ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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数々の激闘の果てに、見事チャンピオンリーグに出場する事になったレイジ。

そして今日は、いよいよチャンピオンワタルとのフルバトルの日となっていた……。


第71話 挑戦、チャンピオンリーグ!〜レイジVSワタル!!〜

「――おせえっ!!」

セキエイ高原のスタジアム入口付近で、カイリの怒声が響き渡った。

 

「カイリ、そんな大声出さないでよ」

そんなカイリをなだめようとするレイジだが、そんなもので彼の怒りは収まらない。

「なんでお前はそんなに落ち着いてんだ!!」

「僕に八つ当たりされても困るんだけど……仕方ないじゃないか」

「仕方ないで済まされる問題じゃねえだろ!!」

 

がーっ、と怒るカイリ。

さて、何故彼がこんなにも怒っているのか説明しなくてはなるまい。

まあ尤も、説明した所でカイリが怒る道理には繋がらないのだが、ともかく説明すると……。

今日はいよいよチャンピオンリーグ、すなわちカントー最強のトレーナーであるワタルとのフルバトルを行う日だ。

レイジのポケモン達は全員コンディションはバッチリであり、レイジ自身も来るべき決戦に対して落ち着いている。

端からでは何の問題もない、ないのだが……。

 

「ちくしょー……ルギアの奴、何処で油売ってやがるんだ……」

そう、カイリの言葉通りルギアが決勝戦の次の日から何処かへ行ってしまったのだ。

 

行き先も告げずに、3日経った今でも帰ってこない。

もうすぐワタルとのバトルが始まるのに……それが原因で、カイリは怒っているのである。

……先程も言ったように、カイリが怒る道理はないのだが、そこは気にしても無駄というものだ。

しかし、確かにこの事態は笑えるものではない。

このままではルギア抜きの五体でワタルと戦わなければならないのだ。

もちろん説明すれば五体でも戦える、しかし……フルメンバーで望まなくては、ワタルには到底太刀打ちできない。

 

「……だーっ、もう!!レイジ、あと10分しかねえぞ!?」

「…………」

「俺のポケモン、一体貸そうか?」

「そんな事できるわけないじゃない」

「けどよ。五体じゃチャンピオンには勝てねえじゃねえか!」

「まあ、それは……」

「レイジなら俺のポケモンの実力を十二分に発揮してくれるし、このままじゃ……」

 

「――来た」

 

ぽつりと呟き、空を見上げるレイジ。

大きな影が、こちらに向かってくる。

まだシルエットだが、レイジにはそれが何なのかすぐにわかった。

やがて、その影はレイジの前に降り立ち一言。

 

「すまぬマスター、遅くなった」

と、あまり悪びれた様子もなく言い放った。

 

「おかえり、ルギア」

いつもの彼女らしい言葉に、レイジは特に突っ込みを入れずにそう返した。

しかし、先程からご立腹なカイリはそんな事で納得しない。

「ルギア、お前今まで何やってたんだよ! レイジにも何も言わずにいなくなりやがって」

「だからすまぬと言っているではないか、だいたい何故カイリが怒る必要があるのだ?」

「あのなぁ……」

「黙っていなくなったのは余も悪かったと思っている、しかし……あまり余裕がなかったのだ」

「? ルギア、どういうこと?」

 

「うむ、これはマスターにも言っていなかった事なのだが……余は地上で活動する場合、一定の周期に銀の神殿で身体を清めねばならぬのだ」

「銀の神殿?」

「遥か深海にあるその名の通り銀色に輝く神殿の事だ、余も何故なのかはわからぬのだが……長い間地上で活動していると、身体に不調をきたしてしまってな。

 ――決勝でも動きが鈍かったのは、その為だ」

余も決勝が終わった後に思い出したのだが、そう言いながらルギアは言葉を続ける。

 

「しかもかなり危ない部類だったようだから、すぐさま行かねば間に合わなかったのだ」

「そうだったんだ……」

「でも、何でなのかな?」

「先程も言ったが余もわからぬ、海の神と呼ばれておるのも理由の中に入っているのかもしれん。

 しかしマスター、これで余は絶好調だ。チャンピオンだかなんだか知らぬが、余がまとめて薙ぎ払ってみせよう!!」

高らかにそう言い放つルギアからは、この前とは比べものにならない程の強いオーラが溢れている。

彼女が尊大なのはいつもの事だが、今回ばかりはそう言い放ってもおかしくないほどだ。

 

「……うん、頼りにしてるよルギア」

任せろ、そう返事を返しながらボールの中に入るルギア。

 

「さて、と……」

これで全員揃った。

ホルダーにボールをセットし、スタジアムの中に入っていく。

「レイジ!!」

「……いってきます」

今言うべき言葉は、ただそれだけ。

笑顔を浮かべて自分を送ってくれるカグヤ達を見て、レイジは頷きを返し決戦の場へと赴いた――

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

『――天気は快晴、まさしく決戦日和と言えるでしょう。

 今日この場で、新たな歴史が刻まれるのか、それとも再びチャンピオンの強さが証明させるのでしょうか!?』

決勝戦の時と変わらぬ、否、それ以上の熱気に包まれたスタジアム。

観客達は、この最高の舞台で最高の戦いを繰り広げてくれる強者を、待ち望んでいた。

 

『では選手の入場です、まずは挑戦者。初出場で見事優勝を果たした若き天才トレーナー。

 ――マサラタウンの、レイジ選手!!!』

実況、そしてレイジの登場により、観客席からは割れんばかりの拍手喝采が。

その中でも動じることなく、レイジはフィールドへと赴いた。

 

「レイジー、頑張って!」

「負けるんじゃねえぞー!!」

 

大声を張り上げるカグヤ達に気づいたのか、レイジは振り向き彼女達に向かって手を振った。

瞬間、カグヤ達の周りにいる女性達から黄色い声が。

どうやら自分に向かってレイジが手を振ったと勘違いしたようだ。

それを見て、カグヤの顔が不機嫌そうに歪み、シロナも僅かに眉を潜める。

 

(うへぇ……レイジの奴、自分の知らない間に地雷を踏んでやがる……)

彼は何も悪くない、だというのにどんどん立場が悪くなっていくのはいかがなものか。

 

『そして、カントー最強のトレーナーにして、史上最高のドラゴン使いを呼ばれる、チャンピオンワタルの登場です!!』

「―――」

 

歓声が、実況のその言葉でレイジの耳から消えた。

チャンピオン――ワタルの登場により、レイジのあらゆる箇所から音という音が消え失せた。

――対峙する両者。

ワタルはいつかのような穏やかな笑みを浮かべ、口を開いた。

 

「よく来たね、レイジ君」

「……ワタルさん」

「君の実力ならいつかここに来るとは思っていたけど……まさか今回の大会でボクと戦えるほどに成長するなんて、正直驚いたよ」

「……僕もです」

「はははっ、相変わらずなんだね君は。

 でも……そんな君だからこそ、この場所で戦いたいと思ったんだ」

「えっ……?」

 

「あのシロナ君が気に入ったトレーナー、そしてボクも……君の事が凄く気に入ってる。

 君の実力は、既にボクと変わらない高みへと登り詰めてる。

 ポケモンに対する信頼と愛情、そしてどんな時でも自分を見失わない強い心。

 それを愚直なまでに育ててきたから、君は今ここにいる」

「そんな……頑張ったのは僕じゃなくて」

「ポケモン達が、かい? 確かに君のポケモン達の努力の賜物かもしれない。けれどポケモン達が頑張ったのは、君があの子達のトレーナーだからなんだよ?」

「…………」

「……さあ、そろそろお喋りはやめにしよう。

 この時間も凄く魅力的ではあるけど、やはりボクは君と戦いたくてここにいるんだ!」

「――はい」

 

互いに、一体目のボールを手に取る。

 

「出てくるんだ、ボーマンダ!!」

「ヒカリ、お願い!!」

「ピッカッ!!」

フィールドに出るヒカリとボーマンダ。

凄まじいオーラと迫力のボーマンダに、ヒカリはおもわず後退る。

 

「最初はボーマンダか……」

「……あのボーマンダ、おれのボーマンダよりも強いな」

「ええっ!? ロストさんのよりも……?」

冗談ではない、ロストのボーマンダもかなりの強さだというのに、ワタルのボーマンダはそれ以上だというのか……。

「どんな相手でも、レイジは負けないよ」

「今は彼を信じればいいだけ……」

 

「先攻はレイジ選手からとなります!!」

「………ふぅ」

小さく、息を吐く。

……勝てるとは思っていない。

けれど精一杯戦う、それだけを考えて戦おう。

 

(いくよ、みんな)

心の中で、信じる仲間達にそう呼びかけ。

 

「――試合、開始!!」

「ヒカリ、10まんボルトだ!!」

審判の声と同時に、レイジは指示を告げた。

 

………。

 

放たれる10まんボルト。

それは迷う事なくボーマンダへと向かい――見事命中する。

……だが、それだけだ。

 

「―――っ」

ヒカリの10まんボルトは確かに命中した。

しかし、それでボーマンダに与えられたダメージは……無い。

 

「レイジ君、小手調べのような攻撃ではボクのポケモンにはダメージを与えられないよ?」

「…………」

ボーマンダは攻撃を仕掛けてこない。

……試しているのだ、ヒカリがどこまで通用するのかを。

「……そうですね、確かにワタルさんの言う通りみたいです」

ならば、敢えてその誘いに乗ってやろう。

ギアはトップに、ブレーキなど取り払って全力で走り続ける。

 

「ヒカリ、アイアンテール!!」

「ボーマンダ、ドラゴンダイブ!!」

飛び上がり、上空からアイアンテールを放つヒカリに、ボーマンダは真っ向からドラゴンダイブで吹き飛ばす。

「10まんボルト!!」

「ドラゴンクロー!!」

空中に投げ出されながらも、特大の10まんボルトを放つヒカリ。

先程とは違うパワーに、さすがのボーマンダもダメージを受けたのか、苦しげな声を上げるものの。

 

「ピカッ!?」

10まんボルトを受けながらも、ドラゴンクローでヒカリを地面へと叩きつけた―――!

 

「ヒカリ!!」

「ピッ…カ……」

立ち上がるものの、かなりのダメージなのか苦しそうだ。

「ボーマンダ、ギガインパクト!!」

そんなヒカリにトドメの一撃を放つため、空中からギガインパクトで迫るボーマンダ。

そのパワーは恐ろしいまでに凄まじく、デュアルボルテッカーでなければ対処できない。

 

「ヒカリ、ギガインパクトの右端にアイアンテールだ!!」

しかしデュアルボルテッカーにするには、準備が足りない。

飛び上がり、ボーマンダではなくギガインパクトにアイアンテールを叩き込むヒカリ。

しかし吹き飛ばされ、再び地面に叩きつけられる。

(なる程、ギガインパクトを真っ向から防げないから、軸を逸らす為にアイアンテールを……)

悪くない手ではあるが、それでも軸を外しただけでヒカリには大きなダメージとなった。

ドラゴンクローにギガインパクトを受けたのだ、ピカチュウの防御力ではここまで……。

 

「……ピ、カ……」

「何――!?」

ここまでだ、ワタルはそう思っていた。

しかし、ヒカリは立ち上がりまだ消えぬ闘志を瞳に宿しボーマンダを睨んでいる。

(驚いた……不屈の闘志は、ここまでの事をやってのけるのか)

見事だ、そうとしか言いようがないものの、ヒカリは気力で立っているに過ぎない。

あと一撃、それだけで戦闘不能になるだろう。

 

「――ヒカリ、自分にフルパワーのかみなり!!」

(っ、来るか………!)

 

デュアルボルテッカー、それも全力の。

しかしそれは当然だ、ヒカリがボーマンダに勝つにはこの攻撃しかない。

けれど、如何にデュアルボルテッカーでも、ボーマンダのパワーには勝てないだろう。

 

「ボーマンダ、りゅうせいぐん!!」

「ヒカリ、デュアルボルテッカー!!」

空から落ちてくるりゅうせいぐんを、デュアルボルテッカーのスピードで回避しながら、ボーマンダとの距離を詰めていくヒカリ。

「無駄だよレイジ君、フルパワーのギガインパクト!!」

先程よりも更に強力なギガインパクトが、ヒカリに向かっていく。

いくらデュアルボルテッカーでも、これには勝つ事はできまい。

そう、ワタルの予想は見事当たっている。

当たっている、が……。

 

「ヒカリ、回避だ!!」

「なっ………」

ワタルの声と、ヒカリがボーマンダの攻撃を回避するのは同時だった。

デュアルボルテッカーは攻撃ではなく、ボーマンダの攻撃を回避する為に使われたのだ。

「ライトニング!!」

すぐさま方向転換し、ギガインパクトの反動で動けないボーマンダに、渾身のライトニングを叩き込んでいく。

 

一撃、二撃、三撃、四撃、五撃………!

素早く、それでいて重い一撃を既に五回。

 

「これで終わりだ、ボルテッカー・アイアンテール!!」

ぐらつくボーマンダの身体に、必殺のボルテッカー・アイアンテール!!

ライトニングとの連続攻撃により、壁にめり込むボーマンダ。

しかし……。

 

「ピ、カ……」

それが最後の力だったのか、ヒカリはそのまま前に倒れ込んでしまった。

そして、ボーマンダも。

 

「ピカチュウ、ボーマンダ共に戦闘不能!!」

『なんと、一体目でいきなり相討ち!!

 序盤から凄まじいバトルになっております!!』

 

「……チャンピオンのポケモンを、倒しちまいやがった」

相討ちとはいえ、確かに倒した。

その光景にカグヤ達は喜び、そして驚く。

「さすがねレイジくん……ワタル相手にも一歩も引いていないわ」

しかしまだ勝負は始まったばかり、どちらがこの戦いの流れを掴むかはわからない。

 

「いいぞいいぞ、そうこなくっちゃ!!」

「ヒカリ、ありがとう。ゆっくり休んで」

「レイジ君、まだまだ序盤だけど凄く楽しいよボクは!!

 さあ、次はどんなポケモンを出してくるんだい!?」

瞳を光らせるワタルは、まるで子供のようだ。

けれど、その瞳は見惚れるくらい澄んでいる。

 

「出てくるんだ、チルタリス!!」

「ティナ、お願い!!」

 

「――チルタリス」

「チルットの進化系ね……」

「あれ? チルタリスもドラゴンポケモンなの?」

「そうじゃないけど、チルタリスはドラゴンタイプのポケモンだから、チャンピオンの手持ちに入ってるんじゃないの?」

「ふーん……それにしてもチルタリスって可愛いね、あの羽も綿あめみたいで美味しそう……」

「最初の感想はともかくとして、次の感想はおかしくねえか?」

「そうかなぁ? カイリは美味しそうに見えない?」

「俺はお前みたいに食い意地が張ってないから思わねえよ」

「むっ……」

 

(相手はチルタリス……氷タイプが弱点か)

〈お父様、アイシクルセイバーで戦います〉

指示を出す前に、氷の剣を両手に構えるティナ。

「お願い。他の技の指示は僕が出すから、剣戟はティナに任せるよ」

〈畏まりました〉

 

「氷タイプの剣か……本当に君のサーナイトは不思議な技を持っているね?」

「ええ。でも……威力はピカイチですよ!! ティナ、そのまま踏み込んで!!」

地を蹴り、チルタリスとの距離を詰めるティナ。

「チルタリス、はがねのつばさ!!」

上段から振るわれた右の剣を、はがねのつばさで強化された翼で受け止めるチルタリス。

すかさず左の剣を振るうが、それも強化された翼で弾かれてしまった。

 

「ふぶき!!」

「飛べ!!」

至近距離からのふぶきを羽ばたいて避け、ティナとの距離を広げ次なる攻撃を仕掛ける。

「ゴッドバード!!」

「っ、迎え撃って!!」

真っ向から、アイシクルセイバーで迎え撃つティナ。

両者が激突し――大爆発が起きた。

ティナは吹き飛ばされ、地面に剣を突き立て衝撃を殺す。

 

「ティナ、ダメージは?」

〈大丈夫です。右の剣は砕かれましたが……残る左の剣でしっかりとダメージを与えました〉

 

そう告げるティナの両手には、柄の部分しか残されていない氷の剣が。

それを投げ捨て、すぐさま新しい剣を作り出す。

と、煙が晴れ中から傷ついたチルタリスが現れる。

ティナの言う通り、しっかりと弱点の一撃を叩き込んでくれたようだ。

………だが。

 

「チルタリス、ねむる!」

「くっ……!?」

目を閉じ、その場で寝入るチルタリス。

それと同時に、ねむるによる体力回復効果も現れ始めた。

「ティナ、すぐに叩くんだ!!」

あれ以上ダメージを回復させるわけにはいかない、レイジはすぐさま指示を出しティナもチルタリスの間合いを詰めるが。

 

「ねごとだ!!」

「なっ!?」

ティナの剣が空を切る。

そして、完全に隙を見せた彼女に向かって、眠ったままのチルタリスからギガインパクトが発動された―――!

 

〈が、っ………!?〉

まともに受け、ボールのように地面をバウンドしながら壁に叩きつけられるティナ。

「ティナ!!」

〈が、は……――だ、大丈夫です!!〉

すぐさま立ち上がるものの、決してダメージは小さいものではない。

 

「迂闊だよレイジ君、君だってねむるとねごとの特性くらい覚えているだろう?」

そう告げるワタルのすぐ前には、既にダメージを完全に回復させたチルタリスが……。

「な、に!?」

起きている。

ねむるは、体力回復の効果がある代わりにねむり状態になってしまうという欠点がある。

だというのに、何故チルタリスはこうも早くねむりから醒めて――

 

「――カゴのみ」

「そうさ。チルタリスにカゴのみを持たせておいたんだ」

「くっ……」

「さあ、まだまだこれからだよレイジ君!!」

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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