ポケットモンスター 〜The Legend of Master〜【完結】 作:マイマイ
全ての決着をつけるたむに、レイジを除いた一同はスズラン島へと赴いた。
――シンオウ地方、スズラン島
ポケモンリーグが開幕されるこの島は、現在戦場にする為の準備が行われていた。
「オーバ、住民の避難は?」
「終わったぜ、シロナ」
チャンピオンシロナの声に応えるのは、シンオウ四天王のオーバ。
それを聞き、おもわず安堵のため息を漏らす。どうやら間に合ったようだ。
「くそっ……まさかこんなにも早いなんて、卑怯だぜ……」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょ!」
………。
――敵の進行は、思っていた以上に早かった。
スズラン島に転移し、予め集合させていた四天王の面々に状況を説明した時には……ヴァルハラが肉眼で確認できる程にまで近づいていたのだ。
しかも既に砲撃は開始されており、ディアルガ達が防いでくれているおかげで住民達の避難は無事終わったのだが、協力してくれるジムリーダーや他地方の四天王やチャンピオンを迎えに行く事ができない。
状況は知らせたものの……これではせいぜいシンオウサイドの面々しか協力を仰ぐ事しかできないし、しばらくはこのメンバーだけで戦うしかない。
(っ、弱気になんかなっちゃダメ………!)
自分にそう言い聞かせ、萎縮する心に渇を入れるカグヤ。
と、ここで突然砲撃が止んだ。
「………?」
不思議に思い、全員が視線を上げると、ヴァルハラはスズラン島の少し手前の海上で動きを止めていた。
(何だ……? 急に止まって……)
『――くだらぬ世界に生きる人間達よ』
『―――っ!!?』
ヴァルハラから響く男の声、もちろん声の主はロキのものだ。
『その様子では、まだ無駄な抵抗を続けるつもりのようだな』
「当たり前だろうが!!世界をテメェの思い通りになんかさせねえ!!」
「この世界はあなた1人のものじゃない、身勝手な理由で世界をむちゃくちゃにする権利なんかないわ!!」
カイリとヒメカの言葉に同意するように、他のメンバーも大きく頷きを返す。
すると、返ってきたのは本当につまらなげで…一番腹立たしい言葉。
『――生きる価値も意味もないような存在がよく言えたものだ。
どうせ何もできんのだから……おとなしく死んでいけばいいものを』
その言葉と同時に、スズラン島に落ちてくるのは……無数のデッドボール。
ドサイドンやケンタロス、ラグラージやライボルト、レントラーといったポケモン達が、一斉に島へと進行を開始した。
「ちっ、敵さん早速おっ始めたようだぜ!!」
「どうにかボク達で迎え撃つしかないようだね!」
こちらへと向かってくるデッドポケモン達を迎え撃つため、全員が自分のモンスターボールを手に取った。
しかし、その中でカイリだけが……俯き、拳を握りしめている。
「………カイリ?」
彼の様子に気づき、ヒメカが声を掛けた瞬間。
「――――けんな」
「えっ……?」
「――ふざけんなぁぁぁぁっ!!!」
叫び、ボールからカノンとゴウカザルを取り出し、素早く背に乗ってヴァルハラへと単身向かっていってしまった。
「くっ……ハク!!」
すぐさまボールからハクを取り出し、カイリの後を追うヒメカ。
「カイリさん、ヒメカさん!!」
「カイリの事はわたしに任せて、みんなは陸地の方をお願い!!」
そう言い残し、最大スピードでカイリの隣にまで追いつく。
「落ち着きなさいカイリ、頭に血が昇ったままで勝てる相手じゃないでしょう!!」
「わかってる!! わかってるけど……アイツだけは、絶対に許せねえんだ………!
俺達人間が価値や意味がない存在じゃないって所を、絶対に思い知らせてやる!!」
「はい、マスター。頑張りましょう!!」
「……まったく、しょうがないわね」
呆れたようなため息をつきつつも、カイリと共にヴァルハラに向かうヒメカ。
しかし、それを許すロキではない。
「煩いハエだな……さっさと消えろ」
2人に向かって放たれる砲撃。
「カノン、真上まで飛ぶんだ!!」
それを回避しながら、ヴァルハラの真上へ。
「ゴウカザル、かえんほうしゃ!!」
「ハク、りゅうのはどうよ!!」
真上からの同時攻撃。
それは真っ直ぐヴァルハラの上部へと向かっていき。
――薄い膜のようなものの前に、霧散した。
「えっ………!?」
「あれは……バリアか!?」
「っ、マスター、掴まっててください!!」
「えっ――どわぁっ!?」
急旋回するカノンの背から落ちそうになるが、どうにか堪える。
再び砲撃が開始され、凄まじい弾幕の中からクロバットの群れが姿を現した。
「っ、避けるんだ。カノン!!」
そう指示を出した瞬間、クロバット達から放たれたのは――ちょうおんぱ。
「じょ、冗談じゃねえぞ!!」
こんな場所でこんな攻撃などに当たるわけにはいかない。
「戻れゴウカザル! エレキブル、10まんボルトだ!!」
「ハク、かみなり!!」
ゴウカザルをボールに戻し、代わりにエレキブルを場に出して、ハクと共に特大の電撃でクロバット達をまとめて戦闘不能に。
「あれ……? たった一撃で……?」
デッドポケモンの強さは何度も戦っているからわかっている。だというのに、いくら弱点とはいえただの一撃で倒せるなど、少々信じられない。
が、その理由をすぐに理解する事ができた。
「ディアルガ!!」
エレキブル達の攻撃と共に、ディアルガの攻撃も放たれていたらしい。
見ると、地上ではカグヤ達と共にパルキアが、そして海から島を攻撃しようとしているデッドポケモン達は、ギラティナが対応していた。
「ディアルガ、あのバリアをなんとかできないか!?」
「――ギガギャッ!!」
カイリが言うやいなや、ディアルガは雄叫びを上げ身体を発光させていく。
そのただならぬ雰囲気とパワーに、カイリは背筋を凍らせながら急いでヒメカとその場を離れる。そして―――
「――ディガァァァァァッ!!!」
絶叫ともとれる声と共に、ディアルガの巨大な口からオーロラのような光線が撃ち放たれる―――!
ディアルガの技――ときのほうこうは、ヴァルハラのバリアとぶつかり合い、激しい火花と閃光を辺りに撒き散らしていく。
と、ガラスが砕けるような音が響き。
ヴァルハラのバリアは、ディアルガの技の前に粉々に砕け散った。
その瞬間、カイリ達は一斉に攻撃を仕掛ける。
「エレキブル、フルパワーでかみなり!! ゴウカザル、オーバーヒート!! カノン、りゅうせいぐんだ!!」
「ハク、フルパワーではかいこうせん!! カイン、ソーラービーム!! ヒノ、ブラストバーン!!」
各々特大の大技で次々と砲台を破壊していく。
技を繰り出した後、カノンとハク以外はすぐさま全員ボールの中へ。さすがに、カノンとハクにあれだけのポケモンを乗せる事はできないからだ。
しかし、一斉攻撃によって都合八十近い数があった砲台も、その殆どを破壊する事に成功した。
「よっしゃ!!」
「ディアルガ、ありがとう!!」
「よし、このまま――」
このまま一気に叩く、そう思い残りのメンバーでもう一度総攻撃を仕掛けようとするカイリであったが。
「待ってください、マスター!!」
慌ててカノンがカイリに制止を呼びかけた。
「どうしたカノン………って!?」
「そんな………!?」
おもわず、その場で固まってしまうカイリ達。
何故なら、ディアルガのときのほうこうによって破壊されたはずのバリアが、みるみるうちに修復されていくからだ。
「マジかよ……くっ、ディアルガ! もう一回さっきのやつをやってくれないか!?」
ときのほうこうのような強大なパワーを誇る攻撃でしか、あのバリアを突破する事はできない。
そう思いカイリはディアルガに声を掛けるが、首を横に振られてしまう。
「マスター、先程の技を再び使用するには、少し時間が掛かると……!」
「くっ………!」
「カイリ、またデッドポケモン達が来るわ!!」
「くそっ!!」
とにかく今は、次の攻撃までどうにか堪え忍ぶしか手はない。
歯がゆいと思いながら、カイリとヒメカは再び死闘を開始した――
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一方、地上でも激闘が繰り広げられていた。
ドサイドンのとっしんがガブリアスに迫る!!
「メガニウム、ガブリアスの前に立ってリフレクター!!」
しかし、メガニウムが庇うようにガブリアスの前に立ち、真っ向からリフレクターでドサイドンの攻撃を防ぎきる。
だがやはり辛いのか、メガニウムの表情は辛そうだ。
「ガブリアス、ドラゴンクロー!!」
メガニウムの真上を飛び越え、両腕でのドラゴンクローをドサイドンに叩き込むガブリアス。
更に、メガニウムの口からは巨大なソーラービームを撃ち放たれた。
「カグヤ、ありがとう!」
「お礼ならメガニウムに行ってください!
メガニウム、ゴウカザルの前にハードプラント!!」
オーバのゴウカザルに迫るラグラージを、ハードプラントで連べ打ちにする。
その威力は凄まじく、ラグラージの巨大が地面に埋まりきってしまった。
「嬢ちゃん、サンキューな!!」
「お礼を言うのはまだ早いですよ!! メガニウム戻って! クチート、レントラーにアイアンヘッド!!」
右手のボールでメガニウムを戻すと同時に、左手でクチートの入ったボールを投げる。
場に出たクチートは、アイアンヘッドでレントラーを吹き飛ばし――後ろからやってきた他のデッドポケモン達をも巻き込んでいく。
「ヒュー、あの嬢ちゃんすげえ強いな」
「ああ、本当に頼りになる戦力だよ!!」
「しかし、私達も負けてはいられませんね」
「おうよ。四天王の力見せてやるぜ!! ゴウカザル、フレアドライブ!!」
「ドラピオン、クロスポイズンだ!!」
「ガバルドン、ストーンエッジ!!」
「フーディン、エナジーボールです!!」
「ガブリアス、ギガインパクト!!」
シンオウチャンピオン、更に四天王の一斉攻撃により、凄まじい爆発と共に大量のデッドポケモン達が宙を舞う。
そこに、最後の追い討ちを掛ける攻撃が。
「ドダイトス、リーフストーム!!」
「ハガネール、アイアンテール!!」
ケイジのドダイトスのリーフストーム、そしてミカンのハガネールのアイアンテールが、周囲のデッドポケモン達全てを一カ所に吹き飛ばし。
「レジェンド、シャイニングフレア!!」
「ラティオス、フルパワーでラスターパージ!!」
そこに、カグヤとロストのポケモン達の最強技が炸裂する―――!
爆音を響かせ、視界を覆ってしまう噴煙が辺りに立ち込める。
周りの民家や地面が見るも無惨な姿になってしまうものの、今はそんな事を気にしている場合ではない。
しかし、その甲斐あって煙が晴れた頃には。
周囲のデッドポケモン達は、全て沈黙していた。
「ふぅ……なんて強さなんだ、あのデッドポケモンってのは」
額に滲んだ汗を拭き取りながら、オーバは呆れたようにため息をつく中。
「――まだ、終わりじゃない」
カグヤは、地面に倒れたポケモン達を踏み台にしながら近づいてくる、新たなデッドポケモン達を迎え撃とうと身構えていた。
「いっ!?」
「そんな……まだこんなに……!?」
数はおよそ五十、それも中にはメタグロスやガブリアス、ボーマンダなど伝説のポケモンに劣らぬ強さを持つポケモン達の姿が。
「くそっ……まだ来るのかよ……」
おもわず、弱気になるような言葉を漏らすオーバ。
しかし、その場に居た誰もがオーバの言葉に反論を返せない。
大技の連発でポケモン達は疲れている、まだ余裕はあるが……あれだけのデッドポケモン達を相手にできるのかと言われれば、答えはノーだ。
だがやらなくてはならない、そうしなければこちらがやられるだけだ。
それはわかってはいるが、こんな状態では……。
「――ライチュウ、かみなりだ!!」
「えっ………?」
凄まじい電撃が、数体のデッドポケモン達を包み込む。
「どうしたオーバ、四天王のくせにそんな弱気でどうするんだ?」
全員が後ろを振り向く。
そこには、8人の男女が。
そして中心には、金髪の美青年がライチュウを連れオーバの元へ。
「――へっ、遅いんだよデンジ」
「超特急で来た友人に対してそれはあんまりしないのかオーバ。――これが終わったら、メシでも奢って貰おうか」
「す、凄いです……シンオウのジムリーダーが全員集合だなんて……」
「よーし、じゃあみんなここから一気に反撃するよ!!」
「お前が仕切るな」
「何言ってるのケイジ、レイジが居ない今は私がみんなのリーダーなんだから!!」
(そんなのいつ決めたのかしら……?)
おそらく、いや間違いなく今決めたのだろう、カグヤの性格を考えればすぐにわかる。
しかし、この状況でも自分を見失わずに味方を鼓舞できる彼女の心は、やはり強い。
「行くわよ、カグヤ!」
「はい、シロナさん!!」
隣り合わせに立ち、笑みを見せつつ先手必勝となる先制攻撃を仕掛ける!!
「ガブリアス!!」
「ラティオス!!」
『フルパワーでりゅうせいぐん!!』
カグヤとシロナ、2人の声が見事に重なり、ガブリアスとラティオスによるダブルりゅうせいぐんが、迫るデッドポケモン達に放たれる。
爆撃じみたこの攻撃に、残るメンバー達の士気も飛躍的に上がっていく。
「よっしゃ、みんなシロナと嬢ちゃんに負けるなよ!! このシンオウは、オレ達で守るんだ!!」
『オーッ!!!』
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「ほぅ……存外にしぶといものだな」
ヴァルハラ内部でゆっくりと観戦を決め込んでいたロキだったが、自分の予想を越えた粘りを見せるカグヤ達に、軽く感嘆の言葉を漏らす。
と、ここで隣に居るフレアが少し遠慮がちに意見を口にした。
「ロキ様、ディアルガ達によってヴァルハラにもダメージが」
「――そうか。そういえばハエ共はまだ落とせていなかったのだな」
既に三度、ディアルガのときのほうこうによってバリアは砕かれ、その隙を狙ってのカイリとヒメカの総攻撃により、既にヴァルハラにある砲台の全ては破壊された。
バリアの方はまだ復元できるし、ディアルガもときのほうこうという絶大な技の連続使用により、もうあれを放つ事はできないとはいえ……ロキにとって、とるに足らない相手の予想外な抵抗は気に入らなかった。
少々遊びすぎたか、そう思いロキは――遂に魔に堕ちた兵器を投入する。
「フレア、ミュウツーを出せ」
「っ、しかしあれはまだ完全な制御が……」
「構わぬ。ミュウツーであのゴミ共を始末できさえすれば良し。
たとえできなくても、もうすぐ『神の雷』による殲滅攻撃が開始されるのだから、時間稼ぎになればいいだけだ」
「……ミュウツーを、捨て駒にするのですか?」
「そうだ。兵器というのはたとえどんなに優秀でも、いや優秀なだけ“使い捨て”になりやすい。
所詮はミュウツーなど使い捨ての駒だ、それにあの程度ならいくらでも造り出せる。
――あれを本当の子だと思った馬鹿な博士から奪ったデータが手元にあるからな」
「…………」
その言葉は、味方であるフレアですら戦慄してしまうほど、冷たく恐ろしいものだった。
自分以外の存在は自分の目的を果たすための駒、使い捨ての消耗品でしかないと本気で思っている。
そして自分も……ロキからしたら、消耗品の駒でしかないのだろう。
……だが、彼女にとってそんな事はどうだってよかった。
もう疲れたのだ、考える事に。だったら道具のまま動いて道具のまま死ねばいい。
「ミュウツーを、出します」
「任せる」
ならば、意見する必要などない。
恭しく一礼し、フレアは部屋から出て行った。
……もう戻れない、もう全てが遅すぎたのだから。
「―――ん?」
デッドポケモン達と戦いながら、カイリは違和感を覚えヴァルハラに視線を向ける。
(何だ……? バリアの一部が消えて……)
瞬間、何か黒い影が揺らめいたと思った瞬間。
「が、は―――!?」
血を吐くカノンと共に、きりもみしながら地上へと落ちていった。
「カイリ!?」
一体何が起きたのか、まったく理解できない。
しかし、あのまま地上に落ちれば無事では済まないという理解が頭を占め、ヒメカはすぐさまハクに命じてカイリ達の元に向かおうとして。
「きゃあぁぁぁっ!!」
黒い球体——都合三十近いシャドーボールにハクが連べ打ちにされ、ヒメカ達もカイリ達と同じく地上へと落ちていく。
それに気づいたディアルガが、敵の攻撃にも構わずに2人を助けようとするが。
「――余所見トハ、イイ度胸ダナ」
どこか、現実離れした声が聞こえ……。
何者かが、ディアルガの巨体を文字通り“殴り飛ばしてしまった”
「ギガァッ!!?」
全身に走る痛みと衝撃に、ディアルガは混乱する。
ありえない、なんだこの攻撃は、自分に対して一撃でここまでのダメージを与えるなど、もはや普通ではない。
しかしさすがはディアルガ、痛みと衝撃に耐え矢のようなスピードで落下する自分の身体の衝撃を無理矢理殺し、落ちていく2人を背中に乗せる。
だが――まだ正体不明の攻撃は終わらない。
「――死ネ」
ズドンッ、という大砲のような音が響く。
それはディアルガの横腹を大きく凹ませる程の衝撃を誇り、地に落ち更に数十数百メートルという距離を地面を削りながら吹き飛んでも尚止まらない。
それでもディアルガは、2人とポケモン達にこれ以上ダメージが行き渡らないように庇いながら吹き飛んでいく。
そして、ようやく止まった時には——島の反対側にディアルガは倒れていた。
数キロの距離を、巨体であるディアルガすら吹き飛ばす破壊力。
それは異常を通り越してもはや識別不能だ。如何なる奇跡、いかなる悪魔の所業か。
その一撃は神と呼ばれしディアルガの意識を奪い、更にカイリ達も同様に意識を手放している。
「…………」
自分の一撃が届いたと理解し、満足げに邪悪な笑みを浮かべながら……それは次なる標的を始末するために場所を移動する。
――新たな脅威が、カグヤ達に迫っていた。
To.Be.Continued...