって言ったっけ? たぶんアイツ……負けるぜ」

「……大丈夫だよ。レイジは負けない」

「えっ?」

「きっと私なんかより全然上手いやり方で勝利するよ。だって、レイジは強いもん」

「おいおい、さっきはわかんないって……」

「単純な実力ならわからないけど……ポケモンの事ならレイジは強いよ」

「はぁ?」

曖昧な言い方のカグヤにケンは首を傾げるが、彼女にはレイジが負ける結末など欠片も考えてないようだ。

 

「……随分愛されてる彼氏だな」

「へ?レイジは彼氏じゃないよ?」

「えっ……だ、だってあんなに仲良いし……」

「うん。だけど私とレイジは幼なじみで旅の仲間で家族だもん。

 レイジの事は大好きでずっと一緒に居たいと思ってるけど、彼氏じゃないよ」

「…………」

そこまではっきり言っておきながら彼氏ではないとはどういう事なのか。

 

「モココ、たいあたり!!」

「モコーッ!!」

シュウの声が響き、ケンも慌てて前を向く。

「リオン、右に」

言われた通り右に跳び、モココの攻撃を回避するリオン。

 

「なら、でんきショックだ!!」

「モッコー!!」

モココの身体に電気が走り、そのエネルギーがリオンに向かっていく。

しかし、レイジは慌てる事なくリオンに命令を下した。

「左に小ジャンプ、着地と同時にひのこ」

「ガゥ! ウガゥーッ!!」

モココのでんきショックは虚しく地面に当たり、回避し着地した瞬間リオンは口から炎を吐き出す。

 

「モコッ!?」

それは技を出したばかりのモココに見事命中し、その身体を吹き飛ばした。

「モココ!!?」

「リオン、とっしん」

「ガゥゥゥゥッ!!」

「モゴォッ!?」

一気に走り距離を縮め、リオンの強烈なとっしんが更にモココを吹き飛ばした。

 

「あ、あいつのポケモンつぇぇ……」

(ウソ……リオンとレイジは今日出会ったばかりなのに、どうしてこんなに早く息が合った動きができるの……?)

まるで長年のパートナーのように、その動きは洗練されている。

優勢だと思っているのか、リオンはニヤリと余裕の笑みをシュウに見せる。

 

「っ、な、生意気なポケモンだ……!

 モココ、何をやっているんだ。早く立って反撃をしろ!!」

「モ、コ……」

怒鳴るシュウに応えるように、モココはどうにか立ち上がる。

「よーし、かみなりパンチだ!!」

「モコォォォォォ………!」

右手に電気エネルギーを溜め、真っ正面からリオンに向かっていくモココ。

 

「かげぶんしん」

しかし、そんなリオンの姿が2つ3つと増えていき……モココを囲むようにリオンの分身が現れる。

「ど、どれが本物なんだ……?」

シュウもモココもリオンの姿を捉える事ができない。

「モココ、こうなったら手当たり次第に攻撃するんだ!!」

「モ、モコッ!」

自棄になったのか、無茶な命令をモココに下すシュウ。

しかしモココもそれしか方法はないと思ったのか、はたまた主人の命に逆らう事ができないのか、自分の近くに居るリオンへと拳を繰り出した。

だがそれは当然ながら偽物であり、かみなりパンチは虚しく空を切って……この勝負は終わりを告げた。

 

「リオン、かえんほうしゃだ」

「ウゥゥゥゥ………ウガァァッ!!」

隙だらけになったモココに、特大のかえんほうしゃをお見舞いするリオン。

「………モコ~………」

当然ながらそれはモココへ命中し……目を回してダウンした。

「モココ、戦闘不能!!ヒトカゲの勝ち!! よってこの勝負、レイジの勝利!!」

審判が判定を終えると同時に、周りからは先程とは段違いの拍手が巻き起こる。

 

「リオン、お疲れ様。頑張ったね」

「ガゥ……♪」

労いの言葉を掛けつつ、リオンの頭を優しく撫でるレイジ。

嬉しそうに目を細めながらも、まだ戦い足りないのか瞳には闘志が宿ったままだ。

「駄目だよリオン、バトルは終わったんだから」

またお願いね、そう口にしてリオンをボールの中に戻した。

 

「レイジ、初勝利だね!」

まるで自分の事のように喜びながら、再びレイジに抱きつくカグヤ。

倒れそうになりながらも、足に力を込めて踏みとどまる。

「待ってカグヤ、まだ挨拶が終わってない」

「あっ、そっか」

カグヤを離し、シュウの元へ。

「いい勝負でした。ありがとうございます」

カグヤと同じように、右手を出して握手を求める。

……だが、シュウは睨むだけでレイジの握手に応じようとしない。

そんな彼の態度に、カグヤはムッとした表情を浮かべながらシュウに詰め寄った。

 

「あの、どうしてレイジを睨むんですか?

 ポケモンバトルに負けて悔しいのはわかりますけど、そんな態度はよくないと思います」

「別にいいよ。気にしてないから」

それに、ポケモンバトルに負けただけが理由ではないだろう。

恋敵(勝手に勘違いしているだけだが)に負けたのだ、男として悔しいと思ってもそれは仕方ないと言える。

だが、だからといっていちいち相手をする必要も意味もないので、レイジはそのままシュウから視線を逸らし、リオンを治療する為にセンターへと歩を進めたのだった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――もぅ、何なのよさっきの態度は」

ポケモンセンターにあるトレーナー用の宿泊施設。

部屋をとったカグヤは部屋に入るなり、ベッドに飛び込み愚痴を零した。

「別にカグヤが怒る必要ないんじゃない?」

「だって、ポケモンバトルは礼に始まり礼に終わる。そんなのトレーナーとして常識じゃない」

(……そういう決まりがあるわけじゃないんだけど)

まあしかし、彼女の言い分の方が確かに正論ではあるから、余計な口出しはしないでおく。

……というか、それ以前にツッコミを入れなくてはいけない点が他にあるから、まずはそっちを片付ける事にしよう。

 

「あのさぁ」

「何?」

「……何で、同じ部屋なの?」

今日は一泊して、明日ニビシティに向かおうという話になったのだが、何故か、カグヤが2人一緒の部屋をとってしまったのだ。

これにはさすがにツッコミを入れなくてはならない。

しかし、カグヤはキョトンとしながらも当たり前のようにこう口にした。

 

「だって、別々に分ける必要ないし」

と。

15歳の少女とは思えない発言に、レイジは頭を抱えたくなった。

 

「小さい頃はよく一緒に寝てたじゃない」

「それは小さい頃の話だよ……」

「むぅ……不満なの?」

「そういう問題じゃないよ、僕も君もあの時と違うんだから」

「むむぅ……」

頬を膨らませ、私怒ってますとアピールするカグヤに、そっとため息を漏らすレイジ。

……ダメだ、一度こうなるとカグヤは納得してくれない。

昔から彼女と行動を共にしているからこそわかってしまうのだ、本当はわかりたくないのだが。

 

「わかった。わかったからそんな顔しないで……」

「やった!」

彼が折れると、さっきとは一変して笑顔になるのだから、女の子というのはよく理解できないとレイジは思う。

結局、自分は彼女にはとことん甘くなってしまうようだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――――っ、っっ」

寝苦しさを感じ、顔をしかめながらレイジはゆっくりと目を開ける。

食事を済ませ、ポケモンも回復や明日の準備等が終わり、今日は少し早めに眠りに就いたレイジ達だったのだが……。

(……何だ?この感覚……何かが、叫んでる?)

頭に響く、僅かな声のような音。

ティナが発するテレパシーに似ているが、それよりもずっと禍々しいというか……負の感情を感じる。

 

「…………」

時刻は既に夜中。

当然ながら自分以外は全員眠っている。

(……確かめないと)

そんな強迫観念に駆られながら、皆を起こさないように上着を羽織りセンターを飛び出した。

あちこちから虫ポケモンが鳴く声が聞こえるトキワシティは、時間の事もあり人の気配は感じられない。

 

(……声が、大きくなった)

相変わらず何を言っているのかはわからない。

だが、気のせいという可能性は消え、この声の主が怒りを抱いているというのも理解できた。

(一体誰が、何を伝えようと……)

ひたすら声の聞こえる方角へと歩を進める。

だんだんと大きくなる声に顔をしかめながらも、レイジはどうにかその場所に辿り着いた。

「ここは……」

そこは、レイジにとって意外な場所。

 

――トキワシティのジムだった

 

無人だと言われているだけあり、当然ながら中の電気は消されたままだ。

人どころかポケモンの気配すら微塵も感じられない、外装が綺麗な廃墟のようで身体が少し震えた。

しかし――声の主は間違いなくここに居る。

頭に響く声が、頭痛へと変わった。

 

「っ、く……」

わけがわからない。

この声の主も、一体自分に何を伝えようとしているかも、何一つ理解できなかった。

(君は、誰……?僕に、一体何を伝えたいと思っているんだ?)

痛み続ける頭を押さえながら、必死に声を聞き取ろうと集中する。

……すると、ほんの少しだが何か言葉のようなものを聞き取れた。

 

 

――…さ…、必……様達……し…や……

 

――貴様…のよ……人……い…か………

 

――……の、か…きは……必ず私………

 

 

「ぁ、ぐ……っ」

ところどころに凄まじいノイズが走り、結局その言葉の意味を理解する事ができない。

……やがて、声も聞こえなくなった。

「…………」

一体何だったのだろう、今の声は。

頭痛は消えたものの、額にびっしりと浮かんだ大粒の汗が、先程の現象が夢でなかった事を証明している。

 

「……は、ぁ……」

おもわずその場に座り込んでしまった。

相も変わらずジムは静寂に包まれており、やはり無人なのだと納得させられた。

(………帰ろう)

明日も早い、このままここに居た所で何がわかるわけでもないのだ。

自分自身にそう言い聞かせ納得させてから、レイジはゆっくりとその場を後にした。

……ノイズ混じりに聞こえた、憎悪に満ち溢れた声を思い返しながら。

 

………。

 

「――よーし、トキワでバッジを手に入れられなかったのは残念だけど、4つ集めればいいってわかった以上はさっさとニビシティに行くわよ!」

朝っぱらから元気な声で高らかに叫ぶカグヤ。

それとは対照的に、レイジの表情は浮かないものだった。

(……結局、昨日の声が気になって眠れなかった……)

そのせいか、やはり瞼は重い。

 

〈パパ、どうしたの?〉

「なんでもない。けど今日はボールに入っててくれないか?」

〈……うん、わかった〉

ありがとう、そう口にしながらティナをボールに戻す。

「………あっ」

トキワシティを後にしようとするカグヤ達だったが、見慣れた人物を視界に捉え立ち止まった。

 

「………やあ」

その人物とは、昨日レイジとバトルを繰り広げたシュウ。

昨日の事を思い出したのか、カグヤの顔が不機嫌そうに変わる。

「……昨日は悪かったね、大人気なかったよ」

「……いえ、別に気にしないでください」

「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ。それより、君達はポケモンリーグを目指しているのかい?」

「カグヤはそうです、僕は……その付き添い」

「付き添いって……ポケモンリーグに出る気はないのかい?」

「ええ」

「……勿体ないな。君ほどの実力なら充分通用するのに……」

「…………」

そんな事言われても、興味がないので返答に困ってしまう。

 

「頑張ってね。応援してるよ」

「は、はあ……ありがとうございます」

昨日とは態度が違うシュウに、なんともいえない微妙な表情を浮かべてしまうカグヤ。

「それじゃあ、僕達はこれで失礼します」

「ああ、またね」

シュウに手を振りながら、トキワシティを後にする2人。

 

「……なんであんなに態度変わったのかな?」

「あれがあの人の素なんじゃないの? そんなに悪い人じゃないんだよ、きっと」

「……そうなのかもね」

釈然としなかったが、気にしない事にする。

 

「まっ、いっか。それよりニビシティのジムリーダーってどれくらい強いんだろ……!」

「その前にトキワの森だよ」

「うっ……そ、そうだったね」

途端にげんなりするカグヤ。

それもそのはず、彼女は虫ポケモンが苦手なのだから。

そんな彼女に苦笑を送りつつ、レイジはニビシティへと向けて歩を進めるのだった。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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