ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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シンオウ地方に辿り着いたレイジ達は、まずカイリとヒメカね故郷であるフタバタウンへ。

そこで、何故かカイリの父親とダブルバトルをする羽目になってしまった……。


第78話 レイジとカイリのコンビチーム〜VSゲンリ〜

「ドラピオン、クロスポイズン。ムクホーク、ブレイブバード!!」

ドラピオンはヒカリに、ムクホークはゴウカザルにそれぞれ攻撃を仕掛けていく。

「ヒカリ、10まんボルトを拡散させるんだ!」

指示を受け、ヒカリは10まんボルトを撃ち放つ。

それはまるで蔦のように広がり、ドラピオンのクロスポイズンだけでなく、ムクホークの身体すら巻き込もうとする。

 

(へぇ、同時に2体の動きを止めようってか……やるじゃねえか)

「ゴウカザル、ムクホークにかえんほうしゃ!」

攻撃する余裕ができたゴウカザルは、隙を見せたムクホークに特大のかえんほうしゃを放つ。

だが読んでいたのか、ゲンリの指示なしでもムクホークはゴウカザルの攻撃を回避し上昇。

「10まんボルト!!」

逃がさぬとばかりに、今度はヒカリの10まんボルトがムクホークを襲う。

 

「かみなりのキバ!!」

しかし――ドラピオンのかみなりのキバが10まんボルトを粉砕した。

 

「くっ……!」

「なかなかのコンビネーションじゃねえか、けどそんな程度じゃ届かねえぞ!!」

「だったら届かせてやるぜ! ゴウカザル、オーバー――」

「カイリ、まだそれは解放するな!!」

カイリの声を制するようなレイジの大声が、フィールドに響く。

あまりに大きかったからか、おもわず言葉を呑み込み指示を中断させるカイリ。

 

「レイジ、いきなり大声出すなよ!!」

「でも、まだそれは使う時じゃない!! まだ待つんだ!!」

「……わかった!」

(へぇ……あの突撃思考のカイリを宥められるとはな。即席なんかじゃねえ、いいコンビだ)

「ゴウカザル、かえんほうしゃ!!」

「ヒカリ、10まんボルトだ!!」

今度はドラピオンへと攻撃を集中させる2人。

しかしそれを邪魔するかのように、ムクホークがドラピオンの前に。

 

「ムクホーク、まもる。ドラピオンはそのままクロスポイズン!!」

 

ヒカリとゴウカザルの攻撃を一身に受け、完全に防ぎきるムクホーク。

間髪入れずにドラピオンが前に行き、クロスポイズンを放つ。

攻撃の直後で動く事はできず、まともにクロスポイズンの攻撃を受けてしまった。

 

「ゴウカザル!!」

「………っ」

立ち上がれるものの、ダメージは決して小さくない。

 

「どうしたカイリ、レイジ、お前達の力はそんなもんか!?」

「つ、強い………!」

「カイリさんとレイジさんのチームが圧されるなんて……」

「さすがはフロンティアブレーン候補……といった所かしら」

だが、まだ勝負が決まった訳じゃない。

それに、レイジとカイリの力はまだまだこんなものじゃないはずだ。

 

「ちくしょう……やっぱりアホみたいに強いぜ、親父は……」

「…………」

「レイジ、お前何か良い作戦とかないか?」

「なんだカイリ、お前はレイジにお守りされないとバトルできないのか?」

「何だと………!」

「悔しかったら、さっさとかかってきやがれ」

「上等だ。なら今すぐに倒して――」

「カイリ、挑発に乗る必要なんかないよ」

「っ、レイジ………!」

 

「僕達はチームなんだ、なら君が僕に作戦を考えてほしいと願っても何もおかしい事はない。

 君のゴウカザルのパワーは、あの人に勝つためには必要だ。

 だから、君は僕を信じて自分のバトルをしてくれればいい」

「…………だな。わりぃレイジ、また頭に血が上っちまった」

「構わないよ。カイリのその思い切りの良さは充分戦力になる。――さあ、勝負はここからだよ!!」

「おう、任せろ!!」

 

(――いいチームだ)

 

レイジは、人を動かす能力に長けている。

カイリらしさを失わせずに、十二分に実力を発揮させている、普通はなかなかできない事だ。

ポケモンバトルは、ただ純粋に実力が高いだけでは決してダメだ。

ダブルバトルにトリプルバトル、他のトレーナーと協力してバトルしなければならない時だってある。

そんな時、シングルの時と同じように動いた所で勝利はない。

それに引き換え、レイジは誰かと協力して戦うという能力が特別秀でている。

この2人がこれからも協力してバトルを続けていれば、きっとどこまでも高みへと登り詰める事ができるかもしれない。

尤も、まだまだ荒削りな部分もあるが。

 

「ヒカリ、ドラピオンにボルテッカー!!」

「ピカッ!! ピカピカピカピカピカ………!」

「そんな単純な攻撃くらうかよ。ムクホーク、まも――」

「マッハパンチ!!」

「何――!?」

 

まもるを発動させるよりも速く、ゴウカザルのマッハパンチがムクホークに放たれる。

ヒカリのボルテッカーは囮、真の狙いはムクホーク―――!

 

「――甘えよ。ドラピオン、ゴウカザルにどくどくのキバ!!」

まだゲンリの裏を掻く事はできない、ゴウカザルに向かってどくどくのキバを放とうとするドラピオン。

……しかし。

「甘えのは親父の方だぜ!!」

「なに―――!?」

その言葉の意味を理解するより早く、ゴウカザルはマッハパンチを止めドラピオンの攻撃を回避した。

 

「こいつ………!」

気づいたようだが、もう遅い。

……真の囮は、ゴウカザルの方だ。

ムクホークはまもるを発動させておらず、隙を見せている。

「ボルテッカー・アイアンテール!!」

「ピッカッ!!」

そこに、渾身の一撃が深々と叩き込まれる―――!

吹き飛ばされ、フィールドの外の木に叩きつけられるムクホーク。

 

「今だゴウカザル、オーバードライブ!!」

「ウッキィヤァァァァァァッ!!!」

吹き荒れる炎。

自身の何倍もの蒼き炎に身を纏い、ゴウカザルは必殺の一撃の為の準備に入る。

 

「やるじゃねえかガキ共、だがまだだぜ……!

 ムクホーク、ブレイブバード!! ドラピオン、ギガインパクト!!」

ゲンリも、ムクホーク達に必殺の一撃の指示を下した。

「ヒカリ、自分にかみなり!!」

そして――こちらの準備も整った。

 

「いくぜ、レイジ!!」

「タイミングはこちらに合わせて!!」

「おぅ!!」

迫り来るムクホークとドラピオン、生半可な一撃では決して対抗などできない。

だからこちらも最高の一撃を以て、敵を迎え撃つ―――!

 

「ヒカリ!!」

「ゴウカザル!!」

掛けるべき言葉は、まったくの同時。

今この瞬間、刹那の時のみ互いの心は一つとなる。

 

「――デュアルボルテッカーだぁっ!!」

「――ブルーフレア・バースト!!」

 

黄金の光と、蒼き炎。

 

「ピカピカピカピカピカピカピカ………!」

それは互いに溶け合い、一つとなりまっすぐ向かっていく。

『いけぇぇぇっ!!!』

「ピカピカピカピカピカピカ――ピッカッ!!」

ぶつかり合う互いの必殺の一撃。

それは爆発を引き起こし、レイジもカイリもおもわず手で顔を覆う。

耳をつんざくような爆音は、フタバタウン全体を包み込むように響き渡り。

ヒカリ達の身体は、煙によって包まれてしまった。

 

………。

 

「くっ……し、勝負はどうなった!?」

視線をフィールドに向けるが、煙に包まれているため姿は見えない。

凄まじいパワーのぶつかり合いだった、遠距離から攻撃したゴウカザルはまだ大丈夫だが、デュアルボルテッカーを放ったヒカリは……。

……煙が、少しずつ晴れていく。

影は3つ、ヒカリとムクホークとドラピオンのものだ。

立っているのは……。

 

「――――」

 

おもわず、息を呑んだ。

立っているのは……誰もいない。

ヒカリもムクホークもドラピオンも、揃って地面に倒れ込んでいた。

 

「ピカチュウ、ムクホーク、ドラピオン戦闘不能。ゲンリのポケモンが2体共に戦闘不能になった事により、勝者はレイジ・カイリチーム」

「…………」

この結果に、誰よりも驚いたのはゲンリだった。

確かにカイリは強くなった、旅に出た頃とは比べものにならないくらいに。

だがそれでも、まだ自分に適うとは思っていなかった。

 

(……レイジとのコンビネーションが、あいつを強くしたのか……)

彼が、カイリのトレーナーとしての力量を飛躍的に向上させた。

そしてこの2人が組んだからこそ、このバトルの勝利を導く事ができたのだろう。

(……たいしたもんだ)

 

「やったなレイジ!!」

「ヒカリは戦闘不能になっちゃったけどね」

そう返しながら、倒れているヒカリを抱きかかえる。

「ヒカリ、よく頑張ったね。偉かったよ」

〈ごめんねレイジ、バトルには勝てたけどピカは負けちゃった〉

「気にする事はないよ、よく頑張った、本当に」

慈しむように優しく撫でてあげると、ヒカリは嬉しそうに目を細めた。

 

「――やりやがったな、まさか本当に勝つとは思わなかったぜ」

「へっ、これで俺の方が親父より強いって証明できたな!」

「ボケ、レイジが居たから勝てたくせに天狗になってんじゃねえよ。お前1人じゃ、まだオレには勝てねえよ」

「んだと……!? ならもう一度勝負するか?」

「いいぜ、ハナタレのガキ1人ならどうとでもならあな」

「っ、このクソ親父……だったら、次は完膚なきまでにぶっ倒す!!」

「やれるもんならやってみろガキ!」

 

「………はぁ」

わーわーぎゃーぎゃーと言い争いを続ける2人に、これ以上付き合ってなんかいられない。

ため息をつき、レイジはその場から離れる。

「あの2人って、仲がいいのか悪いのかわかんないね」

「仲はいいわよ、ただ……似た者同士だから、すぐ喧嘩するの」

「ケンカするほど仲がいいって、あの2人にぴったり当てはまるね」

「かもね」

カグヤの言葉に、苦笑混じりにそう返しながら、その場を後にしようとして。

 

「………?」

レイジは立ち止まり、右手に視線を向けた。

……痛い。

顔をしかめる程ではないが、僅かに痛みを伴っている。

どこかにぶつけた覚えなどないが……。

 

「レイジ、どうかしたの?」

「……いや」

この程度なら問題ない、そう自己完結させて視線を右手から逸らす。

「あの2人は暫く放っておきましょう、その間はわたしの家にでも行ってましょうか」

「賛成ー!」

「…………」

若干の違和感。

小さく、けれど決して無視できない何かを抱えながら。

レイジは、その違和感から目を逸らしていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

夜、レイジとロストはカイリの家に。

カグヤとミカンとシロナはヒメカの家に泊まる事になった。

時刻は夜中、既に日付は変わり全員が寝静まった頃。

レイジは、1人眠れずに僅かな呻き声を上げていた。

 

「は、ぁ………!」

右腕を左手で押さえ、布団の中で蠢く。

声を押し殺しながら、必死で右腕から発せられる痛みを抑えようとしていた。

「ぐ、な、んで……」

あの時、僅かに感じた痛みが、この時間になって増してしまった。

ズキズキと、まるで焼けた鉄の棒を押し付けられているような痛みと熱にうなされ、意識が混濁する。

無論、今までこんな事など一度もなかった。

右腕はまったく動かせないくせに、感覚だけはしっかりと残っており、このままでは発狂してしまいそうだ。

 

「っ、あ、ぐ………!」

歯を食いしばり、声が漏れないよう枕に顔を埋める。

幸いにもカイリ達とは違う部屋とはいえ、こんな声を聞かれでもしたら間違いなく心配される。

それは避けなくては、もうこれ以上みんなの負担を増やしたくない。

その一心で、レイジはただひたすらに痛みと戦っていた。

 

「……身体、熱、い…」

譫言のような口調で呟き、レイジは荒い息のまま布団から這い出し外へ。

夜中のシンオウは涼しいどころか寒い、場所によっては氷点下になるくらいだ。

ここフタバタウンでも、現在の気温は1度未満。

だというのに、レイジは半袖のままで外に出た。

 

「あつ、い……」

冷たい空気と風がレイジの身体に直撃するが、それでも熱が冷める事はなくむしろ上がっていっているような気さえした。

ありえない状況、だが熱にうなされた今の思考では冷静に理解する事はできない。

「ぁ、は、あ、ぅ―――」

熱くて熱くて、思考どころか脳まで浸食されてしまいそうだ。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

膝をつき、芝生の上に転がる。

草のひんやりとした感触が、心地よい。

ただ、それでも身体を支配するような熱は収まってくれない。

 

(一体、何が……)

 

起きているというのか、幾分正常化してきた頭で必死に考える。

思えば、レックウザの時からどこかおかしかったかもしれない。

殆ど気にする程の事でもなかったし、実際忘れてしまう程度のものだった。

だから、誰にも話さず自身も気にする事もなかったのだが……今の状態はとてもじゃないが、無視できるものじゃない。

我慢ができないのだ、この状態で居続けるのが。

身体がどうにかなる前に自分自身がどうにかなってしまうのが、何よりも恐い。

 

「う、ぐ、あ……」

 

また、右腕が痛み始める。

左手で押さえないと、あまりの痛みで泣き叫んでしまいそうだ。

「っ、―――っっ!」

歯を噛み砕かんとばかりの勢いで力を込め、身体を丸めてうずくまるレイジ。

彼は知らないが、これだけの痛みを発してから僅か10分足らずしか経っていない。

たったそれだけの短い時間でも、レイジは気が狂いそうになっていた。

それほどの痛みと熱が、彼のすべてを消そうとしていく。

 

「ぎ、が、ぁ―――!」

消えたくない。

消えたくない。

消えたくない………!

 

必死で自分にそう言い聞かせながら、この地獄のような時間を耐えようと痛みから抗い続ける。

 

………。

 

どれくらい、そうしていたのか。

 

「――は、ぁ」

いつの間にか痛みは消え、熱も収まった。

今度はちゃんと冷たい風を感じる事ができ、つい身体を震わせてしまう。

(……何だったんだ、あれは)

あの痛みを思い出すだけで、身体が凍り付きそうになる。

それだけの苦しみがレイジに襲いかかったのだ、疑問より恐怖心の方が増してしまう。

 

「…………はぁ」

芝生に寝転がり、空を見上げる。

遮るものがないからか、星空が良く見えいくらか気分が優れる。

(……あの場所に戻れば、僕は自分の事がわかるんだろうか……)

疑問は心の中で膨らみ、けれど解消される事はない。

 

 

――選定の時まで、あともう少し。

運命が、レイジの前に現れるまで、あまり時間は残されていない……。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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