ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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ソウルまで戦闘不能に陥り、ワタルに勢いを奪われぬよう、大技を繰り出し見事ギャラドスを撃破するリオン。

続いてワタルが繰り出してきたのは——同じくリザードン。

果たして、レイジとリオンはこのままワタルに勝利する事はできるのだろうか……!?


第73話 頂点を目指して〜レイジVSワタル!!〜

「リオン、かえんほうしゃだ!!」

「リザードン、だいもんじ!!」

同時に放つ炎。

それはぶつかり合い、綺麗に相殺される。

(やはりパワーではレイジ君のリザードンの方が上か……)

威力で勝るだいもんじがかえんほうしゃと互角なのだ、ワタルの思った通りパワーでは勝てない。

 

「リザードン、飛べ!」

「リオン、追って!!」

『どうやら空中戦になる模様です!!』

「リオン、だいもんじ!」

「かわしてシャドークロー!!」

放たれただいもんじを回避し、同時に漆黒の爪をリオン目掛けて振り下ろすリザードン。

 

「ほのおのパンチ!!」

それを炎を這わせた拳で受け止め、左の拳でリザードンの顔面を殴り飛ばした。

しかし、同時にリオンも苦しげな表情を浮かべ腹部を押さえる。

殴り飛ばした瞬間、ブレイズキックがリオンに命中したようだ。

 

「シャドークロー!!」

「かわしてはがねのつばさ!!」

迫るシャドークローを避け、反撃のはがねのつばさを叩き込もうとするリオン。

しかし、顔面に衝撃が走りせっかくのチャンスを逃してしまう。

「尻尾……!?」

なんてことはない、ただリザードンがリオンの顔面に尻尾を当てただけ。

ただそれだけだが――隙を作るのには充分過ぎた。

 

「かえんほうしゃ!!」

至近距離からのかえんほうしゃを、リオンは腕を交差させ耐える。

……けれど、それは間違いだ。

炎に紛れ、リザードンの巨体がリオンへ体当たりを仕掛ける。

怯むリオンに、追い討ちとなるシャドークロー。

 

「今だリザードン、そのまま投げ飛ばせ!!」

素早く後ろに回り込み、リザードンはリオンの尻尾を掴みハンマー投げのように回転を加え——地面に向かって投げ飛ばした!!

 

「リオン、地面に向かってかえんほうしゃ!!」

顔をしかめながらも、身体を地面に向けかえんほうしゃを放つリオン。

それにより、投げ飛ばされた勢いを殺す事ができたが……。

「良い手だ。けどまだ甘いよ!!」

「なっ――」

ワタルの声に気づいた時には、既に遅かった。

いつの間にか再びリオンの背後まで接近していたリザードンが、もう一度尻尾を掴み力任せに振り上げる。

 

「リオン、ブラスト――」

「遅い、ちきゅうなげだ!!」

ブラストバーンを発動させる瞬間。

一瞬速く、リザードンがリオンの身体を地面へと叩きつける―――!

 

その凄まじい威力により、彼の身体は地面に沈みクレーターができあがった。

 

『チャンピオンのリザードンの強烈な一撃がレイジ選手のリザードンを地面に沈めましたー!!

 これはかなりのダメージとなりましたが、はたしてどうなったのでしょうか!?』

 

(……こんなものだったのかい?)

 

確かに自分のリザードンの攻撃は、見事に命中した。

並のポケモンなら、あれで終わりだ。

けれど――あのリザードンは違う。

ならば、こんな程度で終わるはずが……。

 

「………やっぱり、ね」

嬉しそうに、口元に笑みを浮かべるワタル。

彼のリザードンも、心なしか笑っているようにも見える。

 

――クレーターの岩が吹き飛ぶ。

そして、内部から現れたのは……傷だらけになりながらも、しっかりと地に足をつけ立ち上がるリオンの姿。

 

『レイジ選手のリザードンが立ち上がりました!

 な、なんという根性でしょうか!! 正直もう無理かと思いましたが……素晴らしい!!』

(当然だよ。なにせあのリザードンはレイジ君のポケモンだからね)

 

「……リオン、大丈夫?」

〈大丈夫じゃねえ、痛いし苦しいし限界に決まってるだろ〉

「…………」

〈けどよ、まだ戦う力は残ってるぜ。だからお前は安心して俺に指示をしてればいい〉

「……そうこなくっちゃね」

〈おいおい、そこは「もう戦わなくていい」って言う所じゃねえのかよ?〉

「けど、リオンはそんな言葉望んでないでしょ?

 望んでいる言葉は……「このまま戦うよ」だよね?」

〈ちっ、人使い……いや、ポケモン使いの荒いご主人様だぜ〉

 

憎まれ口を叩きながらも、リオンはレイジの方へ振り向き笑みを浮かべる。

 

「……ははっ」

〈――へっ〉

(……こんな時でも、笑える余裕があるなんて流石だね……)

 

決して諦めたが故の笑いではない。

平常心を失わず、あるがままの自分達を維持している証拠だ。

当たり前の事のようで、その実それを行うのは難しい。

それができるのは、彼等の心が強いから。

だからこそ、ワタルは全力で戦う事ができるのだ。

 

「リオン!!」

〈任せろレイジ!!〉

気合い充分、先程よりも更に闘志を燃やすリオン。

だが、次にワタルが行った行動は、レイジにとって意外過ぎるものだった。

 

「リザードン、戻るんだ」

「え―――?」

 

レイジは呆け、リオンもおもわず全身の動きを止めた。

 

「……レイジ君、やはりこうやって君の力を試しながら戦うのはボクの性には合わない。

 だから、ここからは本当の意味で本気を出すよ」

「…………」

身体が、固まる。

ワタルが放った言葉の意味、それを理解するよりも早く。

彼は、この戦いを終わらせる為の力を、場に出した。

 

「出てくるんだ、カイリュー!!」

「―――っ!?」

 

ビリビリと、身体に衝撃が走る。

違う、今までの相手とはなにもかもが。

ワタルのポケモン、カイリューが出てきた瞬間、レイジはすぐさまそう感じた。

違うのだ、あのカイリューは。

強さだけではない、その身に宿す威圧感も凄みも。

そして、それを操るワタルの空気も変わった。

恐ろしいまでのプレッシャー、先程まで感じた友好的な雰囲気など露ほどにも感じられない。

 

――本気になったのだ、彼は。

本当の意味で、彼等を倒すためだけの戦いに切り替えた。

レイジの限界を知るために、ワタルは今正真正銘のチャンピオントレーナーになったのだ。

 

〈うおっ、すげえ……さっきまでとはパワーが段違いだ。正直、身体が震えてくるぜ〉

「…………」

 

冗談ではない、身体どころか心まで震えている。

これが本気になったチャンピオンのオーラ、最強のトレーナーに相応しい強大な存在。

普通の人間より遥かに第六感が働くレイジにとって、ワタルのオーラは戦意を奪うほどに凄まじいものだった。

心が、砕かれそうだ。

今すぐにでも逃げ出したいという衝動が、彼の中に生まれていく。

 

「カイリュー、ドラゴンダイブ!!」

「っ、リオン、フレアドライブ!!」

一瞬反応が遅れたものの、どうにか指示を告げるレイジ。

フレアドライブの炎が、ドラゴンダイブとぶつかり合う。

しかし……カイリューはあっさりとリオンのフレアドライブを破り、彼を壁際まで叩きつけた。

 

「――――」

「リザードン戦闘不能!カイリューの勝ち!!」

審判の声が、どこか遠くから聞こえたような気がした。

……今、何が起きたのか理解できない。

何故、リオンのフレアドライブがこうも簡単に破れたのだ……?

 

「――トレーナーの不安は、そのままポケモンの実力を妨げる要因に繋がる」

「えっ……?」

「君はあきらかにボクを恐がっている、そんな状態ではポケモン達も君が心配になり実力を出し切れない。

 トレーナーは指示だけをしている存在だと思っているなら、君はまだ半人前だ。

 ポケモン達が戦えるのは、後ろに支えてくれるトレーナーがいるとわかっているからだ、自分の心を平静に保ちその上で指示するから、ポケモン達はその実力を十二分に発揮できる。

 さっきまで君は一体どこに行った? 君が何を感じ取ったかは知らないが、自分を見失ったから君のリザードンはこうもあっさり敗北したのだとわからないのか?」

「…………」

 

ワタルの言葉は、いちいちもっともなものだ。

……そう、今自分はワタルを恐がっている。

なまじ相手のオーラが見えるが故に、先程までの自分を見失っているのだ。

そんな状態では、リオンも気になってバトルどころではない。

そんな事、言われなくたってわかっていたはずなのにどうして……。

 

「――適わないと思っているなら、尻尾を巻いて逃げるかい?」

「―――っ」

拳を強く握りしめる。

けれど、まだ恐怖心が邪魔をして震えてしまう。

(く、そ……震えるな、震えるな……!)

「…………」

歯を食いしばり、必死で己の中に芽生えた恐怖心と戦うレイジを、ワタルは静かに待つ。

 

(ここで負けたら、君はそこまでだ……そんな事にはならないでくれ)

『レイジ選手どうしたのか、次のポケモンを出そうとしません』

「くっ……ぅ……」

「…………」

「レイジ選手、早く次のポケモンを出しなさい」

「…………」

審判の声にも、レイジは答えられない。

 

「レイジ選手、早く出さないと失格に――」

「待つんだ!!」

ワタルの怒声が、スタジアムに響く。

「し、しかし……」

「待つんだ」

それだけを告げ、ワタルはただ待ち続ける。

 

(震えるな……震えるんじゃない……!)

必死で自分にそう言い聞かせるが、それでも震えは止まらない。

と。

 

「っ」

腰のボールが勝手に開き、中からティナが飛び出してきた。

 

「………ティナ」

〈…………〉

ティナは何も言わず、黙ってレイジを見つめている。

まるで、レイジが己の恐怖心に打ち勝つのを待っているかのように。

 

「………っっっ」

ギリ、と歯を食いしばる。

両の手はとうに握り拳となり、足にも力を入れる。

そして。

 

 

「―――うあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

声が枯れるくらいの大声で、叫び声を上げた。

 

 

「…………」

その声は、ワタルだけでなく観客達も声を失った。

「………ティナ、もう大丈夫」

〈…………〉

「ありがとう、それとごめん」

〈……謝るなら、リオンに謝ってくださいね。

 それに、恐怖で自分を見失ってしまうのは仕方ありません。

 けれど、それを乗り越えれば……また新しい力を得る事ができますよ〉

「………うん」

 

――震えは、もうない。

 

「ワタルさん、お待たせしました」

「……尻尾を巻いて逃げないのかい?」

「逃げません。まだ……逃げるわけにはいきませんから」

この戦いは、自分だけの戦いではない。

ティナ、ヒカリ、アクセル、リオン、ソウル、そしてルギア。

全員の戦いなのだ、皆の主人である自分が逃げる事など許されない。

 

「……そうこなくちゃね、ボクも本気を出す甲斐がある」

「…………」

まだ、ワタルを見て恐怖心が沸き上がりそうになるのを止められない。

しかし、自分は1人で戦っているわけではないのだ。

ならば――皆を信じて立ち向かえばいいだけだ。

 

「さあ、いくよレイジ君!!」

「はい! ティナ、お願い!!」

〈お任せください!!〉

瞬時にアイシクルセイバーを両手に出し、カイリューへと走るティナ。

 

「ドラゴンクロー!!」

〈はっ!!〉

幾重にもぶつかり合う竜の爪と氷の剣。

衝撃はレイジとワタルの身体を揺らし、その余波は観客席まで及ぶ。

 

「っ」

砕かれる右の剣。

それには構わず、左の剣で突きを放つ。

受け止められ、上段からドラゴンクローが。

 

〈っ、く………!〉

間一髪、もう一度アイシクルセイバーを右手から作り出し、受け止める。

だが、やはりパワーの差か、片膝をつき必死に攻撃を行き届かないようにするのに精一杯だ。

 

――カイリューの口から凄まじいエネルギーが溢れ始める。

 

「ティナ、ふぶき!!」

「カイリュー、はかいこうせん!!」

至近距離からの大技のぶつかり合い。

爆発が起き、ティナとカイリューは互いに吹き飛ばされる。

「りゅうせいぐん!!」

上空に撃ち放たれる強大なエネルギー体。

 

それが分裂し、都合三十近いりゅうせいぐんがティナに襲いかかる。

 

「ティナ、サイコキネシス!!」

それを、ティナはサイコキネシスですべて止めてしまった―――!

 

「なに!?」

「そのままカイリューにぶつけるんだ!!」

 

サイコキネシスにより操られたりゅうせいぐんが、すべてカイリューに降り注いでいく。

しかしカイリューとて負けていない、迫るりゅうせいぐんすべてを撃ち落とす為に、再び特大のはかいこうせんを放った。

その隙に、間合いを詰め上段から双剣を振り下ろすティナ。

はかいこうせんの反動により、カイリューは動けない。

渾身の一撃は、見事カイリューを吹き飛ばしダメージを与えた。

だがまだ終わらない、更に踏み込み一閃。

 

〈っ!!?〉

手応えは――無い。

追い討ちを掛けるようなティナの一撃はしかし、カイリューに受け止められてしまう。

「負けるなティナ、10まんボルト!!」

鍔迫り合いになりながらも、カイリューに電撃を浴びせていくティナ。

少しずつ、けれど確実にダメージは与えていっている。

 

「いいぞレイジ君、カイリュー、こちらはかみなりだ!!」

〈うっ、あああぁぁぁぁぁぁっ!!?〉

電撃を受けながらも、ティナの剣に力は失われず。

〈こ、のぉ――!〉

力任せに押し出し、後ろに跳躍しながら双剣をカイリュー目掛けて投げつける。

それをドラゴンクローで弾くカイリューだが……既にティナは次の一手を決めていた。

 

「でんじほうだ!!」

胸元で作られたでんじほうが、カイリューへと向かう。

「カイリュー、はかいこうせん!!」

それを、はかいこうせんで破壊するカイリュー。

でんじほうが破壊されると同時に着地し、地を蹴り一息で間合いを詰める。

 

「れいとうパンチ!!」

弱点である氷の拳を叩き込むティナ。

避けられない、間合いもタイミングも文句のつけようがないほどだ。

そして、レイジの思った通りティナの攻撃はカイリューへとヒットする。

 

――しかし。

 

〈な―――〉

 

ティナの攻撃は、確かにカイリューへと命中した。

弱点であるが故に、与えられたダメージも絶大だ。

だと、いうのに……。

攻撃を受けたカイリューは、吹き飛ばされずにその場に留まり。

ティナの腕を、握りしめていた。

 

「っ、初めからこれが狙いか……!!」

「そうだよ。来るとわかっているなら、たとえどんな一撃でも一度は耐えきれるものさ!!」

「アイシクルセイバー!」

だが対応は速い、すぐさま左手にアイシクルセイバーを作り上げ、振り下ろす。

対応は速い、が……。

 

〈きゃ………!?〉

振り下ろされる一瞬前に、ティナの身体はカイリューによって宙へと持ち上げられていた。

虚しく空を切る剣。

それにより、ティナに絶対的な隙が生まれ。

 

「カイリュー、りゅうのはどう!!」

至近距離からのりゅうのはどうが、ティナの腹部に命中し彼女の身体が宙に弾き飛ばされた―――

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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