ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】   作:マイマイ

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始まりの地にて、ここで拾われた際に持っていたという笛を手に、レイジ達はテンガン山を目指す。

途中で休憩をしようと、一度シロナの故郷であるカンナギタウンへと向かったのだが……。


第81話 暗躍する影〜集う三種の力〜

「――もうすぐカンナギに着くわよみんな」

「シロナさん、カンナギってどんな街なんですか?」

「そうね……都会と比べて何もないけど……古い歴史がある、私にとっては素敵な場所よ」

「シロナさんはそこで暮らしているんですか?」

「いいえ。いつもは一人暮らしをしてるの、けどそこにはおばあちゃんと妹が暮らしてる」

 

「へぇ……シロナさんの妹か……きっと美人なんだろうなぁ」

「……ちょっと」

「カイリさん?」

ジト目で睨み、カイリの頬を左右から引っ張り上げるヒメカとミカン。

「いだだだだっ!?」

「まったくもぅ……」

「カイリさん、デレデレしないでください!」

「……はぃ、すみませんでした」

 

「ふふっ……大丈夫よヒメカ、ミカン。

 妹のイリナはまだ9歳だから、手を出したら犯罪になるわ」

「……なんだ、9歳か」

「なにガッカリしてるのよ!」

「カイリさ〜ん?」

「いででででっ!?」

ぎゃーぎゃーと喚くカイリ達を見ながら、他のメンバーは笑みを浮かべている。

その中で――レイジは、1人静かに自分の手を見つめていた。

 

「…………」

何度も手を握ったり開いたりを繰り返す。

まるで、自分の身体に異常がないか調べるかのように……。

「レイジ、どうかしたの?」

ルギアに乗りながら、レイジに話しかけるカグヤ。

ちなみに何故ラティオスに乗らないかというと、ロストが乗って移動しているからであるがそれはさておき。

 

「……いや、別になんでもない」

「何でもないようには見えないから訊いてるの。どこか身体の調子でも悪いの?」

「……本当に、なんでもないから」

これ以上話しかけないでくれ、そう言わんばかりの素っ気ない口調。

それを感じ取り、カグヤも内心首を傾げながらもこれ以上は何も訊かなかった。

 

(……何だろう、この違和感は)

身体の内側から、何かが壊れていくような不思議な感覚。

気にする必要のない小さな変化、けれどその変化が何より恐ろしく思えた。

一体自分の身体に何が起きているのかわからないという現実は、少しずつレイジの心を蝕んでいった。

 

「――見えた。あれがカンナギタウンよ」

シロナの声で、思考を中断させる。

前方に視線を向けると、歴史を感じさせるような古い建物が視界の中に入った。

(あれが……カンナギタウン)

シロナの故郷であり、歴史を今に伝える―――

 

「――――」

息が、止まった。

息だけではない、思考も感情も凍り付いていく。

 

なんだ。

 

なんだ、これは。

 

なんだ、この圧倒的なまでの虚無感は。

 

カンナギ全体を覆うような、虚無の意識。

しかしその中で――何度も感じた事がある、あの力の片鱗、が。

その時、いきなりレイジのボールからアクセルとティナが飛び出してきた。

彼女達だけではない、シロナとロストのボールからもルカリオが飛び出してきた。

 

「アクセル、ティナ?」

〈……父上、あの街……何かおかしいです〉

〈この不思議な感覚は、危険です……〉

「……ルカリオ、あなたもアクセルと同じものを感じたの?」

シロナの問いに、それぞれ大きく頷きを返すルカリオ達。

しかし、アクセル達もそれが何なのかはわからないようだ。

尤も…危険なものだという認識は、誰もが感じているようだが。

 

「急ぎましょう」

言うやいなや、カンナギへ向けて飛ぶスピードを速めるようリオンに指示を出すレイジ。

他の面々もすぐさま同じ指示を告げ、急ぎカンナギへと向かった。

 

………。

 

街に降り立つレイジ達であったが、周りを眺めても特別おかしな所は見受けられない。

住民は普通に周りを歩いているし、雰囲気を見てもごく平凡な日常にしか見えない。

しかし……先程から感じる虚無感は、増していくばかりだ。

 

「……とりあえず、私の家に行きましょう」

頷き、シロナの後に続くレイジ達。

程なくして、一行はシロナの実家へと辿り着いたのだが……。

「…………」

おかしい、レイジはすぐさまこの家から感じる異常を察知した。

まず第一に、ドアが開けっ放しになっている事自体が不自然だ、それに中から人の気配がしないとはどういう……。

 

「アクセル、先行して家の中へ」

〈はい!〉

臨戦態勢になりながら、アクセルは素早くシロナの家の中へ。

暫し待つと、すぐさまアクセルがレイジの元に戻ってきた。

 

〈父上、この家……中に誰もいません〉

「えっ……?」

「…………」

アクセルの言葉を聞き、レイジはすぐさま家の中に入る。

そして――目の前の現実を見て唇を噛みしめた。

 

――誰もいない。

 

アクセルの言った通り、中には誰一人として存在していなかった。

しかし生活感はそのままなので、まるで人間だけが忽然と姿を消したようで寒気さえする。

否――まるで、などでは決してない。

いなくなったのだ、この場から。

 

「おばあちゃん、イリナ!?」

シロナの叫ぶような声が、後ろから聞こえる。

「なんだ、留守なのか……? だとしたら不用心だな……」

「――いや、どうやらそうじゃないらしい」

カイリの呟きにそう返しながら、レイジはテーブルの上に置かれた一枚の紙を手に取り、シロナ達に見せた。

 

「っ!!?」

それを見て、シロナは目を見開いてその場で膝をつく。

「シロナさん!?」

「お、おい……これってまさか………!」

「……そのまさかだ。こんな事までするなんて……よほど性根が腐ってしまってるらしい……!」

 

怒りを含ませた声でそう吐き捨てながら、レイジはもう一度紙に書かれた文面に目を通す。

……それは、脅迫状。

内容は、シロナの祖母と妹であるイリナの身はこちらで預かっている、つまり誘拐した事が綴られていた。

そして、返してほしくば手持ちポケモン達を置きシロナとレイジの2人でエイチ湖まで来いと……。

 

「何なんだよこれ……ふざけんな!!」

「い、一体誰がこんな事を……」

「決まってるさ。……ロケット団だよ」

自分達の事を知っており、尚且つこのような事をする者などロケット団以外には有り得ない。

 

「あいつら………!」

怒りからか、拳を握りしめ飛び出そうとするカイリ。

だが、それをレイジが引き止める。

「カイリ、ダメだよ行ったりしたら」

「何でだよ!?」

「あいつらは僕とシロナさんの2人だけで来いと言った。

 それなのにカイリが行ったら、人質の安全は保証できない」

「うっ……!」

「けど、おとなしく行ったところで、あの人達が素直に人質を返すとは思えないわよ?」

 

ヒメカの言葉に、レイジとシロナ以外の全員が頷きを返す。

確かにそうだ、あの非道な連中がおとなしく人質を返すとは思えない。

 

「だけど、だからって向こうの要求を無視するわけにはいかないよ。

 こちらの選択肢は限られてる、それはみんなだってわかってるんじゃないか?」

「それ、は……」

そう言われてしまうと、何も言い返せない。

レイジの言う通り選択肢は限られている、無事に人質となった2人を取り返す可能性がある唯一の方法は、相手の要求を呑む事だ。

 

「……みんなはここに居るんだ、絶対に来たらダメだよ?」

「だけど………!」

「ダメだ!!」

「っ」

声を張り上げるレイジに、カグヤはびくりと反応し身体を縮こませた。

それには構わず、レイジは両膝を地面につき両手でどうにか自分を支えているシロナの肩に手を置く。

 

「……シロナさん、行きましょう。2人を取り戻さないと」

「…………」

「あまり時間はありません、こうしている間にも妹さんは恐がってるかもしれないんですよ?」

「だ、だけど……レイジくんが」

「僕の事なら気にしないでください、それより今は2人を助ける事だけを考えましょう」

 

優しく告げ、シロナを立たせる。

まだショックから抜けきれていないのか少しふらついているが、これならば大丈夫そうだ。

腰に装着したホルスターごと、ティナ達が入ったボールをテーブルに置く。

シロナもまた、同じくホルスターをテーブルに置いた。

 

「いいね? 絶対に来たらダメだから」

釘をさし、レイジはシロナを連れて外へ。

(………さて、と)

こっちの立場は圧倒的に不利だ、このままバカ正直に行けば間違いなく人質どころか自分達の身を守る事はできない。

(向こうが小細工を仕掛けたのなら……)

こちらも一つ、小細工を仕掛けるとしよう……。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

――エイチ湖。

シンオウ地方に存在する湖の一つであり、雪が降り積もるその光景はただひたすらに美しい。

その景観を壊すように、居てはならぬ存在が待ち人を待ち続けていた。

組織名はロケット団、そして中にはかつてレイジ達と死闘を繰り広げたフレアとマーダの姿が。

 

「おいフレア、なんでこんな回りくどい事をしたんだよ?

 人質なんて使わなくても、奇襲を仕掛ければ簡単じゃねえのか?」

ちらりと両手両足を縛られ動けない人質――シロナの祖母であるカラシナとシロナの妹であるイリナに視線を送りながら、マーダは面倒そうに訪ねる。

「何を言ってるの、たとえ今持っているデッドポケモンを用いても坊や達には勝てない。

 それだけの強さになってるのよ、向こうは」

「チッ……面白くねえ」

「……一体、何が目的なんじゃ?」

 

拘束されながらも少しも怯えず、威圧的に問いかけるカラシナ。

それを見て内心感心しながら、フレアはその問いに答えた。

 

「そうね、目的は2つあるわ。

 1つはレイジという少年を、こちら側の人間にすること。そしてもう1つは――」

「そんな事どうでもいいよ! あんた達なんかもうすぐお姉ちゃんがやってきてやっつけてやるんだから!!」

「……このガキ、少し黙らせるか」

拳を握りしめるマーダ、それを手で制しながらフレアはイリナの元へ。

 

「フフッ、さすがシンオウチャンピオンの妹と言った所かしら……でもねお嬢ちゃん、たとえトレーナーとしてどんなに強くても、ポケモンがなければ何もできないのよ、あなたのお姉ちゃんは」

「そんな事ない! お姉ちゃんは絶対にあんた達なんかに負けないんだから!! それに……お姉ちゃんの王子様が一緒だもん!」

「王子様……? ああ……坊やの事ね」

「――おい」

 

短いマーダの言葉に、フレアは後ろに振り向く。

 

「……もう少しお嬢ちゃんをからかって遊びたかったけど……どうやら、来たみたいね」

前方から、まっすぐこちらに近づいてくる2つの影。

確認しなくてもわかる、あれは……こちらが待ち続けていた彼等だ。

 

「お姉ちゃん!!」

「シロナ……」

「っ、おばあちゃん……イリナ!!」

駆け寄ろうとするシロナ、しかしそれを阻むかのように下っ端達が移動する。

 

「どきなさい!!」

「チャンピオン、それ以上近づいてはダメよ。この2人の身の安全は保証できなくなるわ」

「くっ………!」

射殺すような殺気を込めてフレアを睨むが、立場が圧倒的に有利な彼女には通用しない。

そして視線をレイジに向け、どこか嬉しそうに語りかけた。

 

「久しぶりね坊や、まさかシンオウに来てるなんて……また会えて嬉しいわ」

「……2人を離せ」

軽口に付き合う暇はない、レイジの口調にはそんな言葉が込められている。

それを感じ取り、フレアは残念と呟き肩を竦めた。

 

「それはできない相談よ坊や、あなただってワタシ達がすぐに人質を解放すると思う?」

「なら、さっさとそちらの用件を言え!!」

「……言わないと、わからないの?」

「……僕が、そっちに行けばいいのか?」

「そうよ。さすが坊やは恐いくらいに物分かりがいいわね」

「………わかった、だが先に2人を離せ!!」

「ダメよ。それに、ワタシ達に要求できる立場じゃないとわからないのかしら?」

「―――っ」

 

ギリと歯を鳴らし、レイジは少しずつフレア達の元へ。

 

「レイジくん!!」

「チャンピオンはその場から動かないで、動けば人質を殺すわよ?」

「くっ……!」

「シロナさん、大丈夫です。2人は……必ず助けますから」

「でも、レイジくんが………!」

「大丈夫です。僕は大丈夫ですか―――ぐぁっ!?」

 

そこまで言いかけ、腹部に鈍痛が走りおもわず膝をつく。

胃の内容物が喉元までせり上がり、涙目になりながらもレイジは顔を上げた。

 

「ラブロマンスでもやってんのか? クソガキ」

そこには、ニタニタと腹が立つ笑みを浮かべたマーダの姿が。

確認しなくてもわかる、マーダがいきなりレイジの腹部を蹴り飛ばしたのだ。

 

「マーダ、何をしているの!!」

「いいじゃねえか、どうせこのままコイツをボスに届けて人質はあのガキ共ごと始末するだけなんだ。

 なら……今までの鬱憤を払っても罰は当たらねえだろ?」

「くっ……やっぱり、初めから人質を返すつもりは………!」

「あるわけねえだろうがバーカ!!」

「が、は………!?」

 

顔を蹴られ、痛みと共に赤い液体が視界を汚す。

その後も、マーダは容赦なくレイジの身体を痛めつける。

殴り、蹴り、踏みにじる、まるで殺さんとばかりの勢いだ。

 

「オラァッ、悔しいかガキが!! ポケモンが居なきゃ何もできないクソガキのくせに、よくもオレ様をコケにしてきやがったな!!」

「ぐ、あ、はぐ―――!」

「やめてえ!!」

レイジを助けようと駆け寄るシロナを、周りの団員が彼女の両腕を掴み阻止する。

「くっ、放して、放しなさい!!」

「クカカカッ、テメェは黙ってそこで見てやがれチャンピオン!!

 この生意気なガキが、ボロ雑巾みたいになる様をなぁっ!!」

 

完全に正気を失ったマーダは、尚もレイジを殴り続けた。

飛び散る血にも構わず、むしろそれすらも楽しそうに殴り続ける。

やがて疲れたのか、息を上げながらレイジから一歩離れる。

 

「はぁ…はぁ……ど、どうだクソガキ。

 ここで土下座して謝るなら、許してやってもいいんだぜ?」

「…………」

レイジは答えない。

しかし口元は動いているので、何か喋っているのはわかるが、聞き取れなかった。

 

「あぁ?」

「…………か?」

まだ聞こえない、だからもっと近くまで寄ってみると。

レイジは痣と血でまみれた顔を上げ、はっきりと言い放った。

 

「これで、満足か?」と。

あれだけ痛めつけられたというのに、少しも恐怖の色を感じさせずに、小馬鹿にしたような口調でそう口にした。

 

「テ―――」

「僕を殴りたいならいくらでも殴ればいい、だけど……もしシロナさんの大切な家族に手を出してみろ。

 ――少しずつバラバラに切り刻んで、死ぬよりも苦しい体験をさせてやる」

 

冷たく、殺意に満ちた瞳は決して脅しではない。

否が応でもそう理解させられるほど、彼の瞳は凄まじかった。

おもわず、マーダは一歩後退る。

この状況でも尚、こんな瞳を宿す少年に対して、マーダは恐怖だけでなくある義務感すら湧き上がってくる。

……コイツを、今この場で確実に殺しておかねばならない、という義務感が。

 

「マーダ、それ以上はやめなさい!!」

「…………」

「……マーダ?」

「…………フレア、このガキはこの場で始末する」

「なっ――何を言っているのマーダ、この坊やはボスに」

「コイツは、確実に殺しておかねえといけない類の人間だ!!

 飼い慣らす前に、オレ達を噛み殺すぞ!!」

 

レイジから離れ、デッドボールからクロバットを取り出す。

 

「クロバット、コイツを噛み殺せ!!」

加減などしない、否、できない。

すぐさま指示を出し、クロバットはレイジの喉元目掛けて己の牙を突き立てようと迫る。

「レイジくん!!」

「坊や、逃げなさい!!」

「…………」

レイジは、ただ黙ってクロバットを見つめている。

そして、クロバットの牙がレイジに深々と突き刺さろうとした時。

 

 

「——サンダース、10まんボルト」

そんな声が、エイチ湖へと響き渡った。

 

…………。

 

――電撃が、クロバットを包み込む。

その場に居る誰もが、目の前の光景を理解できない中。

レイジだけは、動きを見せた。

 

「し―――!」

マーダの顔面に突き刺さる右ストレート。

完全に無防備となっていた彼は、悲鳴を上げぬまま数メートル吹き飛ぶ。

それを見届ける間もなく、捕らわれているカラシナとイリナの元へ地を蹴った。

「っ、止まりなさい坊や!!」

ようやく我に返るフレアだったが、気づくのには少しだけ時間が足りない。

 

「バシャーモ、かえんほうしゃ。ドダイトス、リーフストーム」

またも森の影から繰り出される攻撃。

かえんほうしゃがシロナの周りに居る団員を蹴散らし。

リーフストームが、レイジの道を助ける標となる。

 

「だぁ―――っ!」

カラシナ達の近くにいる団員達を、次々と気絶させていく。

それと同時に、彼女を掴み上げシロナの元へ。

「おばあちゃん、イリナ!!」

すぐさま2人を縛っている縄を解く。

イリナは泣く一歩手前の顔になり、シロナに抱きついた。

 

「お姉ちゃん……恐かったよぉ……」

「よかった……本当によかった」

「…………」

感動の場面を見る間もなく、視線をフレアへと向けるレイジ。

その瞳には、凄まじいまでの怒りと……憐れみの色が混じっていた。

 

「……おかしいわね、坊やの仲間達は来てないはずなのに」

「……仲間を1人忘れてるよ」

 

 

「誰が仲間だ。勝手な解釈をするな」

レイジの言葉にそう返しながら、森の中から現れたのは……意外な人物だった。

 

 

「君は……」

「――ありがとうケイジ、助かったよ」

「フン、相変わらず甘い奴だなお前は。なんだその無様な姿は?」

「それは言わないでほしいかな……」

 

苦笑するレイジに、フンと鼻を鳴らすケイジ。

……エイチ湖に向かう途中、レイジは密かにケイジへと連絡をしていたのだ。

彼がシンオウに居たのは知っていたから、伏兵として呼び寄せたのだが……作戦は見事に成功したらしい。

そして――他のメンバーも全員集合した。

 

「レイジ!!」

後ろから掛けられた声に振り向き、こちらに向かって投げられたものを受け取る。

それはボールホルスター、レイジの大切な仲間達が入った力の源。

「シロナさん、はい!」

シロナのボールホルスターを渡すカグヤ。

 

「カグヤ、みんな……」

「レイジ、遅くなってすまない。意地でも行かせないように邪魔をした連中がいたようでな……」

「って、お前すげえ怪我じゃねえか!? てか、なんでケイジがここに居るんだ!?」

「相変わらず騒がしい奴だな、カイリ」

「んだとぉっ!?」

「ははは……」

 

あれだけ来るなと言ったのに……そう思ったが、よくよく考えたら彼等にそんな事を言っても素直に利くはずがないと理解する。

気が緩みそうになるが、まだすべてが終わったわけではない。

 

「……さあ、形勢逆転だ」

「レイジ、そんな事より怪我が……」

「大丈夫。……このままおとなしく負けを認めるんだ、いくらデッドポケモンを所有していたって、この人数相手なら勝てないとわかっているはずだぞ」

「…………」

「ち、調子に乗りやがって……」

 

殴られたダメージから回復したのか、マーダが起き上がりこちらに近づいてくるが……。

それを制するように、フレアは彼に手を翳す。

 

「やめなさいマーダ、確かに坊やの言う通り……デッドポケモンだけでは相手はできないわ」

「っ、じゃあこのまま負けを――」

「忘れたの? ボスから万が一にと渡されたアレがあるでしょ?」

 

その言葉に、マーダはニヤリと口元を歪ませる。

すると、フレアは後ろに振り向き——不思議な名を口にした。

 

「――出てきなさい、アス」

 

彼女に呼ばれ、レイジ達の前に現れたのは……理解できない格好の、人間だった。

全身を、黒く分厚い鎧のようなもので包み、顔にもフルフェイスの黒い兜を身につけ顔は見えない。

鎧姿でも線が細いので、おそらく女性……それも少女と呼べるほどの年頃だろうか。

 

「坊や達、死にたくなければ全力で戦った方がいいわよ。

 ――アス、あの帽子を被った坊や以外はすべて始末しなさい。もちろんポケモンもよ」

こくりと頷き、少しだけ身体を屈めるアスと呼ばれた人物。

「まさか、生身でポケモンと戦うつもりなのか?」

「そのまさかよ。けど……この子をただの人間だと思ってもらったら困るわねさあアス、やってしまいなさい」

「…………」

(生身の人間が、ポケモンと戦う……?)

 

それは不可能だ、いかに身体を鍛えた人間だったとしても、手加減しているならともかく、本気を出したポケモンには勝てるわけがない。

……そう、勝てるわけがないのに。

レイジは気がつくと、ホルスターに手を伸ばし瞬時にアクセルの入ったボールを投げつけた。

解放され、場に出てくるアクセル。

 

 

――刹那。

 

風切り音を響かせながら、黒い悪魔は一瞬で間合いを詰め。

その拳を、出てきたばかりのアクセルに叩き込んでいた―――

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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