ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
そして2人は、最初のジム戦となるニビシティに辿り着いたのだった……。
「たのもー!!」
扉を開き、元気良く叫ぶ少女、カグヤの後ろに立つレイジはため息をついた。
(いくらなんでも着いてすぐにジム戦は早すぎると思うけど……)
トキワの森を抜け、ニビシティへ着いたレイジとカグヤ。
まずはポケモンセンターに行こうか、そうレイジが提案しようとした瞬間。
「レイジ、さっそくニビジムに行くわよ!!」
そう言って、カグヤはレイジの手を握ってまっすぐニビシティのジムへと足を運んだのだった。
万全の状態で戦いに赴いた方がいいと思うのだが、今の彼女に何を言っても無駄というものである。
「元気がいい挑戦者だな」
中に入ると、男の声がレイジ達を迎え入れた。
奥から出てきたのは、自分達とそう年が変わらない少年。
「……目、細っ」
おもわずそう口にしてしまい、カグヤは慌てて口を塞ぐが既に遅し。
しかし、少年は怒るどころかカグヤに対して笑みを浮かべるだけ。
「ははっ、よく言われるから気にしないでくれ。それより、今日の挑戦者は2人かい?」
「いえ、僕はただの付き添いで、彼女があなたに挑戦したいそうです」
「そうか。オレはこのニビシティのジムリーダーであるタケシだ。
君の名前はなんていうんだい?」
「私はカグヤです。マサラタウンから来ました」
「カグヤだね。では早速バトルになるが構わないかい?」
「もちろんです。こっちは早く挑戦したくてウズウズしてるんですから!!」
「はははっ、威勢のいい事だ。
だが、オレの岩ポケモンの硬い防御を貫けるかな?」
「勝負はやってみないとわかりませんけど……必ず勝ちます!!」
モンスターボールを構え、高らかに勝利宣言を告げるカグヤ。
――場の雰囲気が一気に引き締まる
先程までの友好的な気配は微塵も無くなり、ジムリーダーとしての顔になるタケシ。
「――よく言った。ではバトルだ!!
使用ポケモンは互いに二体、交代は挑戦者のみ認められる。準備はいいか?」
「もちろんです!!」
審判も中央に立ち、地面が動き岩のフィールドが姿を表す。
……緊張が、少しだけカグヤの身体を固まらせる。
しかし、後ろから掛けられた声で彼女の緊張はすぐさま消えた。
「落ち着いて。いつも通りに戦えばきっと勝てるよ」
「……レイジ」
「頑張って」
告げた言葉はただ一言。
しかし彼女にとって、何より力になる嬉しい応援。
「――うん!!」
力強く頷き、満面の笑みを浮かべるカグヤに、レイジも頷きを返した。
「――試合開始!!」
「でてこい、イシツブテ!!」
「――イッシィ」
「チコリータ、レディーゴー!!!」
「――チコォッ!!」
カグヤとタケシ、同時にお互いのポケモンをフィールドに出す。
タケシはイシツブテ、そしてカグヤはチコリータ。
相性ではカグヤが有利である、しかし勝敗などやってみるまではわからない。
「イシツブテ、たいあたりだ!」
「チコリータ、こっちもたいあたり!!」
チコリータとイシツブテ、両者共に自分の身体を使ったたいあたりで攻撃を仕掛ける。
「チ、コ………!」
ぶつかり合い、しかしパワー負けしたチコリータが後方に吹き飛ばされる。
(っ、やっぱりパワーじゃ負ける……!)
「イシツブテ、いわおとしだ!!」
「イッシィ、イシッ、イシッ!!」
近くにある岩の砕き、自慢の腕で次々とチコリータへ岩を投げるイシツブテ。
「避けて!!」
「チコッ!」
しかしチコリータはそれらの軌道を読み、全て回避していく。
「はっぱカッター!!」
「チィィッコ!!!」
着地した瞬間、はっぱカッターでイシツブテを攻撃するチコリータ。
回避する事ができず、まともにチコリータの攻撃を受け、イシツブテは吹き飛ばされた。
「やった!!」
岩タイプは草タイプに弱い、しかもまとも受けたのだ、ダメージは計り知れないはず……。
だが、そんなカグヤの期待とは裏腹に、イシツブテは立ち上がった。
「う、嘘……まともに受けたのに」
「仮にもジムリーダーを任せられているんだ、そう簡単にはやられない!
タイプが勝敗を決する訳じゃないって事を教えてやる。イシツブテ、あなをほる!!」
「イシシシシッ!!」
地面を掘り、地上から姿を消すイシツブテ。
「チコリータ、落ち着いて!!」
そうだ、慌てたところで相手の思うつぼ、今はどこからイシツブテが出てくるか警戒しなくては。
しかし、このまま地面に立っていた所で攻撃を回避できるわけではない。
「チコリータ、あの岩に乗って!!」
所狭しと存在する岩の突起に移動するチコリータ。
少なくともこれで真下からの奇襲は――
「悪くない考えだ。だが甘い!!」
岩を砕く音と共に、チコリータの真後ろから土煙が上がる。
その中から出てきたのは、当然先程まで地面に居たイシツブテであり。
「チコーッ!?」
完璧な奇襲は見事成功して、隙だらけのチコリータをおもいっきり吹き飛ばす。
「チコリータ!!」
カグヤの声を聞き立ち上がるチコリータだが、ダメージが大きいのか脚が震えている。
「トドメだイシツブテ、たいあたり!!」
決着をつけようと、イシツブテはチコリータへと向かっていく。
ダメージを受け立ち上がったチコリータに回避する術はなく、そのまま両者との決着は――意外な結末を迎えた。
「な、何———!!?」
驚愕の声はタケシから。
それもそのはず、有利だったはずのイシツブテがいきなり動きを鈍らせたからだ。
(攻撃を受けた? しかしそんな様子は……)
それに、様子がおかしいのはイシツブテだけではない。
大きなダメージを負っていたはずのチコリータが、ピンピンしているのだ。
「……やどりぎのタネの威力、どうですか?」
不敵に笑うカグヤの言葉に、タケシはようやく状況を理解した。
「そうか、あの時のたいあたりで……」
「はい。吹き飛ばされる寸前にやどりぎのタネをイシツブテに植えたんです。
――正直、かなり危なかったですけど」
しかし、効果は絶大でありイシツブテから受けたダメージのほとんどは回復した。
それと同時に、イシツブテが地面に転がり目を回す。
「イシツブテ、戦闘不能! チコリータの勝ち!」
〈……カグヤ、強くなったね〉
「カグヤは努力家だからね、トレーナーとしての才能もおじさん譲りだし」
〈でも、まだまだパパには適わないよ〉
(さて……それはどうだろう)
強くなりたい、その一心でカグヤはポケモン達と一緒に強くなっている。
バトルをするのはあくまでポケモンだ、しかし臨機応変に戦うにはトレーナーが必要である。
互いに互いを支え合い戦う事ができるからこそ、ポケモンバトルに終わりはないのだから。
「――イシツブテ、よくやった」
イシツブテをボールに戻し、労いの言葉を掛けながら別のボールを取り出すタケシ。
そして中から出てきたのは。
「行け、イワーク!!」
「えっ……!?」
「イワアァァァッ!!!」
地面から天井まで届くほどの巨体。
その姿に、チコリータはおもわず後退る。
「チコリータ、はっぱカッター!!」
「チィィィィッコ!!!」
すぐさま攻撃を仕掛けるカグヤとチコリータだったが。
「えっ……!?」
チコリータが放ったはっぱカッターは、イワークの身体に当たった瞬間、いとも簡単に弾かれてしまった。
(あのイワーク、よく育てられてる……)
おそらくあれがタケシの切り札なのだろう、しかしはっぱカッターを弾くとは凄い防御力だと素直に感嘆する。
しかし、カグヤは攻撃が通じない事に、思考を止められてしまった。
「イワーク、チコリータをしめつけろ!!」
「あっ―――!!?」
それが圧倒的なまでの隙を生み、イワークの身体は瞬く間にチコリータを捉えその硬い身体で締め上げる。
苦しそうに息をするチコリータに、カグヤは再び命を下す。
「チコリータ、つるのムチで攻撃して!!」
「チ、チコォォ………」
しかし、チコリータは攻撃を仕掛ける事ができず声を漏らすのみ。
「そんな……」
「オレのイワークを甘く見るな、もはやチコリータが脱出する術はない」
「…………」
悔しげに唇を噛み締め、カグヤはボールを翳しチコリータを戻す。
〈……パパ、カグヤ負けちゃう?〉
「どうしてそう思うの?」
〈だって、草タイプのチコリータがやられちゃったし……後はエネコしかいないよ?〉
確かに、エネコはノーマルタイプのポケモンであり、イワークに決定打を与えられるわけではない。
だが、それでもレイジはカグヤが負けるとは思えなかった。
「ティナ、さっきタケシが言ってたでしょ? タイプが勝敗を決する訳じゃないって」
〈だけど……〉
「答えは、このバトルが終わればわかるさ」
そう言って、再び2人のバトルに視線を向けるレイジ。
「エネコ、レディーゴー!!」
「ニャーッ!!」
ボールから出したのは、やはりエネコ。
「エネコか……しかしイワークとは相性が良いわけじゃないぞ?」
「わかってるわ。でもね……私のエネコはそんじょそこらのエネコとはデキが違うの!!」
「面白い。なら見せてみろ!! イワーク、たいあたり!!」
「イワァァァッ!!!」
雄叫びを上げながら、その巨体をまっすぐエネコに向かわせるイワーク。
エネコはその場から動かず、しかし既にカグヤはある命令を告げていた。
「むっ!?」
イワークに命中したはずのエネコが幻となって消える。
「かげぶんしんか!!」
「エネコ、スピードスター!!」
「ニャミャーッ!!」
後ろから襲いかかるスピードスターは、イワークに見事命中。
しかし、それでもさしたるダメージは与えられていない。
「そんな攻撃で、オレのイワークが倒せると思うな!!」
「倒せるだなんて思ってないわよ!!」
今度は右横からのスピードスター。
続いて左側からも。
連続で受け、ほんの少しとはいえイワークの身体がぐらついた。
「今よエネコ、特訓の成果を見せて!!」
「ニャァーッ!!!」
土煙に紛れ、エネコがイワークの後ろに回り込みそして。
「れいとうビーム!!」
「なっ!?」
〈ええっ!!?〉
(へぇ……)
「ニャミャァァァァッ!!!」
三者三様の反応を受けながら、エネコの口から放たれたのは、氷タイプのれいとうビーム。
それはイワークの尾に命中し、だんだんと身体全体を凍り付かせていく。
「イ、ワァァァ………」
苦しげな叫び声を上げるイワークだが、逃れる術などあるわけがない。
――やがて、氷漬けになったイワークが地面に倒れ込んだ
「イワーク、戦闘不能!エネコの勝ち!! よってこの勝負、マサラタウンのカグヤの勝利!!」
瞬間、審判がイワークの戦闘不能を告げ……。
この死闘は、カグヤの勝利という形で幕を降ろす事になった。
………。
「…………」
静寂が、ジム内に漂う。
その場にいる誰もが口を開けず、勝者であるカグヤも信じられないのかその場に立ち尽くしていた。
「ニャー、ミャァー」
しかし嬉しそうに鳴くエネコを見て、ようやく自分が勝利できたと確信ができ。
「やっっっったーーーーーーーーっ!!!!」
「っ、ミャァッ!?」
その場にいるエネコが驚くほどの大声を上げ、喜びのあまり何度のその場で飛び跳ねた。
〈……うるさい〉
「仕方ないさ」
ジムリーダーに勝てたのだ、その嬉しさは普通のバトルで勝てた時よりも遥かに大きいだろう。
そんなカグヤに苦笑しながら、タケシが何かを持って彼女に近づく。
「完敗だ。君のポケモンの力、確かに見せてもらったよ。
ジムリーダーであるオレに勝てた証として、このグレーバッジを受け取ってくれ」
「……これが、ポケモンリーグの出場権になるバッジ……」
バッジを受け取り、感慨深そうにカグヤは暫しそれを見つめる。
「――ところで、君は挑戦しないのか?」
タケシの視線がレイジに向けられるが、彼は黙って首を横に振った。
せっかくの申し出はありがたいが、自分はポケモンリーグに出るつもりなどはないのだ。
ただ彼女の旅についていき、様々なポケモン達に出会えれば充分なのだから。
「そうか……」
「タケシさん、楽しいバトルをありがとうございました!!」
「オレの方こそありがとう、やはりポケモンバトルは奥が深いな」
「そうですよね。でも私は絶対にポケモンリーグに出場して、チャンピオンになるっていう目標がありますから、これから先もっともっと強くなります!!」
「頑張ってくれ。応援してるよ」
「はい。ありがとうございます!!
レイジ、とりあえずポケモンセンターに行こう!!」
「はいはい……」
先程からずっとニコニコと笑っているカグヤに少し呆れながら、タケシに一礼してジムを後にするレイジ。
(……おめでとう、カグヤ)
そんな彼女に、レイジは心の中で賛辞の言葉を送ったのだった。
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「――ふふ、ふふふっ」
「……気持ち悪いよ」
「失礼ね。言うに事欠いて気持ち悪いとは何よ」
「だって、さっきからずっと笑ってばっかだから」
ポケモンセンターに着き、いつものように同じ部屋を貸してもらったレイジ達。
しかし先程からカグヤがベッドの上でグレーバッジを見つめながら笑っているのは、正直どうにかしてほしい。
気持ちはわかる、ポケモンリーグを目指しているのだから、ジムリーダーに勝てて嬉しいというのはレイジとて理解できた。
だがしかし、それもずっと続くとなると気味が悪い。
(もしかして、バッジを手に入れる度にこうなるのか……?)
それはさすがに勘弁してほしい。
「嬉しいんだからしょうがないじゃない」
「限度ってものがある、さっきからずっとニヤニヤしてるよ?」
「えっ、そんなにニヤニヤしてた?」
(自覚なかったの?)
そう思いながら頷くと、さすがに恥ずかしいと思ったのか、カグヤの頬が赤く染まる。
「あはは……ごめん」
「別に謝る必要はないけどね……」
さて、ようやくカグヤの顔も元に戻ったのだ。
夜になったし、そろそろ次の予定を決めなくては。
「次はハナダシティだけど、明日すぐに出発する?」
「うーん……そこまで急がなくても私は構わないよ。
レイジに何か用事があるなら、そっちを優先してもいいし」
バッジを貰って余裕が出たのか、あっさりとそんな言葉がカグヤから出てきたので、レイジは好都合とばかりに口を開いた。
「じゃあ、明日は自由行動でもいいかな?」
「えっ、別にいいけど……何処か寄りたい所でもあるの?」
「うん。博物館にね」
たしかこのニビシティには化石博物館があるはず。
実は前々から見てみたいと思っていたので、今回の旅で行ってみたいと思っていたのだ。
「うん、もちろん私は構わないよ。
あ、でも……もし自由行動なら、明日はトレーニングをしてもいいかな?」
「もちろん。一緒に行動する必要はないしね」
「……そう言われると微妙だけど、まあいいか」
「………?」
少し不満そうに唇を尖らせるカグヤだったが、すぐに表情が元に戻ったのでレイジは特に気にしない事にした。
「それじゃあ明日の予定も決まったし、ごはんでも食べに行こう?」
ベッドから降り、レイジの手を握って共に部屋を出るカグヤ。
(……楽しみだな)
珍しく口元を緩ませながら、レイジは明日の事を考えながらおとなしくカグヤに引っ張られ、食堂へと向かったのだった。
To.Be.Continued...
四倍弱点を受けているのに倒れないのは、私の作品では稀によくありますので、気にしないでください。