ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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死闘を続けるティナとカイリュー。

しかし、カイリューの攻撃がティナへと命中してしまう。

はたして、ティナはこのまま倒れてしまうのであろうか……!?


第74話 災厄の烈空の覇者〜チャンピオンリーグの終わり〜

……地面に倒れるティナ。

剣は消え、身体はピクリとも動かない。

 

「ティナ!!」

「……よくやったよ君のサーナイトは、ガブリアスとの戦いでのダメージがありながら、ここまでカイリューにダメージを与えてくるとは思わなかった」

 

肩で大きく息をしながらも、一歩一歩確実にティナへと向かっていくカイリュー。

そこでようやくティナも動きを見せ、起き上がろうとするが……。

顔を上げた時には既に、カイリューが自分を見下ろしていた。

 

〈くっ………〉

 

力が入らない。

先程の一撃で、ティナのサイコパワーは尽きてしまった、もう戦う事はできない。

それでも、彼女はまだ諦めてはいなかった。

必死で自分に声を掛ける彼が居る限り、自分から諦めるという道は選べなかった。

 

「頑張ったけど、ここまでだ!!」

〈―――っっっ!!〉

歯を食いしばり、今自分が出せる限りの全力で跳躍する。

結果――カイリューの攻撃は空を切った。

 

「なっ―――」

〈はぁ…はぁ…はぁ…〉

最後の最後で、悪あがきともとれるテレポートでの回避。

『なんというタフネス、もはや絶望的かとも思われましたが、サーナイトはまだ諦めてはいないようです!!』

「――ティナ、もう一度アイシクルセイバーだ!」

 

「おいおい、レイジはまだティナに戦わせるつもりかよ!?」

既に彼女は限界を超えている、観客席から見ていてもわかるのだ、レイジとて気がついているはず。

だというのに、彼はティナをボールを戻さずにまだ戦わせようとしているのは何故……。

「――ティナの気持ちを汲み取っているからよ」

「えっ……?」

「今ボールに入れられたら、自分はもう立てないとわかってる。

 だから彼女は限界を超えても戦おうとしているの。レイジくんもそんなティナの気持ちがわかるから、決して彼女を戻そうとはしない」

だって、そんな事をしたらティナの決意を踏みにじる事になる。

情けない自分の為に、彼女は戦ってくれている。

だから――レイジは決してティナをボールへ戻さない。

 

「頑張れティナ!!」

「カイリュー、全力で相手をするんだ!!」

 

――死闘は続く。

 

………。

 

けれど、まだ誰も気づいていない。

遥か上空、生物が住めるような環境ではない天空から。

ある脅威が、近づいている事に。

 

「ドラゴンクロー!!」

「アイシクルセイバー!」

踏み込み、幾重もの剣戟が響く度に両者から力が抜けていく。

ぶつかり合う衝撃が、身体中に響き確実にダメージになる中。

ティナもカイリューも、半ば雄叫びのような声を上げ、戦い続けていた。

 

「もう、ティナもカイリューも限界だ………!」

傍目から見てもわかる、もう両者に余力など残されていない。

あるのは気力だけ、主人に勝利をもたらすという想いだけで戦っている。

故に、互いに一歩も退かずに死闘を繰り広げていた。

 

「ティナ、頑張れ!!」

たまらずカグヤはそう叫ぶ。

聞こえるとは思えない、それでも——応援せずにはいられなかった。

だってそうだろう、あんなにも素晴らしい戦いを見せてくれて、どうして何もせずにいられるというのか。

 

〈―――っ、はっ!〉

迫るドラゴンクローを弾き、渾身の一撃を叩き込む。

防御の構えをとるカイリューだが、それより速くティナの剣が振り下ろされ、フィールドの端まで飛ばされた。

〈し―――!〉

更に踏み込み、横薙ぎの一撃。

しかし、それは弾かれ代わりとばかりにティナの肩口に衝撃が走る。

 

「っ、ぐ………!」

掠っただけだというのに、まるで大砲のような衝撃だ。

双剣を落としかけるが、すぐさま力を込め難を逃れる。

その間にも、カイリューは次の一撃を繰り出していた。

「かみなりだ!!」

雷が、カイリューの身体から放出される。

避けられる間合いではない、しかし。

 

「ライトニングセイバーだ!!」

 

氷の剣が消え、瞬時にティナの両手には違う剣が握られる。

それは鈍い光沢を見せる黄色い剣。

それを、ティナは防御するように自分の目の前で十字に構えると。

かみなりが、吸い込まれるように双剣へと命中した。

 

「なに!?」

「ティナ、今だ!!」

レイジの声を聞き、ティナはかみなりを吸収しプラズマを発する双剣を、カイリューへと投げつける。

回転の込められたそれは、当たればただでは済まされないという事がわかる威力を秘めていた。

「避けろカイリュー!!」

受ける事はできない、だからワタルはカイリューに回避の指示を告げる。

 

――間一髪。

まさしく数瞬の差で、カイリューは迫る雷の剣を回避した。

……それで、終わりだ。

ワタルとカイリューは気づかない、ティナがまだ想像していた以上の動きが行える事に。

そして、気がついた時には。

 

「いけぇぇぇっ!!」

〈これで――〉

既に、カイリューの眼前にはサイコセイバーを両手に持ち振り上げたティナの姿が。

 

「カイ――」

カイリュー、という言葉すら出てこない。

守るためには、時間が足りなかった。

「――最後です!!」

振り下ろされる双剣は、カイリューの全身に甚大なダメージを与え。

 

「カイリュー戦闘不能!サーナイトの勝ち!!」

ワタル最強のポケモンは、ここで力尽きた。

 

『遂に、遂にチャンピオン最強のポケモンであるカイリューが倒れた!!

 まったくもって、凄まじい戦いでした!!』

〈は、あ………ぅ〉

剣を地面に突き立て、肩で大きく息をするティナ。

けれど、その瞳からはまだ闘志が消えていない。

 

〈ぐ……ま、だ……〉

まだ倒れていない、そう訴えるかのように彼女は再び立ち上がる。

『まだわかりません、この素晴らしい勝負の行方は、誰にも予測不可能です!!』

 

「――必ず勝つ。絶対に勝ちます!!」

〈そ、そうです……お父様の言う通り。勝つのは……わたくし達!!〉

 

気力だけで立っているというのに、ティナはまだ戦う事を諦めない。

彼等のそんな姿に、ワタルの身体が震えた。

素晴らしい、まったくもってその言葉しか浮かばなかった。

強い絆、何者にも負けぬ心が、人とポケモンをこうまで強くさせるものなのか。

しかし――それでもワタルは負けてなどやれない。

自分はチャンピオン、そして今は……ただのポケモントレーナー。

バトルをするなら、絶対に負けてなどやらない。

 

「レイジ君、勝つのはボクだよ!!」

「負けない! 絶対に負けるもんか!!」

「いいだろう。ならこれで決めてやる!!」

リザードンが入ったボールを手に取るワタル。

 

――だが、しかし。

この勝負は、誰もが予期せぬ事態へと変化した。

 

〈―――っ!!?〉

ティナの赤い瞳が、驚愕によって大きく開かれる。

それだけでなく、死闘の最中だというのに、ティナは空を見上げ始めた。

 

「ティナ、どうし――――っ!!!?」

 

全身、が。

鋭い刃物で、幾重も貫かれる。

 

「――うぁぁぁっ!?」

おもわず叫び、その場で腰を抜かす。

「は、え………?」

無論、身体に刃物など刺さっていない。

気のせい、幻覚に過ぎないに決まっている。

だというのに、レイジの身体は震えていた。

それに立てない、信じられない事だが本当に腰が抜けてしまっていた。

 

(今の、は……)

 

ありえない、幻覚で済ませられないくらいの現実感があった。

……何かが、来る。

遥か上空から、災厄と呼べるべき存在がここにやってくる。

先程の幻覚は、その災厄が撒き散らす圧倒的な殺意を感じ取った証。

そして、おそらくティナもそれを感じ取ったからこそ、戦いも忘れ空を見上げているのだ。

 

『? なにやらレイジ選手とサーナイトの様子がおかしいようですが……?』

「レイジの奴、いきなり座り込んでどうしたんだ?」

「それに、叫び声を上げましたけど……」

「…………」

 

様子のおかしいレイジに、カグヤとシロナは同時に内側から湧き出る違和感を感じ取っていた。

何かがおかしい、理由はわからないが……どこかが違うような気がした。

 

「おい」

そんな中で、ボールの中から低い声が響いた。

全員が視線を向けると、その先にはミュウツーが入ったボールが。

 

「――何かが近づいてきている、とてつもない力を秘めた何かが」

「なんだと……?」

訝しげな表情を浮かべるカイリ達、それだけミュウツーの言葉は理解に苦しむものだった。

しかし次の瞬間――彼が放った声に、カグヤ達は凍りつく。

 

 

「―――逃げろおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

それは、観客全員に聞こえるくらいの、大きな声だった。

声というより、もはや雄叫びに近いくらいのもの。

逃げろ、その言葉の意味を誰もが理解できない。

当然だ、一体何に対して逃げろと言っているのか。

そもそも、何故逃げろなどという言葉がこんな所で放たれるというのか。

観客達は戸惑い、けれどカグヤ達は……。

レイジという少年を知っている彼女達は、その言葉がどれだけ必死なのか。

そして——想像もできない災厄が、すぐさま押し寄せるという事を、表していた……。

 

「早く、みんなここから逃げるんだ!!」

『は、あ、え……?』

「このままじゃ……このままじゃみんな………!」

〈ダメ、もう間に合いません!!〉

悲鳴に似たようなティナの叫び。

 

それが引き金になったかのように――それは、空を切り裂いて現れた。

 

………。

 

空が、闇に包まれる。

否、現れたのは――巨大なドラゴン。

全長は七メートルはあるだろうか、全身緑色の身体は凄まじいまでの殺気に満ちている。

そして、その正体は……決してありえぬ存在であった。

 

 

「――レックウザ」

ぽつりと、現れた災厄を見上げながら、レイジは呟く。

 

――レックウザ。

 

ホウエン地方の伝わる神話の中に出てくる、幻のポケモン。

烈空の覇者と呼ばれるそれは、狂うほどの雄叫びを上げて、セキエイ高原に降臨した。

突然の登場に、その場にいた観客達は固まってしまう。

その中で――レックウザの危険を感じ取った少年だけは、動きを見せていた。

 

「カグヤ!!」

「―――っ」

彼の声を聞き、ようやく目の前の光景を許容できたカグヤ。

すぐさまフィールドに顔を出すと、レイジは彼女に指示を出す。

 

「僕のカバンを早く投げて!!」

「う、うん!!」

まだ頭は混乱している、しかしカグヤはすぐさまレイジのカバンを手に取り、彼に投げ渡す。

瞬間――レックウザは信じられない行動に出る。

 

「ジグガァァァッ!!」

形容できない叫び声を上げ、レックウザはその巨大な口を開く。

そして……その口から全てを呑み込むほど巨大なはかいこうせんが撃ち放たれた――!

 

それは全てを薙ぎ払い、容赦なく大地を砕いていく。

無論――スタジアムですら。

 

「うえわぁっ!?」

「きゃぁぁぁっ!!」

「こ、これは………!」

 

何故、どうしてという疑問が頭を占める。

レックウザは人間の味方というわけではないが、特別人間の脅威になる事などなかった。

というより、レックウザは人間の世界に干渉した事などほとんどない。

それなのに、今のレックウザはただの破壊神、人間……否、生きとし生ける者にとっては悪魔のような存在に成り下がっている。

 

「い、一体何がどうなってんだよ!!

 なんでレックウザがこんな所に……ていうか、どうして襲いかかってきてんだ!?」

「今はそんな事言ってる場合じゃないわ!! とにかくみんなを避難させないと!!」

会場は当然ながらパニック状態、レックウザの攻撃によってあちこちに逃げまどっている。

このままでは、死者が出てもおかしくはない。

 

「待って、レックウザをこのままにしておくわけにはいかないわ!!」

「けど、このままじゃ犠牲者が………!」

「なら、ヒメカとミカンさんとカイリはみんなを避難させて!!

 私とシロナさんとロストさんでレックウザの相手をするよ!!」

「カグヤ……」

「急いで!! 時間がない!!」

カグヤの迫力に圧され、全員が一斉に己の役割を果たすために動き始める。

一方、レイジもすぐさま動き始めていた。

まだ動けるティナとルギア、そしてアクセルをボールから出すと、傷ついているティナとルギアにきずぐすりをふりかける。

 

「マスター、一体なんだというのだあれは!?」

「……あれはたぶん」

「レイジ君、どうしてレックウザが……」

もはやバトルどころではない、ワタルは上空で暴れているレックウザを睨みながらレイジの元へ。

 

「ワタルさん、あなたは観客のみんなを避難させてください!!」

「君はどうするんだい!?」

「僕は……みんなでレックウザを止めます!!」

言うやいなや、全快したルギアの背に乗り込むレイジ達。

 

「ルギア、お願い!!」

「任せろマスター、振り落とされぬようしっかり掴まっていろ!!」

「レイジ君!!」

「急いでくださいワタルさん!! このままじゃ取り返しのつかない事になります!!」

こうしている間にも、レックウザの口から放たれる光線で、スタジアムは崩壊していく。

瓦礫の山が生まれ、それに巻き込まれ傷ついていく人達。

 

「やめぬかレックウザ!何をしているかわかっているのかお前は!!」

「無駄だよルギア、今のレックウザには何も通じない」

「何―――?」

〈父上、という事はやはり……〉

アクセルの言葉に、レイジは拳を握りしめながら、静かに答えた。

 

 

 

「そうだよアクセル、今のレックウザは……デッド化してるんだ」

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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