ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
一体目は互いに相討ちで失い、続いてはティナとチルタリスのバトル。
しかし、流れは少しずつワタルへと傾いていた……。
「――ティナ、まだ戦える?」
〈……ダメージはありますが、大丈夫です〉
「よし、ならこのまま戦うよ」
〈はい〉
「いいぞレイジ君、そうこなくっちゃ面白くないからね!!」
「ティナ、マジカルリーフ!!」
「………?」
放たれるマジカルリーフを、チルタリスは羽を使って防御する。
ひこうタイプを持つチルタリスに、草タイプのマジカルリーフなどあまり意味はない。
それに、ワタルほどのポケモンとなると、ダメージはゼロだ。
「続いてきあいだま!」
(……レイジ君、何を考えているんだ……?)
きあいだまはかくとうタイプ、同じくチルタリスには効果は今ひとつ……どころか、ゼロだ。
「チルタリス、りゅうのはどうだ!!」
相手の意図は不明だが、そろそろこちらから攻撃を仕掛ける。
「今だティナ、りゅうのはどうにサイコキネシス!!」
「なっ――!?」
放たれたりゅうのはどうがティナの真上に移動し、そのままチルタリスに向かっていく。
技を出した直後で、チルタリスは動けない。
そして、そのままりゅうのはどうを受けたチルタリスは地面へと落ちてしまった。
(っ、レイジ君はこちらが攻撃するのを誘っていたのか………!)
わざと効果が今ひとつの技を放っていたのもその為だ、ダメージがゼロなら避ける必要などなくその代わりに位置が固定される。
おまけに、ドラゴンタイプの技は同じくドラゴンタイプのポケモンには効果は抜群だ。
「ティナ、シャドーボール!!」
「チルタリス、飛べ!!」
けれどチルタリスとてまだ戦える、素早く起き上がりシャドーボールを回避する―――が。
「背中にふぶき!!」
「なに―――っ!?」
その時には既に、ティナはチルタリスの真上へとテレポートで移動を完了しており。
特大のふぶきが、チルタリスの背中に叩き込まれそのまま地面へと落ちていった。
無事に着地するティナ。
しかし、攻撃を受けたチルタリスは……。
「チルタリス戦闘不能!サーナイトの勝ち!!」
『レイジ選手、なんとチャンピオンに逆転してしまいました!!』
「すげえ、これで二体目だ!!」
(けれどまだワタルの力はこんなものじゃない……レイジくん、油断しないで………!)
「……さすがだねレイジくん、けれど……いくら君のサーナイトでも、コイツに勝てるかな? ――出てくるんだ、ガブリアス!!」
「―――っ」
雄叫びが、振動となって空気を揺らす。
違う、チルタリスとは遥かにパワーが。
もちろんチルタリスとて強い、けれど……このガブリアスはいつかシロナと戦った時と同等かそれ以上―――!
〈…………〉
ティナもガブリアスのパワーを感じ取り、無言で佇む。
「いくぞレイジ君。ガブリアス、ドラゴンダイブ!!」
「っ、ティナ。ふぶきだ!!」
向かってくるガブリアスを、真っ向からふぶきを放ち迎え撃つティナ。
………しかし。
〈な―――〉
「―――に!?」
ふぶきを、防御もなく真っ向から受けているというのに。
弱点である、氷タイプの技を受けているというのに。
ガブリアスは、ドラゴンダイブの威力を弱める事なくティナへと向かっていき……。
〈が、ふ………!?〉
まともに受け、空へと吹き飛ばされてしまう。
「ドラゴンテール!!」
更に、追い討ちを掛けるガブリアスの攻撃がティナを吹き飛ばした瞬間。
「え―――」
ティナが、こちらは何もしていないのにボールの中に入り。
それと入れ替わるかのように、ソウルがボールから飛び出していった。
「これ、は………!?」
「ドラゴンテールを受けたポケモンは、強制的に交代されてしまうんだ。
ガブリアス、かわらわりだ!!」
「っ、しまった―――!」
ソウルはこのような強制的な交換によって、まだ自分に起こった出来事を理解し切れていない。
更に、レイジも対処が遅れ――ガブリアスのかわらわりが、まともにソウルを地面へと叩きつけてしまった。
「ソウル!!」
『ドラゴンテールからかわらわりの見事なコンボがアブソルに大ダメージを与えました!! 効果は抜群だー!!』
身構えてもいない、しかも弱点である技をまともに受け、ソウルは動かない。
戦闘不能か、誰もが…レイジですらそう思ったものの。
「っ、ソウル!!」
「………へぇ」
『な、なんとアブソル、ガブリアスの強烈な一撃を受けながらも、立ち上がりましたー!!』
「けど、もうソウルは保たねえぞ………!」
「あのガブリアス、強すぎるよ……」
「…………」
無意識のうちに、シロナは拳を握りしめる。
あのガブリアスは強い、自分のガブリアスとも決して引けはとらないほどに。
しかもティナ、そしてソウルもガブリアスによって大ダメージを受けてしまった、これで流れは完全にワタルのものになってしまっただろう。
「ソウル、戻って」
『レイジ選手、たまらずアブソルをボールに戻してしまいました!!』
「……ごめんねティナ、そしてソウル。
僕がふがいないばかりに……君達にいらない怪我を負わせてしまった」
ギリと、歯を鳴らす。
謝っても無意味だ、けれど謝罪せずにはいられなかった。
(そして……こんなに早く君に頼る事になってしまった事も、謝らしてほしい……)
あるボールを取り出す。
手のひらから伝わる凄まじいオーラ、今にもボールの外から溢れ出してきそうだ。
『さあレイジ選手、続いてのポケモンは何を繰り出すのか……』
「ルギア、お願い!!」
「っ」
ガブリアスに負けぬほどの強き雄叫びが、スタジアムを揺らした。
『ここでレイジ選手、ルギアを繰り出してきました!!』
「ルギア……なるほど、さすが幻のポケモンと呼ばれるだけはある……」
「…………」
「……ルギア?」
しっかりと地面に立つルギアだが、なんだかいつもと様子が違う。
何も言わず、何も語らずに、ただ黙って戦うべき相手を見据えていた。
「――マスター、今回ばかりは余も無駄口は叩かぬ。
マスターに勝利をもたらすために、ただ戦いだけに集中するぞ」
「…………」
いつもの彼女とは違う、重くそれでいて優しげな声。
まるで、初めて会った時の彼女を見ているようだ。
「……いつもの君も、いいと思うけどね」
「ふん。そんな事は余にもわかっておる。
だが……余とてプライドがある、あれだけの大口を叩いた以上……必ず相手は倒す。いや……倒さねばならない!!」
「面白い。ならやってみせてくれ!! ガブリアス、ドラゴンダイブ!!」
「ルギア、アイアンヘッドだ!!」
再びドラゴンダイブで向かってくるガブリアスに、ルギアは真っ向からアイアンヘッドでぶつかり合った。
すると、ガブリアスが単純な力比べで敗れ地面に叩きつけられる。
「ハイドロポンプ!!」
「げきりんだ!!」
迫り来るハイドロポンプを、げきりんで迎え撃つ。
「ぬっ――!?」
さすがにパワーでは勝ったのか、ハイドロポンプを弾きガブリアスはルギア目掛けてその一撃を。
「はがねのつばさ!!」
しかし、げきりんがルギアを捉える前に、はがねのつばさにより阻止される。
それでも、ガブリアスの攻撃は止まらない。
ルギアも両の翼を用いてガブリアスの攻撃を防ぐが、長く保たないのはあきらかだった。
「ルギア、そのままガブリアスから離れて!! 向かってきたら回避に専念!!」
「なにっ!?」
自身の主人の指示におもわず聞き返そうとしてしまうが、すぐさま従いガブリアスから離れる。
案の定追ってきたガブリアスの攻撃を、ただひたすら避けていく。
「マスター、反撃はせぬのか!?」
「いいから、まだ攻撃をする時じゃない!!」
「っ、ええい……! 余はこのようなまどろっこしい事は嫌いだ!!」
とは言いつつも、ガブリアスの攻撃にはしっかりと回避行動を続けていくルギア。
しかし、それも近い内に限界が来るだろう、ルギアの歪んだ表情を見ればそれがわかる。
だがそれでも、レイジは反撃の指示を出さない。
「マスター、そろそろ限界だぞ!!」
「…………」
「マスター!!」
「……っ、今だルギア、飛んで!!」
「く、ちぃ―――!」
間一髪、掠りはしたもののただの一撃も攻撃を受けないまま、ルギアはガブリアスとの距離をとる。
当然、ガブリアスは追おうとするのだが……。
「しまった!?」
「むっ……?」
なにやら、ガブリアスの様子がおかしい。
足元はおぼつかず、フラフラと危なっかしくまるであれは……。
「ルギア、アクアテールだ!!」
「う、うむ!!」
よくわからないが、千載一遇のチャンスというのはわかった。
降下しながら、隙だらけのガブリアス目掛け、渾身のアクアテールを打ち放つ!!
防御もせず、地面を削りながら吹き飛んでいくガブリアス。
「エアロブラスト!!」
「これで終いだ。吹き飛べガブリアス!!」
追い討ちとなる特大のエアロブラスト。
もはや竜巻に近いそれはガブリアスを包み、風の摩擦と衝撃を与え続けていく。
「……どうなっているのだ、これは」
「げきりんの副作用かな……威力も高くて隙も少ない技だけど、代わりに使い続けるとこんらん状態になってしまうんだ」
「なる程……だからマスターは反撃せずに回避しろと……。だが、そうならそうと言ってくれてもよいではないか」
「そんな事を言ってる暇はなかったんだ、それより……まだ勝負はついてないよルギア」
「たわけ、あれだけの攻撃を無防備に受けてしまえば、如何にガブリアスといえども……」
「――ルギア、君はわかってないよ」
ガブリアスは、かなりの力を秘めたドラゴンタイプのポケモン達の中でも、トップクラスの強さだ。
それに、トレーナーがチャンピオンであるワタルならば。
「…………むぅ」
「ほら、ね?」
「訂正だマスター、余が浅はかであった」
そう言い放ち、ルギアは再び臨戦態勢に。
……煙が晴れる。
アクアテールとエアロブラスト、どちらも必殺の力で放った。
相手はまともに受けた、自分でも文句なしの攻撃だったと言える。
だが、それでも……。
『ガブリアス、立ち上がりましたー!!』
ワタルのガブリアスを打倒できるまでには、至らなかったようだ。
「まったく……どれだけ頑丈なんだあれは」
「けど効いてないわけじゃない、後少しだ」
レイジの言う通り、こんらん状態ではなくなったものの、ガブリアスの身体は大きくぐらついている。
「ガブリアス、戻るんだ」
「…………」
「戻すか。だが……誰が来ようとも余は負けぬ」
「それはどうかな? 出てくるんだ、ギャラドス!!」
『チャンピオンワタル、続いてのポケモンはギャラドスだ!!』
(ギャラドス、か……)
本来ならばヒカリなどを投入したいが、あいにくとそれは叶わない。
「ルギア、このまま戦うよ!!」
「わかった。指示は任せるぞマスター!!」
「シャドーボール!!」
「ギャラドス、ストーンエッジ!!」
迫るシャドーボールを、ストーンエッジで破壊しながら、ルギアに向かっていくギャラドス。
「ルギア、アイアンヘッドだ!!」
「ギャラドス、こちらもアイアンヘッド!!」
ズドンッ、という重い音を響かせぶつかり合うルギアとギャラドス。
「……ぐ、ぁ……」
「なに………!?」
押し負けたのは――ルギアの方。
「こおりのキバ!!」
「避けるんだ!!」
指示を出すが、アイアンヘッドの攻撃によりルギアは怯み……そのままこおりのキバをその身に受けてしまう。
「くっ、おのれ……!」
「ギャラドス、10まんボルトだ!!」
「っ、ルギア!!」
「ぐぁぁぁぁぁっ!!」
まともに受け、電撃に包まれたルギアの絶叫が響き渡る。
「アクアテール!!」
そして更に追い討ちとなるアクアテールが、ルギアを壁まで吹き飛ばし叩きつけた。
「ぅ、く……」
「ギャラドス、りゅうのまい!!」
「くっ………!」
『おーっと、チャンピオンその隙にギャラドスの高い攻撃力を更に上げてしまった!!
ルギアもかなりのダメージのようだが、はたしてどうするのか!?』
「やべえぞ、完全にチャンピオンが流れを掴んでやがる………!」
「それだけの強さを、持っているという事だな」
「……ルギア、一度戻すよ」
「待てマスター、余はまだ……」
「君じゃ、あのギャラドスには不利だ」
「…………」
少し強めの口調でルギアを黙らせ、ボールに戻すレイジ。
……まだ、ルギアを失うわけにはいかないのだ。
何故ならワタルは、まだあのポケモンを出してはいない。
どうにか引きずり出すまでは、ルギアの力を温存させなくては。
「ソウル、お願い!!」
『ここでレイジ選手アブソルにチェンジだ、しかしかなり辛そうな表情を浮かべているようだが……やはり先程の攻撃が効いてしまっているのか』
「まだソウルは戦える……完全にダウンするまでは、絶対に負けは認めません!!」
「その意気だよレイジ君、アブソルとのコンビネーションを見せてくれ!」
「ソウル、ストーンエッジだ!!」
十数個の石がソウルの周りに現れ、一斉にギャラドス目掛けて撃ち放たれる。
「ギャラドス、こちらもストーンエッジ!!」
それを、同じ技で全て粉砕するギャラドス。
それだけではない、ソウルの攻撃を全て破壊するだけでは飽きたらず、そのまま彼女へと向かっていってしまう。
「かわして10まんボルト!!」
「りゅうのいかり!!」
ストーンエッジを回避すると同時に、10まんボルトを放つソウル。
しかし、ギャラドスが放ったりゅうのいかりによって相殺され更に。
「こおりのキバ!!」
素早く間合いを詰め、ソウルに必殺の牙を突き立てる―――!
「ソウル、跳んで!!」
しかし、ギャラドスの攻撃を受ける瞬間、ソウルはその場で跳躍しギャラドスの背に。
「今だソウル、フルパワーで10まんボルト!!」
そして、弱点である電撃がギャラドスを包み込んだ。
『ギャラドスに10まんボルトが命中ー!! 効果は抜群だ!!』
けれど、ギャラドスはまだ倒れない。
「10まんボルト!!」
振り落とされないようにしっかりとしがみつきながら、再び10まんボルトを放つ。
一撃で倒れないのなら、倒れるまで放つだけ。
「ギャラドス、振り落とすんだ!!」
対するギャラドスも、これ以上ダメージを受けるわけにはいかないので、必死にソウルを引き剥がそうと暴れまわる。
「10まんボルト!!」
『アブソル、ギャラドスの弱点である10まんボルトを連発していきます!! これはもはやどちらが先に倒れるかの勝負です!!』
「くっ………!」
「ソウル、今度はかみなりだぁっ!!!」
雄叫びを上げ、先程よりも更に強力な電撃を浴びせるソウル。
ギャラドスも、既に限界のはずだ。
あれだけの電撃を浴びているのだから、あともう少しで……。
「っ、ソウル!!」
あともう少しで勝てる、それは間違いではない。
しかし――肝心のソウルが、既に限界を迎えていては……。
「ギャラドス、アクアテールで吹き飛ばせ!!」
力が抜けたソウルを無理矢理引き剥がし、アクアテールで壁に叩きつけるギャラドス。
――それで終わり。
限界を超えたソウルは、そこで力尽きてしまった。
「アブソル戦闘不能! ギャラドスの勝ち!!」
『強い! さすがチャンピオン強すぎるー!!』
「くそっ……!」
ダンッ、と拳を叩きつけるカイリ。
「あともう少しだったのに……」
「これで数の上では互角……だけど、流れは完全にチャンピオンのものね」
「……レイジ」
ギュッと手を握りしめ、戦いを観戦するカグヤ。
そんな彼女の手を、シロナは優しく握りしめてあげた。
『さあレイジ選手、次はどのポケモンを繰り出すのか!?』
「リオン、お願い!!」
「………?」
『なんと、ここでリザードンを繰り出してきました!!』
ギャラドスは水タイプ、炎タイプのリオンでは不利だ。
そんな事はレイジとてわかっているだろう、ならば何故……?
「リオン、ブースターレベル3!!」
「―――っ」
リオンの炎が、凄まじい勢いで大きくなっていく。
「ギャラドス、ハイドロポンプ!!」
「フレアドライブ!!」
その炎を這わせ、真っ向からハイドロポンプに向かっていくリオン。
そして――ハイドロポンプの水をフレアドライブで弾き飛ばしていく。
「何―――!?」
「リオン、そのまま行くんだ!!」
〈――倒れろ!!!〉
ギャラドスの技を完全に粉砕し、強化されたフレアドライブでギャラドスを吹き飛ばす。
苦しげな悲鳴を上げ、ギャラドスの身体は地響きを響かせながら地面に倒れ込んだ。
「ギャラドス戦闘不能! リザードンの勝ち!!」
『レイジ選手の逆襲!! リザードンの凄まじい炎が、ギャラドスを打ち砕きましたー!!』
「もうオーバードライブを使いやがった……」
いくらなんでも、まだ早すぎる気がするが……。
「……流れをこちらのものにするためよ」
「流れを?」
「確かに数の上では僅かにレイジくんの方が有利よ。だけどそれ以外は全てワタルの方が勝ってる。
だからレイジくんは、危険を承知で大技を使ってギャラドスを一撃で仕留めたの」
気持ちというものは、どんなものにも重要な役割を担っている。
気持ちで負けてしまえば勝てる戦いも勝つ事はできない。
だからレイジは、こうしてギャラドスを簡単に撃破し、流れを自分のものにしようとしたのだ。
尤も――これだけでは、まだワタルの心は揺らがない。
「凄いよレイジ君、追いついたと思ったら逆転されちゃったね!」
「……このまま、勝たせてもらいます」
「その意気だよ。だけどね……ボクだってまがりなりにもチャンピオンという立場だ。このまま負けるわけにはいかない! 出てくるんだ、リザードン!!」
『チャンピオン、続いてはリザードンです!! リザードン同士の戦い、はたして軍配はどちらに挙がるのか!!』
「君のリザードンは確かに凄いパワーだ、けどスピードならボクのリザードンだって負けてない」
「なら、パワーで押し切るまでです!!」
「よし、なら勝負だよ、レイジ君!!」
To.Be.Continued...