ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

81 / 98
レックウザとの戦いの傷が癒えたレイジは、仲間と共にシンオウ地方を目指していた……。


第77話 シンオウ地方へ〜カイリとヒメカの故郷〜

「――ぶえっくしょん!」

「汚っ! くしゃみするなら口を押さえてやってくれよ!!」

「あははー、ごめんごめん」

「鼻水が出てんぞ! 早くかめー!!」

「……うるさいな」

 

ぎゃーぎゃーと喚いているカグヤとカイリに視線を向け、レイジはため息をつく。

まあ、原因はカグヤにあるから、カイリに非はないのだが。

 

「仕方ないわ。カグヤはシンオウの気候に慣れてないのだから。それよりレイジくんは大丈夫なの?」

大丈夫です、そう答えるレイジの服装は、いつもの長ズボンに新調した赤色の長袖と、あまり厚着ではない。

カントーの人間であるレイジなら、こんな装備では寒いと思うのだが……。

 

「ほら、僕は元々こっちで生きていましたから、寒さには強いんです」

「あっ……そういえばそうだったわね」

「僕の事より……あの2人の方が大変だと思いますよ」

 

ちらりと視線を向けるレイジ。

そこには、相変わらずくしゃみを連発しているカグヤと。

あんまりにも寒いのか、しゃがみ込み身体を縮めているミカンの姿が。

寒いなら部屋に入ってればいいのに……ちなみにロストは慣れているのか平然としている。

 

「シロナさんこそ、端から見てると寒そうな恰好に見えますが……」

黒のコートは着ているものの、その下の服は胸元が開かれたものであり、寒そうに見える。

しかし、シロナはやはりシンオウ出身のせいか平気そうだ。

 

「ところでレイジ、シンオウに着いたらすぐに始まりの地に向かうのか?」

「うぅん。そんな急ぐ旅にするつもりはないし……カイリとヒメカはフタバタウンに帰りたいだろ?」

「まあ、親父と母さんに顔見せた方がいいとは思ってるけど……」

「急いで行って、この力が何なのかわかってもロキの居場所がわからない以上動きようがないよ。

 それに、ちゃんと両親に顔を見せておいた方がいいんじゃないかな?」

「まあ、そうしてくれるとありがたいけど……」

「ダメだよカイリ、ちゃんと両親がいるなら安心させないと」

「………おぅ」

 

レイジのその言葉に、カイリは素直に頷く。

いや、頷かずにはいられなかった。

本当の両親がいないレイジにとって、今放った言葉の重みは……誰よりも重いものだからだ。

 

「――あっ、シンオウ地方が見えてきた!!」

「だからカグヤ、鼻をかめよ!! ってか鼻水が凍り付いてんぞ!?」

「わー……凄い、初めて見たよ」

「感心してる場合か!」

「はぁ……カグヤ、そろそろ部屋に戻って荷物を取りに行くよ」

「はーい!」

元気よく手を上げ、鼻をかみながら、さっさと船の中に入っていくカグヤ。

 

「ったく……相変わらず呑気な奴だな」

「それがカグヤだからね、むしろああいう風じゃないとあの子らしくないよ」

「そうね。……ところでレイジくん」

「何ですか?」

「その手……カイリの時戻しの力で治す事はできないの?」

 

シロナの視線の先には、火傷の痕が痛々しく残ったレイジの手が。

今は肌にピッタリとフィットするタイプの手袋で隠れているが、その下の手は結局治す事ができなかった。

しかし、対象の時間を戻す事ができるカイリの力を用いれば……。

そう思ったシロナだったが、レイジはすぐにその問いに首を横に振った。

 

「僕もそう思ってすぐにカイリに頼んだんですが……治りませんでした」

「……治らない?」

そんなバカな、確かにカイリの力は数十分前の状態までしか戻せないといっても、すぐに力を使ったのなら治るはず。

だというのに、レイジは治らないと言った、それは一体どういう事なのだろうか。

 

「僕にもわかりません、でも……実際にカイリの力でも治らなかったんです」

(どういう事……? どうしてレイジくんだけカイリの力が……)

やはり、彼はどこか違うのだろうか。

そんな疑問が頭を占めるが、レイジの「部屋に戻りましょう」という言葉で、彼女は考えを止め彼の後をついていった。

 

………。

 

「うぅ〜……寒いよ寒いよー……」

「……カグヤ、ちょっと離れてよ」

「だって寒いんだもん」

「でもくっ付き過ぎよカグヤ」

「……シロナさんもですよ」

 

現在カイリとヒメカの故郷であるフタバタウンに向けて、空で移動をしているレイジ達。

しかし、何故かリオンの背中にはレイジだけでなくカグヤとシロナも乗っていた。

しかもピッタリとくっ付いているから、色々と困ってしまう。

リオンも少し重そうにしているが、文句を言わない辺り主人思いである。

だが、そんなおかしな状況になっているのは、なにもレイジ達だけじゃない。

カイリ達もまた……カノンの背中で3人仲良く寄り添いながら、移動を続けている。

しかし、カノンはリオンより小さいので、正直見ていて危なっかしい。

 

「……お前の妹、大変そうだな」

そんな彼等に視線を送りつつ、ロストは自身が乗っているラティオスに声を掛けた。

 

「まあ、仕方ないんじゃないか? それに、結構楽しそうだし」

「確かにな……それよりラティオス、重くないか?」

「大丈夫だ。それにこう見えてお前くらいなら10人は軽く乗せられるくらいの力はある、心配しなくてもいい」

「そうか……さすがだな」

 

「ところでレイジ、お前なんでそんな恰好なんだよ?」

 

そう告げるカイリ、しかし初めに言っておくが彼の姿は決しておかしなものではない。

髪を隠すように被ったモンスターボールのマークが入った帽子に……黒のカラーコンタクト。

端から見ると、レイジというのがわからなくなりそうだ。

まるで変装……というか変装以外のなにものでもない。

 

「これ? シロナさんが付けた方がいいっていうから……」

「レイジくんは有名人だからね、初出場でカントーリーグ優勝者、おまけにチャンピオンとも互角に戦った程のトレーナーよ。目立ちたくないレイジくんには必要でしょ?」

いや、どっちかっていうとあなたに必要ですよシロナさん、そう言ってやりたいがカイリにそんな勇気はない。

 

「――あっ、見えてきたよ!」

カグヤの声に、視線を前に向けると。

「………なんか、久しぶりだな」

「……そうね」

懐かしむような、カイリとヒメカの声。

……フタバタウンに着いたようだ。

 

「リオン、ありがとう」

〈おう。次は勘弁してくれな、さすがに3人はキツい〉

「あはは……ごめん」

やはり無理をしていたようだ、リオンの言葉に苦笑をしつつボールに戻す。

と、彼等に近づく人物が。

 

「なんだ、ようやく帰ったのかカイリ」

「……よぅ、親父」

ニヤリと口元に笑みを浮かべながら、カイリは近づいてきた人物に話しかけた。

(この人が、カイリのお父さん……)

決して若いとはいえない皺のある顔立ち。

けれどカイリは父親似なのか、彼をそのまま大きくしたような男性だ。それに――

 

(この人……強い)

シロナやワタル、ロストなどといった人達にも決して負けないくらいの強いオーラ。

それが、全身から感じられる。

「よぉヒメカちゃん、相変わらずでけぇ胸だな」

「…………」

いきなりのセクハラ発言に、ヒメカだけでなく全員がジト目になり、彼を睨む。

 

「……このエロ親父が」

「なーに言ってやがる、でかい胸はそれだけで重要なステータスになるだろうが」

「そういう問題じゃねえだろうがアホー!!」

「それよか見慣れない顔が沢山いるな、まあ……チャンピオンまでいるとはちょっと驚いたがな」

とは言うものの、対して気にした様子もないカイリの父親――ゲンリ。

と、ゲンリの視線がレイジを捉える。

 

「……………ほぅ」

「………?」

「なるほどなるほど……お前がレイジだな?」

「えっ……はい、そうですけど……名前言いましたっけ?」

「いんや、けどカイリからよく聞いてたからな……不思議な力がある、バカみたいに優しくてお人好しな少年トレーナーがいるってな」

「…………」

「まあ立ち話もなんだ、さっさと家に行こうや」

 

言うやいなや、こちらに背を向けて歩き出してしまうゲンリ。

 

「……わりぃなレイジ、俺の親父ちょっと口が悪いんだ」

「いや、別にそれはいいけど……あの人、トレーナーなの?」

「ああ。一応俺の師匠だ」

「……強いね、凄く」

「まあな。下品で口悪いけど、俺が今まで一度も勝てねえ相手だ」

「………そう」

 

………。

 

「――なんだカイリ、おめえそんなくだらない事に巻き込まれたのか?」

「くだらないって……かなり危ない橋渡ってきたんだけど!?」

「危ない橋だったのは、おめえが弱いからだろうが」

「ぐっ………!」

 

かなり腹が立つが、的を射ているので言い返せないのが悔しい。

 

「まあ、旅立った頃より少しはマシになったみたいだけどよ。けど……まだまだ弱えよお前は」

「………っ」

「セキエイ大会でベスト4、まあそれなりにはいい成績かもしれねえ。

 けどよ、そんな程度じゃ誰も守れないし助けられねえ。

 悪い事は言わねえ、もうくだらない事に首を突っ込むのはよせ」

「っ、いくらなんでも言い過ぎです!!」

我慢できず、おもわず立ち上がりゲンリを睨みながら大声を張り上げるミカン。

カイリの努力を知っている彼女には、彼の言葉は我慢できなかったようだ。

 

「オレは事実を口にしてるだけだぜ嬢ちゃん、こいつはまだまだ弱え……少なくともオレに勝てるまでは、認めねえぞ」

「っ、だったら……勝負してみるか?」

「へぇ……いいぜ、そこまででかい口を叩けるんだ。よっぽどお前のポケモン達は強くなったんだろうな?」

ニヤニヤと笑うゲンリ、そこに自分の勝利以外の結末などありえないと言うように。

「手加減しねーぞ?」

「けっ、バトルになればいいがな」

 

一触即発の空気。

ヒメカは慣れているのか、ため息をつくだけで2人を止めようとはしない。

尤も、レイジ達も止める気など微塵もないようだが。

傍観に徹していたレイジだったが、ゲンリは視線をこちらに向けいきなりこんな事を言い放つ。

 

「どうだレイジ、お前とカイリでチームを組んでダブルバトルでもやってみるか?」と。

 

「えっ……」

「カイリとオレじゃ絶対にコイツが負けるからな、お前と組めば勝率も少しは上がるだろ?」

「の野郎……2対1でやろうってのかよ!!」

「そうでもしなきゃ、勝てねえだろ?」

傲慢な口調のゲンリに、カイリは拳を握りしめるが……。

そんな彼を制するように、レイジは立ち上がりゲンリと対峙した。

 

「――いいですよ、ダブルバトルでも。でも……そちらも2体出してもらいます」

「……レイジ」

「へぇ……お前さん、オレの力がわかってるくせに、敢えて戦うのか?」

「カイリは強いですよ、あなたに負けないくらい強くなった。

 だから、それを証明する為にも……本気のあなたと戦わないと意味ありませんから」

「………けっ、いっちょ前に言いやがる。だが面白い……そこまで言うなら、バトルといこうか」

 

――家の裏側に移動し、バトルフィールドに立つレイジとカイリ、そしてゲンリ。

 

「はぁ……こうなるとは思ってたけど、レイジまで巻き込まれるなんて……」

「でも、あんなひどい事を言うなんて………!」

「仕方ないわよ。あれがあの2人の親子の会話だから。

 お互いにああやって悪口を言い合って、いつもバトルになるのよ。――そして、いつもカイリが負けるの」

「……あの人、そんなに強いの?」

 

「強いわ。だってあの人は……フロンティアブレーン候補に、シンオウリーグスズラン大会の優勝者でもあるの」

「えっ!?」

「……フロンティアブレーン?」

「バトルフロンティアと呼ばれる施設で、優秀なトレーナーに与えられる二つ名よ。

 なるほど、スズラン大会優勝者はともかくとして、フロンティアブレーン候補になれるくらいなのだから、とても強力なトレーナーね……」

「フロンティアブレーンになるのって、そんなに難しいんですか?」

「難しいわよ。バトルフロンティアのポケモンバトルは通常のバトルとは勝手が違うの。

 制限を課せられたり、自分のポケモンではなくレンタルポケモンで戦わなければいけない場合もあるし、正直普通のバトルよりよっぽど難しいわ」

「へぇ……」

 

だとすると、たとえレイジとカイリのコンビでも危ういかもしれない。

あの2人なら、大抵のトレーナー相手なら勝てるが……。

 

「さて、と……」

「………?」

軽い様子のレイジに、カグヤは首を傾げる。

間違いなく強敵だ、なのにレイジはおかしなくらい冷静だ。

 

「レイジ、勝てるか?」

「さあ、どうだろ?」

「どうだろって……なんか呑気だな」

「いいじゃん。楽しくバトルできればさ」

「楽しくバトルできればいいけどな?」

「……このクソ親父、いちいちうるせえんだよ」

「それじゃあ……いきなり全力で行かせてもらうよ!!」

「へっ、かかってきやがれ!」

 

「ヒカリ、お願い!!」

「出番だぜゴウカザル、出てこい!!」

「……へぇ、モウカザルが進化しやがったか。だがなんだ、もう一匹はピカチュウかよ」

「ピカ、ピカッ、ピカチュウ!!」

「ゲンリさん、ヒカリが「ピカチュウだと思って甘く見てると、その髪パンチパーマにするぞセクハラ親父が!!」って言ってますよ」

「……ヒカリ、お前結構言うな……」

 

思わぬヒカリの暴言に、カイリはおもわず頬を引きつらせる。

 

「上等だこのピカチュウ……ムクホーク、ドラピオン、出てきやがれ!!」

 

「ムクホークにドラピオン……」

「どっちもよく育てられてる……強いわよ、あのポケモン達」

 

「ピカチュ、ピカピカピカッ!!」

「……おい、今度は何言ってんだ?」

「聞きたいですか?」

「……教えろ」

「えーと……「今夜は焼き鳥にサソリ焼きで決まりだね」ですって」

「…………」

(うわぁ……)

 

こいつマジだ、本気と書いてマジだ。

見ると、ムクホークとドラピオンが少し脅えている、ヒカリの言葉が真実だとわかっているのだろう。

あ、ゲンリの顔が少し引きつってる。

 

「ヒカリー、ダメだよ食べるのは」

〈わかってる、それに不味そうだし〉

「……そういう問題じゃないんだけどね」

「おらぁ行くぞガキンチョ2人!! せいぜい気張りやがれ!!」

「けっ、そっちこそ気張れよクソ親父!!」

「ヒカリ、全力で飛ばすよ!!」

「ピッカッ!!」

 

「ではこれより、レイジ・カイリチーム対ゲンリのダブルバトルを始める。使用ポケモンは一体ずつだ。先攻は、ゲンリからとなる」

審判はロスト、レイジ達に視線を送った後――すぐさま試合開始の合図を告げた。

 

「では――試合開始!」

「ムクホーク、ゴウカザルにつばめがえし。ドラピオンはピカチュウにミサイルばり」

早速攻撃を仕掛けるゲンリ、それぞれの相手に向かっていくムクホークとドラピオン。

「ヒカリ、でんこうせっかで間合いを詰めて!」

「ゴウカザル、マッハパンチ!!」

 

迫るミサイルばりを、でんこうせっかのスピードで回避しながらドラピオンとの間合いを詰めていくヒカリ。

そしてゴウカザルは、マッハパンチを向かってくるムクホークに放つが。

マッハパンチが届く瞬間、突如としてムクホークが軌道を変え、ゴウカザルの後ろへ。

そのまま、無防備なゴウカザルへとつばめがえしを叩き込む―――!

 

「ヒカリ、アイアンテール!!」

飛び上がり、ドラピオンの頭めがけてアイアンテールを叩き込むヒカリ。

それは見事命中したが、ドラピオンにさしたるダメージを与えられた様子はない。

 

「ほぅ、さすがにやるじゃねえか! だが、ゴウカザルの動きは――」

「ほのおのパンチ!!」

「あぁ?」

つばめがえしによる衝撃にも構わず、ほのおのパンチをしっかりとムクホークに叩き込むゴウカザル。

 

「へっ、そんな程度で勝った気でいるんじゃねえぞ親父!!」

「……フン、少しは強くなったみてえだな」

「今日は勝つ! レイジと俺のコンビネーションを見せてやるぜ!!」

「おもしれえ、なら見せてみやがれ!!」

 

 

 

 

To.Be.Continued...

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。