ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
久しぶりの再会に懐かしむレイジであったが、すぐさま本題に入るためにこの地を守るレジギガス達の元へ……。
「うはぁ……」
「ふへぇ……」
変な声を出しながら、カイリとカグヤは口を開けて驚いた。
――まるで、自然の楽園だ。
おとなしくレイジ達についていくと、途中で洞窟の中に入り……その先には文字通り楽園が広がっていた。
草木と花に囲まれ、真ん中にはどうやって湧き出たのかとてつもない透明感の澄んだ湖。
空気も、どこか甘美な香りを含ませており、吸い込むだけで心が洗われるようだ。
それに広い、街三つ分以上の面積はありそうだ。
「……この世に、こんな所があるとはな」
さすがのロストも、この楽園を見て驚きを隠す事ができない。
……それにしても、この地に暮らすポケモンの何と多いことか。
カントー、ジョウト、ホウエン、シンオウ、更にイッシュ地方まで。
世界中のポケモンがここに集まっており、ここに存在しないポケモンなど居ないと本気で思えるほどだ。
「マナ!!」
「フィー!!」
そんな鳴き声と共に、湖からレイジに向かって飛び込んでくるポケモン達。
「あっ、こいつ……マナフィじゃねえか!?」
「それにフィオネまで……!」
「あっちにはシェイミがいますよ!!」
「あれは……ミュウ」
見渡すと、伝説や幻と謳われるポケモン達が自由気ままに遊んでいる姿が視界に入る。
「マジかよ……セレビィまでいるぜ」
「おーい、セレビィ!」
「ビィ……?」
レイジに呼ばれ、顔を向けた瞬間――セレビィは一目散に彼の顔に飛びついた。
「ぶわっ、あはは……相変わらずだねセレビィ」
「ビィ!!」
久しぶりにレイジに会えてよほど嬉しいのか、満面の笑みのままクルクルと彼の周りを回り続けるセレビィ。
「……すげぇ、もうすげぇとしか言いようがねえよ」
「そうね……わたしも正直同じ気持ち」
「あっ、あのポケモン可愛い〜」
そう言うカグヤの視線の先にいるのは……チラーミィとチラチーノ。
どちらもイッシュ地方にしか生息しないはずのポケモンだ、カグヤは瞳を輝かせながらチラーミィ達に向かっていくが……。
「グオガァッ!!」
「ひゃあ!?」
雄叫びを上げ、チラーミィ達を守るようにカグヤを威嚇するポケモンが。
「ウォーグル、この子はチラーミィ達に危害を加えたりしないよ」
苦笑しながらウォーグルにそう告げるレイジ。
ウォーグルもレイジがそう言うなら…とばかりに威嚇を止めてくれた。
「び…びびびびっくりしたぁ……」
「このウォーグルは凄く仲間思いなんだ、きっとカグヤの事をチラーミィ達に危害を加える存在だと思っちゃったんだよ」
「そっか……驚かせてごめんねウォーグル」
しっかりと頭を下げて謝罪すると、ウォーグルは何も言わずにカグヤから離れていった。
口には出さなかったが、許してはくれたらしい。
それでは改めて…チラーミィ達に近づこうとするカグヤだったが。
「後でね」
レイジに手を掴まれ、ズルズルと引っ張られてしまう。
「あぁ〜! おもいっきり抱きしめて頬ずりとかしたかったのに〜!!」
「今はレジギガス達に会いに行くのが先だよ。
――そうだ。みんな、話が終わるまで僕達のポケモンをここで遊ばせておくのはどうかな?」
「おっ、いいなそれ!」
このような快適な場所ならば、ポケモン達も喜んでくれるだろう。
カイリ達はすぐさまレイジの提案に乗り、手持ちのポケモンを全員場に出した。
「………ミュウ、か」
「ミュウツー、あのミュウは君の元になった個体のミュウじゃないよ」
「そんな事はわかっている、だが……ミュウを見てしまうと、な……」
「アクセル、ルギア、みんなをちゃんと見ててあげてね?」
〈お待たせください、父上の願いは必ず遂行してみせます!〉
「それはいいが、ティナはどうする?」
〈わたくしはお父様と一緒にレジギガス達に会いに行きます〉
「あーっ、ずるいぞティナ。余も行く!!」
〈ダメです。わたくしはちゃんと帰ってきた際の挨拶をしなくてはならないのですから、ちゃんとお父様の言ったようにしててくださいね?〉
「むぅ……」
ぷくーっと頬を膨らませ怒ってますという態度を見せるルギアだったが、ティナは気にせずに踵を返す。
そんな姿に苦笑しながらも、レイジはカグヤ達と共にヨルノズクの案内で更に奥へと進む。
「しかしまあ……すげえもんだな」
「そうだね。ここに居た頃はマナフィ達が珍しいポケモンとは知らなかったから、気にもしてなかったけど……。
改めて帰ってくると、ここにはどれだけ凄いポケモンがいるのか再認識できた」
「ホッホッホー、それは無理からぬ事じゃよレイジ。
この地は儂達ポケモンと呼ばれる存在にとって一番過ごしやすい環境じゃからな、様々なポケモンがこの地にやってきても不思議じゃなかろうて」
「ところで、どうやって人間の言葉を覚えたんだ? いや、覚えたんですか?」
「ホッホー、無理して敬語など使わなくてもよいぞ坊や。
なに、ただ今まで無駄に長く生きてきただけじゃ、人間の言葉など儂の生きてきた年月があれば充分覚えられるわい」
それに何といっても暇じゃからな、そう言ってカラカラと笑うヨルノズク。
「この地は、一体誰の手によって作られたのですか?」
「それはわからぬ。儂が小さかった時から既にこの地は存在しておった。
誰にもわからぬのじゃよ、この地を作り上げた者以外は」
――そうこうしているうちに辿り着いたようだ、ヨルノズクは突然立ち止まる。
「この奥じゃ。まあ奴等は石頭じゃが儂とレイジがおるから大丈夫じゃろう、多分」
(多分って……)
なんだかまた行きたくなくなってきた。
そうは思っても、入るしかないのでカイリ達は少し警戒しながら部屋に入った。
……部屋といっても、岩をくり抜いて作られた無骨なものだ。
その奥に……レジギガス達は居た。
「うっ……」
おもわず、そんな呻き声を出してしまうカイリ。
だがしかし、勇気を出して奥へ。
「レジギガス、レジスチル、レジロック、レジアイス、久しぶり」
〈お久しぶりです〉
友達のように、レジギガス達に話し掛けるレイジ達。
すると、レジギガス達の顔……と思われる部分にある点字が、点滅し始めた。
「あやつらは言葉を発する事ができんが、ああやって意志の疎通くらいはできる。
レジギガス達も、久しぶりにレイジとティナに出会えた事が、嬉しいのじゃろう」
「へぇ……」
「今回ここに戻ってきたのは、訊きたい事があるからなんだ。君達は僕の力の事を知ってるよね?」
頷くレジギガス達。
そしてレイジは、カイリに手を向ける。
「彼の名前はカイリ、僕と同じく不思議な力を持ってる。レジギガス、僕達の力について何か知らないかな?」
問いかけるレイジだが、レジギガス達は反応を返さない。
すると、代わりとばかりにヨルノズクが口を開いた。
「ホッホー、なるほど……今回お前が戻ってきたのはそのような理由があったのか。
レジギガス、どうやらレイジにアレを返す時が来たようだぞ」
「えっ……」
のそのそと移動し、奥へと入っていくレジギガス。
程なくして戻ってきたが……なにやら、見慣れないものを持ってきた。
手に持ったものを、レジギガスはレイジに手渡す。
よく見てみると……それは笛だった。
無骨で、何の飾り気もない白銀の横笛。
けれど……何故だろう。
この笛を、自分はどこかで見た事があるような……。
「これはお前がここで拾われた際に持っていたものじゃよ」
「僕が……?」
「テンガン山に行け。そうすれば全てわかるじゃろう」
「テンガン山……」
「この笛を授けた者のメッセージじゃ、それ以上の事は儂にもわからん」
「…………」
澄んだ光沢が、まるで心を清らかにさせていくようだ。
無意識の内に、レイジはそれを強く握りしめていた。
「おそらく、その笛を持ってテンガン山に行けば全てがわかるかもしれん」
「……ありがとう、ヨルノズク」
「……綺麗な笛だね、ちょっと見せて?」
「いいけど、落としたりしないでね?」
「むっ……失礼だねレイジ、私そんなにおっちょこちょいじゃないもん!」
よく言うよ、とは言わないでおく。
レイジから笛を受け取り、瞳を輝かせるカグヤ。
まるで新しいオモチャを買って貰った子供のようにはしゃいでいる。
「ホッホー、これから帰るとなるとちと辛いだろうから、今夜はここに泊まっていくとよい」
「えっ、いいのか!?」
「ホッホッホー、もちろんじゃよ」
ヨルノズクの言葉に、カイリはキャッホーと飛び上がりながら喜んだ。
それを見て、ヒメカが恥ずかしそうに顔を手で押さえていたのはまた別の話。
………。
「――しかしまあ、すげえ人気だなレイジの奴」
携帯食料を口にしつつ、カイリは少し離れた所で数多くのポケモン達に抱きつかれたり乗っかられたりしているレイジに視線を向けた。
小さなポケモンならともかくとして、リングマやサイドンなどに迫られたらかなり恐いだろう、というか身の危険を感じてしまう。
「ホッホッホ、レイジが帰ってきたのは実に九年振りじゃからな。嬉しくて嬉しくて仕方ないんじゃ」
「レイジくんはポケモンを本当に大事にしているから、自然と慕われるのよ」
「じゃが、お主達も儂達のような存在を心から大事にしてくれているではないか。
見るだけでわかるぞ、優しい子達じゃな」
「へへ……なんか照れちまうな」
「特にあの子なんか特にその気持ちが強い」
そう告げるヨルノズクの視線の先には……チラーミィ達と一緒になって走り回っているカグヤの姿が。
チラーミィ達だけではない、ヒマナッツやパチリスといった小さなポケモン達とも一緒に遊んでいる。
端から見ていて、本当に楽しそうに遊んでいるようにしか見えない。
いや、実際は楽しく遊んでいるのだろう。
「レイジは良い友達を持ったものじゃな……」
感慨深げに頷くヨルノズク、その顔はまるで父親のように優しく穏やかなものだ。
実際、ゲンジ達に引き取られるまでは、このヨルノズクが育てていたのだから、レイジを息子のように思っているのかもしれない。
「ホッホー、ところでそこの青年」
「……おれか?」
「うむ、そうじゃ。珍しいの、炎の民が外界に出ているとは」
「……炎の、民?」
「ヨルノズクのじいちゃん、炎の民って何だ?」
「炎の民とは、炎と生き炎と共に生涯を終える、特別な炎ポケモンを操る者達の事じゃ」
「…………」
息が止まる。
ヨルノズクの言葉を理解するのに、数秒を要した。
「……ねえ、ロスト。もしかして……」
「ん? 何じゃ、何かあるのか?」
「……実は彼、記憶喪失なのよ」
「なんと、そうじゃったのか……」
「けどよヨルノズクのじいちゃん、ロストさんがその炎の民っていうのは本当なのか?」
「間違いないじゃろう、あのバクフーンがなによりの証拠じゃ。
炎の民はまじないとして、己のポケモンに特別な紋章を刻む。ほれ、左足にあるのが見えるじゃろう?」
ヨルノズクの言われ、確かに何かがレジェンドの身体に彫られている事に気づいた。
「そういえばロストさん、記憶喪失だと自覚した時にはレジェンドだけが傍に居たんですよね?」
「あ、ああ……それに、あいつの名前だけは何故か覚えてた」
「だとすると、ロストさんは……」
「間違いなく炎の民じゃよお主は、あのバクフーンが何よりの証拠じゃ」
「…………」
ずっとわからなかった自分の出生、それがこんな形で手がかりを得られるとは……。
「……炎の民は、どこに居るんだ?」
震える声で、どうにかそう問いかける。
「炎の民は総じて気温の高い厳しい環境の中で暮らしておる。シンオウならば……ハードマウンテン辺りか」
「ハードマウンテン……」
「そこに、ロストさんの家族が……」
「家族がいるかどうかはわからん、じゃが……お主を知っておる者が居るかもしれんな」
「…………」
「やったわねロスト、これであなたの家族が見つかるかもしれない」
「あ、ああ……そうだな」
シロナの言葉にも、あまり反応を返せない。
自分の手かがり、ずっと探しても見つけられなかったものを、こんな所で見つかるなど思わなかった。
嬉しいという気持ちは確かにある、だが……今は驚きの方が大きい。
「ホッホッホー、喜びのあまり上手く言葉が出ないようじゃな。
まあ……無理もないかもしれんが」
「……感謝する。本当に…ありがとう」
地面についてしまうくらい頭を下げ、感謝の言葉を告げるロスト。
しかしヨルノズクは、ニコニコと笑みを浮かべるだけで、何も言おうとはしなかった。
「ロストさん、よかったですね!」
カグヤも自分の事のように喜ぶが、両手いっぱいにチラーミィ達を乗せ、更に頭にはチラチーノを乗せているので、いまいちその事で喜んでいるのかわからない。
「お前、なんだよそのチラーミィ達は……」
「えへへ、だって可愛いんだもんチラーミィもチラチーノも」
チラーミィ達もすっかりカグヤに慣れたのか、もっと遊んでとせがんできている。
「ホッホッホー、カグヤはポケモンに好かれる才能があるようじゃ」
「えへへ……」
「やれやれ……」
カグヤの様子に呆れたような表情を浮かべるカイリ。
そんな彼に、マナフィはいたずらっぽい笑みを浮かべ……。
「マナッ!!」
おもいっきりカイリの顔面にみずてっぽうをぶちかました。
「ぶふっ!?」
「マナッ、マナマナ!」
みずてっぽうの直撃を受けたカイリの顔が面白かったのか、手をパチパチと叩き喜ぶマナフィ。
「〜〜〜〜っ、何しやがるマナフィ!!」
がーっ、と怒りながらマナフィを追いかけるカイリ。
しかしマナフィはすぐさまオオスバメの背に乗り逃げ出し始める。
「逃がすかー!!」
「マナマナッ!!」
遊んでもらえて嬉しいのか、マナフィは始終ニコニコと笑みを浮かべ、追いかけっこを興じていた。
「まったくもぅ……」
「ふふっ……」
呆れ顔のヒメカと、楽しそうに笑うミカン。
のんびりとした平和を、皆充分過ぎる程に楽しんでいた……。
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―――翌日。
「もう行くのか。残念じゃのう」
「また来るよ。……色々と問題を片づけたら、必ず」
「チラーミィ〜、チラチーノ〜、別れるの辛いけど……また会おうねー」
何やら今生の別れみたいな事をしているカグヤとチラーミィ達は、とりあえず無視。
「マナフィ、次は負けないからな?」
「マナッ!!」
カイリとマナフィは、拳を握りしめ合い闘志を燃やしている。
「それじゃあ……またねヨルノズク」
ボールからリオンを出し背中に乗る。
行きは徒歩で行かなければならなかったが、帰りは飛んで帰れるので楽だ。
「では、また会おう」
ヨルノズクだけでなく、沢山のポケモン達がレイジ達を見送ってくれた。
その全員に手を振り返しながら、レイジ達は上空へ。
「あれ? 上から見ると入口がまったく見えなくなるんだな……」
下に見えるのは木々だけで、入口などは影も形も見えない。
「それで、これからすぐにテンガン山に行くの?」
「そのつもりだけど……今日1日で行くのは無理だね……」
少なくとも、どこか途中で休まなくてはテンガン山には登れない。
あの山はシロナの話によると年中吹雪いている場所で、始まりの地へと向かう道と同じくらい厳しい環境らしい。
しっかりと準備を整えなくては、間違いなく途中で挫折する事になるだろう。
「なら、カンナギに行きましょう。あそこからならテンガン山からも近いし……たまには、実家にも顔を出したいから」
「シロナさんってカンナギの生まれなんですか?」
「ええ。そうよ」
「……決まりだなレイジ、次はカンナギタウンか」
「……そうですね。みんなもいいかな?」
「意義なーし」
「右に同じ」
「そっちは左よカイリ、わたしもミカンも意見はないわ」
では決まりだ。
「シロナさん、案内お願いします」
わかったわ、そう返して先頭を飛ぶシロナ。
その後ろについていきながら……レイジはバックにしまった白銀の笛を手に取る。
(……この笛、一体何なんだろう)
疑問に思っても、答えがわかるわけでも返ってくるわけでもなく。
レイジは再びバックの中にしまい込み、前方に視線を戻した。
To.Be.Continued...